デジタルシフトでつなぐ未来 -ソフトバンクのSDGs達成への貢献-

デジタルシフトでつなぐ未来 日経SDGsフォーラム講演 宮内謙

(2020年12月25日 掲載)

目次

2020年11月に開催された「日経SDGsフォーラム」で、ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮内 謙はこう述べた。

「テクノロジーを活用したソフトバンクの企業活動そのものが、SDGs達成への貢献です。」

ソフトバンクは、SDGsの達成を重要な経営課題と捉え、強みであるテクノロジーの力をベースとした企業活動を通じて社会課題の解決に貢献することで、企業価値の向上と持続的な社会の実現に取り組んでいる。

本記事では、宮内の講演から抜粋して、ソフトバンクの具体的な取り組みを紹介する。

ソフトバンク 宮内謙

ソフトバンクのSDGs実現におけるマテリアリティ

宮内:今日は「デジタルシフトでつなぐ未来」についてお話しします。

講演の冒頭で、宮内は、無人の電気自動車で宅配サービスを行う「Nuro」と、窓ガラスにIoTセンサーを組み込みAIを活用して自動調光を行う「View」の2つの企業を紹介した。「Nuro」はこのコロナ禍で非接触な配達の需要が高まり、既に米国の一部地域で医薬品や食料などの配達を行なっている。また「View」は自動調光により電力消費量を約20%削減でき、さらには眼精疲労の軽減など、健康や生産性向上に結びつくと言われている。このようにテクノロジーは世界や日本が直面する社会課題の解決やSDGsの貢献につながっている、と述べた。

ソフトバンクはまもなく創業40年を迎えます。創業当時より掲げている「情報革命で人々を幸せに」という経営理念のもと事業を行ってきましたが、SDGsに本格的に取り組むために「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」というコンセプトを新たに打ち出しました。

日経SDGsフォーラム講演1

ソフトバンクの事業は多岐にわたりますが、中でも情報通信はコアな事業です。このコロナ禍で、テレワークや遠隔教育などが求められ、通信の重要性はより一層高まりました。この通信を支えているのが、全国に23万サイトある基地局です。基地局で使用する電力は、当社全体の使用電力の約60%を占めています。情報通信は重要なライフラインですが、一方で、その維持には大量の電力を消費し、多くのCO2を排出していることも事実です。

数年前より基地局で使用する電力を再生可能エネルギーへ転換しています。2020年度の再生可能エネルギー比率の目標は30%ですが、2022年度には70%にすることを目指しています。そして可能な限り100%まで引き上げたいと考えています。

日経SDGsフォーラム講演2

さらに、ソフトバンクは通信事業を超えて、QRコード決済のPayPay、モビリティサービス(MaaS)のMONET、あるいはeコマースのYahoo! などを通じて、社会全体のデジタルシフトを推進していくことが重要だと考えています。

日経SDGsフォーラム講演3

当社はSDGsの実現における6つのマテリアリティ(重要課題)を特定しており、事業の推進とマテリアリティがリンクするような活動をしています。この中から、今日は3つご紹介します。

日経SDGsフォーラム講演4

デジタルトランスフォーメーション(DX)による社会・産業の構築

宮内:1つ目は「デジタルトランスフォーメーション(DX)による社会・産業の構築」です。コロナ禍によって急激に働き方が変わったことを心配しましたが、同時に人間の知恵とテクノロジーの力によって、さまざまなことが実現可能であると実感しました。

当社では10年以上前から、働き方のデジタルシフトを進めてきました。2008年に iPhone 、2009年に iPad が発売されましたが、発売後すぐに全社員に配布しました。さらにクラウド環境と組み合わせることで、ペーパーレスを実現しました。現在では、AI、RPA、Zoom、Slackなどを活用することによって、従来とは180度違う働き方を実践しています。

2020年からは、営業活動もデジタル化しています。既存顧客のフォローはオンラインで対応できるという見込みを持っていました。一方で、緊急事態宣言下の4月頃は、新規顧客の開拓がオンラインでできるのかという懸念があったのですが、今はそういった懸念はすべて払拭されました。

メールマーケティングやウェビナー、オンライン商談など、マーケティングからセールスまでのすべてをデジタルで行えることが分かってきたからです。さらには営業活動をデジタル化することによって、顧客へのコンタクト数が5倍に増えました。オンラインでアプローチすることによって顧客接点がデジタル化され、蓄積されたデータを活用した営業活動が可能となっています。

日経SDGsフォーラム講演5

ここで建設業界の事例をご紹介します。当社は基地局建設も行っていますので、建設業界が抱える人手不足や安全確保の難しさなどの課題を肌で感じています。

2019年の12月に、大成建設様と一緒にトンネル工事現場における災害復旧作業の安全性向上を目的とした実証実験を行いました。 5Gの特長である多数同時接続を活用したセンサーによる安全確認や、超高速大容量を活用した建機の遠隔操作について実験を実施し、人手不足やさらなる安全性の向上に向けて取り組みを進めています。

日経SDGsフォーラム講演6

オープンイノベーションによる新規ビジネスの創出

宮内:2つ目は「オープンイノベーションによる新規ビジネスの創出」です。 ヘルスケアのデジタルシフトを例にお話しします。日本の医療は、医師の過重労働、年々増大する医療費、病院での長い待ち時間など、多くの課題を抱え、医療サービスの維持は危ぶまれる状況です。 このような課題を解決するために、スマホのアプリケーションを使った「HELPO(ヘルポ)」というオンライン健康医療相談サービスを立ち上げました。

日経SDGsフォーラム講演7

医療専門スタッフが症状の初期段階の相談から対応し、受診タイミングの提案や回復期までをサポートしたり、慢性疾患の悪化の予防や改善に向けたアドバイスも行います。今後は、オンラインでの診療から服薬指導、処方箋配送の実現を見据え、プラットフォームを拡充していきます。

また、唾液PCR検査にもHELPOが活用されています。スマホのアプリから検査の申し込みを行い、検査キットに唾液を入れてQRコードを貼り付けて送れば、後日検査結果がスマホに通知されるという簡単な仕組みです。一連の流れをデジタル化する、我々はこのような活動をさらに展開していきたいと考えています。

日経SDGsフォーラム講演8

次に、交通のデジタルシフトについてお話しします。

超高齢化が進む日本では、移動においても、65歳の4人に1人が近くに商店などがないため買い物が困難、医療機関が町にない無医地区が600以上あり通院が困難、地方においては8割のバス会社が赤字であるなど、多くの課題があります。ソフトバンクは50以上の自治体と連携協定を締結しており、一部の自治体では、トヨタ様と一緒に立ち上げたMONETを活用したオンデマンドモビリティの実証実験を行っています。このサービスではスマホで乗りたい時間、場所を予約して車で移動することができます。

日経SDGsフォーラム講演9

さらに今後は、フードデリバリーやスーパー、病院、オフィスなどのさまざまなサービスとつなげて、MaaSのプラットフォーム内で提供していきたいと考えています。具体的な事例として、長野県伊那市では2019年12月より医療MaaSの実証実験をスタートさせています。ご自宅などへ看護師などの医療スタッフが同乗した移動診察車が出向いて、車内のテレビ電話を使って、病院の医師によるオンライン診療を実施します。

日経SDGsフォーラム講演10

質の高い社会ネットワークの構築

宮内:3つ目は「質の高い社会ネットワークの構築」です。ソフトバンクは、ネットワーク品質を調査するイギリスの調査機関 Opensignal社から世界最高レベルの評価を受けました。ソフトバンクの基地局は全国に23万サイトありますが、この基地局建設においても徹底的なデジタル化により工期の大幅短縮を実現しました。ネットワークの保守運用についても、従来は設備故障時に現場まで行って復旧作業していたところをデジタル化し、障害要因の特定から復旧、記録までを自動で行う仕組みも取り入れながら、早期の復旧を実現しています。

日経SDGsフォーラム講演11

日経SDGsフォーラム講演12

一方で、世界に目を向けると、インターネットが利用できない人口は37億人とも言われており、また自然災害により通信が遮断されるといった課題があります。この課題を解決するために、HAPSモバイルという成層圏を活用した通信システムを2023年頃から提供開始する予定です。すでに成層圏飛行中のLTE通信を成功させていて、成層圏から直接スマホに電波を送れる、つまり「いつでもどこでもつながる世界」が実現できるのです。これこそまさに、世界のまだネットワークがつながっていない地域に電波をお届けできるというSDGsへの貢献です。

日経SDGsフォーラム講演13

宮内は、「テクノロジーを活用したソフトバンクの企業活動そのものがSDGs達成への貢献だと思っています。事業を通じた社会の発展・構造改革を6つのマテリアリティを通じて提供していきます。『情報革命で人々を幸せに』というビジョンと『SDGsによって世界に貢献すること』を旗印にして社員一同取り組んでいきます」と述べ、講演を締めくくった。