金融、製造、運輸。産業のDXに必要なこと|SoftBank World 2020ダイジェスト

金融、製造、運輸。産業のDXに必要なこと|SoftBank World 2020ダイジェスト (2020年11月30日 掲載)

DX(デジタルトランスフォーメーション)は各産業の構造そのものを変えつつある。金融や製造、運輸など、これまでデジタル化があまり進んでいなかった業界においてもDXの波はすでに訪れようとしている。産業のDXについて語られた3つのセッションをダイジェストで紹介する。

目次

地方銀行のDX。地域顧客を大切に考えて踏み出した経験を語る

株式会社山口フィナンシャルグループ 取締役会長 グループCEO 吉村 猛氏

吉村 猛氏

株式会社山口フィナンシャルグループ
取締役会長 グループCEO
ソフトバンク株式会社 広域法人第二営業本部 本部長 古田 芳樹

古田 芳樹

ソフトバンク株式会社
広域法人第二営業本部 本部長

山口フィナンシャルグループが基盤としている山口県、広島県、北九州市では人口減少や高齢化といった課題を抱えています。こうした中で地域をどう活性化していくかが地方銀行にとって重要なテーマです。

現在、山口フィナンシャルグループでは銀行という枠を超えたリージョナルバリューアップカンパニーを目指して、地域支援活動を本格化しています。その取り組みの1つとして進めているのが、銀行店鋪の余剰空間の活用です。店鋪の空きスペースにスペインバルや保育園、英会話教室などを併設。地域のみなさんの賑わいの場になればと考えています。

銀行店舗余剰空間の活用について

また、これからの地域活性化の生命線を握るのがデジタルの力です。山口フィナンシャルグループでは地域の多様なデータを持っていましたが、これまではデータがバラバラに管理されていて使いこなせていませんでした。

現在はソフトバンクさんと連携して統合データベースをクラウド上に作りあげ、データを掛けあわせて新しい発見を得られるようになりました。あらゆるデータを組みあわせてリアルと融合させていくことで、地域活性化の新たなイノベーションが生まれる予感がしています。

今後は自社のDXに留まらず、地域の中小企業の皆さまのDXを支援し、地域の新しい可能性を見つけるお手伝いをしていきたいと考えています。山口県周辺の地域は高齢化が大きな課題になっています。高齢者の皆さまにとっても利用しやすいITサービスを生み出し、ビジネスのエコシステムを作っていきたいと考えています。

工場のスマート化について~5GやEdgeの活用~

日本マイクロソフト株式会社 執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフトディベロップメント株式会社 代表取締役 社長 榊原 彰氏

榊原 彰氏

日本マイクロソフト株式会社
執行役員 最高技術責任者
兼 マイクロソフトディベロップメント株式会社
代表取締役 社長
ソフトバンク株式会社 法人プロダクト&事業戦略本部 統括部長 梅村 淳史

梅村 淳史

ソフトバンク株式会社
法人プロダクト&事業戦略本部 統括部長

「工場のオペレーションで大事なのは、経営側と現場が密接につながっていることと、現場の状況をリアルタイムでモニタリングできることです。また、設備をIoTデバイスでセンシングして遠隔で情報を集め、適切なアクションを取るというセンス&レスポンスの考え方が必要になります。

そこで重要になるのが、リアルなオペレーションの世界をデジタルの中にそのまま作るデジタルツインの考え方です。さらに、AIを活用することで音声認識や画像認識を使って品質やラインの流れ、危険な状況が起きていないかといったチェックを行うことができます。今後5Gが広がっていくと、画像のアップロードや解析をスピーディに行えるようになり、現場の状況をリアルタイムで可視化できるようになります。

スマートな工場オペレーション

デジタルツインを生成するにあたっての課題が、データがあちこちに分散してしまっていることです。紙のもの、デジタルのものが混在したり、デジタル化されていても共有が進んでいないケースがあります。スムーズなワークフローを構築するためには、データが統合され、標準化されていることが不可欠です。

マイクロソフトでは、スマートな工場運営の形としてリファレンス・アーキテクチャを作っています。最初にデータプラットフォームをきちんと整備して、そこに標準的なデータを乗せ、データを統合・連携できるようにする。その上でIoTやAIの機能をフルに活用することで、オペレーションがスムーズになり、データをいろいろな用途に利用できるようになります。

「Azure Edge Zones」のご紹介

5Gが進んでネットワーク構成が多様になれば、機器をどう配置するか、どこにデータを置いて操作するかなど、柔軟にアーキテクチャを組めるようになります。選択肢をたくさん持ち、迅速に成果につなげていけるシステムの構成が可能になります。

オンラインで新規事業開発のプロジェクト進行。実例から語るDX推進方法

ソフトバンク株式会社 法人事業統括デジタルトランスフォーメーション本部 担当部長 MeeTruck株式会社 代表取締役 兼 CEO 横井直樹

横井直樹

ソフトバンク株式会社
法人事業統括デジタルトランスフォーメーション本部 担当部長
MeeTruck株式会社 代表取締役 兼 CEO

ソフトバンクでは日本通運さまとの共創で「MeeTruck」という物流DXのプロジェクトを進めています。トラック運送会社向けに配車支援サービスを提供するプロジェクトで、2020年4月にMeeTruck株式会社を設立。この半年間、異なる企業に在籍する社員が1つのチームとしてサービス開発に取り組んできました。今回はこの事例を踏まえ、オンラインでのDXプロジェクトの推進方法をご紹介します。

「MeeTruck」ではお客さまの声を聞きながらものづくりをしていくというこだわりがあったので、開発開始から4ヵ月でのリリースを目指し、2週間サイクルで進めるアジャイル開発に取り組みました。

MeeTruckのサービス開発アプローチ
配車支援サービスの説明

まず、オフィスをどうするか。我々はWe Workを活用しました。こうしたプロジェクトは人数の増減が日常的に起こるので、柔軟にオフィスの規模を調整できるシェアオフィスの利用はメリットが大きいと考えました。

本来はワークショップを通して仮説検証しながら進めていくのですが、コロナ禍での事業立ち上げということもあり、オフラインでのコミュニケーションが取りにくい状況でした。そこで 遠隔でワークショップ行うために、オンラインホワイトボードを活用しました。物理的な空間を意識しなくて良いのでストーリーマッピングをいくらでも広げていけますし、いつでもどこでも見られるので有効活用できました。

オンラインホワイトボード活用

また、情報がサイロ化すると意志決定にかかる時間が長くなり、スピード感がなくなってしまうため、社内コミュニケーションにチャットツールのSlackを導入しました。情報を全てオープンにして共有することで、相互にフィードバックしやすく、スムーズにプロジェクトを進めることができました。

デジタルツール活用

新規事業の場合、スピード感を持って柔軟に対応していくことが必要です。目的は何で、それを実現させるためにどんなツールや方法が必要か。それを使って意識やマネジメント、やり方を変えていくことが大事だと考えています。

編集後記

今回登壇した山口ファイナンシャルグループは地域の中小企業を対象にしているほか、製造も運輸も中小企業が主役となる業界だ。大企業だけでなく、中小企業にDXが波及したとき、日本のデジタル化は成功したと言うことができるだろう。しかし、中小企業が1社で独自にDXを果たすのはリソースの観点から簡単ではない。より多くの企業に汎用化したDXツールを提供するプラットフォーマー及びサービサーの存在が日本のDXの鍵を握っている。