コロナ禍で進む企業のDX化、5つのヒント|SoftBank World 2020ダイジェスト

コロナ禍で進む企業のDX化、5つのヒント|SoftBank World 2020ダイジェスト

(2020年11月11日掲載)

目次

コロナ禍の影響を受けて、日本全体でデジタルトランスフォーメーション(以下DX)を推進する機運が高まっている。本記事では「SoftBank World 2020」の講演の中から、DX推進のヒントを得られる5つのセッションをダイジェストで紹介する。

アフターコロナの消費者マインドや成長産業の動向、DXを進める際のポイント、DXを実践した最新の働き方や街づくりの事例などから、企業の進むべき方向が見えてくるかもしれない。

優れたエクスペリエンスこそがビジネスを成長させる

アクセンチュア株式会社 インタラクティブ本部 シニア・マネージャー 高尾 祥之 氏

高尾 祥之 氏

アクセンチュア株式会社
インタラクティブ本部
シニア・マネージャー

COVID-19は顧客体験や行動をどのように変化させたのでしょうか。アクセンチュアでは「5New Human Truths」を提言しています。

5New Human Truths SoftBank World 2020

1つ目は「信頼へのコスト」。コロナ禍において消費者は信頼できる情報やサービスに敏感になっています。企業は安心・安全の担保に力を注ぎ、ニューノーマルな顧客体験を通して消費者に信頼を伝えていくことが必要です。

2つ目は「バーチャルの時代」。ARやVRを含めてオンラインでできることはオンラインでするというバーチャルの時代が来ています。B to B、B to Cのマーケティングにも大きな変化をもたらしています。

3つ目は「全てがヘルスビジネスに」。コロナ禍を機に消費者は衛生面や健康に気を遣わなければならない状態になりました。また、企業は従業員へも健康ケアをすることが求められています。

4つ目は「家にこもる」。コロナ禍による大きな変化の1つが、顧客体験の中心が家になったことです。企業は、家における顧客体験に着目することが重要です。

そして、5つ目が「権威の再定義」。コロナ禍で行政の力が注目された一方で、企業が自主的に営業時間などの制限を設けて、消費者が買い物しやすくするといったことも行われています。

こうした中で、企業は商品やサービスをアウトプットするだけではなく、消費者の体験や自社の存在意義をどう定義するかがとても重要になってきます。

距離・場所という制約からの解放 SoftBank World 2020

では、消費者の購買行動が変わる中で企業はどう対応していくべきなのか。コロナ禍以前は職場や学校といった2nd Placeが中心でした。コロナ禍以後は家=1st Placeが中心となり、仕事や趣味などは1st Placeである家からデジタルとフィジカルのいずれかを選択するスタイルに変わった方も多いかと思います。これによってB to B、B to Cの垣根がなくなってきていると言えます。

バーチャル化におけるコミュニケーション構造 SoftBank World 2020

こうした中で、企業が開催するイベントはバーチャルにシフトしつつあり、今まで以上にプル型でのリード獲得が重要になります。特に重要なのが「1日の中で何を持ち帰っていただくのか?」です。体験・コンテンツ設計ともに、バーチャルイベントを単発で終わらせず、ウェビナーやインサイドセールスなどの「前後の導線」を通し 、顧客体験全体を設計して、お客さまの最適な導線を設計することが必要であると考えています。

また、講演では、ソフトバンク法人マーケティング副本部長の原田を交え同社とソフトバンクの取り組みも紹介されました。

DXによる新規事業創造を成功させるには

アクセンチュア株式会社 ビジネスコンサルティング本部 マネジング・ディレクター 吉井 雄太郎 氏

吉井 雄太郎 氏

アクセンチュア株式会社
ビジネスコンサルティング本部
マネジング・ディレクター

鴻池 大介

ソフトバンク株式会社
法人事業統括 デジタルトランスフォーメーション本部
第二ビジネスエンジニアリング 統括部
ヘルスケア事業推進部 部長

国内のヘルスケア市場は約90兆円、GDP比で15%に相当する巨大市場です。特に最近成長しているのが予防やセルフケアの領域で、新規事業を考える上で見逃せなくなってきています。予防領域のトレンドとしては、パーソナライズ化されたサプリメントやオンラインフィットネスなどが伸びています。

こうした中、ソフトバンクではヘルスケアテクノロジーズという会社を立ち上げ、2020年7月からオンライン健康医療相談サービス「HELPO」を法人・自治体向けに展開しています。

「HELPO」はスマホのチャットで医師や薬剤師に健康医療相談をできるほか、病院検索機能、一般薬やサプリメントなどを購入できるヘルスモールというEC機能を提供します。入口の相談部分から、出口の解決部分まで一気通貫にできることをコンセプトにしています。

ソフトバンクではDXの共通理念として共創を掲げています。利用企業のみならず、クリニックや病院の方も含めて、デジタルを活用してよりよい医療サービスやヘルスケアサービスを提供することを目指しています。

こうしたDXを成功させるためには、大きく3つのポイントがあります。1つ目は「カスタマーオリエンテッド」。事業目線はもちつつも、ユーザがどのように感じるかをサービス開発の起点に考えていきます。2つ目は「デジタルケイパビリティ」。DXを進めるにはいろいろなスキルを持つ人を集め、生かすことが必要です。3つ目は「オープンイノベーション」。自社のアセットを活用しながら、パートナーを巻き込んで共創することが求められます。

しかし、DXを実際に実現するためにはビジョンの壁、人材の壁、組織の壁が立ちはだかります。これらを乗り越えてDXを成功に導くポイントとして挙げられるのが4つの「P」=「Philosophy」「Process」「People」「Place」です。「HELPO」もこれらを実践することでDXヘルスケア事業の立ち上げにつながったと言えるでしょう。

ワークフローのニュースタンダード —VRの今・未来・現実—

株式会社日本HP クライアントソリューション本部<br>ソリューションビジネス部 ビジネスディベロップメントマネージャー 島﨑 さくら 氏

島﨑 さくら 氏

株式会社日本HP
クライアントソリューション本部
ソリューションビジネス部
ビジネスディベロップメントマネージャー

現在、建築・製造、トレーニング、医療分野などでVRが積極的に活用されています。建築・製造の領域ではモック作成をVRで代用したり、VR空間でプロジェクトメンバーと遠隔議論したりといった使われ方をしています。

なお、トレーニング領域では接客トレーニングや、再現が難しいリスクトレーニングに活用されることが多いです。医療分野では、救急救命や高難度な術式の取得などにVRが用いられています。

VRの活躍が期待される領域 SoftBank World 2020

ビジネスの生産性を向上させ、私たちの生活を安全で快適にするために、VRに求められる要素として、「リアリティ」「コンフォート」「プライスパーフォマンス」の3つが挙げられます。この3つが揃って初めて、VRの普及と有益なコンテンツの好循環が加速します。

日本HPが提供する最新のヘッドマウントディスプレイ「HP Reverb G2ヘッドセット」は、4K解像度により高いリアリティを実現します。瞳孔間距離の調整機能を搭載しており、快適にご使用いただくことができます。

HPのVRソリューション SoftBank World 2020

このほか、コンパクトなVR専用モバイル「HP ZBOOK CREATTE G7」、心拍や視線追跡、表情センシング「HP Reverb G2 Omnicept Edition」などのソリューションも提供しています。

VR導入に向けた情報収集や検討を開始している企業は多いですが、導入にはハードルがあります。例えば、「VRに関する知識や経験に基づく判断が求められる」「設置や運用の負担が多い」などが課題として挙げられます。こうした声に応えるために、日本HPではVRのスターターパッケージの提供を開始しました。

今後はあらゆる業種や業界でVRの活用が広がっていくでしょう。日本HPではハードウェアに留まらず多様なご提案をしていきたいと考えています。

テクノロジーで実現するエンタープライズ企業のDX

秋津 望歩 氏

秋津 望歩 氏

株式会社セールスフォース・ドットコム
マーケティング本部
プロダクトマーケティングマネージャー

諏訪 浩一 氏

株式会社LIFULL
LIFULL HOME’S事業本部
アカウントマーケティング部 部長

昨今の状況変化によって、企業は単なるデジタル化ではない真のデジタル変革を求められています。お客さまは欲しい情報をスマホで毎日集めており、お客さまの情報チャネルの広がりやスピードの速さに企業は追随しなければなりません。また、お客さまの対応をする従業員の方々にも変革が求められます。

しかし、DXに取り組む企業は多いものの、変革に成功した企業はごくわずかです。企業の DXを阻む壁として、組織ツール、そして費用の課題が挙げられます。

エンタープライズ企業のDXを阻むもの

こうした現実を乗り越えて営業のDXを実現したケースとして、LIFULLの取り組みをご紹介します。

LIFULLでは不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の運営する中で新規顧客獲得に力を入れていますが、営業組織には「商談がブラックボックス化」「営業プロセスが型化されていない」「メンバーがキャリアプランを描きづらい」といった3つの課題がありました。

1つ目の課題である商談のブラックボックス化を解決するために、インサイドセールスとクローザー(外勤)を分業化し、すべての商談を最低2名で案件共有できる運用体制にしました。また、Salasforceを有効活用するほか、リモート営業ツールを導入して録画や録音を残し、情報を可視化することで指導や振り返りがしやすい体制づくりも実施しました。 そして、2つ目の課題である営業プロセスを型化するために、商談フェーズの各フェーズにゴールや行動、フェーズ前進の基準をガイダンスとして設定しました。 最後に、3つ目の課題であるメンバーのキャリアプランが描きづらいという課題については、「my TRAILHEAD」を導入して新卒メンバーにリモートオンボーディングを設計しました。幅広いキャリアに触れられるコンテンツを用意し、早期の立ち上がりを支援しました。

LIFULLのDXを支えるテクノロジー

こうした取り組みの結果、新規顧客開拓に多くの人員を割いていた3年前と比較して、2.3倍の獲得目標を約半分の人員で達成。社員のエンゲージメントスコアもアップしました。

竹芝が未来都市に。東急不動産とソフトバンクが共創するスマートシティ

ソフトバンク株式会社 デジタルトランスフォーメーション本部 統括部長 宮城 匠

田中 敦典 氏

東急不動産株式会社
都市事業本部
スマートシティ推進室 室長

花野 修平 氏

東急不動産株式会社
都市事業本部
スマートシティ推進室 課長補佐

宮城 匠

ソフトバンク株式会社
デジタルトランスフォーメーション本部
統括部長

関 治

ソフトバンク株式会社
デジタルトランスフォーメーション本部
部長

東急不動産とソフトバンクが共創で推進している「東京ポートシティ竹芝」。2015年には国家戦略特区の第1号に認定されています。官民学地区連携によるにぎわいの創出、デジタル×コンテンツ産業拠点の形成、浜松町駅と竹芝ふ頭を結ぶ歩行者デッキを中心とした歩行者ネットワークの整備などを旗印として整備がスタートし、2020年9月に開業しました。

東京ポートシティ竹芝

東急不動産では、竹芝の街づくりを地元の皆さまと進めるエリアマネージメントをベースとして、デジタルやコンテンツ・テクノロジーを街づくりに活かし、社会課題の解決につなげていくことを目指しています。

まちづくり活動の展開イメージ

「東京ポートシティ竹芝」では、東急不動産による街のハード整備とソフトバンクによるテクノロジーを掛け合わせたスマートシティの取り組みを進めています。

スマートシティを推進するにあたり重要なのが、データの活用と人を中心に据えることの2点です。ソフトバンクではビルや街のデータを取得し、竹芝に住む人、働く人、訪れる人に「今必要な情報」を提供していくことを目指しています。

街にはさまざまなデータがありますが、事業者ごとにデータが分断されています。これらをリアルタイムで結合することによって、新しい価値をもたらすことができます。

スマートシティへの取り組み

ソフトバンク本社が入居するオフィスタワーでは、約1,000個のデバイスを設置して混雑状況や人流データなどを収集しています。これを元に、働く人や訪れる人にエレベーターやレストランなどの混雑情報を届けたり、リアルタイムでクーポンを配布したりします。また、テナント向けには、来店客の統計情報を提供していきます。

東急不動産とソフトバンクが竹芝で目指しているのは、遠い未来のスマートシティではなく、ユーザ目線で見たときにちょっと楽しい、ちょっと便利な未来です。そのためにも、さまざまなノウハウを持つパートナーと共創し、クイックに実装していくことが必要です。そして、竹芝の街づくりを加速させていきたいと考えています。

編集後記

「SoftBank World 2020」がオンライン開催されたように、コロナ禍の中であらゆる産業が急速にDX化している。企業は前例のない世界規模のDX化の流れに向き合わなければならない。これからの世界でどのように顧客体験を設計するのか、フラットな視点から考えなければならないだろう。