新しい「住まい」の文化を日本に。OYO LIFEがイノベーションを起こす3つの理由

新しい「住まい」の文化を日本に。OYO LIFEがイノベーションを起こす3つの理由

  • OYOLIFEは歴史的に貸主の力が強い日本の不動産業界に新たな選択肢を提案
  • 資金とエンジニアを有した挑戦者であることが日本での競合優位性
  • 生活に必要なあらゆるものがOYO PASSPORTで完結するように

インド発のグローバルホテルブランドOYO(オヨ)が日本に上陸し、家具家電付きの賃貸住宅を提供するサービス「OYO LIFE」をスタートさせたのが2019年3月。3月以降、都心を中心に順調に拡大を続けている。日本の不動産業界に新たな選択肢を提案する「OYO LIFE」の戦略とは。OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPANのCEOを務める勝瀬博則氏に話を聞いた。

勝瀬博則


OYO TECHNOLOGY & HOSPITALITY JAPAN CEO
1992年より米国大手事業会社にて通信、サーチエンジン、ヘルスケア事業を手掛け、2014年、Booking.comの日本統括マネジャーに就任。訪日客増加を強力に後押しし、Booking.comの日本事業を大きく成長させた。2017年よりhandy japan株式会社にてCEOを務める。2018年より現職。

ホテルのように、賃貸住宅もITで在庫管理する

——インドでホテル事業を手がけるOYOが、なぜ日本で賃貸住宅サービスを手がけることになったのですか?

勝瀬 まず、OYOはホテル会社だという固定観念を忘れてください。OYOは「自分たちはホテルの会社です」と一言も言っていません。OYOのミッションステートメントは「世界中の人々にクオリティリビングスペースを提供する」ことです。

クオリティリビングスペースには3つの条件があります。

1つ目は、良いロケーション。通勤に便利な場所だったり、自然が豊かな場所だったり、人それぞれ自分にとって良い場所に住みたいというニーズがあります。2つ目は、快適な環境。清潔である、広さがある、デザインが良いなどです。そして3つ目は、できるだけ安い価格で住みたいということ。

これら3つの条件は、国や時代が変わろうとも人々が住まいに求める原理原則です。しかし、実際は、何かを我慢して住まいを選んでいる人がたくさんいます。OYOは、こうした住まいに対する問題をIT、オペレーション、優秀な人材で解決しようとしている会社です。

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クオリティリビングスペースの原則を踏まえると、実はホテルと賃貸住宅に大きな差はありません。誰もができるだけ良い部屋に安く滞在したいと思っていますよね。ホテルと賃貸住宅の違いと言えるのは滞在期間ですが、ホテルに長期滞在するスタイルも広まっています。つまり、ホテルと賃貸住宅の垣根はなくなりつつあるんです。

——「ホテルと賃貸住宅に求められるものが同じ」ということは、ホテルと同じ仕組みが不動産業界でも使えると?

勝瀬 その通りです。ホテル業界はIT化が進んでいて、オンラインで在庫やプライスの管理が行われています。一方で、日本の不動産業界はいまだにアナログな部分が多い。我々は、ホテルで使っているITテクノロジーを用いて賃貸住宅の管理をすることで、古い不動産業界を変えていくことができると考えています。

今は賃貸物件紹介サイトで物件を調べることはできますが、オンラインで申し込みまではできませんよね。一度は不動産屋に行かなければならないし、時間を工面して足を運んだら「その物件はもうありません」と言われることもある。まったく在庫管理がされていないんです。

しかも、家賃10万円と記載されていても、敷金礼金、手数料などで50万円くらい払わなければいけないですし、住民票を用意したり、保証人を探したりと手間だらけです。電気ガス、インターネットなどの手配も全部自分で行いますよね。ユーザ体験としては決してうれしいものではありません。

同じ状況をホテルに当てはめて考えてみてください。予約したらダブルブッキングばかりで、記載している価格に手数料が追加されて、宿泊するまでに何度もやりとりをして、部屋に入ったらネットも水道も使えない——こんなのは、あり得ないですよね。

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住宅においては、歴史的に需要と供給のアンバランスがありました。戦後、人口がどんどん増える中で、家を貸す側のほうが立場が強かったんですね。だから礼金というシステムが生まれました。

しかし、これからは人口が減っていきます。日本の近代以降初めて、住宅が余る時代がやってきます。こうした転換期だからこそ、新しいビジネスをつくるチャンスがあるんです。

在庫過剰の状況では「ユーザーファースト」に徹する

——住宅供給過多となる時代に、いかに人を物件に集めて稼働させていくか。その解決法の1つがITを使った在庫のコントロールなんですね。

勝瀬 その通りです。ホテルでは在庫やニーズに応じて値段の上げ下げをしていますが、賃貸物件は一切コントロールされていません。「何もしなくても借りてもらえる」という発想のビジネスモデルなんです。しかし、供給過多の状態の場合、ユーザに選んでもらうための努力をしないと生き残れません。

賃貸住宅はほとんどが個人オーナーなので、ホテルのような大がかりな設備投資は難しい。そこで、OYO LIFEがパートナーとなって部屋に借り手が付くようバリューアップする。

「家具やWi-Fiを導入しましょう」「インターネットで手続きできるようにしましょう」「特典をつけましょう」と。もちろん、全部僕らOYO LIFEが手配します。OYO LIFEの基準で物件を管理することでサービスを一定に保てるので、ユーザからの信頼性が増し、稼働率が上がります。インドのホテル事業も同様の考え方で急成長しました。

——OYO LIFEは「住宅業界のAmazon」と表現していますよね。

勝瀬 OYO LIFEの仕組みはAmazonと同じです。Amazonで買える物はどこの店でも買えるものばかり。しかし、ユーザの利便性を徹底的に考え、他社と差別化しているのがAmazonの強みです。

インターネットで売れるものは、基本的に在庫があり余っていて競争が激しいもの。ユーザは簡単に買えて、すぐに届いて、リーズナブルものを選びます。賃貸住宅もこれからはそういう時代になっていくはずです。

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OYO LIFEが提供する物件は他社の賃貸物件と大きな差はありません。しかし、スマホだけで手続きが完了するという手軽さ、家具家電付きという便利さ、初期費用なしのわかりやすい価格表記で、「ユーザーファースト」のサービスを提供していく。そういう意味で「住宅業界のAmazon」と表現しています。

——競合企業が同じような仕組みでサービスをはじめた場合に、OYO LIFEが優位な点は?

勝瀬 単純にこのビジネスモデルを考えている人はすでにいると思います。しかし、実行するためには物件を借り上げる費用、家具家電の購入費用など多額の資金が必要です。そこはインド発のユニコーン・OYOグループの一員であるOYO LIFEの強みの1つと言えます。

また、OYOでは中国やインドの優秀なITエンジニアを1,000人以上雇用しています。「こういうサービスを作りたい」と伝えると彼らがものすごい速さで対応してくれる。日本で同じ規模でエンジニアを集めるのは正直かなり大変です。

あともう1つ、まったく他業界から進出している点が我々の最大の優位点です。既存の不動産会社や不動産情報サイトは現在の仕組みで大きな利益を得ています。その利益を捨てて新しい事業に挑むことは大企業にとって難しい判断になるでしょう。時代に最適化したサービスを一切のしがらみなく展開できる点が、我々の強みです。

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最終的には、僕らは日本で最大の大家さんになりたいと考えています。ユーザの利便性を追求すると、仲介ではなく、自分たちの判断でユーザのニーズにあった物件を提供できるのがベストですから。

「家」は重要な販売プラットフォームになる

——OYO LIFEの入居者に向けて、50種類以上のサブスクリプションサービスを利用できるOYO PASSPORTを提供していますよね。

勝瀬 OYO PASSPORTでは、洋服や家具のレンタル、家事代行などのサブスクリプションサービスを提供しています。提携企業はどんどん増えていて、初月利用が無料になっているサービスも多く、入居者にサブスクリプションサービスを気軽に体験していただくことが可能です。

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今、多くの人がインターネットを使って自宅で好きな時間に買い物をしますよね。1日の1/3の時間を過ごす家は、今後ますます人々の購買行動の中心になり、販売のプラットフォームとして重要な存在になっていくはずです。しかし、まだここを押さえられている企業はほとんどありません。OYO PASSPORTは家の中における消費者とのタッチポイントとしての立ち位置を目指していきたいと考えています。

——将来的には、生活に必要なあらゆるサービスがOYO PASSPORTで完結する日も?

勝瀬 そうですね。例えば、動画配信サービスやスマートスピーカーなどを部屋に導入して、家賃と一括で支払いをする、あるいはホテルのチェックアウトのように退室時に一括で支払うというサービスも考えられます。入居者の利用料金に応じて、大家さんに数%のマージンを払うことも可能になるかもしれません。

なぜこれができるかというと、OYO LIFEでは家賃をクレジットカード払いにしており、言い換えれば毎月の収入の3割の支払いをするクレジットカード情報を持てるからです。しかも、入居審査を経ているため、住所はもちろん、入居者のこまかな属性まで把握できます。これだけ重いファイナンスを押さえられるというのは、大きなアドバンテージになります。

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そう考えると、OYO PASSPORTは究極のサブスクリプションになる可能性を秘めています。支払いの入り口を押さえて、住むというアクションが伴い、ユーザに時間を使ってもらうことができる。

「所有からシェアに」というシェアリングエコノミーに対する考え方、さらには生活習慣にまで影響を与えるかもしれません。

我々のサービスはOYO LIVINGでもOYO HOMEでもありません。ファイナンス含めて、生き方が変わる。そんなサービスを提供していくという考えからOYO LIFEと名付けました。今後はそれを実現するサービス展開を目指していきます。

社宅に自由を。法人向けサービス「OYO LIFE Biz」がスタート

——6月から新たに、法人向けのサービスOYO LIFE Bizが始まりました。

勝瀬 OYO LIFE BizはOYO LIFEの物件を社宅として提供するサービスです。会社の福利厚生の一貫として社宅を提供したい、しかし、一棟借り上げるのはリスクが大きい。

その点、OYO LIFEの物件だったら必要なときに、必要な数だけ借りることができて、手続きが簡単です。また、社員にとっても、好きなエリアに好きなタイミングで住むことができます。

外国人雇用を考えている企業にとっても、手軽に利用していただけるサービスです。我々はクレジットカードにチャージをするので、大家さんにとっては未払いのリスクがありません。

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——目下物件を拡大中とのことですが、直近ではどんなターゲットにアプローチしていく考えですか?

勝瀬 やはりサブスクリプションサービスを支持してくれるのは若い単身者の方が多く、比較的賃料が安めの1Kや1DKのニーズが高いんです。現在は、20㎡〜25㎡くらいの部屋を多く仕入れています。エリアとしてはこれまでは都心9区を中心としていましたが、今後は1都3県まで拡充していきます。

地方のオーナー様からのお問い合わせも増えているので、今後は地方展開も考えています。将来的には、500万室を目指したいですね。

■後記

OYO LIFE

テクノロジーの進化がもたらす波は、日本の不動産業界にも達しようとしている。ホテルと住宅の境はなくなり、不動産仲介業者も、敷礼金のような古い慣習も、全てを押し流そうとしている。 Amazonがそうであったように、ITの時代においてユーザーファーストであると一度認められたサービスは、加速度的にブレイクスルーを果たし、その業界の覇権を握ることになる。 OYO LIFEが示す合理性は、日本の不動産業界の商慣習を、そして日本人の住まいへの既成概念を覆すことができるのか。今後の動向を注視したい。

OYO LIFEの入居体験記事はこちら

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