Future Stride

副社長直伝。ソフトバンク「新規事業創造」のリアル

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その成長においてとどまることを知らない、ソフトバンクの新規事業。

その新規事業を牽引してきたのが、「IT × 広告」による「ウルトラ集客」といったデジタル広告事業の立ち上げ等にも携わり、ソフトバンクの成長を牽引してきたソフトバンク代表取締役 副社長執行役員 兼 COOの今井康之氏だ。

今井氏は2000年、孫正義氏に誘いを受けソフトバンクグループに参画して以来、主に法人営業部隊を統率。

現在はソフトバンクの更なる成長を実現するために、ソフトバンクグループ投資先の日本における事業展開や既存事業のデジタルトランスフォーメーション、新規事業の創出を担っている。

今井氏が「劇的成長を支える、ソフトバンクの新規事業創造現場」について語った。

※本記事は「UZABASE CONFERENCE 2018」のセッション「劇的成長を支える、ソフトバンクの新規事業創造現場」を再構成したものです。

ソフトバンクの事業変遷

今井:

ソフトバンクにおいて新規事業とは何なのか。

かつてソフトバンクはパソコン用ソフトウェアの販売代理店でしたが、私が2000年に入社したあとにブロードバンド事業を開始しました。

最近ではロボット、AI、IoTに加え、自動運転やライドシェアなどもスタートさせています。

その意味では、もともと新規事業を行ってきたというか、常に新しい事業を手がけているのがソフトバンクです。

ところが新規事業を行うと、世間からはつねに疑念の声が寄せられます。ソフトウェアの販売代理店がある日突然、ブロードバンド事業に参入したわけです。

実を言うとブロードバンド事業は、4年間赤字で、一番多くて1,000億円近い赤字を出した年もありました。

その年の株主総会では、会社の状況報告を約1時間行った後、孫会長が約2時間にわたり、「この事業をどう展開するのか」「次の事業をどう行っていくのか」といったことについて説明し、質疑応答を行っています。

当時、株主様からは直近の業績について厳しいご意見やお叱りはなく、「次はこういう時代が来る」というメッセージに耳を傾けていただきました。

今井 康之/ソフトバンク株式会社 代表取締役 副社長執行役員 兼 COO
鹿島建設株式会社を経て、2000年 ソフトバンク株式会社(現ソフトバンクグループ株式会社)入社。ソフトバンクグループ各社で、主に法人営業を担当。2009年 ソフトバンクテレコム株式会社(現ソフトバンク株式会社)取締役常務執行役員、2015年 ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)専務取締役などを歴任し、2017年4月より現職。
 

その結果、(Yahoo! BBは)実際に約35パーセントの国内シェアを取れる事業体に成長していったのです。

それが落ちつき、固定電話サービスの「おとくライン」をスタートしました。日本では、それまで約100年間、固定電話の基本料金が下がったことがありませんでした。

そこにわれわれが食い込んでいったのですが、いろいろな面で苦労しました。

それでも「直収サービス(NTTの回線を借りて、NTT以外の通信事業者が直接顧客に回線を提供するサービス)」というカテゴリーでは約94パーセントのシェアを獲得し、NTTさんとソフトバンクで法人向けの固定回線を分け合う形になっています。

そして、ご存じのように2兆円を超える金額でボーダフォンの買収を行ったのですが、MNP(携帯電話番号ポータビリティー)サービスの開始を間近に控え、ボーダフォンのお客さまがすべて他の2キャリアに移るだろうと言われていた時に買収が完了したので、「1兆円をドブに捨てたのと同じ」だと言われました。

そしてその後、携帯電話の契約純増数でトップを取り始めて10カ月ほど経ってから、iPhone の取り扱いをスタートさせました。

スティーブ・ジョブズ氏と孫会長との間の話がまとまり、われわれ1社で約3年間、iPhone を独占できたのです。

最初は、日本では iPhone は売れないと言われていましたが、ご存じのように、今や日本における iPhone のシェアは、世界の中でも際立って高くなっています。

その意味でソフトバンクの新規事業はブロードバンドに始まり、固定電話、携帯電話、iPhone と順調に推移し、収益も右肩上がりで伸びていきました。それにともない企業規模も拡大していったのです。

(写真:David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images)

新規事業の「転換期」を迎えた

今井:

そして直近の話では、2017年からソフトバンクは新規事業の「転換期」を迎えています。

世界でナンバー・ワンになる可能性のあるテクノロジー企業を、まずはソフトバンクグループが選定して投資を行い、ソフトバンクがJVを設立し、投資先企業の最先端テクノロジーを日本国内にも展開するという取り組みを進めています。

すでにロボット分野、QR決済等については事業がスタートしました。

例えば皆様もご存じの通り、コワーキングスペースの「WeWork」は各地の拠点で入居が始まっていますし、バク宙するロボットでも知られる「Boston Dynamics」のロボットは、大手建設企業の現場での実証実験を実施しています。

「Brain Corp」のAI清掃ロボットも発売されました。ビル内の地図をマッピングしたデータをもとに、構内を巡回して清掃することはもちろん、棚をチェックするといった作業が、同社のAIテクノロジーで実現しています。

あとは2018年の7月に発表した「DiDi(滴滴出行)」ですね。同社は中国のタクシー配車サービスで圧倒的なシェアを持っています。

「Nauto」は、タクシーに限らず、業務用車両の内外の映像をAIで分析し、事故の発生リスクが高くなる場面でアラームが鳴るといったサービスを開発しています。これも日本企業で採用が決まりました。

経営者視点と現場視点

今井:

ソフトバンクがこれまで新規事業をどのようにして成功に導いてきたかについて言うと、経営者視点と現場視点という2つの側面があると思います。

まず経営者視点について言いますと、ビジョンを描き、それを発信し続けることが、経営者に欠かせない条件。孫会長は「情報革命で人々を幸せに」という経営理念を、社員、株主、パートナーにきちんと伝えていく作業を、常日頃から行っています。

株主総会で孫会長が約2時間にわたり、株主の皆様に「この事業をどう展開するのか」「次の事業をどう行っていくのか」について説明し、質疑応答を行っていることについては先にも述べました。

ソフトバンクではまた、従業員満足度調査「ESサーベイ」を行い、経営理念の部分で社員からの共感を得ているか、本当に自分たちの思いが社員たちに伝わっているかどうかをチェックしています。

というのも、日本企業の組織はピラミッド型になっているので、トップが熱い思いを伝えても、それが部課長クラスに降りてくると、ずいぶん冷めた話になるのです。

一方、社員たちは(現場で)お客さまの声に接しながら、「こうしなければならない」「ああしなければならない」と常に思っていますが、それがトップに伝わるまでのあいだに、悪い話が抜け落ちて、良い話だけになってしまうことが数多くあるのです。

そこでソフトバンクは、フラットな環境でトップと情報共有することに力を入れているわけです。

次に現場視点ですが、3つの重要なポイントがあります。

1つ目は新しいサービスやツールを、どこよりも早く、社員自らが徹底的に使い倒すこと。例えば、2008年にソフトバンクの全社員に iPhone 、iPad を配布しました。そして、それらを活用しながら、数ある業務の不具合などを徹底的に潰していったのです。

また Google のビジネスツール「 G Suite 」も全社員に配布しました。社内からは様々な賛否がありましたが、われわれがトラブルも含めて体験し、それをクリアしていったものだけがソフトバンクの販売する商品になります。

そうなると、その商品を提供する際、お客さまが導入の際にどんな動きをするかが最初から予想できる部分があるわけです。RPAソリューションの「SynchRoid(シンクロイド)」もそうです。

2つ目は、成功モデルを一気に横展開すること。「これが成功する」と見込んで事業を興す場合もありますが、ソフトバンクの場合は必ずスモールスタートをします。小さな規模で実証実験を行いながら、数字として確証が得られたものだけを一気に横展開するのです。

3つ目は、停滞期を見越した対策。どんなビジネスでも、右肩上がりの成長を遂げたあとに必ず「踊り場」がやってきます。停滞期に入る前に次のアクションを行わなければ、また次に上がれません。

そこで「踊り場」を迎えた時に備え、いかに差別化要素を作っていくか、また、そのための組織をどう作っていくかが一番重要なのです。

ビジネスモデルの内製化にこだわる

今井:

そうした取り組みの1つとして、私は2017年秋に「デジタルトランスフォーメーション本部(DX本部)」という新たな部署を作りました。既存の営業部門から期中にメンバーを引き抜きスタートした総勢120名の精鋭軍団です。

DX本部のミッションは、今、様々なテクノロジーが急速に発展しているなかで、社会貢献につながり、パートナーと組んで一緒に行える事業を創り上げること。つまり共創です。

(写真:metamorworks/istock.com)
 

もう1つのミッションは、キャリアとしてのソフトバンクの枠を超え、次の時代を担うビジネスモデルを仕上げていくこと。

そうは言いながらも、DX本部の120名は、既存のビジネスで販売に非常に長けてはいても、ビジネスモデルを作り、それを事業として成功させた経験のある人がいたわけではありません。

普通の会社なら「コンサルティング会社などに提案をお願いしてはどうでしょうか」という話になると思いますが、自分の経験を踏まえ、どんなビジネスを作り上げるのかということを、自ら捉えて体感し、実際の形に仕上げていかなければ、絶対に成功しません。

ソフトバンクでは今までもずっとそうでしたが、ビジネスモデルの内製化にこだわりました。

そして、約400件のビジネスアイデアを集めることができましたが、そのうちビジネスモデルが成立しているのは35件。今、事業としてローンチしているのが2パーセント程度です。

ただ、そこで失敗がいくつも繰り返されることで、メンバーは大きく育ち、意識や物の考え方が変わってきたと思います。

その結果、様々なパートナーと多数の新規事業をスタートさせることができました。

以上、足早にお伝えしましたが、新規事業を成功に導く鍵は、経営者としてはビジョンを語り続け、発信し続けること。

一方、現場としては、ツールやサービスを自ら使い倒し、ビジネスモデルができた段階で一気に横展開すること。

そして、必ずやってくる停滞期を見越した対応策を事前に作りあげていくということだと思います。

(構成:加賀谷貢樹、写真:是枝右恭)

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