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MONETが日本連合で目指す、MaaSプラットフォーム戦略とは

MONETサミット講演レポート 前編

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2018年10月4日、トヨタ自動車とソフトバンクが設立を発表したMONET Technologies株式会社(モネ・テクノロジーズ)。同社は交通事業者が提供するモビリティを「1つのサービス」として提供し、ユーザにシームレスな移動体験をもたらす未来の交通概念「MaaS」(Mobility as a service)」事業を開始した。

発表からおよそ半年が経過した2019年3月28日、東京・六本木のグランドハイアット東京において、同社が主催する「MONETサミット」が開催された。代表取締役社長 兼 CEO・宮川潤一氏は、この日集まった全国の自治体・企業の関係者約600名(自治体220名・企業360名)に向け、「MONETプラットフォーム」の現状、そして今後の展開を語った。

前編では宮川氏のセッションの内容を紹介し、後編ではその他のセッションと展示の内容をダイジェストでお伝えしたい。

MONETプラットフォームで実現する「3本柱」

MONETサミットの最初のセッションに登壇したのは、MONET Technologies 代表取締役社長 兼 CEOの宮川潤一氏。そのセッションの冒頭、サプライズゲストとして、MONET Technologiesを共同で設立したトヨタ自動車株式会社の代表取締役社長 豊田章男氏が登場。

来場者から万雷の拍手で迎えられた豊田氏は、MaaS時代に向けたMONET Technologiesのオープンな取り組みに期待を寄せた。その後、宮川氏は「MONETプラットフォーム」が実現する社会の解説を行った。

MONET Technologies株式会社(モネ・テクノロジーズ)
代表取締役社長 兼 CEO
(ソフトバンク株式会社 代表取締役 副社長執行役員 兼 CTO)
宮川潤一

「1900年頃、アメリカ・ニューヨーク五番街には馬車が走っていました。そのたった13年後、馬車だらけだった道路は自動車だらけの道路に変貌しています。これを現在に置き換えてみてください。今から4年後の2023年以降には、自動運転車『e-Palette』が日本の道路を走っていることでしょう。

ではさらにその先の今から20年後、いったいどんな社会になっているのでしょうか。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)はデジタルプラットフォーマーとして『インターネット』の世界の覇者となりましたが、最近ではさらに『MaaS』の時代が始まっています。我々MONETはそんなMaaS以降の世界におけるプラットフォーマーになりたいと考えています」

MaaSとは「Mobility as a Service」——「1つのサービスとしてのモビリティ」を指す。近年は乗り捨て可能なカーシェアあるいはサイクルシェアサービスの認知が進んでいるが、MaaSの世界では移動手段単体の利便性向上ではなく、鉄道・バス・自転車・タクシーなど、複数の交通手段がシームレスにつながったサービスの提供を目指す。MaaSの実現により私たちの目的地までの移動は、ほとんどストレスのかからないものへと進化する。

2018年10月4日、トヨタ自動車とソフトバンクが共同設立を発表したMONET TechnologiesではMaaS事業の実現のため、トヨタ自動車のコネクティッドカー情報基盤「モビリティサービスプラットフォーム(MSPF)」とソフトバンクの「IoTプラットフォーム」を連携させる試みに取り組んでいる。その一環として、相乗り可能なオンデマンドバスの配車予約の実証実験を、「MONETプラットフォーム」を用いて各地で行っている。トヨタ自動車は将来像としてMaaS専用の自動運転車『e-Palette』にさまざまなサービスを付帯させた「e-Palette Concept」も発表している。

宮川氏はそんなMaaS構想を実現するのに不可欠な「MONETプラットフォーム」の概念を説明する。

「サービサー(コンビニ、宅配、スーパー、医療など)の方々と連携を図りながら、自動車メーカや運輸会社の持つMaaSデータとも接続する——それが『MONETプラットフォーム』です。当社はそのプラットフォームにおいて、データを上手に取り扱い、かつ、異業種の方々をつなぐ『プラットフォーマー』として存在します。

今現在でも我々は、車体情報・走行情報・車内情報・搭載カメラ情報など、170以上の車両ログをデータとして集約し、それらを『MONETプラットフォーム』で共有しています。さらに、サービスAPIを通じてトヨタ自動車、ソフトバンク、Yahoo!など、他のプラットフォームからも接続可能な状態を形成しています」

ではMaaS総合データベースは、日本社会に何をもたらすのか。宮川氏はMaaS戦略の3本柱として「既存交通の高度化(マルチモーダル)」「新たなライフスタイルの創出(マルチサービス)」「社会全体の最適化(スマートシティ)」を挙げる。

これら3本柱の実現により、『MONETプラットフォーム』では既存モビリティの交通事業者どうしの連携を図れ、その結果ユーザは複数の交通手段を柔軟に組み合わせながら移動の高度化・効率化を享受することができる。

同じプラットフォーム上ではサービサーも連携し、交通事業者とサービサー、あるいはサービサーどうしの共創によって新規需要に応じた新たなサービスを創出する。さらには駐車場の空き状況など、まちのインフラ情報を組み合わせれば、まち全体としての最適化も図れるという。

宮川氏はそうした新しい社会的価値について述べたうえで「MaaSがこの先、爆発的に普及する鍵は、自動運転車『e-Palette』である」と提言する。

さらには「自動運転車が社会的に受け容れられるような素地づくり」として、「2018年度からスタートした自治体とのオンデマンドバス実証実験に続き、2019年度からは既存車両に『サービス』を積み込んだサービスカーの実証実験も始める」と話す。

データ融合とデマンド理解を促進する

その後宮川氏は、MssS実現に向けて同社が必要だと考える「4つのキーファクター」——「さまざまなデータとの融合」「デマンドの理解」「自治体連携・まちづくり」「サービスの共創」——を挙げながら、MaaS戦略の展望に関する説明を行った。

まずは1番目「さまざまなデータとの融合」だ。

「『MONETプラットフォーム』では大量の車両データを吸い上げます。そこに既存の人流データ、移動データ、人口分布データ、車両位置データ、交通渋滞データなどの外部データを掛け合わせて、データの価値化を図ります。例えば、人がどこから来て、どこに向かうかといった需要予測ができる『起点終点情報』、観光施策などにも活用できる『リアルタイム降水情報』、まちなかの混雑状況を見る『人口密度情報』などです。

いずれにしても、最も大事なのは『日本特有の交通環境をデータ化する』という視点です。これから海外のプラットフォーマーも日本に進出してくるかもしれませんが、我々は日本の道路を一番よく知っているMaaSプラットフォーマーでありたいと考えています。

いつも停車時間の長い横断歩道があれば高齢者が多く通る道路であると予測する。車がゆっくりと走っていればそこが通学路だと認識する……。そうした移動速度やセンサーデータを統合したAI解析も『MONETプラットフォーム』で行っていきたい」

2番目に挙げた「デマンド(利用者の環境)の理解」についても次のように述べた。

「例えば乗り合い車両の予約サービスの予約者のなかには、車イスに乗っていて介助を必要とする人がいるかもしれません。子どもが急に熱を出してすぐに病院に連れていきたい母親と、定期検診で病院に行きたい人の緊急度合いも違います。予約者がインフルエンザならば、他の利用者への感染を防止しなければいけません。

MONETは補助の要否、緊急性や利用動機に対するプライオリティ、感染症対策などを考えることのできる、頭脳を持ったプラットフォームの構築を目指しています」

自治体連携で加速する日本のスマートシティ化

3番目の「自治体連携・まちづくり」では、2019年2月に発表された「次世代のオンデマンドモビリティサービスの提供に向けた17自治体との連携」の展望を語った。

「今年2月に発表した全国17自治体との連携に加え、約150の自治体とも話を始めています。各自治体には当社のシステムエンジニアがお伺いし、自治体に応じたMaaSを検討すべく、MONETに対するご要望・課題をヒアリングしています。もともと3年間で100自治体を見込んでいましたが、想定以上のお問い合わせをいただいたため、予算拡大も検討しています」

自治体からはどのようなご要望があがっているのか。

「例えば自治体のご要望に応じたサービスカーとしては『地域のアンテナショップとなる移動物産店』『イベント開催時の移動トイレや移動喫煙室』といったアイデアが生まれています。このほかにも都市と地方の新たなモビリティサービスに向けて、データ連携の推進、キャッシュレス、スマートシティ、新物流システム、新交通システムなどのニーズにお応えしたいと考えています」

宮川氏はこれに関連する付帯的サービスとして「一貫した決済システムでMaaSを推進する」と決済サービスとの連携についても解説する。

「それは、ルート検索・予約をしたときから始まる一連の決済システムです。主要交通手段である一次交通、さらにはその先の二次交通、三次交通まで、すべての交通手段をまたぎながら一括予約・一括決済ができるようになれば、料金定額化にも可能性が拡がります。

そうしてモビリティの高効率化が進めば、公共交通の利用機会が増えるだけでなく、インバウンドの移動最適化、排気ガス低減、渋滞解消などが進み、日本のスマートシティ化も実現できます。免許返納者が増加する昨今の社会状況を踏まえれば、高齢者の外出機会創出にも寄与できるでしょう。

フィンランドでのMaaSプラットフォームの成功事例として知られる『Whim』(ウィム)のようなサービスを日本でも展開していけるよう、自治体との実証をこれからも繰り返していきます」

サービスの共創——コンソーシアム設立、日野・Hondaとの業務提携

最後は4番目の「サービスの共創」。MONETサミットが開かれた3月28日、MONET Tehcnologiesは新たな共創の取り組みを2つ発表している。宮川氏はそれらの取り組みについて解説した。

「冒頭に申し上げた通り、『MONETプラットフォーム』ではコンビニ、宅配、スーパー、医療などの『サービサー』の方々との連携が不可欠です。MaaSの世界でどんなビジネスが社会から求められるのか、正直我々もすべてを予見できているわけではありません。

だからこそ、このたび『MONETコンソーシアム』を設立し、次世代モビリティサービスの推進に向けた『なかまづくり』として、業界・業種の垣根を越えた企業間連携を推進していきたいと考えています」

コンソーシアムの主な活動内容は、ビジネスマッチングを通じた事業開発(事業企画、API企画、車両企画)と、MaaS普及に向けた環境整備(勉強会、情報交換会、提言活動)。この日現在で88社の企業が参画している。コンソーシアム参画企業の募集にあたり「当初は50社程度を見込んでいた」というが、想定を超える企業から参加の要望があり、今後も「上限は設けない」と宮川氏は話す。

(参考)MONETコンソーシアム設立

そして、この日リリースされたもう1つのニュースが「日野自動車およびHondaとの資本・業務提携」。これは「MaaS事業の価値向上とモビリティサービスユーザへのサービス向上」を目的としたものであり、両社はそれぞれMONET Technologiesに2億4,995万円を出資する。今後はソフトバンク、トヨタ自動車を含めた4社がMONET Technologiesの株主となる。

「トヨタ自動車だけで170以上のログが集約されていましたが、複数の自動車メーカと共創することで、『MONETプラットフォーム』は今よりもっと『賢く』なるでしょう。日本の道路を走行する車両すべてのログを『MONETプラットフォーム』に集約する、それこそが我々の最終目標であり、さらなる日本企業の参画によって『日本連合』を形成していきたい」

(参考)日野自動車およびHondaと資本・業務提携

最後に宮川氏は次のようにセッションを締めくくった。

「誰もがより自由に、そしてより快適に移動できる。モノの移動が究極的に効率化される。そして、誰も予想もしていなかった新しいサービスが生まれる——それがMONETのつくりたい社会です。

本日、このサミットには大勢の企業・自治体関係者様にお集まりいただきました。企業・自治体が持つさまざまなデータやモビリティに関する情報を連携させ、新しい時代をつくりましょう。そして日本の英知を結集し、MONETを『世界』へ展開していきたいです」

後記

あらゆる交通事業者によるモビリティサービスをネットワークで1つにつなぎ、シームレスな移動体験を提供するMaaS。MONET Technologiesが示した道筋は、各企業・自治体との連携による「日本連合」で、日本独自のMaaSプラットフォームをつくりあげるというものだ。各企業・自治体とどのような取り組みを行っていくのか。詳細を後編で紹介していく。

■関連リンク

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MaaSとは
~ソフトバンク独自調査から見る拡がり〜

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