車が必要なのに乗れない人を救う IoT×AIが実現した新たな自動車サービス

2026.3

車が必要なのに乗れない人を救う
IoT×AIが実現した新たな自動車サービス

本導入事例は、ASCII.jp(株式会社角川アスキー総合研究所)に掲載された記事をもとに、ソフトバンクにて一部箇所を追記の上、再編集したものです。元記事:https://ascii.jp/elem/000/004/370/4370689/ 文:大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

概要

従来の自動車ローンやリースの与信審査に通らない人々に対して、車の利用機会を提供する新たなサービスが注目を集めている。

IDOM CaaS Technologyが展開する「ノレル(NOREL)」は、IoTデータ分析も含む独自の与信スキームによって、これまで「審査落ち」で車をあきらめていた人々にマイカーライフを提供する革新的なサービスだ。2022年のスタートからおよそ3年間で、すでに5万人以上が利用している。

このサービスを実現するうえで欠かせなかったのが、TTSが開発するIoTデバイスであり、ソフトバンクがアジア太平洋地域で独占販売パートナーとして取り扱うIoT向け通信サービス「1NCE(ワンス) IoTフラットレート」である。IDOM CaaS Technologyの中津川賢人氏と東海林知貴氏、そしてIoTデバイスを提供するTTSの小海悟士氏に、このサービスの仕組みや社会的意義について詳しく話をうかがった。

課題

  • TTSでは車載IoTデバイスの通信費を自社負担しており、回線コストの高さや月額費用の変動がサービス提供の制約となっていた。
  • TTSでは出荷前の通信検査を実施しているが、月額課金型SIMでは検査時から基本料が発生し、事前検査や在庫確保ができなかった。
  • 1NCEの低価格かつプリペイド型SIMにより通信費を抑えつつコスト変動をなくし、料金を抑えた提供が可能になった。
  • 基本料不要の1NCEにより事前検査時のコストが発生せず、在庫確保と計画的な出荷対応が可能になった。

導入サービス

目次
「1NCEならば、そもそも回線コストが安いですし、毎月のコストが変動することがありませんから、ご提供する料金を抑えることができます」
TTS 代表取締役 CEO/田中電気 モビリティ事業部 事業部長 小海 悟士氏

「乗りたい、を叶える。乗れない、をなくす。」新しい自動車サービス

IDOM CaaS Technology(以下、ICT)は、中古車流通大手の「ガリバー」を運営するIDOMから2020年に分社した、IDOMのグループ会社だ。社名に“CaaS(Car-as-a-Service)”とあるとおり、レンタカーやカーリースといった「車を利用する」領域のサービス事業を展開している。

ただし、ICTの立ち位置は、旧来のレンタカー会社や自動車リース会社とはかなり異なる。同社でテクノロジー全般を管掌する中津川氏は、ICTは「AIやデータを活用する領域」に強みを持つのが特徴だと説明する。

「もちろん、ガリバー譲りのお客さまに寄り添う営業・カスタマーサポート力、中古車両を扱うオペレーション力といった強みもありますが、それに加えて特徴的なのは『AIやデータ活用領域』の強みです。自社内にエンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャー、さらにデータサイエンスのチームがあり、AIモデル(機械学習モデル)の開発も自社で行っています。わたしたちはデータやテクノロジーを活用することで、過去の“信用”ではなく、いま目の前にいるお客さまを“信頼”できる根拠をどのように見つけていくかを追求し続けています」(ICT 中津川氏)

IDOM CaaS Technology Fintech開発部 部長の中津川賢人氏 IDOM CaaS Technology Fintech開発部 部長の中津川賢人氏

こうしたICTならではの特徴がよく表れているのが、同社が提供する月額カーライフサービスの「ノレル」だ。

「乗りたい、を叶える。乗れない、をなくす。」というコンセプトを掲げるノレルでは、従来のローン/リース審査に通らない人でも“車に乗れる”ように、独自のスコアリングに基づく与信スキームを開発し、幅広いユーザーに車の利用機会を提供している。

実は、2016年にスタートした当初、ノレルは“サブスク型の車乗り換え放題サービス”だった。しかし、そのサービスを提供する中で従来のローン/リース審査が抱える課題に気づき、サービス内容を大きく転換することにしたと、ICTでマーケティングを担当する東海林知貴氏は説明する。

「たとえば転職されたばかりの方、フリーランスの方、過去に病気やケガで働けない時期があった方、外国人の方など、従来のローンやリースの審査に通りにくい方がいらっしゃいます。お仕事や生活で車が必需品であっても、審査が通らなければあきらめるしかない。そのように困っている方が増えていることに気づき、ノレルは2021年に現在のサービスへと拡大しました」(ICT 東海林氏)

従来のローン/リース審査では、審査結果が「通る/通らない」の二通りしかなかったため、「貸し倒れリスク」には慎重にならざるを得ず、審査に通らないケースが多かった。この問題を解決するため、ノレルでは細かな指標に基づく貸し倒れリスクのスコアリングを行い、このスコアに応じてサービスを提供している。

「スコアを算定した結果、一定以上のスコアがある(=貸し倒れリスクの低い)方は、新車リース、中古車リース、レンタカーと、すべてのプランからお選びいただけます。一方で、スコアがそこに達していない方は、そのスコアに応じて中古車リースやレンタカーからスタートしていただく、といった仕組みです。ただし、何年も継続して問題なくノレルをご利用いただければ、スコアもアップしていき、やがては新車リースもご利用いただけるようになります」(ICT 東海林氏)

IDOM CaaS Technology 営業推進部 プレイングマネージャーの東海林知貴氏 IDOM CaaS Technology 営業推進部 プレイングマネージャーの東海林知貴氏
images(align-center)
与信審査結果を「スコア化」することで、誰もが何らかの形で“車に乗れる”を実現している 与信審査結果を「スコア化」することで、誰もが何らかの形で“車に乗れる”を実現している(画像出典:ノレル Webサイト

こうした独自の仕組みによって、ノレルではこれまで5万人以上の“車に乗れる”を実現してきた。実際に、ノレル利用者のおよそ6割が、従来のローン/リース審査では通らなかった人だという。そのほか、初期費用がかからないこと、車検などのメンテナンス費用が毎月のコストに組み込まれ平準化されること、問い合わせから電子契約、納車まで“スマホひとつで完結”する手軽さなども、ノレルが利用者から評価されているポイントだ。

車載IoTの位置情報データ分析で「リスクを可能性に変える」

上述したノレルのスコアリングでは、職業や収入、経済状況、家族構成といった静的な属性情報(デモグラフィックデータ)だけでなく、サービスの継続利用状況、問い合わせ時のやりとり、さらに車両IoTデータといった多様なデータを細かく分析している。こうしたビッグデータ分析によって、従来の一般的なローン/リース審査よりも詳細にリスクを分析し、審査通過のハードルを引き下げているのだ。

「たとえば、これまでの審査では『業種』という大きな枠でひとくくりにされてきた方も、お仕事内容をより細かに見ていくと性質が異なるケースがあります。このように、お客さまデータのより正確な分析を行って“解像度”を高め、お支払いが完了できる、つまり相互に信頼し合えるお客さまであることをデータやAIで裏付けることで、より多くのお客さまの“車に乗れる”が実現できます」(ICT 中津川氏)

ノレルを通じて提供する車には、利用者の同意を得た上で、位置情報を継続的に収集するIoTデバイスが搭載されている。ここから得られる行動データも、スコアリングの重要な要素になっているという。

「位置情報から車の利用状況を分析することで、スコアリングに活用しています。例えば、毎日同じ時間帯に自宅と職場を往復する運転がメインの方は、支払能力が高く(貸倒れリスクが低く)、きちんとお支払いいただける確率が高い。一方で、深夜にランダムな場所へ出かけることが多い方は、リスクが高い。車の位置情報だけでも、そうした行動データとリスク傾向が読み取れます」(ICT 中津川氏)

ノレルが採用する車載IoTデバイスは、これまでも車載IoTデバイスの受託開発を多く手がけてきたTTS製だ。TTSのCEOを務める小海氏は、ノレル向けに開発した今回のデバイスは、「位置情報の取得/送信」機能に特化したことでコストを大幅に抑えられ、なおかつどんな車種にも簡単に取り付けることができると説明する。

「これまでは、カーリース会社様向けに、支払いが滞った場合に遠隔制御でエンジンがかからないようにする車載デバイスを開発していました。しかし、エンジン回路と接続しなければならないので取り付けに時間がかかり、デバイスのコストも高くなります。一方、今回のノレルの場合は、位置情報の取得だけができればよいので、電源につなぐだけで稼働するシンプルなデバイスになりました。どんな車種でも取り付けられますし、デバイスそのもののコストも従来の6分の1程度と、大幅に抑えられました」(TTS 小海氏)

TTS 代表取締役 CEO/田中電気 モビリティ事業部 事業部長の小海悟士氏 TTS 代表取締役 CEO/田中電気 モビリティ事業部 事業部長の小海悟士氏

ノレル向けに提供されているTTS製の車載IoTデバイス

ノレル向けに提供されているTTS製の車載IoTデバイス

“最長10年間/一括2000円/プリペイド”の1NCE SIMが実現を後押し

TTSがノレル向けに開発したデバイスは、車の電源が入ると自動的に起動し、位置情報を10秒に1回のペースで取得した上で、クラウドに送信する。この送信で使うのが、ソフトバンクが取り扱う1NCE(ワンス)の低容量IoT向けモバイル回線だ。

1NCEを採用した理由について、小海氏はまず「コストが安く、将来の見通しも効くこと」を挙げた。プリペイド方式の1NCE SIMは、基本料一括2,000円(税抜)とSIMカード代を支払って購入すると、最長10年間、累積通信容量500MB/SMS 250通に達するまで、追加コストなしで利用できる。

「車載デバイスはサブスクリプション契約でご提供しており、回線コストもTTS側で負担する形です。1NCEならば、そもそも回線コストが安いですし、毎月のコストが変動することがありませんから、ご提供する料金を抑えることができます」(TTS 小海氏)

「1NCE IoTフラットレート」の特徴

「1NCE IoTフラットレート」の特徴

そしてもうひとつ、小海氏が「当社のオペレーションにおいて、とても有効」だと語るのが、月額基本料が発生しないプリペイド型のSIM(モバイル回線)である点だ。

TTSでは、出荷するデバイスが正しく通信できる状態であることを確認するために、出荷前の全品検査を行っている。ここで月額方式のSIMを使うと、検査実施のタイミングから基本料が発生してしまうので、事前に検査してストックしておくことができない。大量の発注を受けてすぐに発送するために、出荷担当のチームが深夜まで検品とキッティングの作業に追われることもあった。

「プリペイド型で月額基本料がない1NCEならば、事前に検査を済ませておいても無駄なコストがかかりません。実際、一度に500台レベルの大量発注をいただくこともありますが、あらかじめ計画的に検査を済ませておけるので、無理なく翌日には発送できています。このことは、社内の出荷担当者からとても喜ばれていますね」(TTS 小海氏)

サービス提供拡大にはソフトバンクも協力、共に「社会課題の解決」を図る

ICTでは2025年10月、全国で自動車販売チェーンを展開するカーベルとの業務提携を発表した。カーベル加盟店で車両購入を希望する顧客のうち、一般的なローン審査では通過が難しい場合に、ノレルを通じて車の利用機会を提供する狙いだ。すでに200店舗ほどの加盟店で連携を開始しており、今後も段階的に拡大を進める。

この業務提携については、1NCEを取り扱うソフトバンクも「営業協力」という形で一役買ったという。単に1NCEのSIM/回線を提供するだけでなく、IoTパートナーによるソリューションの展開を支援することで、まさに「社会課題に、アンサーを。」という同社のスローガンを体現するかのような動きだ。

ICTでは今後も、ノレルのスコアリングをより精緻なものに磨き上げることで、利用者にベネフィットをもたらすサービスを目指していく。ICTの中津川氏は、ドライブレコーダーのような映像デバイスを搭載して細かな運転状況をスコアに反映させたり、スコアが十分に高い利用者の利用料を引き下げたり、といったアイデアを検討していきたいと話した。

「これまでの一般的な審査では見てもらえなかったような、たとえば『真面目な性格』や『人柄の良さ』といった人となりをどう判断していくのか。そこでは、これまであまり扱われてこなかった行動データが非常に重要だと考えています。データとAIをフル活用することで、われわれとお客さまの『信頼』をお互いに築いていけるような、そんな取り組みを進めていきたいですね」(ICT 中津川氏)

本事例での導入サービス

1NCE IoTフラットレート

プリペイド型の低容量向けグローバルIoT通信サービスです。低価格でありながら、 IoT通信に必要な機能を追加費用なしで利用可能。購入や設定などをオンラインで完結できるため、費用と業務工数の両面でメリットを得られます。

サービスページを見る

お問い合わせ

関連する導入事例