2026.4
通信SIMの最適化で、道路異常検知サービスの安定運用を実現
概要
株式会社アイシンは、トヨタグループの一員として自動車部品の開発・製造を手がける一方、位置情報技術を活用した道路維持管理サービス「みちログ」を展開しています。みちログは走行車両から取得した映像・データをクラウドへ随時アップロードする構成であるため、大容量通信を前提としたサービス設計が求められます。また、将来的な展開拡大を見据える中で、持続可能なコスト設計も大きな課題でした。そこで、ソフトバンクの通信SIMを採用し、利用実績に合わせた料金設計と市街地での安定通信を両立。サービス価格を維持しながら社会実装を加速し、安全な道路環境の実現を目指しています。
課題
- 走行車両の映像をクラウドへアップロードする際の通信量が膨大で、コストがかかっていた。
- 車両が多く走行する市街地で、通信の安定性が担保できなかった。
- 利用実績を踏まえた個別料金設計により、「一定量定額+超過従量」という柔軟なプランを実現。大容量アップロード前提でもコストを抑制できた。
- 山間部での通信品質検証で、既存キャリア比で最大約3倍の結果に。安定した通信とキャッシュ運用を組み合わせることで、継続的かつ安定したデータ収集体制を確立した。
導入サービス
株式会社アイシン LBS製品本部
宮島 孝幸 氏
カーナビ技術を社会インフラへ。みちログが生まれた背景
株式会社アイシンは、トヨタグループの一員として自動車部品の開発・製造を担う企業です。エンジンや変速機など走行に欠かせない部品を中心に、長年にわたりモビリティを支えてきました。
その技術基盤を生かして展開しているのが、道路維持管理サービス「みちログ」です。走行車両に搭載したカメラと通信装置を通じて道路状況を取得し、クラウドで解析。自治体の維持管理業務の効率化を目指しています。
みちログ開発の背景には、自治体が抱える構造的な課題がありました。
「少子高齢化が進み、税収は減少している。それでも市民サービスの質は落とせない。道路の維持管理も例外ではありません。人員や予算が限られる状況でも、道路インフラの維持管理は止められません。いかに効率的かつ安全に維持するか。その解決策として『みちログ』は構想されました」(宮島氏)
しかし、サービスを展開する上で大きな壁となったのが“通信”でした。
サービスが拡大するほど膨らむ、通信コストという課題
みちログは、走行車両から取得した映像データをクラウドへ随時アップロードする構成です。価値の源泉はデータにあり、通信はサービスを支える不可欠な基盤でした。
しかしその一方で、アップロード時の通信量は膨大でした。
「走っている車からデータを集めるためアップロード時の通信量が非常に多く、サービスを広げれば広げるほど、通信コストが増えていく構造でした」(宮島氏)
通信コストが高止まりすれば、最終的にはサービス価格への影響も避けられません。自治体向けサービスである以上、“続けられる価格”を維持できるかどうかは重要な経営テーマでした。
市街地に加え山間部での通信の安定性も重要
もう一つの課題は、通信の安定性でした。
みちログは人口密集エリアを含む市街地を走行する車両からデータを取得します。車両が多く走る市街地では、道路の不具合が事故や渋滞につながる可能性が高くなります。その影響も大きいため、より確実な管理が求められます。また、山間部も管理道路となっており、市街地に加え、山間部での安定した通信品質の確保も重要になります。
「車両が多く走る市街地ほど管理の重要性は高い。一方、交通量が少ない山間部での管理品質も落とすことはできない。だからこそ、どこでも安定してつながることが重要でした」(宮島氏)
市街地で通信が不安定になれば、データ収集の確実性やリアルタイム性に影響が出ます。サービスの信頼性そのものに関わる問題でした。そのため、通信品質についても事前に実地検証を行いました。市街地での通信品質検証では他社と同等の性能を確保しながら、山間部では、ソフトバンクのLTEの上り平均速度が14.94Mbpsを記録し、既存キャリア比で約3倍の結果になったと言います。
コストの最適化と安定通信の確保。この2つを同時に満たすことが、通信基盤見直しの出発点となりました。
利用実績に寄り添った料金設計が、ソフトバンク選定の決め手に
通信基盤の見直しにあたり、複数キャリアを比較検討されたと言います。単に安価なプランを選ぶのではなく、「サービスが拡大しても持続可能な構造か」という視点で評価が行われました。
みちログは、走行車両から取得した映像・データをクラウドへ随時アップロードする構成であり、大容量通信を前提とした設計が求められます。さらに将来的な展開拡大も見据える中で、回線数の増加を前提とした通信設計が重要な検討ポイントとなっていました。こうした条件をもとに各社の提案を比較検討した結果、最もバランスが取れていたのがソフトバンクの提案だったと語ります。
「完全無制限ではなく、一定量までは定額で、超過分は従量制。弊社の利用実績に合わせた独自プランをご提案いただけたのはソフトバンク様だけでした。さらに、市街地での通信速度と安定性を事前に確認。通信が不安定な場合はキャッシュし、回復後にアップロードする運用設計と組み合わせることで、安定運用が可能になると判断しました。料金だけでなく、技術理解と運用設計を踏まえた提案が評価につながりました」(宮島氏)
コスト最適化と安定通信が、みちログの社会実装を後押し
導入後、まず実感されたのは通信コストの抑制効果でした。利用実績に合わせた料金設計により、大容量アップロード前提でもコストを抑制。拡大してもコストが急増しにくい構造を実現しました。
「通信コストを抑えられたことで、サービス価格を大きく上げずに維持できています」(宮島氏)
これは自治体にとって重要なポイントです。価格を維持できることは、継続導入の前提条件となります。
加えて、安定通信とキャッシュ運用を組み合わせたことによる、継続的かつ安定したデータ収集体制も確立しました。通信基盤の最適化は単なるコスト削減ではなく、サービスの信頼性と持続性を高める結果につながったのです。
通信提供にとどまらない、営業面での連携も推進
ソフトバンクとの連携は、通信SIMの提供にとどまりません。紹介斡旋契約を通じた営業連携や、EBC(Executive Briefing Center)での展示も、その一環です。
EBCは、ソフトバンク竹芝本社内と名古屋のSTATION Ai内に設けられた体験型の提案施設です。経営層や意思決定層を対象に、最先端テクノロジーを実際に体験しながら、自社課題に即した活用方法を議論するための場となっています。みちログもこのEBCで展示されており、車両データを活用した道路維持管理の仕組みや導入後の活用イメージを具体的に共有しています。単なる製品説明にとどまらず、自治体ごとの課題に即した活用方法を議論できる場として機能しています。
「ソフトバンク様のEBCで展示いただいていることは大きいです。来場者の声をレポートでいただき、それをフォローする形で自治体様とのネットワークが広がっています。また、多くの自治体と包括協定を結ばれているソフトバンク様のネットワークも、みちログ自体のサービス展開を後押ししてくれています」(宮島氏)
技術基盤と営業基盤の両輪がそろったことで、みちログの社会実装は一段と加速しています。
道路維持管理から、インフラ管理プラットフォームへ
みちログは道路補修を起点としながら、その活用領域を着実に広げています。
街中を走る車両から日々取得される映像や位置情報は、道路のひび割れ検知に加え、空き家の健全性確認や水道管老朽化による陥没リスクの把握など、さまざまなインフラ管理分野への応用が期待されています。
「今後はより多くの自治体や事業者と連携しながら、走行データを社会インフラの維持・予防保全に生かす仕組みを広げていきます。その実現には、拡張可能で持続可能な通信基盤が不可欠です」(宮島氏)
道路という“点”の管理から、都市インフラ全体を俯瞰する“面”の管理へ。みちログは、車両データを基盤としたインフラ管理プラットフォームへと進化しようとしています。ソフトバンクとの連携を通じて構築した持続可能な通信基盤は、その第一歩となっています。
お話をうかがった方
宮島 孝幸 氏
掲載内容は2026年3月に実施したインタビューに基づいており、部署名および役職名は当時のものです。
本事例での導入サービス
通信SIM
ソフトバンクネットワークに適合確認済みの通信モジュールです。豊富なラインナップでIoTソリューションへの活用が可能です。