三菱化工機様IoTエッジデバイス(1NCE)導入事例

2026.10

三菱化工機が「NailEdge」でプラントの“後付けIoT化”に成功 GX事業の拡大を支える

概要

プラントと環境設備分野に強みを持つ、機械製造/エンジニアリング企業の三菱化工機。同社は現在「GX(グリーントランスフォーメーション)事業」を新たな成長領域と位置付け、GX事業へのシフトを加速させている。その一環として取り組むのが、北海道稚内市の「稚内市バイオエネルギーセンター」における、メタン発酵方式のバイオガスプラントの運用だ。

バイオガスプラントでは、メタン菌をはじめとする微生物の活性を維持しながら安定運転を継続する必要があるため、発酵状態をリモートで監視できる仕組みが重要となる。一方、プラントの設計段階でリモート監視が想定されていない計測データについては、計器を目視で確認する必要があり、そのつど現地へおもむかなければならなかった。

そこで三菱化工機では、カウベルエンジニアリングが開発/提供するIoTエッジデバイス「NailEdge(ネイレッジ)」を採用して、必要なデータをリモート監視できる仕組みを“後付け”で構築した。どんな要件があり、なぜNailEdgeを選んだのか。プロジェクトに携わった三菱化工機、カウベルエンジニアリングの各氏に詳しく話をうかがった。

  • プラントにおいて一部の管理指標をリモート監視できず、計器確認のため1日に何度も事務所から現場へ足を運ぶ必要があった。
  • 屋外のプラント全体をWi-Fiでカバーすることが難しく、電源工事を伴わずに導入できるIoTの仕組みが求められていた。
  • 液温やpHなどの管理指標をリアルタイムに遠隔監視できるようになり、異常の早期発見・対応やプラントの安定稼働、運用業務の改善につながった。
  • セルラー通信に対応したNailEdgeにより、Wi-Fiなどの通信設備を新たに広範囲へ整備することなく、既設プラントの“後付けIoT化”を実現。

導入サービス

目次
「バイオガスプラントの現場担当者から、『追加でこれらのデータについてもリモート監視を行うことができれば、運転管理の高度化が期待できる』というアイデアを聞きました。しかし、既設のプラントはそのデータが取得できる設計になっていません。そこでNailEdgeを導入し、プラントに“後付け”する形でリモート監視を実現しました」
三菱化工機株式会社 DX推進部長 相川英明 氏
三菱化工機株式会社 DX推進部長 相川英明 氏

三菱化工機 稚内市バイオエネルギーセンター 所長の畑野慎二氏。同センターのメタン発酵槽を背景に

三菱化工機 稚内市バイオエネルギーセンター 所長の畑野慎二氏。同センターのメタン発酵槽を背景に

循環型社会の実現、クリーンエネルギー活用に取り組む三菱化工機

三菱化工機は1935年、化学工業用機械の国産化を目的に創業したメーカー/エンジニアリング企業だ。プラント・環境設備の建設エンジニアリングを主軸として、国内外で高い実績を誇る。

そんな同社グループは、事業転換の大きな節目にある。2021年に策定した「三菱化工機グループ2050経営ビジョン」では、2050年に向けて5つの社会課題(CO2/気候変動、資源循環、水/食料、自然災害、労働力不足)の解決にフォーカスしていくことを宣言している。その上で、これらの課題に対応する4つの戦略的事業領域(循環型社会推進、クリーンエネルギー、省力・省エネ、次世代技術開発)を「GX事業」と位置付けた。

現在は、既存事業で培った技術を生かしながら、成長領域であるGX事業へのシフトを進めている。将来的にはGX事業をビジネスの中核に据えて、持続的な成長を実現していく計画だ。

三菱化工機グループ2050経営ビジョン 事業ポートフォリオ ロードマップ(2026年版)(出典:三菱化工機) 三菱化工機グループ2050経営ビジョン 事業ポートフォリオ ロードマップ(2026年版)(出典:三菱化工機)

稚内市バイオエネルギーセンターにおけるバイオガスプラントの運用も、このGX事業の一環である。同プラントでは、稚内市内から回収した生ごみや下水汚泥などを、微生物によるメタン発酵で減容化(体積を減らす)し、同時にメタンガスを発生させる。同センターは、年間でおよそ7300トンの生ごみや下水汚泥を受け入れることができる。

「従来、稚内市では生ごみを埋立処理してきました。しかし、埋立処理だけでは最終処分場の延命に限界があり、資源として有効活用することもできません。そこで、廃棄物の減容化とエネルギー回収を目的として、バイオエネルギーセンターが建設されました」(同センター所長 畑野氏)

このプラントで発生したメタンガスは、発電機や蒸気ボイラーの燃料として活用されている。さらに、メタン発酵後に残る副生成物は、乾燥させて堆肥として市民に無償配布されている。こうして循環型社会の推進、クリーンエネルギーの活用が実現しているわけだ。

稚内市バイオエネルギーセンター。年間で7300トンの生ごみや下水汚泥などを受け入れ可能 稚内市バイオエネルギーセンター。年間で7300トンの生ごみや下水汚泥などを受け入れ可能

NailEdgeの導入で“後付け”のバイオガスプラントIoT化を実現

前述した通り、微生物による発酵を利用するバイオガスプラントは、安定した反応状態を保つのが容易ではない。そこで、プラントの設計/構築時には何種類かの管理指標を定め、リモートから監視できる仕組みを組み込んでいる。それでも、プラントの運用を開始してから「あのデータも必要だった」と気付くことがあるという。

「もともと主要なデータは取得できるようになっていましたが、運用を続ける中で『このデータも監視できれば、さらに運転管理がしやすくなるのではないか』と感じる場面がありました。長年プラントの運用に携わってきた畑野氏も、『ここの温度が分かればもっと管理が容易になる』『ここの成分が分かれば異常の兆候を早く把握できる』と考えていました。そこで、その実現方法の検討を始めました」(相川氏)

三菱化工機 DX推進部長の相川英明氏 三菱化工機 DX推進部長の相川英明氏

プラント運用の現場では、リモートから監視できない数値を確認するために、1日に何度も現場に足を運ぶ必要があった。畑野氏は「変動の大きな管理指標の場合は、1日に4回も5回も計器を確認に行くことがありました」と振り返る。同じ敷地内とはいえ、日に何度も事務所とプラントの間を往復するのは効率が悪い。

プラントはすでに稼働しており、新たな管理指標を付け加えることはできない。そこでたどり着いたのが、NailEdgeを使った“後付け”のIoT化だった。

なぜNailEdgeを選んだのか。相川氏は、プラントに設置するうえでの要件が、NailEdgeの特徴とうまく合致したからだと説明する。

「冬にはかなり雪が降ることもあって、屋外のプラント全体をWi-Fiでカバーするのは難しいと考えました。また、設置する際に電源工事が必要になるのも面倒です。NailEdgeの場合、SIMを内蔵していて単体で通信できますし、電源もUSBや乾電池が使えます。ですから導入のハードルがとても低く、現場への設置は『ちょっとこの箱を置かせてください』だけで済みます」(相川氏)

稚内市バイオエネルギーセンターでのNailEdge設置風景 稚内市バイオエネルギーセンターでのNailEdge設置風景
NailEdgeはコンパクトなエッジデバイスだ(135×76×27mm)。底面には各種センサーの入出力端子と、USB Type-Cの電源ポートを備える NailEdgeはコンパクトなエッジデバイスだ(135×76×27mm)。底面には各種センサーの入出力端子と、USB Type-Cの電源ポートを備える

また、現場への設置を行った畑野氏は、1台当たり最大3つのセンサーを接続できる点や電源に乾電池も使える点が、現場で柔軟に使えて便利だと語った。畑野氏は「わたしは電気に詳しいわけではないです」と言うが、既存の計器と接続し、そのデータを通信する仕組みは簡単に構築できたという。

NailEdgeは4~20mA/0~5Vのセンサー入力、無電圧接点入力、RS-485、無電圧接点出力と豊富な入出力端子を備えるほか、温湿度センサーも内蔵している。そして、最大の特徴が、通信回線に、10年一括2,000円+SIMカード代(税・送料別)でセルラー回線とプラットフォームを利用できる1NCE IoTフラットレートを採用しており、ランニングコストが不要である点だ。

「NailEdgeは、プリペイド型の1NCE SIM専用機として開発しており、追加のランニングコストがかからないことがメリットです。今回のような“後付け”でのIoT化も簡単にできるデバイスですから、製造業の工場や製造機械での導入事例は多くあります」(市川氏)

カウベルエンジニアリング 経営戦略室 部長の市川俊一氏 カウベルエンジニアリング 経営戦略室 部長の市川俊一氏

データをリアルタイムに可視化するアプリケーションも開発

三菱化工機がNailEdgeを選んだ理由はもうひとつある。NailEdgeを開発するカウベルエンジニアリングが、IoTデータを可視化するアプリケーションの受託開発も手がけていたからだ。

「PoCで必要な計測値が取得できることを確認したあと、1NCEのプラットフォームに蓄積されるデータを毎回ダウンロードするのが面倒だという意見が出てきました。そこで、カウベルさんにいい方法がないかと相談させていただきました」(畑氏)

三菱化工機 DX推進部 BIT課長の畑氏 三菱化工機 DX推進部 BIT課長の畑氏

要望を受けて、カウベルエンジニアリングでは、1NCEのプラットフォームからデータを取得し、Microsoft Azure 上でリアルタイムに可視化するアプリケーションを開発した。畑野氏ら運用現場の意見、三菱化工機の技術部門の意見を取り入れながら、開発にはトータルで1年ほどかかったという。

「開発を進めるうちに、弊社内から『こういう形でデータが見えると便利そうだ』『こういうやり方もできるんじゃないか』と次々に意見が出るようになり、最終的にはものすごい量のお願いをすることになってしまいました」(畑氏)

カウベルエンジニアリングが開発した「バイオガスプラント運転支援システム」の画面イメージ(データはダミー値)。複数のプラント管理指標を経時的に可視化している カウベルエンジニアリングが開発した「バイオガスプラント運転支援システム」の画面イメージ(データはダミー値)。複数のプラント管理指標を経時的に可視化している

バイオガスプラントの安定稼働に貢献、管理者も「安心して眠れる」

稚内市バイオエネルギーセンターでは、バイオガスプラントの中枢部分であるメタン発酵槽に、合計3台のNailEdgeを設置している。1台当たり2つの計器を接続し、発酵槽の供給側/排出側で液温、pHなどのデータをリアルタイムに監視できるようにして、稼働の安定化を図っている。

「異常を早期に発見し、早期に対応できますから、安定稼働と業務の改善につながっています。また事務所だけでなく、自宅でも管理指標が見られるようになったので、寝る前に確認して『ああ、大丈夫だな』と安心して眠れていますね(笑)」(畑野氏)

畑野氏は、今後も取得する管理指標を増やし、多くのデータを掛け合わせて分析することで、さらなるプラントの安定稼働につなげていきたいと述べた。

また相川氏は、同社が構築/提供するほかのプラントや産業機械にも、NailEdgeを用いたIoTの仕組みを横展開できるのではないかと語った。

「今回のバイオガスプラントもそうですが、通信速度が限定的でも構わない、数値の測定頻度が1日10回程度で済むような用途であれば、この仕組みがベストプラクティスになるだろうと考えています」(相川氏)

三菱化工機 DX推進部長の相川英明氏(中央)、同社 DX推進部 BIT課長の畑就士氏(左)、カウベルエンジニアリング 経営戦略室 部長の市川俊一氏(右)

三菱化工機がGX事業の成長を加速するには、既存の自社技術を深化させるのと同時に、新たな技術を取り入れることも必要になる。相川氏はそう説明した。

「GX事業を拡大していくうえでは、既存の自社技術に新たな技術を組み合わせ、課題解決を図る場面も多く出てくるでしょう。カウベルさんのNailEdgeも、そうした技術の1つになるものと期待しています」(相川氏)

手のひらに載る小さなNailEdgeと、そこに組み込まれた1NCEが、三菱化工機の大きなビジネス変革を支えていく――。やがてはそんな未来が訪れるのかもしれない。

お話をうかがった方

三菱化工機株式会社 DX推進部長 相川 英明 氏

三菱化工機株式会社

DX推進部長

相川 英明 氏

三菱化工機株式会社 DX推進部 BIT課長 畑 就士 氏
三菱化工機株式会社
DX推進部 BIT課長
畑 就士 氏
株式会社カウベルエンジニアリング 経営戦略室 部長 市川 俊一 氏
株式会社カウベルエンジニアリング
経営戦略室 部長
市川 俊一 氏

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