人流データをどう活用できるのか〜交通インフラ編〜
2023年1月17日掲載
近年、ICT技術の急速な進歩によりさまざまなビッグデータが登場しています。スマートフォンやGPSなどによって、これまでのPT(パーソントリップ)調査よりも位置情報が簡単に取得できるようになったことで、交通インフラを整備する上で着目する「人流」に関してもビックデータの活用が期待されています。本記事では、事例を交えながら交通インフラにおける人流データの活用についてご説明します。
人流データの種類
人流データはデータの取得方法によって特長が異なります。
携帯電話基地局データ
携帯電話が通信を安定させるために定期的に基地局と交信している情報の履歴をもとに、人の移動を把握します。携帯電話契約者の属性データを紐づけることで、属性解析も可能であり、主にインフラ設計や都市開発、大規模な商業エリア開発のシーンに強みを発揮します。
GPSデータ
スマートフォンなどのGPS機能で取得される位置情報をもとにして把握できる移動データです。携帯電話基地局データに比べ、細かな空間粒度で位置情報を捕捉できることから、出店計画地の選定や競合店舗の影響調査などに活用できます。
Wi-Fiアクセスポイントデータ
スマートフォンなどがWi-Fiアクセスポイントに接続したアクセス履歴をもとに、人の移動を把握します。地下街など基地局やGPSでは捕捉しにくい場所でも精度の高い位置情報分析が可能であり、店舗への来店計測として活用が進んでいます。
交通系ICカードデータ
駅改札やバス車内などに設置されたICカードリーダーで読み取った乗降履歴をもとに、鉄道駅間やバス停間のODを把握したデータです。
PT(パーソントリップ)調査データ
無作為に抽出された世帯に調査票を送り、世帯や個人属性に関する情報と1日の移動をセットで回答してもらうことで把握できるデータです。「どのような人が、どのような目的で、どこからどこへ、どの時間帯に、どのような交通手段で」移動しているかを回答してもらうため、先述のデータに比べ詳細な属性や移動理由を把握できます。調査周期はおおむね10年に1度です。
※総合都市交通体系調査におけるビッグデータ活用の手引き【第1版】(国土交通省)をもとに作成
人流データの活用事例
人流データを活用する際は、ビッグデータとPT調査データがそれぞれ単独での把握が難しい部分を補完することがポイントです。PT調査から捉えられる人流データに加えて、これからご紹介するようなビッグデータによる交通流動の時系列的な変化や広域的な交通流動もとらえることで、 そのエリアの交通実態の多面的な理解につながります。
携帯電話基地局データ-路線バスの潜在需要の把握
ある自治体では、人口減少やバス運転手の高齢化により、公共交通を確保・維持していくために効率的な公共交通網の再編が求められていました。そこで、バス停周辺の居住者の移動状況が分かる人流統計データから、本来求められている移動需要と現状のバス路線のギャップを把握しました。これをもとに路線・便数の見直しや路線新設を行い、公共交通網の再編を行いました。
GPSデータ-観光交通検討への活用
群馬県ではGPSデータから居住地などの情報を用いて観光者を定義し、各観光地の滞在時刻から日帰り・宿泊を判定。特定の観光地に立ち寄った観光者が、ほかのどの観光地に立ち寄ったのかを集計することで観光者の周遊パターンを把握しました。これにより例えば、富岡製糸場を訪れる宿泊観光者は、伊香保温泉や草津温泉などを一緒に訪れるパターンが多いことが分かり、観光交通の検討に活用しました。
※出典:総合都市交通体系調査におけるビッグデータ活用の手引き【第1版】(国土交通省)
交通系ICカードデータ-地域公共交通網形成計画
岐阜市では、交通系ICカードデータによる乗降履歴データを用いてバス停区間毎の利用者数を集計しました。これにより利用者数が大きく変化する分岐点となるバス停を把握することができ、バス再編の検討に活用することができました。
※出典:総合都市交通体系調査におけるビッグデータ活用の手引き【第1版】(国土交通省)
人流データのを有効活用で交通インフラを整備
人流データの種類とそれぞれのメリットを理解して活用することで交通状況の把握が進み、インフラ整備の有効な検討材料とすることができます。
ソフトバンクでは携帯電話基地局データをもとにした人流統計サービス「全国うごき統計」を提供しています。サービス詳細やユースケースは資料をダウンロードしてご確認ください。