「人的資本開示」で経営企画担当者が知るべきこと
2023年3月10日掲載
人材を資産とし、企業の成長と結びつける人的資本という考え方が広がりを見せています。また、金融庁も2023年から有価証券報告書に人的資本情報の記載を義務付けるなど、法令などの面からも環境が整いつつあります。そこで、いつ経営層から人的資本の情報開示を求められても対応できるように、経営企画の担当者向けに必要なステップをご紹介します。
経営層も関心を寄せる人的資本開示
近年、スキルを持った人材を利益創出の源泉としてとらえる動きが企業の間で活発化しています。また、今後、企業が発表する有価証券報告書にも人的資本情報の記載が必要になります※。
人的資本開示の対応は、法令順守の観点から必要であると同時に、自社には優秀な人材が揃っており、成長性があることをアピールして投資を呼び込む機会にもなりますので、今のうちから人的資本開示に関する理解を深めておきましょう。
人的資本開示で求められる対応
①人材情報の可視化
人的資本を開示するには、まず現在の人材情報を把握する必要があります。そのためには、どの部署にどのような人材がいるのか、業務経歴や保有スキルなどがひと目で分かるデータベースを作成することが有効です。
特に日本企業は社内での人事異動が多く、人材に関するデータも部署や支社などの拠点単位で保管されていることがあります。そのため、統一的な人材データベースを構築するには部門横断的な情報共有が重要になります。全社的な取り組みが必要であることを経営会議などで訴えるとともに、経営層にも社内への号令などの協力を求めましょう。
②人的資本の開示項目決定
人的資本の開示には国際規格ISO 30414が定める項目があります。その項目は58に及び、全てを把握するのは大変ですが、大まかには3つに分類されます。
性質①:インプット=人材の育成や採用に費やす時間や金額など定量情報(研修費用など)
性質②:アクション=人的資本改善のためのアクション(商品提案力向上プログラムの実施など)
性質③:アウトカム=どんな結果を目指すのか(従業員1人当たりの営業利益など)
それぞれの性質について理解を進め、どの項目を開示するかを選択する必要があります。自社の長期的な経営戦略や事業の強み、掲げている企業理念などにあわせて選択しましょう。
このとき、なるべく数字で計測可能な項目を選択することで、今後の改善策なども立てやすくなります。
③目標と現状の乖離を埋める戦略を立てる
人的資本で開示する項目が決定したら、それらの改善目標を定め、現状からのギャップを埋めていくロードマップを作る必要があります。
例えば、「従業員1人当たりの営業利益を5年後までに20%増加させる」という改善目標を立てた場合、そのために何日間の営業研修をどれ位の社員に対して行い、どのようなスキルを持った人材に育成していくなど、目標達成に必要なアクションを洗い出し、定量的な情報として経営戦略と有価証券報告書に織り込んでいきます。
その際、アクションを互いに連携させ、それぞれの取り組みがつながることで目標を達成するというストーリーとして纏めれば、投資家や自社の社員といった関係者により深く納得してもらう効果が期待できます。
人的資本開示にはツールの活用も有効
本ブログでご紹介したように、人的資本開示はいくつものステップを踏む必要があります。その中でも、人材情報の可視化は人的資本の状況を把握するために非常に重要ですが、使い勝手のよいフォーマットや、人材の情報流出を防ぐセキュリティ性を備えたデータベースを自社のみで構築するのは困難です。
人的資本の開示や、その後の改善戦略立案を効率的に進める上で役立つタレントマネジメントシステムの利用もぜひご検討ください。
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