ドローン(UAV)測量のメリットとは? 土木・建設業界などでの活用方法を解説
2023年3月31日掲載
ドローン(UAV)測量を取り巻く環境がいま急速に変化しています。理由のひとつは測量機器や測位方法の進化。もうひとつは法令や規制面の整備です。建設や土木工事においては起工測量や出来形測量といった分野にドローンの活用が拡がっており、人員不足の解消や業務の効率化にもつながるものとして期待されています。
そんなドローン測量の概要、メリットや注意すべき点、そして、ドローン測量に必要なものなどについて解説していきます。
ドローン測量とは?
今注目を集めるドローン測量とはどのようなものでしょうか。そして、従来の測量とは何が違うのでしょうか。
ドローン測量の方法
ドローン測量には、主に写真測量とレーザ測量の2つの手法が使われます。
写真測量
ドローンに搭載した光学カメラで複数枚撮影した写真をつなぎ合わせて地形データを取得する方法です。使用する機材はレーザ測量と比べるとコストが安いため、導入費用を抑えてドローン測量を取り入れることができます。
レーザ測量
ドローンにレーザスキャナを搭載し、照射したレーザ光の反射によって地表からの距離をデータ化する方法です。写真測量では難しい樹木下の地表面なども測量でき、詳細な地形データを取得できます。さらに、水の影響を受けにくいグリーンレーザ測量という特殊な方法もあり、河川や港湾地区での水底測量に利用され始めています。
RTK-GNSS対応のドローン「DJI MATRICE 300 RTK」
右側が写真測量に利用される「ZENMUSE P1」を搭載
左側がレーザ測量に利用される「ZENMUSE L1」を搭載
ドローン測量で得られた情報は、ドローンの高度情報、位置情報、撮影された画像などから3次元点群データに生成され、この点群データを解析して3Dモデルなどを作成します。また、画像の周縁部に生じたひずみや位置ズレを補正することで、測量に必要なオルソ画像を作成できます。そのため、高精度な点群データ取得のためには高精度なドローンの位置情報と画像情報がカギとなるのです。
従来の測量との違い
従来の測量では、TS(トータルステーション)などを用いた地上測量や航空機を利用した航空測量が一般的でした。地上(TS)測量では地形の変化点にあわせて標定点(プリズム)を立て、作業員が徒歩で移動しながら計測する必要があり、作業に多くの人員や時間がかかります。また、測量後は取得したデータから3Dモデルを作成する際にも多くの工数がかかります。
ドローン測量は、上空から高密度かつ解析が容易な3次元点群データを取得できるため、TS測量における作業の手間やデータ処理の短縮化ができ、効率的で低コストな測量が実現できます。
ドローン測量のメリット
従来の測量に比べて大幅な効率化や省力化が図れるドローン測量ですが、その具体的なメリットを4つ見てみましょう。
①運用コストが安い
地上にTSや標定点を何度も設置する従来の測量方法に比べ、ドローン測量は作業日数と作業人員を大幅に削減することが可能です。しかも、取得した3次元点群データは3Dモデルへの合成処理が容易で、測量後のいわゆる内業に該当するような製図やデータ分析のための人件費や作業時間の削減が見込めます。
②広範囲を短時間で測量できる
ドローン測量は人が歩いて行う地上測量よりも非常に広範囲を測量できます。また、測量に要する時間も国土交通省の事例によると以下の通り短縮されることが分かります。
- 例1:平成28年度 天竜川水系小渋川流域測量業務(作業量0.042㎢)
- TS測量 5日(40時間) ➤ UAV写真測量 1日(1時間程度)
- 例2:豊岡道路測量業務(作業量0.31㎢)
- TS測量 45日 ➤ UAVレーザ測量 1.5日
- 例3:雲仙管内砂防設備設計業務(作業量0.42㎢)
- TS測量 30日 ➤ UAV写真測量 10日
※出典:国土交通省(ICT土工事例集【測量業務編】)
現場によっては工事車両などの往来を止めずに測量できることもあって、工期全体の短縮や安全確保が見込めます。
③人が立ち入れない場所に入れる
ドローン測量は上空から地表面を撮影するため、山林や山奥、あるいは災害現場など人や機材の到達が困難な場所でも、リスクを回避して安全な測量業務が可能です。
④国土交通省が推進するi-Constructionに対応した3次元データの取得ができる
ドローン測量で取得される地形情報は、3次元点群データであるため、専用のソフトウェアを使えば容易に解析が可能です。
現在、国土交通省ではICT(情報通信技術)である、BIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)の活用による、土木・建設現場の生産性向上や効率化を目指したi-Construction(アイ・コンストラクション)という取り組みを進めており、ドローン測量で得られる3次元データは建設DXの重要な役割を果たします。
ドローン測量の注意点
メリットの多いドローン測量ですが、いくつか注意が必要な点があります。
写真に写らない場所やレーザが届かない場所は測量方法に制限がある
写真測量では、樹木などで地表を直接撮影できない場所での正確な測量ができません。その場合は、レーザ測量を用いる必要があります。一方でレーザ測量は、建物など遮へい物でレーザ光が届かない場所を測量することができないため、現地の状況を事前に確認しておく必要があります。
バッテリーの持続時間に制限があり長時間飛行できない
使用環境や積載重量にもよりますが、ドローンのバッテリーは稼働時間が短く数十分ほどで切れてしまいます。広範囲な測量の場合はバッテリーを何度か交換するために離着陸を繰り返す必要があります。
GPS測位精度には限界がある
詳細な点群データ取得のためには高精度なドローンによる位置情報が不可欠ですが、GPS測位だけでは精度に限界があり、それを補うためには多数の標定点の設置が必要でした。
そこで登場したのが準天頂衛星システム「みちびき」などのGNSSからの信号と、地上に設置された電子基準点からの信号を利用して高精度な測位を可能にしたRTK(Real Time Kinematic)測位です。RTKモジュールを搭載したドローンの登場により、より高精度な位置情報の取得が可能となりました。
例えば、ソフトバンクの「ichimill(イチミル)」では、全国に3,300ヵ所以上の独自基準点を設置しており、RTK測位を利用した高精度測位サービスを低価格で提供しています。GPS測位では2~10メートル程度発生していた誤差を、「ichimill」 では数センチメートルまで縮めることが可能になりました。
操縦ライセンスが必要
2022年12月に施行された「レベル4対応」と言われる新たな航空法では、第三者上空の飛行や夜間飛行、有人地帯での目視外飛行を行う場合には、ドローンの操縦に無人航空機操縦者技能証明書のライセンスが必要となりました。同時に機体認証が必要となり、運航ルールも拡充されています。
ドローンの墜落リスク
ドローンが墜落してしまったときのリスクは、ドローン本体や測定機器の損失だけではありません。人の死傷や物件の損壊が発生した場合には、国土交通大臣への報告や負傷者の救護義務が発生します。保険への加入は必須ではありませんが、万が一のために検討が必要です。
ドローン測量に必要なもの
ドローン測量を行うための最低限必要なものを紹介します。
- ドローン本体とRTKモジュール
- カメラやレーザ機器などの測定機材
- 解析ソフトウェア
高精度なドローン測量のためには、高精度な位置情報測位ができるRTKモジュールを搭載したドローン本体が必要です。ソフトバンクがご提供する高精度測位サービス「ichimill」と組み合わせることで高精度なドローン測量が可能です。
カメラやレーザ機器の仕様や撮影方法については、国土交通省が「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)(平成29年3月改訂版)」に定めています。使用するドローンの自律飛行機能および自動帰還機能の必要性や、デジタルカメラに必要な性能などが記載されているのでご参照ください。
最後に、写真測量やレーザ測量で3次元点群データを取得したあとはPCで3Dモデル化するための解析ソフトウェアが必要です。
建設業界はDX新時代へ
ドローン測量の導入は、単にコスト削減や業務効率化のみならず人手不足の解消や従業員の働き方改革にもつながります。さらにi-Constructionに代表される建設DXの新時代到来の幕開けを告げるでしょう。
正確で安全なドローン飛行には、RTK測位による精密な位置情報の取得が必要不可欠であり、そのためには、高精度測位サービス「ichimill」がますます注目されています。
関連サービス
ichimill
ichimill(イチミル)は、準天頂衛星「みちびき」などのGNSSから受信した信号を利用してRTK測位を行うことで、誤差数センチメートルの測位を可能にするサービスです。