ChatGPTの企業利用リスクと必要な法務・知財ガバナンス

2023年6月2日掲載

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自然言語処理技術を応用したAIソリューション:ChatGPT(チャットGPT)が注目を集めています。しかし、ChatGPTを企業の業務で使用するには法務・知財分野におけるリスクが存在し、適切なガバナンス策が求められます。本記事では、大手企業の法務部門担当者向けに、ChatGPTが持つリスクと、必要なガバナンス、対応策としてのベストプラクティスを順に解説します。

目次

ChatGPTのリスク

ChatGPTの業務利用には、以下のリスクが潜んでいます。

情報漏えい

ChatGPTは文章を生成するために、ユーザの入力データを集めて学習しています。そのため機密情報を入力すると、ChatGPTがサイバー攻撃を受けた際などに外部に流出する恐れがあります。情報の保護は企業にとって重要な責務であり、顧客情報などが漏えいすれば大きな問題に発展しかねません。

偏見や差別

ChatGPTは、学習したデータによっては、それに含まれている偏見や差別的な表現を文章に反映する可能性があります。そうした文章を公開してしまうと、企業のイメージやブランド価値を損ない、悪評や法的トラブルを引き起こす可能性があります。

著作権など知的財産権の侵害

ChatGPTは膨大なテキストデータを学習しているため、著作権など知的財産権の侵害にあたる回答を生成する恐れがあります。そのような文章を企業活動に使用すると、権利を所有している人や企業から訴訟されたり、紛争につながる可能性があります。

ChatGPTの利用に必要なガバナンス

ChatGPTが持つリスクを回避し、健全に利用するためには以下のガバナンス体制が求められます。

データの適切な利用

AIの訓練には大量のデータが必要となりますが、データの利用には考慮すべきポイントもあります。まず、データは法的かつ倫理的な問題がない形で収集・利用されなければなりません。これにはデータの所有者から適切に許可を取得し、目的に応じたデータの使用を説明・保証することも含んでいます。

透明性と説明責任

法務部門など、企業の重要な指針・意思決定に関わる部門がその支援を目的にChatGPTを用いる場合、そのプロセスがどのように機能するのかを理解することが重要となります。プロセスが隠れてしまい人間が説明できない状態は「ブラックボックス」と呼ばれ、ChatGPTのようなAI活用の問題としてよく知られています。AIの透明性を高め、AIがなぜそうした結果を導き出したのかを理解しなければなりません。

また説明責任は、AIがなぜその結果を出力したのかを説明できることを意味します。AIの運用者は、その動作と結果について説明する責任を負っているため、AIの活用における信頼性を担保する上で必要です。

個人情報とプライバシー保護

ChatGPTを扱う際、プライバシーの保護は不可欠です。それには、個人を特定できる情報の取り扱い、データの保管と使用、さらにはデータ共有に関連するポリシーとプロセスを含んでいる必要があります。

そのための手法としてはデータの匿名化などがありますが、適切に実施するだけでなく、定期的に見直さなければなりません。また、個人の特定につながる情報をやむを得ず入力する場合は、本人の同意を得て使用することや、データ主体が自分の情報ににアクセスしたり該当箇所を削除できる手段を提供することも重要なポイントです。

バイアスや公平性の管理

学習したデータに偏りがある場合、AIの生成結果にもそれが反映されます。データセットの均一性と多様性を両立させるため、学習データの選択と処理においてはバイアスを生じさせる要因の識別と緩和が求められます。

また、AIの生成結果に対する監視と評価も重要です。AIがバイアスを増幅させる結果を出さないように、定期的なレビューと調整が必要になります。さらに、公平性を評価するための基準を設定し、それを守って運用しなければなりません。

人による監査

人間による監査は、ChatGPTのガバナンス体制において最終的かつ最重要なチェックポイントです。AIの行動、プロセス、結果を人間が定期的に評価し、必要に応じて調整します。これには、ChatGPTの挙動を監視し、偏見などを含む問題文章が存在しないかを確認するためのプロセスが含まれます。

また、人間が監査することで、AIの仕組みに対する理解が深まるため、運用に関する透明性や説明可能性を強化することもできます。

ChatGPTの業務利用におけるベストプラクティス

ChatGPTを効果的かつ安全に利用するためのベストプラクティス(最適な手法)を紹介します。

監督者の設置

ChatGPTを業務利用する際には、監督役を務める担当者が必要です。ChatGPTが生成する回答の確認や修正を行う人間の役割を明確に設定し、対応が適切に行われるようにしましょう。人間が生成結果を判断することにより、誤った回答やリスクのある情報がそのまま社内外に発信されてしまう事態を防ぐことができます。また、社内のユーザがChatGPTを利用する際のデータを集めることで、プロンプト(文章生成の命令文)とそのフィードバックを管理し運用の効率を高めるなどの効果も期待できます。

社員教育と利用ガイドラインの作成

社員はChatGPTの機能や制約を理解し、適切な利用方法を学ぶ必要があります。そのため、ChatGPTの利用ルールを明確に定め、それを守るためのガイドラインやトレーニングを社員に提供しましょう。また、ChatGPTが持つリスクを認識させ、不適切な使い方をさせないことを徹底するための教育プログラムを定期的に実施することも有効です。

リスク管理とモニタリング

ChatGPTの利用においては、運用を常にモニタリングし、潜在的なリスクを洗い出して管理することが不可欠です。異常なパフォーマンスやエラーの増加、違反行為の検出などに対して適切な対策を講じられるようにすることが重要です。

ChatGPTの安全な利用のために

ChatGPTを業務で使用するには、法務・知財面でのリスクがあることを認識し、適切なガバナンス策を実施することが必要です。その際には情報セキュリティとプライバシー、コンプライアンスを守って運用するために、ご紹介したベストプラクティスの適用などが有効です。

また、ソフトバンクではChatGPTの使用について理解をより深めていただくためのコンテンツをご用意しています。ご興味のある方は下記からご覧ください。

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永沼 雄
ソフトバンクビジネスブログ編集チーム
永沼 雄
2009年以降、B2B業界で海外営業やマーケティング活動に従事。2021年よりソフトバンクの法人部門にて、オウンドメディアでDXやサイバーセキュリティ分野のマーケティング活動を行っている。

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