データベースのサポート終了。使い続けるリスクと対策
2025年4月16日掲載
企業のITシステムを支える心臓部ともいえるのが「データベース(DB)」です。中でもOracle Database は多くの企業で基幹業務やミッションクリティカルなシステムに使われており、安定性と信頼性の高さから長年にわたって利用されているケースも少なくありません。しかし、いくら安定稼働しているとはいえ、そのまま使い続けて良いとは限りません。「サポート終了(EOS:End of Support)」を迎えたデータベースを使い続けることには、重大なリスクが伴います。
この記事では、Oracle Database のサポート終了スケジュールを確認するとともに、サポート切れがもたらすリスクと、それに対する現実的な対策をご紹介します。
記事執筆者のご紹介
Oracle Databaseのバージョン別サポート終了スケジュール
まず、Oracle Database のサポートには以下の2段階があります。
- Premier Support:フル機能の保守・バグ修正・セキュリティパッチなどが提供される
- Extended Support:制限付きでサポートが延長される(追加費用が発生することがある)
よく使われている Oracle Database の各バージョンのサポート期間とサポート終了日について、以下にまとめました。Oracle Database を利用されている方はご参考ください、なお、サポート期間は変更される可能性がありますので、最新の情報は Oracle 社の公式ドキュメントやサポートサイトでご確認ください。
バージョン
リリース日
Premier Support 終了日
Extended Support 終了日
備考
サポートが終了すると、何が起こるのか?
Premier Support が終了すると「Sustaining Support」となりますが実質的にはほとんど何もしてくれない状態に近く、以下はEOS後に起こる代表的なリスクです。
- セキュリティリスクの増加
最大の問題は セキュリティパッチが提供されなくなる ことです。サポート外の脆弱性が悪用され、情報漏えい、改ざん、不正アクセスなどのリスクが高まります。 - 法令・ガイドライン違反の懸念
個人情報や金融データを扱うシステムでは、最新のセキュリティ対策が求められることが多く、サポート切れソフトウェアを使用すること自体がコンプライアンス違反とみなされるケース もあります。 - サポート窓口での対応不可
サポート契約をしていても「対応対象外」とされる可能性があり、問題が発生してもOracleからの技術支援を受けられません。 - 他システムとの互換性トラブル
OSやハードウェアを更新した際に、古いデータベースとの互換性がなくなる 場合があります。アプリケーション連携が崩れることで、システム全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
なぜ、放置されてしまうのか?
サポートが切れていると分かっていても、移行が進まない理由には以下のようなケースがあります。
- 移行にかかるコストと時間が膨大
- 古いアプリケーションがDBに依存しており、一部のソースコードがブラックボックス化している
- システムの稼働停止が許されない業務に使われている(例:金融、製造業の生産管理など)
こうした理由から、「動いているならそのままにしておこう」という判断がなされるのです。
移行・モダナイゼーションの現実的な対策
ここからは、こうした 「サポート切れの危機」をどう乗り越えるか、現実的な対策を見ていきましょう。
1. バージョンアップ計画を立てる
まずは 対象のデータベースとそのバージョンを棚卸し し、いつサポートが切れるのかを明確にします。そして、次のLTS(長期サポート)バージョンへの移行計画を策定します。
現時点(2025年)でのおすすめは、Oracle Database 19c または 23ai への移行です。
2. アプリケーション依存の調査と切り離し
古いバージョンでしか動かないアプリケーションがある場合、その影響範囲を把握し、将来的に切り離せるように設計を見直す必要があります。ソースコードがない場合は、DBトレースやログ分析 などで振る舞いを推測するアプローチもあります。
3. クラウドへの移行を検討
オンプレ環境を維持するのが困難な場合、Oracle Cloud Infrastructure (OCI) やほかのクラウドDBサービスへの移行も現実的な選択肢です。Oracle自身がクラウド戦略を強化しており、19c や 23ai をクラウド上で安定的に提供しています。
4. セキュリティパッチの適用や仮想パッチの導入
どうしてもすぐに移行できない場合は、周辺のセキュリティ対策を強化することでリスクを軽減できます。
- ファイアウォールやWAFによる通信制限
- IDS/IPSによる異常検知
- アプリケーションレベルでの入力チェック
- サードパーティの仮想パッチツール(Trend Micro Deep Securityなど)
まとめ
サポートが終了したデータベースをそのまま使い続けることは、自社の信頼・情報資産・業務継続性を危険にさらす行為です。特に12cや11gといった旧世代のバージョンを使っている企業は、今すぐ現状を把握し、対策の検討を始めるべきタイミングに来ています。データベースの刷新には時間がかかるものです。動いている今こそ、次の一手を打つ絶好の機会ではないでしょうか。
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