AI Readyとは? AI導入を“成果”につなげるために企業が今備えるべきこと
2025年7月7日掲載
「AI Ready」とは、企業がAIを効果的に活用し、その恩恵を最大限に引き出すための準備が整っている状態を指します。これは単にAIツールを導入することにとどまらず、AIの技術を最大限引き出せる準備を整え、戦略的に組織文化の中に組み込み、実践へと結びつけていくことを意味します。このブログでは、ソフトバンクの法人事業統括内で社内外のAI推進を担う「AI Ready推進室」の課長・小幡に行ったインタビューを基に、「AI Ready」の概念やその重要性、そして実現に向けて今取り組むべき準備や視点について、ビジネス課題と合わせて解説します。
AI Readyとは何か?
小幡さんの普段の業務内容と「AI Ready推進室」の役割についてお聞かせください。
小幡:「AI Ready推進室は特定のプロダクトを持たず、さまざまなAIサービスを組み合わせながら、各種基盤整備や推進活動をする部署となっています。現在は法人統括約8,000人を対象に社内のAI活用を推進するとともに、その知見を活かしてクライアント企業のAI導入支援も行っており、今期は約100社の案件をご支援させていただいてます」
「AI Ready」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか?
小幡: 「社内のあらゆるデータがきちんと整理され、あらゆる企業活動に関するノウハウが言語化・共有されている状態を指します。今後ビジネスシーンにおいて人間の知性をはるかに超えたASI(Artificial Superintelligence/人工超知能)が登場した際、それをいち早く企業に取り入れ、その技術能力を最大限に生かせる準備が整っている状態と定義しています」
データが整備されている状態とは、『アクセスしやすく集約されている』というイメージを持つのですが、具体的にどういう状態になっていればいいのでしょうか。
小幡: 「データを集約・整理する“基盤整備”は重要ですが、それと同じくらい大切なのが、AIが理解できるよう“読みやすい形に翻訳する=”構造化”することです。どちらが欠けてもAIを十分に活用することはできません」
DXやAXといった言葉もありますが、それらとの違いやAI Readyの位置付けについてはいかがでしょうか?
小幡: 「DX も AX も究極的には BX(ビジネス変革)を実現する手段であると考えていて、ASI が到来すると、真の意味での BX が実現できます。『ヒト・モノ・カネ・情報』といった経営資源の概念が一変し、省力化と連続的な新規事業創出によって“真の BX”が可能になると考えてます。そういった企業としての理想型に向けた最低限の準備のことを、我々はAI Ready と呼んでいます」
なぜ今、「AI Ready」が企業にとって重要なのか
なぜ今、「AI Ready」が企業にとって重要なのでしょうか?
小幡: 「AGIの到来が現実味を帯びる中、最新の生成AIは定義によってはその水準に達しつつあるとも言われています。さらにその先にあるASI(人工超知能)の実現も、決して遠い未来ではありません。
特に2025 年は「AIエージェント元年」と言われ、企業でのAIエージェント導入も一定進んできましたが、活用を阻むのは『データ』と『ノウハウ』です。データが不足している、部門ごとに分散している、構造化されていないという状態ではエージェントの精度は上がりません。また現場の知見を言語化し、エージェントに反映させるには、業務を熟知する現場との協働が不可欠であるという課題が徐々に顕在化してきています。そのため、特にデータやノウハウを多く持っているエンタープライズ層の企業では、今まさにAI Ready の重要性が理解されつつあります」
AI Readyな企業になるための条件
AI Readyな企業になるための条件としては、どのような要素が挙げられますか?
小幡: 「ルール整備・ガバナンス強化やデータ構造化といった『守り』と、風土醸成をし業務実装を進める『攻め』の要素がそれぞれあります。守りは、企業がAIを安全かつ柔軟に導入・運用していくための『ルール整備・ガバナンス強化』と、必要なデータを安全かつスムーズに取り扱うための『データ構造化・基盤整備』。攻めは、AIのような新しい技術を組織としていち早くキャッチアップするための『組織風土醸成・チェンジマネジメント』と、AIを活用して業務を変えることにコミットする『業務実装・ユースケース開発』に大別できます」
AI Readyな企業になるための条件
どのような企業が「AI Readyな企業」になりやすいと言えるでしょうか?
小幡: 「一番はこれから事業をはじめるスタートアップです。スタートアップ企業はこれまでの蓄積がない分、Al Nativeな組織・事業を実現しやすいですし、発展途上な生成 AI という技術をいち早くキャッチアップし社内にインストールすることがしやすい環境にあります。
一方で、歴史ある大企業はこれまでのデータの蓄積が非常に膨大かつ、組織も機能単位で縦割りになっていたりするので、スタートアップと比較するとスピード感が遅くなってしまうというのが現実としてはあります。今こそ大企業は危機感を持って AI Ready に取り組むべき、と言えるかもしれません」
AIを“単発プロジェクト”で終わらせない秘訣はありますか?
小幡:「ゴールは ASI を使いこなすAI Powered な企業として持続成長することです。短期的なコスト削減だけでなく、AI 導入は企業を再定義する変革プロジェクトであると位置付けることが重要です。『AI × 人』の共存により、人間が活躍できる領域が広がっていくという側面にも目を向けつつ、全社員が自分ごととして取り組むための中長期的なフォローアップも必要不可欠です」
AI Readyの具体的な進め方
AI Readyな状態を目指すためのファーストステップはなんでしょうか。
小幡:「企業のAI活用は、今後の事業の在り方を再定義する可能性がある非常に重要なチャレンジです。そのため、まず経営層の理解と意思決定を得ることが不可欠であり、そのための材料を収集することが最初のステップになります」
具体的な進め方や考慮すべき点はありますか?
小幡:「AI Readyの推進には、段階的な取り組みが効果的です。まず、運用ルールの整備やガバナンス体制の構築から始めることが重要です。その後、組織文化の醸成や人材育成に取り組み、AIを活用した業務改善を通じて具体的なユースケースを創出していきます。最終的には、データ基盤と連携させ、AIエージェントによる業務の自動化・自律化を目指す流れが理想的です。このようなステップを踏むことで、AIの導入効果を最大限に高めることができます」
ITリソースやデータが限られる企業でも実践できる「はじめの一歩」はありますか?
小幡:「やはりガバナンスの整備から始めることです。AIは技術の進化が早く、ツールのライフサイクルも短いため、企業としての明確なルールなしに導入を進めるとリスクが高まります。例えば、「AIツール使用時の注意点」や「アップロードして良いデータの範囲」といった運用ルールを定めることで、現場のユーザーに企業としての方針を示すことができ、安心してAI活用に取り組める環境が整います。それが、企業のレピュテーションリスクを下げ、従業員を守ることにもつながります」
AI Readyになるためのステップ
AIを導入したきっかけはトップダウンだった、というお客さまの声をよく聞きますが、経営層と現場の期待値を埋めるためにはどうすれば良いでしょうか?
小幡: 「どちらか一方では失敗するリスクの方が大きいです。トップダウン×ボトムアップ、両方のアプローチが成功の鍵です。トップダウンでいうと、データガバナンス領域や全社の構造改革が必要な領域、データ基盤整備、あとはAIを活用していくことに対するモチベーション付けや、組織改革については、人事評価にも絡んでくるので、全社の課題としてトップダウンで一気に進めるというのがとても大事です」
ガバナンスの領域は優先すべき領域であり、手間もコストも膨大なのでトップダウンで動いていく重要性が理解できます。ボトムアップに関してはいかがでしょうか。
小幡:「ボトムアップでは、現場の課題を現場で解決するAIの活用を検討、発信していくことが重要です。成功例を増やし、それが徐々に草の根のように各部署へ広がり、AI活用の動きが活発化していくことにつながります。さらに現場での活用や成功例を可視化し、上層部が評価できる環境を整えることが成功への一歩であると考えています」
生成AIの取り組みに関する成功例・失敗例
ソフトバンク社内の成功例・失敗例について教えてください。
小幡:「成功例は、現場が自分たちで作った生成AIツールの取り組みです。業務に深く関わっている人たちはノウハウを持っているので、それをうまく言語化し生成AIに落とし込むと、とても精度の高いものになります。例えば、営業部門での決算短信の要約ツールや、公共事業部門における官公庁の入札仕様書を分析するツールなどは、現場の知見がしっかり詰め込まれていて、非常に高評価な成功事例だといえます。
失敗例としては、現場の人間でない支援部門が「困ってるだろうから」という想定で作るケースは、現場の勘所を外してしまい、1カ月もしないうちに使われなくなることが多いです。やはり、業務に精通した人が、その勘所を押さえた上で自分のノウハウをしっかりと投入すると、非常に良い事例ができるということだと思います」
他社で印象的だった例はありますか?
小幡:「ある企業様では、トップダウンの支援とボトムアップの試行錯誤の両方をうまく組み合わせていました。現場がツールを自分で試しながら『できること・できないこと』を把握していて、キャッチアップも早く、我々がご支援したときもすぐに軌道に乗りました。逆に、いきなり『万能なエージェント』を作ろうとする組織は失敗するリスクが高いです。実際に使う人が試行錯誤していないと、現場とのギャップが生まれてしまいます」
AI活用に成功する企業が持つ共通点とはなんでしょう?
小幡:「ツールを先に決めてしまわないことがポイントです。業務や利用者によって最適なツールは違いますから、色々試してみる環境を整えるのが先です。あとは、ChatGPTやGemini、Copilotなど汎用モデル でもまずは試してみるべきです。最初から企業独自の生成AIモデルを作ろうとすると、高コストで失敗しやすいです。また、いきなり大規模にはじめず、最小限の機能で価値を検証する MVP(Minimum Viable Product)でスタートするのがベストです。まず期待値に近いものを作って、正しく理解しながら改善していくというプロセスを重視することが、成功しているケースの共通点です」
AI Ready推進室の展望~AGIを目前にしたビジネスシーンの未来~
今後数年で、AIによってビジネスはどう変わるとお考えですか?
小幡:「AGIの登場で企業活動は抜本的に変革されます。オペレーション業務は自律化が進み、例えば営業部門だと『顧客の本音を引き出す』『心を動かす』といったより人間的で創造的なコミュニケーションに集中できるようになります。また、経営判断も適切なデータに基づいて迅速に行われるようになり、事業運営全体のスピードと柔軟性が格段に向上していきます」
それでは、AIによって変わっていくビジネスの未来を見据え、今後取り組んでいくことや、AI Ready推進室としての展望について教えてください。
小幡:「まずは私たちがトップランナーとなり、社内でのAI活用推進を加速するため試行錯誤を続けていきたいです。今後の展望としては、特に注力していきたいこととして、まず1つ目は『AI人材を可視化』し、最適な配置や組織づくりに役立て、その人たちが最大のパフォーマンスを発揮できる体制を整えたいです。2つ目は『データ基盤の整備』です。社内でもまだこれからの部分もあるのでここをしっかり整え、そのノウハウをお客さまのサポートにも役立てていきたいです。最後は『セキュリティ』です。企業の中でAIエージェントを安全に活用するためにも、今後さらに重要視されます。社内でも広く検証していこうと思ってますし、そこで得た知見というのをお客さまにも還元していきたいです」
たくさんのお話をありがとうございました。最後に、導入を検討している企業や、利活用に困っている企業の方へのアドバイスがあればお願いします。
小幡:「どんなに優れたエージェントやツールでも、それが現場の実情やニーズに合っていなければ意味がありません。経営者の方々へは、現場が本当に必要としていることに耳を傾け、投資判断の検討をいただきたいです。現場の皆さんには、ぜひ自分たちの持つノウハウを『言語化』してほしいです。AIやエージェントは、何をもとに判断・支援するかといえば、やはり人間のノウハウや業務知識なんです。それが言葉として明確になっていなければ、AIも正しく動けません。自分の経験や勘どころを、なるべく丁寧に言葉にする。それが未来への準備になると我々は考えています」
AIの進化によって、ビジネスのあり方は着実に変わりつつあります。人は作業から解放され、より創造的な価値創出に注力する。そんなAIとともに歩む新たなビジネスのかたちが、すぐそこまで来ています。組織の中でAIが自然と機能し、成果を生み出すこと。その状態を当たり前にしていくためのAI Ready推進室の取り組みに、今後も注目が集まります。
AIによる記事まとめ
この記事は、ソフトバンクで社内外のAI活用推進をリードする「AI Ready推進室」小幡へのインタビューを基に、「AI Ready」の概念やその重要性、実現に向けて取り組むべき準備について解説します。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
関連サービス
生成AI(ジェネレーティブAI)
生成AIを活用するメリットや企業での生成AIの取り組みをご紹介しています。
生成AI関連定着化支援サービス
生成AI関連の導入から組織への浸透までを一気通貫でサポート。生成AIの展開・全社で利活用を進めるための組織定着に関することにまるっと対応します。