“やってみる勇気”が生むAI活用 ― フジパンが挑む現場DX
2025年12月23日掲載
AIやデジタル技術が急速に広がる今、老舗企業も新しい挑戦を始めています。フジパン株式会社では、生成AIを活用した全社的な取り組みを通じて、業務の効率化だけでなく、社員一人一人の発想や行動にも変化を生み出しています。社員全員が「やってみよう」と一歩を踏み出す勇気が、組織を動かし始めた――。この記事では、FM AICHIで2025年10月8日(水)に放送された『TOKAI リーダーズ・コンパス』におけるインタビューをもとに、彼らがどのように“現場から生まれるDXの挑戦”を進めているのか。そのリアルなストーリーをお届けします。
TOKAIリーダーズ・コンパス
FM AICHIで放送中(2025年12月現在)の『TOKAIリーダーズ・コンパス』はソフトバンクが提供するラジオ番組です。日本のモノづくりの中心地である愛知県・東海エリアで「イノベーションに挑む企業」のキーパーソンに、挑戦へのストーリーをうかがっています。
放送局:FM AICHI(株式会社エフエム愛知 名古屋 FM80.7MHz / 豊橋 81.3MHz)
放送時間:毎週水曜 20:00~20:30
出演者紹介
ゲストのご紹介
大野:FM AICHIをお聞きの皆さん、こんばんは。大野泰敬です。
渡邊:FM AICHIパーソナリティ渡邊晶子です。
大野:さて、本日は、フジパン株式会社 事業開発本部 DX推進部から設楽 拓也さん、そしてシステム部から田中 奈々さんにお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
設楽・田中:よろしくお願いいたします。
デジタル時代に変化する“お客さまとの接点”
大野:フジパンというと、やはりパンのイメージが強いですけど、お二人ともDXやシステムというところで、IT系のお仕事をされている部署だそうですね。
設楽:そうですね、私はITというほどPCばかり触っている部署ではないんですが、お客さま第一という姿勢で、ずっとメーカーとしてやってきたんですけれど、デジタル化が進んでいく中で、お客さまのライフスタイルの変化だったりとか、生活者意識が変わりやすいものになってきたと感じています。そういったところに、顧客データを使って営業活動を変えていこう、みたいな感じの部署になっております。
大野:それがDX推進部ですね。システム部というのはどういうことをやられているんですか?
田中:弊社のグループ会社にフジデリカとデリカフレッシュという会社がありまして、そこの注文データを受信するプログラムの管理ですとか、製造現場で使うシステムの保守などを行っています。
大野:まさに現場を支えているお立場ですね。設楽さんのお話で気になったんですけど、やっぱりSNSとかデジタル化が進化して消費者のライフスタイルも大きく変わってきたことで、プロモーションのやり方もかなり変わってきているんですか?
設楽:そうですね。やっぱりこう、今までみたいにテレビCMでやってというところだけではなくて、Webであったりとか、SNSを使ったりとか、そういう新しい広告手法というところもメーカーとしては求められてくるのかな、と感じております。
大野:普段、食べるものとかって、渡邊さんは何を見て判断していますか?
渡邊:最近は圧倒的にSNSです。ふと浮かんでくる広告でしたり、あとはキャンペーンで盛り上がっていたりすると、その情報の引用元をたどっていって知る、というようなことは、新商品のお知らせなどでは多いですね。
大野:やっぱりSNSとかの影響は出始めているものなんですか?
設楽:そうですね。弊社でもSNSを使ったキャンペーンというものにも取り組んできたりしておりますので、やっぱりお客さまとの接点っていうのは、変わってきているんじゃないかなと思いますね。
大野:いや、すごいな、やっぱりおじさんなのかな(笑)
渡邊:大野さんは、どんなふうに判断していますか?
大野:私は、テレビCMとかのオールドメディアと言われているものか、あとは店頭でのぱっと見の印象とか、パッケージとかですね。この後の話にも関係してくるのかもしれないですけど、人間がなんでそれを食べたくなるのかって、よく分からなくないですか?気温なのか何が影響しているのか分からないですけど、メロンパンを食べたいってときもあれば、クリームパンを食べたいってときもあるじゃないですか。あれって何なんですか?それって生成AIとかで分かるようになってきているものなんですか?
設楽:そうですね。生成AIを使って気温のデータとかを分析すれば、もしかすると今の技術力では可能なのかもしれないですけれども。我々はまだまだ取り組みの途中という感じですね。
大野:それでも、自分の気分に合ったのを何か提案してくれたら、ちょっとうれしくないですか?
渡邊:駅の自動販売機などでありますよね。その人の年齢だったりを分析して「これがおすすめです」って出てきたり。あと飲食店、カフェなどでも、取ったパンやドリンクに合わせて「これもいかがですか?」って提案してくれるシステムは、見たことがあります。もしかしたらパンの売り場でも、「今日はフジパンさんのこれどうですか?」というのが出てくるかもしれないですよね、今後。
大野:食品とAIってかけ離れてそうに見えているけれども、もう入り始めているんですね。
全社員を巻き込んだ「生成AIチャレンジコンテスト」
大野:だからフジパンさんも、AIとかDX化というところに結構舵を切っていると。そのうちの一つで気になったのが、「生成AIチャレンジコンテスト」というのを全社員向けに企画をされたということなんですけれども、具体的にはどういったことをされていったんですか?
田中:弊社では2025年の3月に生成AIを全社的に導入したんですけど、そのタイミングでメールのアカウントを持っている従業員3,600人にAIアカウントを一斉に配布しまして。同じタイミングで「生成AIチャレンジコンテスト」をやりますという告知をして、それぞれでAIを使って業務を改善するアイデアを考えて応募していただいて、というコンテストを行いました。
大野:これにあたって従業員3,600人全員に生成AIのアカウントを付与したんですね、それってすごいことですね。でも、生成AIの使い方って、正直、誰からも教わってないからよく分からなくないですか?
渡邊:アカウントを渡されたとて、もうどうしていいのかと。数年前はそんな感じではないですか。
大野:多分社内でも「生成AIチャレンジコンテストやろう」ってなったとき、結構「えっ、何するの?」みたいな。そうなりますよね。そこはどうやって説明したりだとか、不安感を解消するということをやっていったんですか?
田中:そうですね。一番大きかったのはおそらく、AIの使い方の講習会を2回Webで実施しまして、全国にある事業所で興味を持ってくださる方にご参加いただいて「こういう使い方があります」というのを紹介して、それをアーカイブ動画に残して、皆さんに見ていただくというのが、結構効果はあったのかなと思います。
大野:その後って、問い合わせがシステム部に来たりするんですか? 例えば「どうやって使えばいいんですか?」みたいな。
田中:そうですね。システム部にもちょくちょく来ています。
大野:研修をやったり勉強会をやったりで、今まで触れたことがない人が2回で使えるようになりました? それとも、またその後も何か啓蒙活動みたいなことをされたんですか?
田中:そうですね。取り入れたAIツールが結構使いやすかったのか、意外と皆さんすぐに使っていただけました。
大野:生成AIを使い始めたときって、そんなに違和感なかったですか?
渡邊:私はなかなかアナログな人間なので、どうしたらいいのかも分かりませんし、これって大丈夫なのかなという、漠然とした不安というのはずっとありましたね。
大野:実際に社内で導入したことで、何か反響というか、声というのはどんなものがあったんですか?
田中:「生成AIチャレンジコンテスト」の後で「AI使ってみてどうですか?」というアンケートを実施したんですけど、結構「これからも使っていきたい」とか「業務改善にすごく役立った」という声をもらったので、皆が有効活用してくれたんだなと思いました。
大野:設楽さんにうかがいたいんですけど、使って面白そうとか、何か好奇心を、ワクワクさせるような、仕掛けというのも必要だったんじゃないかなって気はするんですけど、この辺はどういった工夫をされていたんですか?
設楽:そうですね、やっぱり最初は「AIって便利だけど難しそう」とか「何に使えるのか分からない」みたいな声というのは社内でもありました。「使ってはいけない」「使ったら怒られるんじゃないか」「間違った結果に対して責任を取らなきゃいけなくなっちゃうんじゃないか」というような懸念は社員の中にもありましたので、そういう中で制度や仕掛けを通じて「使っていいんだ」みたいな空気にしていくというところで、一つの取り組みとして、全社的に「生成AIチャレンジコンテスト」を実施したという背景がありますね。
大野:ちなみにコンテストって、応募はどれくらいだったんですか?
田中:最終的には465件でした。
大野:結構多いですね。
田中:そうですね。元々私たちの予想では「30件ぐらいだったらどうする?」みたいな話をしていたので、465件は結構多いと思いました。
大野:私の勝手の感覚なんですけど、AIをうまく使いながらアウトプットを出してくるので、精度というか、アウトプットも良かったんではないかなって気がするんですけど、その辺はいかがでしたか?
田中:そうですね。このコンテストで優秀賞に選ばれたのが、「商談準備を手伝うAI」というものでした。これは営業担当の方が考えたもので、AIに対して「あなたはソフトバンクの孫さんとか、京セラの稲盛さんといった日本の偉大な経営者に弟子入りした人です」と。その上で「営業担当者のメンターになってください」という指示をして、営業担当者はそのAIに「私はこういうバイザーさんに、こういう商品を、これから、こう売りにいきます」という話をします。そうしたらAIから「この商品のこういうところはどうやって説明するんだ?」と質問が返ってきて、営業担当者が答えて、「それだと、こういうところはどうやって言うんだ?」みたいなやりとりをAIと行って、どんどん深めていくというのがありまして。それはすごく完成度が高かったです。
渡邊:キャッチボールをしながらどんどん深めていったり、自分の説明の精度も高めていくということができるんですね。
大野:そのプロンプト、いいですね。私も結構やります。「あなたは有名なラジオプロデューサーです。どういう内容だったら番組が盛り上がるか、構成を考えて」とか。
渡邊:最初の1行が大事って言いますよね、「あなたはこういう人です」という。
大野:あとは何か特定のキャラに憑依させて、その人と壁打ちするときもあります。最近だと、音声で会話もできるようになっているんですよね、ChatGPTとかで。あれも結構面白いですよね、もう最近は、リアルな会話をしているような感じで。俺、人と話しているよりChatGPTと喋っていることが多い気がするな(笑)
渡邊:そういう人も増えていますよね、お悩み相談をしたり。
田中:なんでも言えますもんね。
大野:最初は社員の方も結構不安がっていたと思うんですけど、今はもう皆さん、自由に使われるようになっているんですか?
設楽:そうですね。活用のシーンというのはすごく増えていて、商談資料の作成補助だったり、商品提案の文章のブラッシュアップもそうですし、あとは製造の部門なんかだと日報を自動で作るとか、点検レポートの構造化とかというところで、活用していく方向を色々と探しているようです。
大野:お話をお聞きしていると、AIというものに舵を切ろうってなったのは多分、ここ数年の話だと思うんですが、一気に今までのやり方と違うものが来たときに、設楽さんや田中さんは、最初混乱しなかったですか?
設楽:確かに最初は新しいものというと、ちょっと身構えてしまうところはあるんですけれども、そういう新しい考えを一旦受け入れて、挑戦していくことで、新しい気付きにつながるんじゃないかなというところは意識して取り組むようにはしていました。
大野:やっぱり製品開発ということであれば、仮説を立てて、研究して研究して、商品開発までやっていくので、新しいことにチャレンジするというのも、もちろんITかリアルかというと違いはあれど、そういう研究文化があるんですかね。
設楽:そうですね。うちの会社は業界初の商品を結構持っていたりもするところもあって、そういう挑戦していくような風土、土壌が元々整っているかなという風に考えているんですけれども。そうした中で生成AIについても「とりあえず使ってやってみようかな」という、文化が整いやすい土壌だったのかな、という風には感じております。
大野:今はそういうアイデアを出すとか、効率性を高めるというところですけど、最終的にはきっと製造とかいろんなところまでできるようになってきて、このAIというのはますます進化していくんだなって、すごく感じているんですけども。ごめんなさいね、パンとはなんの関係もないんですけど、喋る人の立場からするとどうなんですか? 生成AIとか怖くないですか?
渡邊:どんどん今、ナレーション然り、それこそもう、番組もAIで作っている人もいるぐらいなので、どうなっていっちゃうんだろうとは思いつつも、だからこそ「何を人が残していくか」そこをどう突き詰めていくかというところですよね。
大野:大丈夫ですか? 我々は失業しないですかね(笑)
渡邊:どうなんですかね。どうしましょう、次回のこの番組の台本と声が生成AIで作られている可能性も(笑)
大野:病欠とかしたときに「あっ、大丈夫です、AIがやっておいたんで」みたいな(笑)そうなったらちょっと嫌だな(笑)
渡邊:怖いですけど、技術的にはもう、可能ですよね。
大野:できますよね、多分言わなきゃ分からないんじゃないかなという。そうじゃないと信じたい、我々には感情があるって言っているんですけど(笑)それも本当にできるようになってきているから。だから私、今後やっていった方がいいかなと思っているのは、日本の製造業ってやっぱりまだ労働集約型で、人がやっている部分が結構あるので、そこでAIが発達することで、効率化や品質の安定性とかが高まってくるようになると、多分いい成果が出てくるのかなというのは、すごく感じますね。
“やってみる勇気”がつくる新しい未来
大野:お二人とも今、新しいことにチャレンジされていると思うんですけど、社内で生成AIとか新しい技術というものをもっと浸透させていきたいとか、こういう風にやっていきたい、こういう未来を作っていきたい、みたいなものは、何かあったりします?
田中:今は、導入したAIを使っているアクティブユーザーが400人くらいなんですけど、従業員はもっと沢山いるので、全従業員が日常の業務でAIを使うことが当たり前になるというのを実現したいなという風に思っています。
大野:設楽さんはいかがですか?
設楽:今回の取り組みを通じて「生成AIを使えるようになった」ということをゴールにするんではなくて、「生成AIを使って何を変えるか」というような、問い直しのチャレンジのフェーズに来たのかなという風にもちょっと考えておりまして。事務作業の効率化だけじゃなくて、先ほども仰っていたように、商品開発だったりとか、顧客体験の改善とか新しい提案の創出とか、そういった価値の創出につなげていくというような、より実践的な基盤作りというところを進めていくことができたらいいな、という風に考えています。
渡邊:はい。そろそろ本日もお時間となってしまいました。今日はフジパン株式会社から、設楽 拓也さんと田中 奈々さんにお話をうかがいました。
大野:では最後にお二方にそれぞれコメントをいただきたいんですが、今までいろいろな活動をされてきた中で、設楽さんと田中さんが自分の中の指針としている、「道標」となっている言葉をお話しいただければと思うんですが、設楽さん、いかがでしょうか。
設楽:私は「常識を疑え」という言葉を座右の銘にしています。決して現状を否定するという意味ではなくて、一見当たり前の中に潜んでいるような新しい可能性だったりとか、より良い方法を見つけ出すための視点という意味で、座右の銘としていますけれども。未知の課題に対しても臆することなく、常に前向きな好奇心を持って取り組むことができて、それがひいては組織の成長にもつながっていければベストかな、という風に考えております。
大野:田中さん、いかがでしょうか。
田中:設楽さんの後でちょっとプレッシャーなんですけど、「やらなかった後悔より、やって大成功」という言葉が好きで。これはお笑い芸人の令和ロマンさんが去年のM1グランプリのネタで使われていたギャグみたいな感じなんですけど。本当は笑うポイントなんですけど、私にはその言葉がすごく刺さってしまって。好奇心が結構旺盛なので、やりたいなって思うことが沢山あるんですけど、「失敗しちゃうかな」「もうやめようかな」って思うタイミングで、この言葉を思い出して「失敗してもいいから一旦やってみよう」という風に考えています。
大野:設楽さん、田中さん、本日はありがとうございました。
まとめ
フジパン株式会社の挑戦は、技術導入にとどまらず“人の意識を変えるDX”でした。全社員が主体的にAIを使い、互いの知見を共有する――そんな文化が根付き始めています。「常識を疑え」「やってみる勇気」という言葉に象徴されるように、変化を恐れず、一歩を踏み出すことが未来を拓く。このストーリーは、DXの本質が“人の力”にあることを改めて教えてくれます。
AIによる記事まとめ
FM AICHIの番組「TOKAIリーダーズ・コンパス」にて、フジパンの生成AI活用とDX推進の舞台裏が語られました。全従業員3,600名へのAI導入と「生成AIチャレンジコンテスト」を通じ、現場から465件の改善案を創出。単なる効率化を超え、商談準備の高度化など新たな価値を生む組織変革の実態に迫ります。老舗企業が「やってみる勇気」を武器に、技術と人の力を融合させ未来を拓く挑戦を深掘りします。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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