対話から生まれるデジタル変革 ― JR東海が挑む“文化を変えるDX”
2026年1月6日掲載
テクノロジーの進化が加速する今、企業に求められているのは「効率化」だけではなく、「人と組織の変化」そのもの。東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)の情報システム部 デジタル変革推進室では、そんな時代の変化を前向きに捉え、「人」「環境」「現場」を軸にしたデジタル変革に挑んでいます。社員一人一人が学び、使いこなし、そして挑戦していく。その積み重ねが組織全体の力を変えていく――。この記事では、FM AICHIで2025年10月22日(水)に放送された「TOKAI リーダーズ・コンパス」におけるインタビューをもとに、彼らがどのように“文化を変えるDX”へ挑んでいるのか。そのリアルなストーリーをお届けします。
TOKAIリーダーズ・コンパス
FM AICHIで放送中(2025年12月現在)の『TOKAIリーダーズ・コンパス』はソフトバンクが提供するラジオ番組です。日本のモノづくりの中心地である愛知県・東海エリアで「イノベーションに挑む企業」のキーパーソンに、挑戦へのストーリーをうかがっています。
放送局:FM AICHI(株式会社エフエム愛知 名古屋 FM80.7MHz / 豊橋 81.3MHz)
放送時間:毎週水曜 20:00~20:30
出演者紹介
ゲストのご紹介
大野:FM AICHIをお聞きの皆さん、こんばんは、大野泰敬です。
渡邊(晶):FM AICHIパーソナリティ渡邊晶子です。
大野:さて、今日お話をおうかがいするのは、JR東海から情報システム部 デジタル変革推進室 室長の渡邉 禎也さん、そして係長の川島 泰子さんにお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
渡邉・川島:よろしくお願いいたします。
渡邊(晶):よろしくお願いいたします。
大野:デジタル変革推進室からお越しいただいているんですが、「デジタル変革」と入っているくらいなので、多分革新的なことをする部署なんだろうなという気はするのですが。これはどういった組織なんですか。
渡邉:2021年ごろからICT推進係というのが情報システム部の中に設置されていました。データ分析など、色々な取り組みを進めているんですが、経営体力の再強化に向けて、生成AIを使ったり、最新のデジタル技術を使って「風土自体を変えるんだ」というような意味で「変革」という言葉がついています。
大野:今までもシステムとかをやられていた部署というのはあったと思うんですけれども、あえてこのデジタル変革推進室ができたというのは、どういった背景があったんですか。
渡邉:コロナ禍を経て、業務自体をより効率的に変えなければいけないということで、進んできたのだと思っています。
大野:やっぱりコロナ禍は、影響が大きかったですよね。
渡邉:すごかったですね。
大野:私もあの時は東京で活動していたんですけど、街から人が消えたんです。緊急事態宣言とかいろんなものがあったので、電車で移動するということもほぼゼロでした。私は大阪がメインの仕事場だったので、それまでは新幹線で週2回移動するというのが当たり前だったんですけど、全部オンラインになりました。
渡邉:そうですよね。
大野:「交通」というビジネスにとっても、大問題ですよね。
渡邉:新幹線も空っぽでしたよ。
デジタル変革における「3つの柱」
大野:そうですよね。だから、そこで考え方とか業務のあり方というのが大きく変わって、今の事業じゃない新しいものだとか、うまく効率化する方法というのを考えていこう、という中で集められたチームという感じなんですか。
渡邉:はい。
大野:具体的にこのチームというのは、どういうデジタルの取り組みをされているんですか。
渡邉:大きく「3本の柱」と我々は呼んでいるんですけれども、まずは「人材育成」、これはデジタルに強い人材を作っていこうという柱。それから「環境整備」ですね。これはただ単にPCや物を配備するというだけではなくて、より安全に社員がいろんなデジタルのツールを使えるような環境を整えています。もう一つが「取り組み支援」ということで、我々は伴走型の支援とも呼んでいますが、色々な職場のナビゲーターとして、現場の声を聞いて、寄り添いながら取り組んでいくものです。この3本の柱で今取り組んでいます。
大野:これは3つとも非常に大事ですよね。気になっている人もすごく多いんじゃないでしょうか。やろうと思っても実際にうまくワークしないパターンもあるので、深堀しながら聞いていきたいなと思います。
柱①:人を育て、変化を起こす「人材育成」
大野:まずは「人材育成」が、やはり新しいものとか新しいツールとかというのを社内にインプットしていく作業って、ものすごく大変だと思うんですけど、この辺はどういうふうな手段をとられているんですか。
川島:「人材育成」では、全社員がデジタルを使いこなせるような人材になることを目指していまして、昨年度から3カ年計画で「ICT全社員教育」というものを実施しています。
大野:どういう教育をしているんですか。eラーニングで学ぶとか、動画を見るとか、いろんなものがあると思うんですけれども。
川島:全社員教育の中身自体も、3つ計画がありまして、1つ目がeラーニングで、2つ目が集まって研修を行う、集合教育。3つ目は全社員が見るメッセージ性を含んだ動画の視聴、この3つで進めています。
大野:eラーニングとか、受講されて最後までやる人ってどれぐらいいるんですか?いろんな会社のお話をうかがうと、うまくいくパターンもあれば、最後まで見ない、最後まで聞かない、あとはサラっと流すだけ流して、結局は見ないというパターンがあるんですけど。その辺はどうされているんですか?
川島:そうですね。eラーニングは強制ではなくて、できるだけ主体的な学びをしてほしいというところもありまして、社員自らが見ることを目指しています。我々の方で「基本的な講座としては、ぜひこの動画を見てね」というeラーニングのカリキュラムを設定して、それを最後まで視聴完了する社員は大体半分ちょっとという感じです。
大野:でも一般的な人って多分テクノロジーにそこまで強くはないじゃないですか。その人たちに動画を見せるだけで理解してもらえるものなんですか?
川島:我々が使っているサービスは動画ももちろんですし、要所で小テストみたいなものを挟んでいるので、「ちゃんと理解していますか」と本人が把握しながら進められる仕組みになっています。
大野:じゃあ、あまりテクノロジーに強くない方でも、やればできる。
川島:そうです。まずは見ていただいて「理解していますか」というテストでチェックをしていただいて、それを繰り返すという感じです。
渡邉:初級、中級、上級とありますので、初級はかなり分かりやすい内容になっています。
大野:これってユーザーからのフィードバックみたいなものを見ながら、そのカリキュラムを変えたりしているんですか?
川島:カリキュラム自体は全社統一でやっているんですけれども、要所要所で、自分たちで教材を作って、そのプラットフォームにアップして見てもらう、ということもやっています。例えば、生成AIのニーズが強ければ生成AIのコンテンツを出したりとか、特定のツールのニーズが多ければその特定ツールの操作方法を見られるような教材を作ったりとか、できるだけニーズに沿った形で進めるようにしています。
大野:それはいいですね。ちなみに今、どういうニーズが高いんですか?
川島:最近ですと、駅員がタブレットを使って業務できるような体制を整えつつありまして、「タブレットを使ってどんなことができるのか」というようなことを知りたい人が多いので、そういったものを出すようにしています。
大野:今、たしかに駅とか色々なところでタブレットを使いながら説明していますよね。お客さまに対して説明するのもあれば、業務管理として使っているものもあると。
川島:そうですね。
大野:技術革新って本当にすごいですよね。でもこのAIって日々情報がアップデートされ続けているじゃないですか。それは常にウォッチし続けているんですか?
川島:そうですね。新しい技術動向はできるだけ頻繁に把握をしています。ただ全部が当社にマッチするわけではないので、その中から現場に合いそうなものを取捨選択して、それをどんどん取り入れていくという形で進めています。
柱②:安全と効率を両立する「環境整備」
大野:あと、ツールを使える環境を整えるというところなんですけれども、これは具体的にどのようなことをされているんですか。
渡邉:例えば一般的な生成AIですと、入力したものが生成AIの再学習に使われてしまうんですよね。企業内ではかなり機密な情報もあるので、そういった生成AIに入れた情報が再学習されないような環境を作る。これが第一だと思っています。そういった環境を作った上で、誰もが生成AIで色々な業務を効率化することができるような環境を整備しています。そのほかにも、社内にある色々なデータを有効活用することができるデータ基盤を作っています。
大野:今、全社員の方が生成AIに触れられる環境が整っているんですか。
渡邉:全社員にはまだ至っていないですけれども、8割、9割の社員は可能です。
渡邊(晶):いっぱいいますね。
大野:多いですね。実際導入して使っている社員の方からの反響みたいなものは、どうだったんですか。
渡邉:それは難しいところで。使えている職場もあるし、使えていない職場も確かにありますね。
大野:やはりそこはフィードバックを受けながら、変えていっているということですね。渡邊アナは、AIって使ったことあるんですか?
渡邊(晶):話題になった時に、どんなものかなと数度触ったくらいですね。
大野:その時の印象はどんな感じだったんですか?
渡邊(晶):自分の子供の頃にテレビなどで見ていた未来の世界に近いような感覚で、私はまだちょっと怖さがあるんですよね。どう使っていいかというのもありますし、自分が真っ当なリテラシーのもとで使えているのだろうかという、自分に対する疑いと怖さがあって、ちょっと一歩踏み出せずにいますね。
渡邉:最近、若い子は生成AIに色々な悩み事を相談するらしいですけど。
渡邊(晶):そういった面では、企業の中で使うとなると、先ほども機密情報という話もありましたけど、その辺のバランスといいますか、普及させつつ、でも守るところは守っていかないと、というのは、どんな風にされているんですか? 結構難しくないですか?
渡邉:いや、そんなこともないですよ。そういう環境さえ作れればいいので。
大野:じゃあそんなに社内的には、上層部の方とかを含めて「絶対使わない」という意見はなかったんですね。
渡邉:そうですね。我々の中の取り組みの一つとして、役員向けにこの生成AIを使った実地研修もやっているんです。生成AIを使うと、自分がスピーチをする時の原稿ができたり、会社の経営情報からどう進めていくのか、というような壁打ちができたりしますよと。そういったかたちで、まずはトップに使ってもらおうという取り組みをしましたね。
大野:それはデジタル変革推進室の皆さんのアイデアだったんですか。役員の人に使ってもらおうというのは。
川島:そうですね。やっぱりトップが使わないと、社員がいくら使いたいと言っても、中々進まないので。役員層に使ってもらうことが大事というのは考えていました。
大野:それは非常に大事ですね。日本の企業さんの中では、トップの人が「AIはよく分からない」とか「AIはやらなくていい」って言っていらっしゃる方たちも一定数いるんじゃないかという気がするので、役員の方たちから巻き込んで、「こんなことができるんだ」というのを体感してもらうのは、すごくいいですね。
川島:ちょうどその時、ハンズオンで教える立場にいたんですけど、やっぱり皆さん初めて触るので「こんなこともできるんだ」とか「非常に手軽だね」と、結構前向きな意見が多かったですね。
渡邊(晶):百聞は一見にしかずということですね。
柱③:現場に寄り添う「取り組み支援」
大野:あと3本の柱の3つ目で「取り組み支援」というのは、どういうことをされているんですか。
渡邉:JR東海本体とグループ会社に対して「今どんなことに困っているのか」であるとか「今後どういうことをデジタルで取り組んでいきたいのか」ということをヒアリングしまして、その要望に沿って伴走しながら取り組みを支援するということです。他社がどういうことをやっているのかとか、他業種は今どれぐらいデジタル化が進んでいるのかという情報を入手するのは難しいので、我々が代わりに入手して横展開する、まさしくナビゲーターとハブの役割を担っているのが「取り組み支援」だと思います。
大野:どういう取り組みをすると一番伴走支援として成果が上がりそうだと、今時点で感じられていますか?
渡邉:グループ会社も含めて色々な部署の話を聞くと、まずは「紙をなくしたいね」というところだと思っています。
大野:結構紙が多いですか。
渡邉:多いですね。
大野:どういったところで発生するんですか? 社内向けですか?
渡邉:例えば、検査をする時のチェックシートと言われているものですね。だんだん電子化されてきてはいるんですけど、そのチェックがまず紙であったりとか。それから指令業務といって、新幹線とか在来線を運行している指令のところから「ダイヤが変わる」といったリアルタイムに情報を流すのがいまだにFAXです。
渡邊(晶):FAX。
渡邉:はい。
大野:ちょっと難しいなと思ったのは、例えばチェック表とかで、新幹線のここの業務がちゃんとできたかというのを、紙でチェックするのと、デジタルでチェックするのでは違わないですか。
渡邊(晶):分かります。
大野:なにか重みが違う感じ。
渡邉:紙の方が安心感はありますよね。
大野:だから完全にデジタルへ移行することで、逆にミスが発生したりということもありえるので、バランスが難しい。
渡邊(晶):「FAXで連絡をもらったよ」というのが、実物がある安心感もある。
大野:このバランスはすごく難しい気がしますね。急ぎ過ぎすぎると、何かミスが起きた時に、またそれはそれで問題になるし。だけどデジタル化していかないと、人も少なくなっていくし、効率化していく分にはやっぱりデジタル化が必要だと。難しいですね。
渡邉:ただ、デジタルのいいところもあって。チェックシートでチェックが抜けることは、もう自分で確認するしかないんですけど、例えばデジタルであれば「そこのチェックが入っていない」ということをあぶり出すこともできます。
渡邊(晶):なるほど、確かにダブルチェックが自然にシステム化されるというところはありますよね。
大野:これは本当に難しいけれども、うまく乗り越えて、日本で一番のDXの事例になるようなところまでいって欲しいなって思いましたね。
渡邉:そうですね。デジタル化の先が、デジタルを使って業務を効率化しようという段階に入ってくると思うんです。で、その業務を効率化した上で出てくるリソースや時間を有効活用して、新しいデジタルトランスフォーメーションにつながっていくんだというふうに思っています。
渡邊(晶):はい。そろそろお時間となってしまいました。今日はJR東海から情報システム部 デジタル変革推進室 室長の渡邉 禎也さん、係長の川島 泰子さんにお話をうかがいました。
大野:それでは最後にお2方にお聞きしたいんですが、今までいろいろな経験をされてきた中で、道しるべとなった言葉、コンパス、座右の銘でもいいんですが、指標となっている言葉を一言ずつお話いただいて終わりにしたいなと思うんですが、渡邉さんはいかがでしょうか。
渡邉:僕は「対話」という言葉を大事にしています。
大野:「対話」は大事ですね。これを地道にやっていくということが多分すごく大切。それが変革につながっているんだろうなという気がします。川島さんはそういった言葉は、何かございますか。
川島:私は「最優先事項を優先する」という言葉を大事にしています。
大野:深い。
渡邊(晶):これは仕事でもプライベートでもですか。
川島:そうですね。
大野:とても深いお言葉をいただきました。渡辺さん、川島さんありがとうございました。
まとめ
今回の対談から見えてきたのは、「変革の本質は人にある」ということ。どんなに新しい技術を導入しても、それを生かすのは現場で動く人の意識と工夫です。JR東海デジタル変革推進室のお二人が大切にしている「対話」や「最優先事項を優先する」という言葉には、地に足のついた変革の姿勢が表れているように思います。DXは特別なことではなく、日々の業務や関係づくりの中に息づくもの。このストーリーは、私たち一人一人が「自分の中のDX」に向き合うきっかけを与えてくれるはずです。
AIによる記事まとめ
FM AICHIのラジオ番組『TOKAI リーダーズ・コンパス』での対談に基づき、JR東海が推進するDXによる組織文化の変革を解説します。デジタル変革推進室は「人材育成」「環境整備」「取り組み支援」の3本柱を軸に、全社員へのeラーニング実施や安全な生成AI 活用の基盤を構築。トップを巻き込む役員研修や現場への伴走支援を通じ、旧来業務のデジタル化へ挑んでいます。対話を通じ経営体力の再強化へ挑む挑戦の軌跡です。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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