ベテランの勘をAIへ ― LPガス現場DXの舞台裏

2026年1月28日掲載

ベテランの勘をAIへ ― LPガス現場DXの舞台裏

生活に欠かせないLPガス。その供給を支える東邦液化ガス株式会社では、配送業務の効率化を中心に、現場のデジタル変革(DX)に挑戦しています。AIによる配送ルート最適化やデータ連携を生かし、ベテランの経験と若手の柔軟性を融合させながら、持続可能な供給体制を築く取り組みが進んでいます。この記事では、FM AICHIで2025年11月12日(水)に放送された『TOKAI リーダーズ・コンパス』におけるインタビューをもとに、彼らがどのように“現場から生まれるDX”へ挑んでいるのか。そのリアルなストーリーをお届けします。

TOKAIリーダーズ・コンパス

FM AICHIで放送中(2026年1月現在)の『TOKAIリーダーズ・コンパス』はソフトバンクが提供するラジオ番組です。日本のモノづくりの中心地である愛知県・東海エリアで「イノベーションに挑む企業」のキーパーソンに、挑戦へのストーリーをうかがっています。

放送局:FM AICHI(株式会社エフエム愛知 名古屋 FM80.7MHz / 豊橋 81.3MHz)

放送時間:毎週水曜 20:00~20:30

目次

出演者紹介

岡野 友哉 氏
岡野 友哉 氏
東邦液化ガス株式会社
デジタル推進部 IT基盤開発グループ マネジャー
1999年入社。その後、名古屋支店と三重支店にて既存顧客への営業を担当。2017年6月には企画部へ異動し、システム対応を主軸とした業務改善の推進に尽力。そして2024年10月にデジタル推進部に異動。基幹システムの維持管理と改修を担当中。
大野 泰敬 氏

大野 泰敬 氏

メインパーソナリティ

複数企業を経営する事業家兼投資家。人気FMビジネス番組のメインパーソナリティを務める。ソフトバンク株式会社でiPhone 日本初上陸時のマーケティングを担当し、シェア拡大に貢献。独立後は事業戦略、M&A、資金調達などで多数の大手企業を支援。東京オリンピックITアドバイザー、農林水産省・明治大学客員研究員としても活動し、「ご当地イノベーション」を提唱。累計500億円の事業実績を持つ。
渡邊 晶子 氏

渡邊 晶子 氏

アシスタント

NHK山形放送局、NHK名古屋放送局に勤務し、NHK山形『NHKニュースやまがた6時』やNHK名古屋『まるっと!』などに出演。2025年よりフリーアナウンサーとして活動を開始、FM AICHIのワイド番組『MORNING BREEZE』のパーソナリティを務めるなど多方面で活躍中。

ゲストのご紹介

大野:FM AICHIをお聴きの皆さん、こんばんは。 大野泰敬です。

渡邊:FM AICHIパーソナリティ渡邊晶子です。

大野:さて、本日お話をおうかがいするのは、東邦液化ガス株式会社 デジタル推進部 IT基盤開発グループマネジャーの岡野友哉さんです。よろしくお願いいたします。

岡野:よろしくお願いいたします。

渡邊:よろしくお願いいたします。

LPガスの現場に広がるDXの波

大野:ガスというのは日常的な存在ですけど、それを扱う会社がどういう業務をされているのかって分からなくないですか?

渡邊:恩恵にあずかっている、生活に欠かせないインフラですが、そのデジタル推進部では、どんなことをされているんだろうというのが率直な疑問ではありますね。

大野:東邦液化ガスという会社そのものは、どういったことをメインミッションとされている会社なんですか?

岡野:主にLPガスの製造販売、それに付随するガス機器の販売を主に行っています。

大野:LPガスって、そもそもどういった流れで私たちが普段使っているところまで届いているんですか?

岡野:分かりやすいところでいうと、ボンベと言われているガスが詰まっているタンクみたいなものがあるんですけれども、それを軒先に配送車が運んで交換をして、中のガスを使っていただくというような形になります。とにかくボンベを軒先に運ばなきゃいけないのが、LPガス販売の特徴的な業務になります。

大野:よく家に設置されているのを見ますよね。あとよく街中というか、一部のエリアに行くと大きいタンクがあるじゃないですか。

渡邊:球体の。

岡野:あの中にガスがいっぱい詰まっています。東邦液化ガスの場合は名港に大きな基地を持っていますので、そこの基地のタンクから各ボンベに小分けにして、軒先まで運ぶというような形になります。

大野:あの大きい丸い設備に入れるためのガスは船か何かから持ってくるんですか?

岡野:そうですね。そもそもガスは海外から輸入をしていますので、船で運ばれてきて一次基地というところにいったん入るんですけれども、そこからさらに内航船という国内用の貨物船に乗って、二次基地に運ばれてきます。その二次基地というのが、東邦液化ガスの場合は名港の基地ですね。そこへガスが入って、そこからさらに各家庭に配られるというイメージになります。

大野:そもそもLPガスって、どこの国から持ってきて、どうやって作られているんですか?

岡野:主には中東か、最近ではアメリカが多いです。

大野:ガスは地中から出てくるんですか。

岡野:そうですね。採掘するような形です。

大野:それを専用の船で日本に持ってくるという。そんな長い旅を経ているんですね。

渡邊:当たり前に、ボタンをピッと押して使っていますけどね。

AIが配送ルートを導く ― 現場効率化の挑戦

大野:そうなんですよね。岡野さんのお仕事は、デジタル技術を使って配送を効率化するということなんですけれども、まさに今仰っていた流れの中で、今までアナログだった工程をデジタル化する取り組みをされているんですよね。具体的にはどういうことをされているんですか?

岡野:配送業務というものは、ボンベをトラックに積んで運ぶのですが、これまでは「どこへ、誰が、どんな順番で回るか」を全て人が考えていました。お客さまごとにガスのなくなるタイミングが違うため、決められたルートで回るのではなく、ボンベが切れそうな場所へピンポイントに行かなくてはなりません。そのため、地図が全部頭に入っているベテランの方じゃないと、適切なルートが組めないと言う難しさがありました。そこに対してデジタル技術を入れることによって、極論、誰でも現場まで運ぶことができるようにしていこうと考えたんです。

大野:今までだと、朝にベテラン社員の人が「今日はここと、ここへ行くから、ルートはこうやっていくのが最適だろう」というのを考えて活動されていたわけですね。ちなみにベテラン社員の方と、経験が浅い社員の方と比べると、どれぐらい違うんですか?

岡野:ベテランでもその計画を作るだけで1時間から2時間くらいかかっていましたし、新入社員とかだったら、そもそもその計画が作れないとか、その計画を作るだけで半日かかってしまうというような状況でした。

大野:そこに対して、この取り組みをやることでパフォーマンスの効率化を図っていこうというふうになっていったわけですね。この取り組みはどれくらい前から始められたんですか?

岡野:5年前くらいから「改善しなければならないだろう」という課題感が会社の中にありました。2024年ぐらいで大方のシステム構築が完了したというようなスケジュール感ですね。

大野:これを実現するにあたっては、どういう技術みたいなものが必要だったんですか。

岡野:先ほど言いましたように、ルートをどういう順番で回るかというのがあるんですが、それを覚えたり考えなくてはいけないというのをやめて、全部AIが自動的に回る順序を含めて考えてくれるというような、そんなシステムを探して取り入れました。

大野:5年前から始められて、すぐ自分たちがやりたい技術というのは見つかったんですか?

岡野:それを探すところからまず始めまして、ちょうど5年前ぐらいから、いろいろな企業さんでそういった取り組みが始まっていた背景もありましたので、我々もいろいろな技術とかサービスを比較検討しました。その中で4社ぐらいを比較検討させていただいて、一番いいものというか、現実に即したシステムを選定しました。

渡邊:現在は、朝に「ここと、ここへ行く必要があります」という情報を入れると、全てルートを提示してくれるようになっているんですか?

岡野:そうですね。AIが全部考えてくれるという形になっています。

大野:少し前だと、検針員の方が「この人の家はどれくらいガス使ったのか」というのを見て、残りの残量を計算して「そろそろ足りなくなるから配達しよう」ということをやっていたと思うんですけれども、今はもう完全にデジタル化しているんですか。

岡野:そうですね、今は現場にメーターの指針を通信機で読むというような、LPWA(Low Power Wide Area)という端末機を各家庭に付けさせていただいています。それで配送の予測をしながら、先ほどのルート最適化のシステムで道順まで全部作ってくれるというシステムが完成しています。

大野:我々が住んでいる家はもう、その技術が使われているものなんですか?

岡野:まだ付けている途中ではありまして、東邦液化ガスの中では大体5割ぐらいのお客さまが付けているという段階です。逆に言えば5割のお客さまはそのシステムを元に予測をかける形に変わっています。

大野:それは自動で通信でつながっている感じなんですか? SIMか何かが入っているんでしょうか。

岡野:そうですね。携帯の通信を使って、メーターの指針を端末で読んだものをホストの方に送るという技術になります。

大野:我々が知らないところで技術がどんどん発展しているんですね。

渡邊:きっとあと数年で、予測を立てるところから「今日はここに行ってください」という指示までが一元化しそうですね。

岡野:そうですね。

渡邊:タブレットやスマホ上に表示される通りに進めば、誰でも勘に頼らず、ベテランさんに匹敵するような配送ができるようになるということですね。今そのシステムは、ベテランの方と比べて、どのぐらいの精度と言いますか、最適化されているんですか?

岡野:当社のベテラン配送員は沢山いらっしゃるんですけれども、最初の段階で、その方々が出す計画と同じぐらいの計画をAIが出せるという確認は取れていました。あとはAIなので、当然学習をどんどんしていくというものになります。ベテラン配送員さんにそのシステムを使ってもらうことによって、AIが間違っていたものを補正していただいて、どんどんAIが成長していくという期待もできるので、今も進化し続けています。

大野:でも、最初にこれをやろうとなったときは、ベテランの配送員からすると「AIに何ができるんだ」と。

渡邊:「自分たちがずっとやってきたことを」となりますよね。

大野:そういう反発みたいなものもあったのかなと思うんですが、実際どうだったんですか?

岡野:そうですね、「こんなものに頼らなくても自分は配送できる」「こんなものは使いたくない」という方も実際にいらっしゃいました。

大野:そこはどうやって溝を埋めて、コミュニケーションをうまく取れるようになったんですか?

岡野:当社のそもそもの課題感として、このままいくと、今の方たちはいいんですけれども、将来配送できないとか、配送をやる人が集まらないとか、そういった課題を持っていたので、ベテラン配送員の方々には「今は同じなんですが、AIに学習させてください」というお願いをしました。皆さんに使っていただくことによって、AIに学習させて、未来のためにデータを集めさせてくださいと、そんなお願いをしつつ、利用してもらっている状況です。

大野:多分リスナーの方の中でも、職人技だとか、今まで伝統としてやってきたものをデジタル化するとき、ちょっとつまずいている方というのも多いのではないかと思うんです。社内を説得するときに、こういう想いとか、こういう言い方とかが重要じゃないか、みたいなことをアドバイスするとしたら、何かありますか?

岡野:人によって多少言い方を変えるということは、私もよくやらせていただいています。実際にシステムを使うベテランの配送員に対しては、意義とか今後の未来像をしっかりと丁寧に説明させていただく。経営層や決定権を持っている方に対しては、実際に現場に一緒に行って見ていただきイメージをしていただく。そういったことに取り組んできました。

大野:現場にお連れすると、経営層の方も、今こういう課題があって、こういう解決の仕方があるんだなというのは、やっぱり理解してもらいやすいですか。

岡野:そうですね。

大野:大きく分けて「現場にどう落とし込んでいくのか」と「経営層をどう巻き込んでいくのか」。この2つのすごく難しいバランスをとることに、非常に優れていらっしゃるという気がしたんですけれども、それはどこで学ばれたんですか?

岡野:いろいろな経験を積んできた中で、こういったやり方がいいんじゃないかというところもありましたし、今回のこのプロジェクトは私一人ではなくて、色々な方のご協力をいただきながら進めてきました。皆さんのアドバイスをいただきながら、模索しながらやってきた感じです。

“諦めない”想いが未来を変える

大野:今後の計画としてはどういったところを目指されようとしているんですか?

岡野:まずは、このシステムの精度をさらに上げていくという点です。集めたデータをAIにもっと学習してもらって、さらにいいルートを出すようにしてもらうといったことが必要なのかと思います。あとはLPWAという端末機は、今は配送の予測に生かしているんですが、それだけではなくて、色々なサービスにも転用できると考えております。

渡邊:それはガス以外のところでも、遠隔の検針の力が使えるんじゃないか、ということですか。

岡野:そうですね、例えば高齢者の見守りサービスですとか。

渡邊:すごい。ポット(まほうびん)などでもありますよね、毎日どのぐらい使っているかが分かって、あまり動いていないとアラートが鳴るとか。

大野:でもポットとかの場合、それ専用の機器を買わなきゃいけないですが、例えば「この人は朝いつもお茶を飲むためにお湯を沸かしていたのに、沸かしてないぞ」ということを検知してアラートを上げて、連絡するということができるんじゃないかとか。あとはガスの使用状況とかを見て、この人が今在宅しているのか、していないのかを見て、例えば宅配業者と連携して、再配達率を減らす取り組みとか。色々なことに使えそうですよね。

岡野:そうですね、柔軟に考えながら対応していきたいなと思っています。

大野:面白いなあ。

渡邊:広がりますね。

大野:これが早く広がって、サービスとして使えるようになってくれたら、すごく我々にとっても便利ですよね。Web系の会員サービスで「おてがるガスnet」というのがあるんですか? これはどういったものなんですか?

岡野:今は当社のお客さま向けに、ガスの検針結果をそちらのWebサービスでお知らせする機能になりますが、先ほどのLPWAのデータとうまく連携することによって、さらにエネルギーの見える化ですとか、色々なことにつなげていけるような、そんなサイトにしていきたいなと考えています。

渡邊:そろそろお時間となってしまいました。今日は東邦液化ガス株式会社 デジタル推進部 IT基盤開発グループマネジャーの岡野友哉さんにお話をうかがいました。

大野:では最後に、岡野さんにお聞きしたいんですけれども、岡野さんが大切にされている言葉ですとか、人生に迷ったときに道しるべとなった言葉はどんな言葉だったのか、お聞かせいただけますでしょうか。

岡野:私は漫画の『スラムダンク』という漫画がすごく好きで、その中で安西先生という先生がいらっしゃるんですけれども、その方が言っていた「諦めたらそこで試合終了ですよ」という言葉。これが自分の中にとても残っていまして、この言葉を意識しながら仕事を進めています。本当に、諦めたら何も始まっていきませんので。皆さんもそういったことを意識していただけるといいんじゃないかなと思います。

大野:「諦めたらそこ試合終了」ですね。岡野さん、本日はありがとうございました。

岡野:ありがとうございました。

まとめ

東邦液化ガスの取り組みは、現場の知恵とテクノロジーを融合させた“人を中心としたDX”の好例です。AIが効率を生み出しながらも、ベテランの知見を生かし、未来へつなぐ姿勢が印象的でした。岡野さんの「諦めたらそこで試合終了」という言葉の通り、課題に向き合い続けることで、新しい価値が生まれる。東邦液化ガスの挑戦は、地域社会を支える企業の未来像を示しています。

AIによる記事まとめ

FM AICHIのラジオ番組『TOKAIリーダーズ・コンパス』より、東邦液化ガスが挑むLPガス配送のDX事例を紹介します。AIとLPWA通信機を導入し、属人化していた配送計画を最適化した舞台裏を公開。ベテランの勘をAIへ継承させ、若手でも高効率な運用を可能にしました。現場との丁寧な対話により反対を克服し、インフラ供給の維持と持続可能な業務改善を推進する、地域企業の変革プロセスをお伝えします。

※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。

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ビジネスブログ「Future Stride」編集チーム
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