日本版DBS施行目前。民間教育事業者が認定前に整理すべき「現場の棚卸し」

2026年2月16日掲載

日本版DBS施行目前|民間教育事業者が認定前に整理すべき「現場の棚卸し」

2026年12月、日本版DBS(こども性暴力防止法における性暴力防止措置)が施行されます。学習塾や各種スクール、スポーツ教室などの民間教育事業者にとって、この制度における「認定」を受けるかどうかは、法律上は任意の選択とされています。「認定」の取得は社会的信頼を高める大きな選択肢ですが、同時に求められる管理体制の構築に不安を感じる声も聞こえます。本記事では、多くの現場担当者さまとの対話から見えてきた共通の懸念を整理しました。認定の有無に関わらず、万が一の際に「説明責任」を果たし、スタッフと現場を守るために今取り組むべき「棚卸し」について解説します。

目次
監修:松田 昌明 弁護士

監修:松田 昌明 弁護士

六甲法律事務所
監修日:2026年2月10日

兵庫県神戸市にて地域に根差した「街の弁護士」として活動。中小企業や個人の多様な法律問題に精通し、訴訟のみならず交渉や労働審判など豊富な現場経験を持つ。「難しい法律をいかに分かりやすく伝えるか」を信条に、子どもへの法教育をはじめ、大学での非常勤講師や社内研修など、教育・広報分野にも注力。現在は上場企業の法務記事監修も手掛けるなど、専門的な知見に基づいた情報発信に努めている。

日本版DBSと問われる「説明責任」

2026年末からスタートする「日本版DBS(こども性暴力防止法における性暴力防止措置)」は、イギリスの制度をモデルに、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を事業者側が国のシステムを通じて確認できる仕組みです。学校教育法や児童福祉法などに基づいて認可を受けている学校や保育所などの事業者は義務化されますが、学習塾などの民間教育事業者は、国の認定を受けることでこの仕組みを利用できるようになり、その旨の広告表示をして安全性をアピールすることができます。

この認定制度の意義は、単に「犯歴を確認できる」ことだけではありません。認定を受けた事業者が、安全確保のための基準を継続的に満たしていることを国が担保し、それを「認定マーク」として可視化できる点にあります。

しかし、認定マークの取得以上に大切なのは、いざというときに 自社の取り組みをデータや記録で示せる「説明責任」の体制 です。認定基準が求める管理レベルは非常に高いものですが、それは同時に「組織がスタッフと子どもをどう守っているか」を客観的に証明する指標でもあります。事実に基づいた適切な記録があることで、スタッフの正当性を証明し、安心して業務に専念できる環境を維持することにつながります。

この高い基準を自社の運用にどう取り入れるかは、今後の事業継続性を左右する大きな経営課題となっています。

経営・運営責任者が直面する4つの壁

厳格な要件を前にして、経営層や現場責任者が抱く懸念は、単なる事務負担への不安に留まりません。要件を現場に落とし込む際に直面する4つの主要な懸念について整理します。

現場の納得感と心理的抵抗の壁

安全策の導入がスタッフへの「不信」や「監視」と受け取られ、モチベーション低下を招く可能性があります。「監視ではなく、働くスタッフを不当な疑いから守るための仕組みである」という方針を浸透させ、現場の納得感を得ながら運用できるかが大きな鍵となります。

経営リソースと投資判断の壁

認定基準を維持し続けるには、実務面での工数増に加え、ICT環境や設備といったインフラ投資が必要になる場面があります。限られた経営リソースの中で、日々の運営コストと将来的な事件・事故対応コストの低減や離職防止、保護者への信頼獲得による競争力強化という「リスク管理への投資」としてどうバランスを取るか、現場の状況に即した現実的な検討が求められます。

管理の境界線という壁

どこまでを組織として管理し、どこからが個人の裁量なのか、その境界線が曖昧で分かりにくいという課題です。例えば、利便性を優先して個人SNS(LINEなど)でのやり取りを許容しているケースがありますが、これは組織の目が届かない「デジタルの密室」を生み出すことになります。公私の境界を明確にし、トラブルを未然に防ぐ仕組み作りが必要です。

期待値とブランド維持の壁

認定取得はブランド価値を高める一方、保護者からの安全基準に対するハードルを引き上げます。万が一のトラブルはもちろん、日々の些細な不審点に対しても厳しい視線が注がれるようになります。この期待値のコントロールと実際の対策を両立させることが求められます。

現場に求められる対策

ガイドラインでは多岐にわたる要件が示されていますが、その中でも特に現場運営の負担や法的リスクに直結する「指導環境の整備」と「機微情報の管理」に焦点を当てて整理します。

指導現場の透明化(1対1・密室の回避)

個別指導など、指導者と子どもが1対1になる場面では、その空間が物理的な「密室」となりやすい性質を持っています。また近年は、SNSなどデジタルツールを介したやり取りも発生しています。現場の安全性は個々の指導者の良識や倫理観に委ねられてきましたが、そのままでは安全管理に大きなリスクが伴います。

個別指導ブースの死角をなくすレイアウトや防犯カメラの設置など、透明性の高い空間づくりが求められます。密室状態の管理を教室や指導者の裁量に任せるのではなく、客観的な記録・確認手段を組織として確保することが不可欠です。

指導が適切かを確認するための「定期的なアンケート」や、問題を早期に吸い上げる「相談窓口」の設置など、声を上げやすい環境作りが必要です。

併せて、SNSでの私的なやり取りなど「デジタルの密室」を放置しないルール作りも必要です。万が一の際、組織として安全を担保していたことを証明できるよう、やり取りを可視化・記録する仕組みが求められます。

機微情報の適正管理(犯罪事実確認記録などの取り扱い)

指導現場の安全確保と並んで、認定制度において厳格な運用が求められるのが「情報の取り扱い」です。国のシステムから取得した犯罪事実確認記録などは、通常の個人情報以上に慎重な管理が必要です。犯罪歴に関する情報は、個人情報保護法において特に配慮を要する「要配慮個人情報」に該当し、適切な管理体制を整備することが法律上義務付けられています。

ガイドラインでは、漏えいリスクを最小化する観点から、自社で犯罪事実確認書の内容について「記録・保存を極力避ける」ことが記載※1されています。具体的な運用は事業者に委ねられますが、情報のダウンロードや印刷を控えて国のシステム上での閲覧に留めるなど、運用方法の検討が求められます。併せて、閲覧できる端末や場所、担当者を限定し、機密性を確保する体制を整えることも重要です。

犯罪事実確認記録などは、法令で定められた厳格な期限内※2 での廃棄が義務付けられています。雇用継続時や退職時など、状況によって更新・廃棄のタイミングが異なるため、管理は複雑になります。特に廃棄の遅延は、意図せずとも重大な法的義務違反となるため、誰が担当になってもミスが起きない「仕組み化」が必須となります。

※1 参照:こども家庭庁「こども性暴力防止法施行ガイドライン(令和8年1月)Ⅷ.情報管理措置」
※2 犯罪事実確認の確認日から5年後の属する年度の末日から起算して30日以内、離職時は離職後30日以内の廃棄など、ケースごとに期限が定められています。

自社の現在地を「棚卸し」する

日本版DBSへの対応において「説明責任」を果たせる体制を築くためには、まず自社の現状を客観的に把握することが大切です。現場の透明性や情報管理のルールが形骸化していないか、以下の3つの観点から「連絡・記録・管理」の現在地を棚卸しすることから始めましょう。

安心できる環境をデジタルで整える

自社の現状が整理されると「安全管理をいかに現場の負担を増やさずに継続するか」という現実的な課題が見えてきます。これらを解決する上で、デジタルの活用は有効な手段です。ソフトバンクでは、こうした現場の切実な課題を具体的に解決するソリューションを提供しています。

例えば、死角になりやすい場所や1対1の指導現場の記録には、クラウドカメラサービスである 「LINE WORKS Vision」 が有効です。防犯カメラの設置は有効な対策とされていますが、その管理体制自体が新たなリスク(盗難や配線の切断、SDカードの持ち出しなど)にならないことも重要です。「LINE WORKS Vision」はクラウドで録画データを一元管理できるため、閲覧権限を役職や役割ごとに細かく分離でき、教室ごとの管理負担を増やすことなく導入できるのが大きなメリットです。監視されているという心理的抵抗を感じやすい対策方法ではありますが、録画画像の使用ルールを明確にすることで、プライバシーに配慮した運用も検討できます。客観的な「事実」をデータとして残すことは、不当な疑いからスタッフを守るための「盾」となり、有事の際の説明責任を果たすための強力なエビデンスとなります。

また、連絡手段として事業者側でやり取りを管理できる専用のコミュニケーションツールを導入するのもデジタルの密室を回避する一つの手段です。ビジネス版LINEである 「LINE WORKS」を活用し、スタッフと保護者・子どもとの連絡内容が可視化されれば、不適切な接触を防ぐ抑止力にもなり、正しい指導を行っている指導者の記録を確実に残すことが可能です。

情報管理においても、デジタルの仕組みによる制御が必要です。閲覧できる端末を限定したり、廃棄期限の可視化や確実な処理を促すワークフローを整備することで、人為的なミスを排除しつつ、外部への流出リスクを最小限に抑えられます。

このようにデジタルを運用の一部として組み込むことは、単なる効率化を超え、現場の安心感を持続させるための不可欠なインフラとなります。

まとめ:信頼と安全を両立する環境整備へ

日本版DBSへの認定申請を行うかどうか、最終的な判断はまだ先になるかもしれません。しかし、実際に制度が動き出し、いざ申請を検討する段階になってから慌てないためにも、今のうちから少しずつ現場の「棚卸し」を進めておくことが大切です。

対応すべきことは多岐にわたるため、まずは現状の課題を洗い出し、優先順位を整理することから始めてみてください。一歩ずつ体制を整えていくことが、結果としてスタッフの働きやすさと子どもたちの安全を両立させることにつながります。

ソフトバンクは豊富なデジタルの知見を生かし、最適なソリューションの選定から具体的な導入検討のフェーズまで、皆さまの安心・安全な環境づくりを伴走支援してまいります。お気軽にご相談ください。

AIによる記事まとめ

この記事は、日本版DBS施行を前に民間教育事業者が進めるべき体制整備を解説しています。制度概要と認定の意義を示し、説明責任を果たす管理体制の重要性を整理します。経営層が直面する4つの壁に加え、現場における指導環境の透明化や機微情報管理の実務課題を提示し、棚卸しとデジタル活用の方向性を示します。

※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。

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