EBPMを現場の日常業務へ。石川県が導入した「伴走型研修」とは?
2026年3月10日掲載
近年、全国の自治体で「データに基づく政策立案(EBPM:Evidence-Based Policy Making)」の重要性が叫ばれる一方で、「どこから手をつければ良いか分からない」「分析が難しそう」といった悩みを抱える自治体は少なくありません。
石川県も同様に、ツールは導入しているものの、それを実際の業務にどう生かせばいいのかという「業務との接続点」に課題を感じていました。 そうした中、石川県はソフトバンクのグループ会社であるAgoop社が提供する「伴走型EBPM研修」を導入しました。庁内で自走できるデータ活用人材の育成を目指すこの研修を通じて、職員のデータに対する意識はどのように変わったのでしょうか。今回は、その導入背景と研修の成果についてデジタル推進課の担当者にうかがいました。
EBPMの理想と現実:「業務との接続」という壁
近年、データに基づく政策立案(以下、EBPM)は、住民に対する説明責任を果たし、納得感を高めるだけでなく、行政業務の効率化にもつながるとして全国的に広がりを見せています。石川県でも約3年前から観光部署を中心に位置情報を活用したビッグデータ分析ツールを導入し、EBPMを推進していました。しかし、理想と現実のギャップに直面していたといいます。
「ツールの機能はなんとなく分かっているものの、『それを日々の業務にどう落とし込めばいいのか』という『業務との接続点』がイメージしにくいという課題がありました。また、本来EBPMはデータに基づいて政策を立案するのが理想ですが、これまでは政策を実施した後にうまくいったかどうかを確認する、いわば最後の『答え合わせ』だけにデータが使われている状況でした」(山﨑氏)
EBPMの重要性は理解していても、実践に移すハードルは高い。こうした課題に「一つの答え」を提示したのが、Agoop社※1からの提案でした。
EBPM推進を「特別なこと」から「日常の実践」へ
単なる知識の習得ではなく、庁内で自走できる人材の育成を目的とした「伴走型のEBPM研修」は、自治体の実情に合わせてデータ分析のプロが支援し、観光や防災といったリアルな課題をハンズオン形式で扱う点が特徴です。
「Agoopの皆さまがとにかく現場意識が強くて、『どうしたら県庁の中に落とし込めるか?』というヒアリングからスタートしていただきました。ツールを配るだけではなく、県庁の職員がいかに具体的な活用方法をイメージできるかというところを一緒に考えていただけた、その圧倒的な現場意識と伴走支援には非常に魅力を感じました」(山﨑氏)
さらに、提案段階から業務の流れに沿った具体的な活用シナリオが提示されたことで、参加者が「この研修を受ければ、自分たちも着実にデータ活用人材へと成長できる」という確かな見通しを持てたことも、導入の大きな決め手となりました。
生成AIとデータが結びつき、全庁で「自分ごと化」が加速
研修の開催にあたり、石川県では庁内ポータルでの発信や個別アプローチを通じて全庁的に参加者を募集しました。その結果、若手から管理職まで、また観光部署だけでなく土木などの技術職を含めた50名弱の職員が集まりました。
「研修は全3回構成で、第1回でツール(マチレポ※2・コンプレノ※3)の操作説明とEBPMの基礎を座学で学び、第2回では自身の業務に関連する課題を持ち寄るワークショップを実施しました。そして第3回でその分析結果を発表するというステップで進められました。
特にカギとなったのが第2回です。研修専用のExcelフォーマットに業務課題を入力し、それを生成AIに読み込ませるだけで『どのような切り口で分析すべきか』『どの機能を使えばいいか』という具体的なアドバイスが提示されました。このプロセスにより、参加者は『漠然としたデータ』と『自分の業務』の紐づけを体感しながら、スムーズに分析を進めることができました」(山﨑氏)
※3 コンプレノ(人流可視化分析ツール): 指定した施設への人の流れや、市区町村内での人の動きを「動画」で直感的に分析できるツール。
研修時の様子
こうした「AIとの対話を通じた分析プロセス」による実践的な学びは、参加者に大きなインパクトを与えました。研修を通じて得られた新たな気づきと思考の定着について、柳澤氏は次のように振り返ります。
「一番新鮮だったのは生成AIとの対話です。分析の過程でAIに問いかければ具体的なヒントが返ってくることや、AIを使う上での留意点まで学べたのは非常に参考になりました。また、ツール操作だけでなく、EBPMの分析フレームワークを使って『課題・理想・仮説』を組み立てるという思考プロセスそのものが、体に染みついた実感があります」(柳澤氏)
実際に柳澤氏は、仮設住宅での生活が続く住民の健康増進や孤立化を防ぐことが組み込まれた「奥能登版デジタルライフライン」の事業において、人流データを活用した分析を行ったと言います。
「住民の外出を促すための施策に利用するQRコードを各施設に設置する際、『どこに設置すれば効果的か』を検討するためにツールを活用しました。県単位だと土地勘がない場所もあるため、データを可視化できる点は非常に便利でした」(柳澤氏)
また土木部門の参加者からは、「交通量が多く騒音になっている」という県民からの意見に対し、ツールでデータを出し「客観的な交通量データに基づき分析した結果、そこまで大きな影響は出ていない」と、エビデンスをもって回答できた事例も生まれました。
研修期間中は専用のチャットグループでリアルタイムに質問できる形式になっており、欠席者や多忙な職員向けには講義のアーカイブ動画が提供されました。
「Agoopの方々が直接チャットに入ってくださり、『全員を取り残さず最後まで伴走します』と高い熱量でサポートしていただいたのが本当にありがたかったです」(山﨑氏)
こうした徹底した伴走姿勢が職員の圧倒的な安心感につながり、日常業務への活用を加速させました。
定性・定量を組み合わせ、誰もが納得できる「未来の政策立案」へ
「課題・理想・仮説」という分析フレームワークに基づき、客観的な数値で議論する。研修で学んだこの思考プロセスは、部署の垣根を超えた新たなスタンダードとなりつつあります。研修を通じて、データ活用のスキルだけでなく「庁内の共通言語」を手に入れた石川県。山﨑氏は今回の経験を生かし、行政独自の「定性」と「定量」データを掛け合わせることで、より説得力のある政策立案を目指しています。
「これまで行政では、『イベントの集客がいまいちだった』『街の賑わいが足りない気がする』といった定性的な感想・つぶやきで終わることが多かったと思います。今回、Agoop社の定量データという力強い武器を得られたので、定性データと定量データを組み合わせて仮説検証を進めていくのが理想です」(山﨑氏)
また今後は県庁内だけでなく、県内の市町との連携においても、データを共通の判断基準として活用していく構想を描いています。
「県の業務は県内の市町と一緒に進めることも多いので、そうしたプロジェクトの中で『データに基づいて進めませんか?』という形で共通の判断基準として活用し、連携を深めていきたいと考えています。そして最終的な理想は、やはり『誰もがデータに基づく政策立案ができるようになること』です。県独自のデータを使って政策そのものを良くし、県民の皆さまに対して成果をしっかりとコミットできる、そんな世界を描いていきたいと思っています」(山﨑氏)
研修の最終回には副知事も視察に訪れ、「こうした取り組みは続けていかなければならない」と評価するなど、庁内全体での機運も高まっています。
EBPMは、一部の専門職だけのものではありません。今回石川県が取り入れたEBPMの伴走型研修は、「自分たちの手でデータを生かす文化」を育てる第一歩となります。
最後に、山﨑氏からほかの自治体へ向けたメッセージをいただきました。
「ツールを渡すだけにならずに、とにかく一緒に考えてくれるという点が本研修の圧倒的な強みだと思います。EBPMという言葉だけで悩んでいる自治体があれば、まずは信じて一緒にやってみる、一回受けてみることをおすすめします。期待以上のものが得られる研修だと思います」(山﨑氏)
EBPMを特別な取り組みではなく、日常業務の延長に。まずは一歩、小さな実践から始めてみませんか?
AIによる記事まとめ
この記事は、石川県がAgoop社の伴走型EBPM研修を導入し、職員が実務課題を題材に人流データと生成AIを活用して分析を行った取り組みを紹介します。全3回の研修で基礎講義、課題整理、分析発表までを実施し、生成AIに業務課題を入力して分析の切り口や活用機能の助言を得ながら、「課題・理想・仮説」に基づく思考を定着させました。その結果、観光施策や交通分析などで具体的な活用が進み、データを踏まえた政策立案の実践に向けた基盤整備が進みました。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
関連記事
関連サービス
マチレポ
スマホアプリの位置情報を活用し、数クリックで商圏エリアの来訪者数やペルソナを分析したり、競合店の客層、ピーク時間帯や曜日を可視化できるエリアマーケティングツールです。