“感動”を指標にした新規事業 ― ヤマハ発動機が挑む未来創造

2026年3月17日掲載

“感動”を指標にした新規事業 ― ヤマハ発動機が挑む未来創造

二輪車(バイク)やマリン製品(ボート・船外機など)のメーカーというイメージが強いヤマハ発動機株式会社(以下、ヤマハ発動機)。その一方で、同社は農業、医療、森林計測など、意外性に満ちた新規事業を次々と生み出しています。今回お話をうかがったのは、経営戦略本部 新事業開発統括部 統括部長の舟生健太郎氏。ヤマハ発動機が掲げる独自の価値観「感動」を軸に、新規事業がどのように構想され、育てられてきたのか。その背景にある文化と思想に迫ります。この記事では、FM AICHIで2025年12月17日(水)に放送された『TOKAI リーダーズ・コンパス』におけるインタビューをもとに、彼らがどのように“感動から読み解いた挑戦”へ挑んでいるのか。そのリアルなストーリーをお届けします。

TOKAIリーダーズ・コンパス

FM AICHIで放送中(2026年3月現在)の『TOKAIリーダーズ・コンパス』はソフトバンクが提供するラジオ番組です。日本のモノづくりの中心地である愛知県・東海エリアで「イノベーションに挑む企業」のキーパーソンに、挑戦へのストーリーをうかがっています。

放送局:FM AICHI(株式会社エフエム愛知 名古屋 FM80.7MHz / 豊橋 81.3MHz)

放送時間:毎週水曜 20:00~20:30

目次

出演者紹介

ヤマハ発動機株式会社 舟生 健太郎 氏
舟生 健太郎 氏
ヤマハ発動機株式会社
経営戦略本部 新事業開発統括部 統括部長
前職である大手電機メーカーで経営企画や新規事業を経験した後、2024年にヤマハ発動機株式会社に入社し、「新事業開発本部」に所属。2025年度からは部署を、経営戦略本部の中の統括部に再編。「新事業開発統括部」と改め、統括部長として活躍中。
大野 泰敬 氏

大野 泰敬 氏

メインパーソナリティ

複数企業を経営する事業家兼投資家。人気FMビジネス番組のメインパーソナリティを務める。ソフトバンク株式会社でiPhone 日本初上陸時のマーケティングを担当し、シェア拡大に貢献。独立後は事業戦略、M&A、資金調達などで多数の大手企業を支援。東京オリンピックITアドバイザー、農林水産省・明治大学客員研究員としても活動し、「ご当地イノベーション」を提唱。累計500億円の事業実績を持つ。
渡邊 晶子 氏

渡邊 晶子 氏

アシスタント

NHK山形放送局、NHK名古屋放送局に勤務し、NHK山形『NHKニュースやまがた6時』やNHK名古屋『まるっと!』などに出演。2025年よりフリーアナウンサーとして活動を開始、FM AICHIのワイド番組『MORNING BREEZE』のパーソナリティを務めるなど多方面で活躍中。

「感動」を軸にした新規事業の全貌

大野: FM AICHIをお聴きの皆さん、こんばんは。 大野泰敬です。

渡邊: FM AICHIパーソナリティ渡邊晶子です。

大野:さて、本日お話をおうかがいするのは、ヤマハ発動機株式会社 経営戦略本部 新事業開発統括部 統括部長の舟生 健太郎さんです。よろしくお願いいたします。

舟生:よろしくお願いいたします。

大野:ヤマハさんというと、バイクとか。

渡邊:マリンスポーツの船だったり。

大野:そういったイメージがあるのですが、この新事業開発部ではどういったことをされているのでしょうか。

舟生:私が担当している新規事業は7つありまして、一つずつ紹介しているとキリがないのですが、大きなところで言うと「農業」ですね。アメリカで広大なリンゴ農園へ自動で農薬散布をするような、農薬散布用の自動ロボットのようなものであったり。あるいは「メディカルデバイス」というもので、細胞を右から左に移動させるような装置、これもアメリカや日本の研究機関に使っていただいています。あとは森林の上を産業用無人ヘリコプターで飛ばして、そこにセンサーを乗せて森林をデータ化するような「森林計測事業」など、山ほどやっております。

大野:すごいですね。

渡邊:多岐にわたりますし、「農業」とか「医療」と聞いて、少し意外だと思いました。勝手なイメージですが、モータースポーツだったり、その機械を作っているところと、農業は真逆なんじゃないかと私は思っていたのですが、言われてみれば機械は必要ですもんね。

舟生:そうですね、「車」という共通点があると思います。車輪が付いていて、それをセンシングしながら動くというところがコアの技術になっています。あとは、ヤマハ発動機は基本的に「感動」を生み出すような事業をやっていくということを社是にしています。こういった事業は「感動なのか?」と問われることがたまにあるんです。

大野:ああー、なるほど!

舟生:ブランド担当の方などと議論しながら「我々の装置によって生み出された時間を、レジャーや感動に使えるから、これは感動なのです」といった説明をして、「これは感動なのだ」とします。

大野:新事業が生み出される共通の背景には、「感動」というものがあるんですね。

舟生:そうですね。私も転職してきた人間なので、本当に驚いたのが「感動」というものが本当に大事にされていることです。ヤマハ発動機は本当に真面目に感動創造に力を入れていて、例えばある事業を選択するときに、利益率や売上高といった軸で判断することがあると思いますが、我が社の場合はその縦軸に「感動」があったりするんですよ。

大野:ええー!?

渡邊:ただ「感動」というのは、定量的に見ることが難しいじゃないですか。どのように評価といいますか「これは感動だ」とアピールするんですか?

舟生:「心が動くかどうか」です。

渡邊:すごい!

大野:すごい。普通はやはり数字的なもので見られるじゃないですか。「感動」という軸があるというのは、初めて聞いたかもしれない。

渡邊:でもさすがと言いますか、スポーツもそうじゃないですか。点数だったり結果もそうですけど、勇気だったり感動だったりというところもあるから、そういったところに関わっているヤマハ発動機さんだからというところもある気がします。

大野:私もマリンスポーツもやりますし、バイクにも乗るので、すごく分かるのは、やはり感動するとハマっていきますし、ハマっていくとファンになり、またそれが続いていくんですよね。だからやはり、そういうのがすごく大事だと経営層を含めて理解されているというのは、すごいなと思いますね。

舟生:その通りですね、感動の質が高ければ高いほど、結果的に売り上げだったり、事業の大きさに比例していくんだと思いますね。

医療分野を切り拓いた情熱の物語

大野:でもその中で驚いたのが、医療分野であるメディカルデバイスに参入するというところは、すごく意外性があります。これはどんな技術が生かされているものなんですか?

舟生:そうですね、まさに必然ですね。ヤマハ発動機はバイクや船外機を作っているのですが、そこには当然、電子機器が乗っていて、その電子機器を作る技術として電子基板の上に電子部品を乗せていく「実装機」があります。その実装機の事業の中でビジネスコンテストがあり、「この技術で新しい新規事業を生み出せないか」というときに手を挙げた一人の社員が出したのが「電子部品をピックアップして電子基板に置けるのであれば、細胞もピックアップして置けるだろう」というアイディアでした。

渡邊:そう言われてみればそうですけど、でもそんなに簡単ではないですよね。サイズが違いますし。

舟生:そうですね。一桁小さいですが、取れないことはないんです。

大野:今まで機械を作ってきたり、医療に関わっていなかった人がそれをやるとなったとき、社内でも恐らく「医療は少し危ないからやめておけ」とか言われると思うんですよね。それを跳ね返すだけの熱量や情熱に打たれて「それならうちもやってみよう」という風になり、ここまで来たということですよね?

舟生:その通りなんですよ。最初その方はビジネスコンテストに出したんですが、残念ながら落ちたんですね。理由は全くその通りで「ヤマハ発動機で医療は無理だろう」ということで落ちたんです。でもそこでその方は諦めきれずに、研究所というか倉庫の一部を間借りして、大学や医療機関などに通われてずっと細々と研究を続けられて、ある程度モノになってきたところで事業部長に相談したところ、「じゃあ事業化やってみろ」ということでチームを組成してもらったんです。

大野:すごい。まさに感動が動かしたわけですよね、きっと。

舟生:そうですね。

大野:それだけ頑張っているならやってみるか、検討してみるかと。その方もすごいですね、大学の研究所や医療機関に、プライベートで通われたんですか?

舟生:ヤマハ発動機はそのあたりは比較的ゆるやかなので、仕事として行っているとは思いますが、本来の仕事とは別枠で通われていたようです。最初は卓上の顕微鏡みたいな小さな試作機だったんですが、それが今は本当に巨大な機械になっています。

渡邊:社内で提案として通らなかったものに対しても、そういった活動を認めてくれる余白がある企業なんですね。

舟生:まさにそうなんです。ちょっと脱線しますが「電動アシスト自転車」もヤマハ発動機が世界で初めて商品化したんですね。ヤマハは、割とそういうことができる会社になっていますね。

大野:大手企業だと全部自分でやりたがる企業さんも一定数あるかと思いますが、ヤマハさんはかなりフラットな印象で、例えば「精密農業」に関しては、スタートアップとM&Aもしながら一緒にやっていくという、自前だけではなくて外部と連携するというのも結構柔軟に対応しているんですか?

舟生:そうですね、元々素材などを研究してそこから発展させる会社ではなく、色々な技術を組み合わせて作るような会社なので、そういう意味で言うと、自分たちの手の内にないものは、比較的オープンに色々な他社から手に入れるということも考えています。最初は結構内部でやろうとしていたのですが、やはりうまくいかないね、ということで、ほかと組んでうまくいったというケースも多いです。

挑戦を許容する文化と未来への視座

大野:最初から計画されていたのかは分からないのですが、新規事業の創出パターンが、ものすごくいい座組みですよね。既存の技術も使いながら新規でやっていくという、市場に対してもバランスが非常に良い印象なのですが、これは最初からそのフィールドでやってみようという発想だったのですか? それとも、やっていったら全体的に埋まっていったという感じなのでしょうか。

舟生:私が会社に入るまでは、こういう整理になっていませんでした。バラバラの事業をやっていたのですが「これって整理するとこういうことだよね」というまとめをしたら、きれいに埋まっていったという感じです。これはいわゆる「アンゾフの成長マトリクス」と言われるものなのですが、既存の技術と既存の市場というものをコアにしながら、そこからどういうふうに発展させるかという形で当てはめていくと、見事に色々なパターンでヤマハ発動機の新規事業が生まれているということが分かったんです。

渡邊:例えば、既存のところにゴルフカー、そしてそれを新規のところに場所を移したものとして「屋外自動搬送」という機械があると手元の資料に書いてあるのですが、どういうことか具体的に説明していただいてもいいですか?

舟生:元々ニーズは工場の中にあって、工場長が「搬送作業は重い荷物を雨の日でも雪の日でも365日運ばなければならない。これを改善してあげたいね」と考えたときに、「僕らにはゴルフカーがあるじゃないか。ゴルフカーを自動で運行させたら、その代わりになるのではないか?」ということで始めた事業なんです。

渡邊:なるほど。

大野:しかもこれがまた面白くて、最初は事業化というより社内向けに作っていたけれども「あれ? 思ったよりもいいものができたんじゃない? これは市場に出せるんじゃない?」というところで事業化に向かっていったということなんですね?

舟生:その通りですね、意外といいものができてしまった、そこで一緒に「Tier IV(株式会社ティアフォー)」というスタートアップで、ユニコーンと言われている会社の技術を入れたら、我々のゴルフカーというベースがあって信頼性もあるし、すでに完成された車両でもあるので比較的安価で作れる。そこにTier IVさんが作られた世界最先端の自動運転技術を組み合わせると、非常に手頃な価格で搬送できるようになりました。「これ、外に売れるんじゃない?」ということで複数社に持って行きましたら、「ぜひやりたい」という話になったので、「お客さまがついたのなら売っていこうか」という形でやっています。

渡邊:柔軟ですね、取り組み方、考え方が。

大野:そうなんですよ、イメージがだいぶ変わりました。先ほどの「感動」が指標の中に入っているということにも関連しているのかもしれませんが、仮に数字上ダメだったとしても、まずはやってみて、そこでお客さまがついたり反応があるのであれば、もっと深堀りしてどんどん前に進んでいこうよという、そういう感じなんですかね。

舟生:ええ、そんな感じですね。

大野:いや、すごい、いい会社ですね。私はいつ履歴書を送ればいいでしょうか(笑)

舟生:いや、おすすめです。はい。

大野:入社はいつ頃だったのですか、舟生さんは?

舟生:去年の4月入社ですね。

大野:今まで全然違う業界にいらっしゃったんですかね?

舟生:そうですね。電機メーカーでしたので、こういった自動車関連ではなかったですね。

渡邊:前職では新事業に関わる部署にはおられたのですか?

舟生:そういう期間もありました。基本的にずっと経営企画をやっておりまして、色々な事業の計画を見てきたのですが、その一定期間においては新規事業もやっていました。逆に言いますと、色々な事業の経営の最前線、経営のトップを間近で見てきたので、こういうさまざまな新規事業があるところには大体感覚があるんです。そこがたぶん自らの強みだなと思いますね。

大野:そんな中で、ヤマハ発動機という会社を選んだ理由というのは何だったのですか?

舟生:もう本当に人の出会いでして、今の上司になる青田チーフ・ストラテジー・オフィサー(CSO:当時)と、たまたま面談する機会がありまして、話される内容の視座が高いのと、引き出しが非常に多いということに感動したんです。前職では聞いたことないような話、例えば我々は磐田に本社がありますので、磐田市民にどう貢献するかとか、そこの学生をどのように育てていくかといった話を、滔々(とうとう)とされていました。

大野:学生を育てていくところまで。

舟生:ええ。こういう人の下で働きたいと思ったのが、一番大きなきっかけなのですが、こうして入社してみて俯瞰してみると、ああいう方が生まれる素地も、やはりこの会社にはあったのだなと思いますね。

大野:お話をお聞きしていると、そういうものを許容する文化がずっと根づいてきている、スタートのところからあったのではないかという印象ですね。

舟生:そうですね。創業者自身が、何しろピアノを作っていた会社からいきなりバイクを作り始めているくらいですから。『私の履歴書』という日経新聞の連載でも話されているのですが、その中でも「自分たちの既存事業でちゃんと利益を出している間に新しい事業を作ることこそが、経営者の使命である」と。創業の時点からやはり新規事業を生み出すという、それを事業にしていくという文化があるという形ですね。

大野:今7つの事業が色々進められていると思うのですが、今後その次のヤマハ発動機の事業として、ここを成長させていきたいとか、こういうような事業を今後も手掛けていきたいといったところを挙げるとしたら、どういったところがありますか?

舟生:7つやっているだけでも結構手一杯なので、基本的にはこの7つに集中したいなと思っているのですが、全部成功させるつもりでやっています。新規事業は「千三つ(せんみつ)」と言われるように、やはり失敗することの方が圧倒的に多いと思うのですが、私がやる以上は全て7つ成功させると思ってやっています。

大野:かっこいいですね。

渡邊:かっこいい! ドラゴンボールみたいですね。

大野:でも1個1個精度が高いですよね。企業によっては社員のガス抜きのために、新規事業を研修としてやっているところもあるんですよね。

渡邊:色々なスキルを身につけてもらって。

大野:そう。そういうのでやっているところもあるのですが、一つ一つが本気ですし、事業としても、モノとして商品のクオリティの高さも非常に高いなという印象を持っているのですが、なぜヤマハ発動機はそれができるのですか?

舟生:我々は実は「1から10」へ進める組織なので、「0から1」のところには、まだ事業の形もしていないようなアイデアが山ほどあるのですが、その中で一定のゲートを通過したものだけがクオリティの高いものになっているという点はあります。我々はその「1から10」の組織ということで、しっかりと事業計画を改めて叩き直します。ピボットまではしないですけれども、どこで収益を取るのかとか、お客さまをどこにするのかとかいうのは常に変えているので、その中で磨かれていく形になっていますね。

渡邊:さあ、本日もあっという間にお時間となってしまいました。今日はヤマハ発動機株式会社 経営戦略本部 新事業開発統括部 統括部長の舟生 健太郎さんにお話をうかがいました。

大野:では最後に一つ、こうしてさまざまに努力されてきたかと思うのですが、道しるべとなった言葉、どんな言葉だったのでしょうか?

舟生:私の前職の話になるのですが、前職のホールディングスの社長だった方が、社員に向けて話された言葉の中に、「失敗したって死ぬわけじゃない」という言葉があります。すごくシンプルで当たり前の話なのですが、私は「そうだな」とすごく腹落ちしまして、保守的にならずにどんどん攻めていくということを心に決めて、今でも取り組んでいます。

大野:舟生さん本日はありがとうございました。

舟生:ありがとうございました。

渡邊:ありがとうございました。

まとめ

ヤマハ発動機 舟生健太郎さんの言葉から浮かび上がるのは、「感動」を本気で信じる企業の姿です。数字や効率だけでは測れない“心が動くかどうか”を軸に、新規事業を選び、育てていく。その背景には挑戦を止めない文化と、失敗を恐れない覚悟があります。医療や農業といった異分野への挑戦も、個人の情熱を受け止め事業へ昇華させる土壌があってこそ。ヤマハ発動機の新規事業は未来の市場を切り拓くだけでなく、私たちに「挑戦することの意味」を静かに問いかけてくれます。

AIによる記事まとめ

FM AICHIのラジオ番組『TOKAIリーダーズ・コンパス』より、ヤマハ発動機の新規事業開発の取り組みを紹介しています。記事では、同社が経営判断の指標として掲げる「感動」を軸に、農業、医療、森林計測など多様な分野へ事業を広げている背景を解説します。既存技術の応用や社員の情熱から生まれた医療機器開発の事例を通じて、挑戦を許容する企業文化について説明しています。

※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。

関連サービス

関連セミナー・イベント

Future Stride
ビジネスブログ「Future Stride」編集チーム
ビジネスブログ「Future Stride」では、ビジネスの「今」と「未来」を発信します。DXや業務改革をはじめとしたみなさまのビジネスに「今」すぐ役立つ最新トレンドを伝えるほか、最先端の技術を用いて「未来」を「今」に引き寄せるさまざまな取り組みにフォーカスを当てることで、すでに到来しつつある新しいビジネスの姿を映し出していきます。
/common/fragments/sidebar

同じカテゴリーの記事をみる

Tag
DX
Display
part