“地域課題を解く新規事業” ― 東邦ガスが挑む未来創造
2026年4月13日掲載
東邦ガス株式会社は、100年以上にわたり東海エリアの暮らしを支えてきたエネルギーインフラ企業です。今回登場するのは、事業開発部 事業開発第二グループマネジャーの安藤嘉英氏。非エネルギー領域での新規事業やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ファンド、農業・陸上養殖・飲食店向けサブスクなど、多彩な取り組みを通じて、地域課題の解決と新たな価値創造に挑む想いをうかがいました。
この記事では、FM AICHIで2025年12月3日(水)に放送された『TOKAI リーダーズ・コンパス』におけるインタビューをもとに、彼らがどのように新規事業と地域課題解決から読み解いた挑戦へ挑んでいるのか。そのリアルなストーリーをお届けします。
TOKAIリーダーズ・コンパス
FM AICHIで放送中(2026年4月現在)の『TOKAIリーダーズ・コンパス』はソフトバンクが提供するラジオ番組です。日本のモノづくりの中心地である愛知県・東海エリアで「イノベーションに挑む企業」のキーパーソンに、挑戦へのストーリーをうかがっています。
放送局:FM AICHI(株式会社エフエム愛知 名古屋 FM80.7MHz / 豊橋 81.3MHz)
放送時間:毎週水曜 20:00~20:30
出演者紹介
新規事業領域設定とCVCの立ち上げ
大野:FM AICHIをお聴きのみなさん、こんばんは。 大野泰敬です。
渡邊:FM AICHIパーソナリティ渡邊晶子です。
大野:さて、本日お話をおうかがいするのは、東邦ガス株式会社 事業開発部 事業開発第二グループマネジャーの安藤 嘉英さんです。よろしくお願いいたします。
安藤:よろしくお願いいたします。
渡邊:お願いいたします。
大野:今日は盛りだくさんですよね。こんなに新規事業に取り組んで、しかもいろいろなジャンルをやられている会社さんって結構珍しいのかなと思うんですけれど。まず一つずつお聞きしていきますが、この事業開発部というのはどういうことをミッションにされている部署なんですか。
安藤:事業開発部も実際に3つのグループがございますが、私ども第二グループに関しては、国内で非エネルギー事業において新しい事業を立ち上げるというのをミッションに掲げております。
大野:非エネルギーとなると、どの領域を目指そうとしているのですか。
安藤:私が就任した当初は特に領域が定まっておらず、いろんなことにチャレンジはしていたものの、ちょうどCVCを立ち上げるタイミングで、スタートアップ企業さんから見て「東邦ガスってどんな会社かな」っていうのが分かりやすいようにしたいこともあり、ちょうどいい機会でしたので、領域を定めようという話になりました。当時のメンバーと色々話し合いをする中で、スーパーシティ構想という内閣府が提唱していた構想をヒントにしました。その中でも当社としての強みとかアセットなんかが生かせる領域を絞り込んでいったときに、4つの領域に絞り込んで、今、新規事業を立ち上げているというところです。具体的には、アグリ・フード、ウェルネス・ウェルビーイング、不動産、観光、この4領域ですね。ここで新しい事業を立ち上げたいというのが今、東邦ガス 事業開発第二グループのミッションになっております。
大野:これは、さっきもお話しされているんですけれども、CVCも立ち上げたんですか。
安藤:そうですね。これは本格的には2025年の2月からではありますけれども、総額50億円のCVCを立ち上げました。これも「シン・インフラファンドby TOHO GAS」という名称で立ち上げております。
大野:若くて新しいことを頑張っているスタートアップに対してお金を出資してあげて、その事業を育てるところをサポートするそうですね。運用総額が50億円ですか。2024年に立ち上げられたということは、どれくらい前に会社に起案されたんですか?
安藤:起案自体は私が来る前、前任のマネジャーのときからあった話だと聞いていますけれども、中々形にならない中で、ちょうどまさに1年半ぐらい前に具体的にスタートアップへの投資を通じての協業といいますか、新規事業というのを考えないといけないタイミングになったということで、その時流に身を任せてCVCの立ち上げに奔走したという感じです 。
渡邊:ちょうど丸1年くらいですかね。
安藤:そうですね。
大野:本当にうまくワークしているなっていう感じなんですけれども、安藤さん自身も今の部署に来られる前は、特例子会社を自分でつくって、そこの代表取締役に就任されたとお聞きしています。
安藤:はい、そうですね。4年ほど特例子会社で代表を務めていましたね。
大野:これは人事部で障がい者雇用に従事しながら、やっぱり現場を知って、これを何とかしなきゃいけないということで作られたんですか。最初、会社にそれを提案したとき、周りの反応っていかがでしたか。
安藤:正直なところ、総論賛成、各論反対という、そんなイメージがあったかなと。振り返るとですけど。
大野:そこをどうやって突破されたんですか。情熱?
安藤:もちろんベースとして、新規事業を立ち上げるときに私がメンバーにいつも言っているのは、やはり一番大事なのは想いというか、Willというか。これ人事部時代にキャリアコンサル的なこともやっていたんですけれども、実際Will・Can・Needみたいなフレームワークがあってですね、Will=想いと、Can=何ができるかという能力と、Need=世の中からどんなことが求められているか、その真ん中に求めるキャリアがあるよねっていうのはよく言われる話です。それは新規事業でも一緒じゃないかと思いまして。 そのWill・Can・Needを大事にしながら新規事業を立ち上げようねって言ってる中でも、やはり一番はWillかなと。中々想いがないと続けられないっていうのは、自分が東邦フラワーを立ち上げたときにすごく思いましたので、その想いは常に大事にしています。加えてもう一つ言うとすれば、やっぱり社内に味方をたくさん作ることです。特に上層部というか上役の方を味方につけるっていうのはすごくいいことなんだろうなと思ってます。先日もボストン コンサルティングさんの本を読んだときに、ゴッドファーザーとかゴットマザーみたいな表現をされていましたが、いわゆる会社の中でも重鎮みたいな方を味方につけると、意外に新規事業ってブレークするよ、なんていう話が載ってたりもしたので、やっぱりそうなんだなと思ってみたりもしています。
渡邊:どうやったら味方にできるんですか?
安藤:振り返ったんですけど、可愛がられるのが一番いいかなと思っています。
大野:可愛がられる?
安藤:どうやったら可愛がられるかということなんですが、これも改めて自身の20数年を振り返ってきましたけれども、やっぱり、その場その場というか、そのときを一生懸命やるということに尽きるかなと思います。一生懸命やっていれば、周りがやっぱり安藤が頑張ってるんならちょっと助けてやるかみたいな、そんなシーンがたくさんあったなと。この番組出演のお話をいただいたときに、いい機会だったので自分自身のこの25、6年を振り返ってみたんですけど、そんなシーンが多かったなと思いましたので、やはり先ほど申し上げたような、いかに可愛がられるかという、これはプライベートも含めて使えるものは全部使ってとことん入り込むということかなと思います。
農業・陸上養殖・飲食DXの挑戦
大野:いや、これはすごいいいヒントになった気がします。私もすごくそれは分かりますね。やっぱり味方を社内で増やしていかないといけない。特に上層部でいかに役員の人を味方につけるのかというのがすごく重要ですよね。その役員の方を味方にして色々な事業を進められているかと思いますが、まずやっぱり農業をかなりやられている印象ではあるんですけど。
安藤:農業と言っても、まさに農作物を生産する本格的な事業自体は今年に入ってからなんです。農業をちょっと広く捉えて、我々が「循環型低炭素農業」と呼んでいる取り組みが、実質的なスタートだったと思っています。これは名古屋大学発のスタートアップさんで、TOWING(トーイング)さんという企業様がありますが、TOWINGさんと連携をし始めてから、この農業分野に踏み込んだというのが実際のところじゃないかなと思います。TOWINGさんは「宙炭(そらたん)」という、農地に使用すると収穫量がアップしたり、耕作放棄地だったところが早いタイミングで復活したり、そういうものを作っていらっしゃいます。それを作る製造プラントを、東邦ガスグループとしてサポートしているというのが現状です。幸いグループ会社にプラントの設計だとか施工管理ですね、そういったところを強みにしている東邦ガスエナジーエンジニアリングという会社がありまして、そこと組んでTOWINGさんと連携しているというのが、まず農業分野の取っかかりだったかなと思います。
大野:この農業のところもちょっと深掘りしてお聞きしたんですけど、ほかにもまだいっぱいあるんですよね。サーモンの陸上養殖とか。これはなぜサーモンの陸上養殖なんでしょうか。
安藤:これはまさに自前開発の代表的な事業になりますけれども、実は都市ガスって海外から輸入をしているんですが、-162度でガスを液化して輸入をしているんですね。液化したガスを工場まで持ってきて、海水をかけて気化させてます。その後に匂いをつけて、各お客さまへお届けをしているんですけれども、-162度の液化したガスに海水をかけるので、すごく海水が冷たくなるんです。それを今まで海に戻していたんですが、何かに活用できないかっていう当時の担当者の思いがあり、いろいろ魚を調べていくと、サーモンが冷たい水を好む冷水魚なので、この冷たい水で育てるといいんじゃないかと。確かによくよく見たらノルウェーとかスウェーデンでサーモンって育ちますよね。そういったものを弊社でも同じような仕組みでやれないかなというのでスタートしたと聞いてます。自社の強みを生かしたという事業なのかなと思っています。
大野:海水って、多分普段は20度ぐらいですかね。
安藤:そうですね。夏場に差し掛かるともう25度とか30度近く上がるんですけど。
大野:それを冷ますんですね。何度ぐらいまで下げるんですか?
安藤:一回、温度を下げるその機械を通すと、大体そうですね、2、3度ぐらいは海水温が下がると言われています。
大野:サーモンってそんなに寒くても大丈夫なんですか?
安藤:ちょうどいい成育温度帯が10度から20度ぐらいと言われていますね。
大野:渡邊さんは多分あまりイメージがないかもしれないですけど、陸上養殖ですごくお金がかかってるポイントとして、「温度をコントロールする」ってことなんですよ。でもこれをやると多分その辺のコストがすごく浮くんですよ。
安藤:そうなんですよ。一般的に陸上養殖は閉鎖循環式という、プールみたいな水槽を作って、その中にろ過設備とか、電気チラーという温度を下げる機械を置いて、結局ぐるぐる回してるんです。閉鎖した中で循環する育て方が一般的らしいんですけれども、我々はそれに対して掛け流し式で行なっています。閉鎖循環式は海水を冷やして、その海水を水槽に貯めて養殖に利用するので、どうしても海水をぐるぐる回すとすごく臭くなるんです。魚なので糞を出しますので、そういったものが溜まっていくと水が濁ったりします。一方で我々は、掛け流してどんどんどんどん新しい水を供給をしているので、臭みが少ないと言われています。実際、刺身で食べていただいたお客さまからは、本当に臭みがなくて、脂身もさっぱりしてて「すごく私は好きだわ」みたいな声はよく聞きました。
渡邊:愛知県の知多市で作られているということで、リスナーの皆さんの中にもスーパーで見たよって方もいらっしゃるかもしれませんね。
大野:農業ときて、陸上養殖ときて、その次はドリンクのサブスクサービス「フラノミスタ」も手がけているんですか。すごいですね。
渡邊:よく目にしますね。飲食店で。
安藤:ありがとうございます。2020年の10月、まさにコロナ禍に立ち上げたサービスになりますけれども、コロナ禍で苦しんでいる飲食店の皆さまをぜひ救いたいという、そういう熱い想いでこの事業を立ち上げたと聞いております。
渡邊:月額550円のサブスク。加入すると、加盟飲食店のドリンクが毎日1杯無料になる。だから毎日外食で飲む方もいらっしゃるんじゃないですか。超お得!
安藤:超お得です。
大野:しかもあれですよね、毎日1杯無料といっても、ほかのお店に行ったらまた使えるんですよね。
安藤:次のお店でも使えます。
大野:3軒行ったら3杯飲める。
渡邊:もうそれだけで月額分は飲めますね。
想いとチームが生む東邦ガスの未来
大野:本当に多岐にわたるサービスで一見バラバラに見えるんですけれども、何か新規事業で大切にしていることとか、こういう事業を育てていきたいみたいなところを挙げるとしたら、何がありますか。
安藤:やはり私どもは地域に育てられたというか、今まではガス事業を中心にエネルギーのインフラ会社としてこの地域で貢献をしてきた自負はありますけれども、2022年に100周年を迎えて、今後は先ほど申し上げた新たな「シン・インフラ」という領域で地域の課題をぜひ解決していきたいという思いで、今、新規事業を立ち上げている状況でございます。
大野:多岐にわたる事業を、どういうように管理、評価して、リソースの配分をされてるんですか。
安藤:これはもう目下の課題でもあり、リソース配分というのはまさにですが、一旦私のチーム運営としては、基本的には領域ごとにチームを編成をして、リーダーを作り、そのリーダーに権限を委譲して好きなようにやらせてます。自分で緩やかなティール組織と勝手に名称していますけれども、本当に一人一人に好きにやりたいことをやらせてあげる、そんな状況を作るというのが今の私のスタイルかなと思っております。
大野:新しい新規事業のネタを探すときだとか、そういったものを承認するだとか、色々な軸があると思うんですけれども、その軸っていうのは誰かのためとか、社会の活性化につながるのかといった思いが非常に強いんでしょうか。
安藤:そうですね。振り返ってみると、やはりまずは地域課題を解決できるかどうかという観点は大事にしておりますので、そこは一つ新しい事業を立ち上げるときの軸というか、基準になっているのは間違いないと思います。
大野:情熱とか地域社会課題というところと、あともう一つ何か挙げるとしたら、大切にしていることはありますか。ご自身の経験とかでも全然問題ないんですけれども。
安藤:そういう意味でいきますと、「働く」という漢字をちょっと思い浮かべていただいたときに、これは本質が詰まっていると思いまして、亻(にんべん)、人が力を重ねると書いて「働く」になります。なので、これは私の勝手な解釈ですけれども、やはり一人でやる仕事ももちろん素晴らしくて魅力があるんですが、私の中で働くっていうのはやっぱりチームで仕事をするってことじゃないかなと思ってます。そこはこだわってるといて、チームって、T・E・A・Mと書きますが、「T=楽しく」「E=笑顔で」「A=明るく」「M=前向きに」仕事をしようねと。これは東邦フラワーのときにメンバーと一緒に作ったもので、メンバーを大事にしたいなと思って自分なりに言語化をした記憶があります。これは今の事業開発部の事業開発第二グループに来ても、メンバーたちには伝えている想いですね。新規事業を立ち上げていく上で大事にしているもう1つの自分自身の軸と言ってもいいかもしれません。
渡邊:素敵なフレーズですね。
大野:もっと聞きたい。
安藤:これ特許をとっといた方がいいかなと思っています。
渡邊:まだまだお話をおうかがいしたいんですが、そろそろお時間となってしまいました。今日は東邦ガス株式会社 事業開発部 事業開発第二グループマネジャーの安藤 嘉英さんにお話をうかがいました。
大野:では、安藤さんに最後に一つお話しいただきたいんですけれども、人生ですとか仕事をしているときの道しるべとなった言葉、どういった言葉だったんでしょうか。
安藤:色々な本を書かれている有識者の方で、田坂広志さんという方がいらっしゃるんですけども、その中に「逆境を超える心の技法」という本がございまして、そこの中の抜粋の言葉になります。「人生で起こること、全てに深い意味がある。人生で出会う人、全てに深い縁がある。人生で起こること、全て良きこと」これはもう僕の仕事をする上での価値観、軸になってるんだろうなと思います。元々一切の偶然はないと、全て必然だという思いで過ごしてきましたが、それを綺麗に言語化された田坂先生のお言葉かなと思って、これをいつも胸に仕事をしています。
大野:安藤さん、本日はありがとうございます。
安藤:どうもありがとうございました。
まとめ
安藤氏の言葉から伝わってきたのは、事業の多さ以上に、その一つ一つに通じる「想い」と「人」を信じる姿勢でした。「Will・Can・Need」のフレームや「TEAM=楽しく・笑顔で・明るく・前向きに」という合言葉は、新規事業だけでなく日々の仕事にも効く普遍的なヒントです。農業や陸上養殖、フラノミスタのようなサービスも、全ては地域に育てられてきた企業として、次の100年をどう描くかという問いへの一つの答えなのかもしれません。変化が激しい時代だからこそ、自分たちのWillを言語化し、仲間を巻き込みながら一歩を踏み出す――東邦ガスの挑戦は、私たち一人一人のキャリアや組織づくりにも、多くの示唆を与えてくれます。
AIによる記事まとめ
FM AICHIのラジオ番組『TOKAIリーダーズ・コンパス』より、東邦ガス株式会社が地域課題の解決に向け、非エネルギー領域で新規事業を創出する取り組みを紹介する記事です。CVCの立ち上げや農業、陸上養殖、飲食店向けサブスクなどの事例を通じて、地域への貢献を軸に、想いとチームを重視しながら未来の価値を生み出そうとする姿勢を伝えています。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
関連サービス
TOKAIリーダーズ・コンパス
ソフトバンクが提供する東海地域で放送中のラジオ番組です。番組では、東海圏から未来を切り拓くリーダーたちを迎え、経営の舞台裏や挑戦へのストーリーをうかがいます。普段は聞けないキーパーソンの素顔やエピソードから、明日へのヒントが見つかる…そんな「羅針盤(コンパス)」のような番組です。