“伝統と革新のバイテック” ― 鍋屋バイテック会社が挑むDXとスマート農業
2026年4月7日掲載
1560年、戦国時代に鋳物業として創業した鍋屋バイテック会社。岐阜県を拠点に、伝統技術を継承しながらDX・AI、スマート農業へと挑戦を続けています。常務取締役・丹羽 哲也氏が語る、老舗企業の進化の軌跡に迫ります。
この記事では、FM AICHIで2024年12月24日(水)に放送された『TOKAI リーダーズ・コンパス』におけるインタビューをもとに、彼らがどのように“伝統から読み解いた挑戦”へ挑んでいるのか。そのリアルなストーリーをお届けします。
TOKAIリーダーズ・コンパス
FM AICHIで放送中(2026年4月現在)の『TOKAIリーダーズ・コンパス』はソフトバンクが提供するラジオ番組です。日本のモノづくりの中心地である愛知県・東海エリアで「イノベーションに挑む企業」のキーパーソンに、挑戦へのストーリーをうかがっています。
放送局:FM AICHI(株式会社エフエム愛知 名古屋 FM80.7MHz / 豊橋 81.3MHz)
放送時間:毎週水曜 20:00~20:30
出演者紹介
1560年創業、バイテックのDNA
大野:FM AICHIをお聴きの皆さん、こんばんは。 大野泰敬です。
渡邊:FM AICHIパーソナリティ渡邊晶子です。
大野: さて、本日お話をおうかがいするのは、鍋屋バイテック会社 常務取締役の丹羽哲也さんにお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
丹羽: よろしくお願いいたします。
渡辺: お願いいたします。
大野: クリスマスですよ。
渡辺: はい。
大野: スタジオの中もツリーやライトといった装飾でキラキラしています。
渡辺: はい。スタジオ内に色々とクリスマスの装飾もありますね。
大野: そんな記念すべき日にお越しいただいたのは、岐阜県で鋳物を手がけている会社とお聞きをしているのですが、現在はどういった事業を展開されているのでしょうか?
丹羽: 当社は1560年に鋳物で創業しており、現在も創業以来の鋳物事業を大切に継承・発展させながら、時代に合わせた新しいビジネス領域を切り開いています。現在は、新技術領域として工場や製造装置に使われるような機械要素部品を自社で開発・製造し、世界中に販売する事業を展開しています。
渡辺: 1560年というと、戦国時代ですよね?
大野: 織田信長や桶狭間の戦いがあった時代から事業を続けてこられた老舗企業というと、伝統を守るイメージが強い気がしますが、これまでの歴史を拝見すると、新しい産業や分野に積極的にチャレンジされている印象を受けました。実際、会社の中では、新たな取り組みを推進していこうというマインドや文化がありますか?
丹羽: そうですね。会社名に当社のDNAを込めています。「鍋屋」は創業以来鋳物師として用いてきた屋号です。そして「バイテック(Bi-Tech)」というのは、「バイ・テクノロジー(Bi-Technology)」の略称で、Bicycleの「Bi」と同じく”2つ”を意味しています。すなわち「2つの技術」という造語です。伝統ある鋳物技術をしっかりと継承・発展させながらも、時代に合わせた技術を導入し、新商品を開発していく。一見相反するように見える概念ですが、「バイテック」は、それらを融合させ新たな価値を創造していくという考えを表しています。会社名そのものが、私たちが目指す姿を体現しています。
渡辺: 覚悟を感じますよね。「鍋屋バイテック会社」というお名前に、そのマインドが刻まれているのですね。
大野: 伝統とはある意味、長い歴史の中で受け継いできたものだと思います。それを守りながら、同時に変えていく。この両軸が大切かなと思います。特に新しいものに変えていくというときに、指針にされていることや大事にしていることは、ありますか?
丹羽: そうですね。当社が変えていく上での指針は、ユーザーやマーケットに課題があるかどうかです。お客さまやマーケットに課題があるからこそ当社の存在価値があります。そして、当社の商品を通じて課題を解決していくことが私たちの役割です。そのように考えながら、新しいことに挑戦してきました。
AI活用で進化するものづくり
大野: そんな歴史のある企業が、AIや農業分野にも取り組まれているとうかがい、今日はそのあたりをたっぷりとお聞かせいただければと思います。まずDXの取り組みについて、色々な活動をされていると思いますが、特にAIでお客さまとの電話商談データを分析し、新商品開発に結びつけているというのは、具体的にどのようなことをされているのですか?
丹羽: 当社は、全ての顧客接点で得られた情報やデータを経営資源として活用していこうと考えております。当社には電話やEメール、ウェブサイトなどを通じて、色々なお問い合わせが寄せらせています。営業やコールセンターでのやり取り、提出した提案書の内容も含め、膨大なお客さまとのコミュニケーション全てを統合しています。これらの情報を全て見渡し、その中からニーズを見いだすのは容易ではありません。当社は数十万点の商品を扱っており、人の力だけでは限界があります。そこでAIを活用し、膨大な情報の中からお客さまの課題を抽出しています。そして、その分析結果をもとに、将来取り組むべき機械要素部品の開発テーマを導き出しています。
大野: すごくないですか? 色々な企業の方に来てもらって、AIについてもお話をお聞きしているのですが、老舗企業でありながらもうすでに取り組まれている。 しかも、色々な情報がもうデータ化され、それが日々レポートか何かで送られてくるのですか?
丹羽: そうですね。自動収集されるので、それがレポート形式で見られるようになっています。
渡辺: 数十万という製品数もそうですが、長い歴史がある会社さんだからこそ、蓄積しているデータ量もきっと膨大ですよね。
丹羽: 膨大です。かつては、優秀な営業や開発担当者が一生懸命自ら情報を集め、読み込み深夜まで分析することでニーズをつかんできた時代もありました。しかし、そういう時代を経て商品数が数十万点にまで拡大した現在、そのやり方では限界があります。
大野: AIやデータ化をするというときに、社内では「AIや他社に自分たちの持っている資産を預けていいのか」「セキュリティ上大丈夫なのか」と、不安要因も生まれてきているのではないかと思うのですが、実際いかがでしたか?
丹羽: 当然ながら、データやセキュリティについては万全の体制を整えています。AIの活用も、オプトアウト設定の上で社内のイントラネット環境に限定しており、情報が外部に出ない仕組みを徹底しています。むしろ当社では、膨大なデータからニーズを抽出する作業をより効率的に、仕事と生活のバランスを取りながら行うためのツールとして使っていく分には、積極的に使っていこうという機運が、おそらくほかの会社よりはあったのかなと思っています。
大野: 渡辺さんからすると、色々な取り組みの中で、今AIの話が中心でしたが、たくさん聞きたいことがあると思うんですよ。限られた時間の中で、一番聞きたいことは何ですか?
渡辺: 私は、本社を「工園(こうえん)」と呼んでいるということがすごく気になりまして。
大野: 確かに。
渡辺: 工場の「工」に、パークの公園の「園」を合わせた「工園(こうえん)」という造語ですかね? そういうふうに呼ばれていらっしゃいますよね? これはどうしてですか?
丹羽: 当社では、本社工場や鋳造工場を「工園(こうえん)」と呼んでいます。「工場公園」を略した言葉です。これは単に緑地や美術館があるからだけではなく、工園全体を新しい発想を生み出す場にしたいと考えているからです。芝生広場や美術館、農園など性質の異なる空間が隣り合うことで、製造現場の社員とアーティスト、農作業をする人、地域の方やお客さま、そういった多様な人が自然に行き交う場になっています。そこで交わされる何気ない会話や、異なる分野のアイデアの新結合が、新たな気付きや発想を生み出して、結果としてイノベーションを創発していく。「工園」というのはそういったことをやっていく場として、大変重要なところであると考えております。
渡辺: さらっと今おっしゃいましたけど、美術館があったり芝生があったりと想像が全然つかないのですが、「ものづくり」とアートや自然というものは、相性が良いのですか? 相互作用?
丹羽: そうですね。一見すると全く関係していないように見えますが、ものづくりもアートや農業もモノを作っていくというプロセスです。そこにある課題感や自分が表現したいもの、作りたいものを追求しながら、そのエッセンスを抽出して具現化していく。そのプロセスそのものは、全てのものに共通すると当社は考えております。老舗企業であるからこそ、長い時間軸でそういう価値の循環を見ることができると思っております。
渡辺:価値の循環。すごく大切にしてくれそうだなと思いました。
大野: 私も最初、一見離れていそうに見えますが、丹羽さんたちとお話をしている中で、「確かにプロセスは同じだな」という考えに変わってきました。やはりそこまでの過程は、すごく通じるものがあるのだなと強く感じましたね。
スマート農業という新領域
大野:先程のお話の中で触れられていた「農業」について、今日はぜひ詳しくうかがいたいと思っています。さまざまな取り組みをされている中で、私が特に注目しているのが、「ezeio(イージーアイオー)」です。これ商品は、 元々は農業用に使っていたわけではなく、別の分野で活用していたものを農業用に使えるようにしたという感じでしょうか?
丹羽: そうですね。現在、当社の主力事業領域である工場向けに稼働監視システムとして「ezeio」というものを開発しています。これは工場の中で発生しているありとあらゆる状況を、さまざまなセンサーを通じて把握し、必要に応じて制御まで行えるIoTプラットフォームです。このezeioを農業分野にも展開すべく、今回当社のバイテックファームという農場に適用したという状況ですね。
大野: 例えば、温度と湿度がこうとなったら、自動で開閉して水を上げるとか、色々なセンサーから情報をキャッチアップして、制御し、それらをコントロールするための基盤となるものですかね?
丹羽: そうですね。製造業の現場で培ってきた工程のばらつきをデータで把握し、管理するという発想を、そのまま農業に応用しています。なぜ今年は収量が多かったのか、なぜこの区画だけ成長が遅れたのか、そうした要因を感覚ではなく数値で検証できるようにするということですね。結果として、安定した品質と収量を実現しながら、ほかの農園にも展開可能にしていく。これこそ私たちが目指すスマート農業の標準化ソリューションだと考えております。
大野: そもそも根本的な疑問なのですが、なぜ農業に参入しようとお考えになったのですか?
丹羽: 当社は創業ビジネスとしては鋳物ですが、途中から新技術領域である機械要素部品の事業を広げてきました。事業ドメインとしては機械装置の設計者ということなのですが、その領域もまた、過去の諸先輩方が新しい挑戦を積み重ねていった結果としての新技術領域ということです。現在の我々の世代に課せられた責務というのは、その既存技術をしっかりと継承していきながらも、我々ができる新しい技術、新しい領域を作り出していくというところにあります。その新しい領域として目をつけたのが、食料自給率の問題、後継者問題など、課題の多いアグリ事業ということでございました。
大野: 渡辺さんすごくないですか? 今まであまり聞いたことがない。
渡辺: しかも工業の分野で培ってきたものが、こんなふうに転用と言いますか、「新しく始めました」ではなく、ここもやはり根本がつながっている感じがしますね。
丹羽: そうですね。スマート農業では、多くの機械やセンサー、制御機器が使われています。そこには当社が得意としてきた、標準部品で現場の課題を解決するという発想を生かせる余地が非常に大きいと感じております。これまで製造業で培ってきた標準化のノウハウを農業分野に適用することで、農業のスマート化を促進させ、今の農業が抱えるさまざまな課題を解決できるのではないかと考えております。
大野: すごく大事なポイントですね。例えば現在のロボット収穫機がイチゴを収穫した場合、今の技術だと人の手の繊細な動きをうまく再現できず、収穫物の約3割に傷がついてしまうとか、うまく収穫できないといったケースがあると思います。
渡辺: 機械を介しているからこその課題ですね。
大野: そうなんですよね。例えば、収穫時に傷がついてしまう課題に対して、ネットやアーム部分に取り付ける部品を工夫することで、これまで30%出ていた廃棄を減らしていくとか、収穫量を増やしていくことができる。その部品を作れるというところが、すごく大きなポイントだと感じているのですが、その理解で合っていますか?
丹羽: はい、おっしゃる通りです。
大野: おお、よかった(笑)。
丹羽: ロボットが使いやすいような環境にしていく、そのような発想の標準部材が今後のスマート農業にも必要だというところで、そこに当社のものづくりのノウハウが生きてくると考えております。
大野: スタートアップ企業だと、大量な部品点数は作れないと思うんですよね。だからそういった部分では皆さんの会社だと、それらを設計することもできれば、実際作ることもできるし、流通させることもできるということですね。
丹羽: はい、そうです。
大野:これからのスマート農業にはすごく鍵になってくる技術ではないかなと感じます。やはりこの標準化ニーズというところが成功の鍵ではないかなと思っています。一見、歴史ある会社さんで鋳物中心に入ってきたのですが、個人的にはこのスマートアグリを推進していこうという流れで、ひょっとしたら今から50年後、100年後は、「え?アグリテックの会社でしょ?」となっているかもしれない。
渡辺: 確かに鍋屋バイテックさん、「なんで鍋屋って付いてるの?」って質問がくるかもしれないですね。
大野: そう、「え?鋳物やってたの?」ってね。100年後そうなっているかもしれない。
渡辺:夢がありますね。 さあ、本日もあっという間にお時間となってしまいました。今日は鍋屋バイテック会社 常務取締役、丹羽哲也さんにお話をうかがいました。
大野: では最後に一つ、さまざまな努力をされてきたとは思いますが、道しるべとなった言葉はどういったものだったのでしょうか?
丹羽: はい。私の座右の銘は、「社会を憂うな、自己を磨け」ということであります。昭和48年生まれなのですが、第2次ベビーブーマーとして人口が多い世代の中で、色々な競争がありましたし、バブル崩壊後の就職超氷河期での就職活動というところもあって、なかなか厳しい世の中を生き抜いていく必要がありましたが、世の中を嘆くより、そういう中においても自分自身を磨くことを通じて、社会に貢献していきたいと考えております。これはもう若い頃から現在まで続く、私自身の非常に重要な言葉、座右の銘として心に刻んでいます。
大野: 丹羽さん、本日はありがとうございました。
丹羽: ありがとうございました。
まとめ
鍋屋バイテック会社の挑戦は、伝統を守ることと変革を起こすことが決して相反しないと教えてくれます。AIやスマート農業といった最先端分野への展開も、ものづくりの本質を見据えた必然の進化。丹羽氏の言葉の一つ一つから、次の100年へ向かう確かな意志が感じられました。
AIによる記事まとめ
FM AICHIのラジオ番組『TOKAIリーダーズ・コンパス』より、1560年創業の鍋屋バイテック会社が鋳物の伝統技術を継承しながら、DX、AI、スマート農業へ挑戦する姿を紹介します。社名に込めた「二つの技術」という思想、顧客接点データをAIで分析して新商品開発に生かす仕組み、工場で培った標準化の発想を農業に応用する戦略を、丹羽哲也氏へのインタビューを通じて具体的に伝える内容です。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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TOKAIリーダーズ・コンパス
ソフトバンクが提供する東海地域で放送中のラジオ番組です。番組では、東海圏から未来を切り拓くリーダーたちを迎え、経営の舞台裏や挑戦へのストーリーをうかがいます。普段は聞けないキーパーソンの素顔やエピソードから、明日へのヒントが見つかる…そんな「羅針盤(コンパス)」のような番組です。