“教育を支えるDXとAI” ― 河合塾が挑む学びの進化

2026年4月13日掲載

“教育を支えるDXとAI” ― 河合塾が挑む学びの進化

大学受験指導の最前線を走り続ける学校法人河合塾。その裏側では、学びの本質を守りながらも、DXや生成AIといった新しいテクノロジーを積極的に取り入れる挑戦が進んでいます。今回は、IT戦略推進部 部長の前中浩司氏と、統括チーフの井上慎一氏を迎え、模試DXやChatGPT活用の実践、そして教育におけるテクノロジーの役割についてお話をうかがいました。
この記事では、FM AICHIで2025年12月31日(水)に放送された『TOKAI リーダーズ・コンパス』におけるインタビューをもとに、彼らがどのように“教育現場から読み解いたDX・AI活用の挑戦”へ挑んでいるのか。そのリアルなストーリーをお届けします。

TOKAIリーダーズ・コンパス

FM AICHIで放送中(2026年4月現在)の『TOKAIリーダーズ・コンパス』はソフトバンクが提供するラジオ番組です。日本のモノづくりの中心地である愛知県・東海エリアで「イノベーションに挑む企業」のキーパーソンに、挑戦へのストーリーをうかがっています。

放送局:FM AICHI(株式会社エフエム愛知 名古屋 FM80.7MHz / 豊橋 81.3MHz)

放送時間:毎週水曜 20:00~20:30

目次

出演者紹介

学校法人河合塾 前中 浩司 氏
前中 浩司 氏
学校法人河合塾
IT戦略推進部 部長
大学院卒業後の2002年に、東証一部上場の重工業メーカーに入社。2007年に、河合塾へ入社したのち、福岡校、経営管理部、グループ会社の“河合塾進学研究社”での勤務を経て、現在、IT戦略推進部の部長として活躍中。
学校法人河合塾 井上 慎一 氏
井上 慎一 氏
学校法人河合塾
IT戦略推進部 統括チーフ
1999年、東証一部上場の独立系ITベンダーへ就職。2003年11月に河合塾へ転職。以降、IT関連部門でシステム開発計画の管理や、個別のシステム企画に従事。近年では、生成AI関連の研究開発も主導している。
大野 泰敬 氏

大野 泰敬 氏

メインパーソナリティ

複数企業を経営する事業家兼投資家。人気FMビジネス番組のメインパーソナリティを務める。ソフトバンク株式会社でiPhone 日本初上陸時のマーケティングを担当し、シェア拡大に貢献。独立後は事業戦略、M&A、資金調達などで多数の大手企業を支援。東京オリンピックITアドバイザー、農林水産省・明治大学客員研究員としても活動し、「ご当地イノベーション」を提唱。累計500億円の事業実績を持つ。
渡邊 晶子 氏

渡邊 晶子 氏

アシスタント

NHK山形放送局、NHK名古屋放送局に勤務し、NHK山形『NHKニュースやまがた6時』やNHK名古屋『まるっと!』などに出演。2025年よりフリーアナウンサーとして活動を開始、FM AICHIのワイド番組『MORNING BREEZE』のパーソナリティを務めるなど多方面で活躍中。

紙文化を変える「模試DX」の挑戦

大野:FM AICHIをお聴きの皆さん、こんばんは。 大野泰敬です。

渡邊:FM AICHIパーソナリティ渡邊晶子です。

大野:さて、本日お話をおうかがいするのは、学校法人河合塾 IT戦略推進部から部長の前中 浩司さん、そして統括チーフの井上 慎一さんにお越しいただいております。本日はよろしくお願いいたします。

前中:よろしくお願いします。

井上:よろしくお願いします。

大野:このIT戦略推進部というのは、何を推進されている部隊になるのですか。

前中:はい。基本的にはシステムの開発、運用保守というところをメインにやっている部署になります。昨今、生成AIが非常に注目されておりますが、当塾内におきましてもそれらの活用というのが命題になってきております。これまでの「システムを開発する」というミッションから、「システムをより生かす」もしくは「AIを活用してDX推進する」、そういったところが会社の中でも非常に求められてきております。戦略的にITを生かしていこうというミッションが新たに加わって、今そういう名称になっています。

大野:渡邊さんは予備校とかに通っていましたか。

渡邊:私は学生時代、塾には通っていたんですが、予備校には通わなかったですね。

大野:塾に通っていたんですね。

渡邊:はい。高校生のときに通いながら勉強していました。

大野:私はスポーツ推薦で入ったので、あまり塾に通ってなくて。もう30年ぐらい前の古い記憶なので、今はすごく変わっているんじゃないかなと思います。

渡邊:あまりデジタルのイメージがないんですよね。どうしても紙に書いて勉強する時代だったので。でもすごく色々進んでいるんですよね。

大野:特に今日はDXとAIですね。この2つを軸にお話をうかがいたいなと思っているんですが、まずDXというところでいきますと、河合塾さんでは「模試DX」という事業というかサービスをやられているかなと思うんですけれども、この「模試DX」というのは今まで紙でやっていたものがデジタル化している、そういったものなんですかね。

前中:はい。そうですね。これまでの「受験票を記入する」ですとか、「申し込みをする」といった紙主体で行っていた色々な業務が、河合塾ポータルというWebサイトの中で一貫してできるというところが大きなDX化の流れになります。

渡邊:この「模試DX」を導入すると、受験生側、そして学校の先生側、それぞれどんなメリットがあるんでしょうか?

前中:はい。受験生の方たちは河合塾のポータルで申し込みができます。これまで受験校、志望校などの登録は試験当日に紙で記入していて、試験前に時間のかかる仕組みになっておりました。これまでそれが当たり前だったんですけれども、できるだけ模試を受験される生徒さんたちにも、模試受験に集中していただきたいと考えておりますので、負担をできるだけなくしたいと。ですので、申し込みのときに、あらかじめどこどこが志望校ですよ、と登録できる形として置く。そういうことを全てワンストップでやろうというのがこの模試DXの一つの機能になります。そのほか、大学など普段とは違う会場で受ける方がいますが、普段と違う会場で受験される方については、当日の案内だけではなく、事前に河合塾ポータルの中で、どの教室であるかが明示されるので、受験する方たちは会場で迷わず、混乱することもなく受験できます。

渡邊:受験票の番号を見て、何番だから「何番から何番はこちらです」「棟が違う」とかもやらなくていいわけですね。

前中:そうです。

渡邊:事前に分かっていけるんですね。

大野:渡邉さんは、何か関連したバイトをしてたと聞きましたが?

渡邊:私は大学生のときに中学3年生の子たちが受ける模試の試験会場に関わるアルバイトをしていました。やはり受験票に個人情報を書いてもらったり、まさに志望校を冊子から探して番号を書いてもらうというところの抜け漏れがどうしても多かったです。試験と試験の間に教室に入って、「ここが抜けているから書いてくださいね」というやり取りに、すごく時間がかかりました。一番最後の科目が終わるまでに確認しなければならないというプレッシャーを感じながら働いていた記憶があります。そういった意味でも、大人側も便利になるなというのをお話を聞いていて思いました。

ChatGPTが支える現場の意思決定

大野:先ほど冒頭のところで、以前の塾ってデジタル化が進んでいないイメージだったという話が渡邊さんからありました。特にChatGPTを塾内に導入するっていう取り組みを推進されているのが井上さんになるのかなと思いますが、どういう取り組みをされているんですか。

井上:まずは社内利用で、スタッフが業務に使っています。例えば、生徒さんや保護者に返事を書くとか、こういう生徒指導をしましたという記録を作るんですが、それを1から作るのではなくて、ChatGPTに校正してもらって、きれいな形で保護者に返すための手助けとして使ってます。あと取り組んでいるのが、校舎で河合塾へ入塾を希望されてる生徒さんに、「この講座はあなたにおすすめですよ」「この大学に行くのであれば、過去の生徒さんはこういう講座を取ったら受かってましたよ」「成績伸びましたよ」という提案をするんですが、以前はスタッフが自分の過去の知識や資料を色々めくっておすすめをしていたんですが、そこでChatGPTに「こういう成績で、こういう大学に志望する生徒さんが来たんだけれども、おすすめ講座はなんだろうか?」と打ち込むと、「この生徒におすすめなのはこういう講座です。なぜならば、こういう理由です」というのを教えてくれます。それを見たスタッフが自分の言葉で、「あなたにはこういうのがおすすめですよ、なぜならば、こういうデータがあるからですよ」という手助けにするというような使い方を今は始めたところです。

渡邊:講座の数もたくさんあって、生徒さんの数もたくさんいらっしゃるからこそですよね。

井上:そうですね。ベテランのスタッフだとそこはスムーズにできるんですけれども、まだ経験の浅いスタッフだと、膨大な資料から探すだとか、過去の知識が少ないので、それを手助けしてくれるツールとして非常に役に立つと考えています。

大野:導入してすぐに成果が出たんですか。

井上:そうですね。最初に申し上げた文章の校正やアイデア出しみたいなところは広く使っているんですけれども、講座の提案というのは、PoCとしていくつかの校舎で使っています。やはり連携するデータによってChatGPTの回答は変わってきますので、「こういうデータを入れておくといい答えが返ってくるね」とか、少し専門的ですがプロンプトチューニングをすると精度がよくなるよねというのを、いくつかの校舎で始めるところです。

渡邊:この志望校に合格したいというゴール向けて一緒に走ってくれる、道筋を一緒に立ててくれるような、いい相棒・パートナーになってくれそうですね。

井上:そこまで発展させられたらいいなと思っています。

大野:こういうものを社内でやろうというのを言ったとき、ハレーションはなかったんですか。

井上:社内のハレーションはなかったですね。むしろぜひ強力に進めてほしいと現場の部門からも期待が高いです。

大野:まあ逆に言うと、それだけ業務負荷がかかっていたり、そこの負荷を軽減したいという気持ちの方が大きかったんですね。

井上:職員の業務負荷もそうですけど、それよりも生徒さんへの提供価値を向上したいという現場の想いが強かったと思います。

学びの本質を守りながら進む変革

大野:これは前中さんへのご質問なのですが、河合塾って今まで培ってきたたくさんのデータを持っているわけじゃないですか。そういうものをデジタル化して、特にAIもそうですし、社内で活用していくというときに、AIに個人情報といったデータを入れちゃいけないんじゃないかとか、データが漏れていっちゃうんじゃないかといった不安や指摘を社内から受けたりしなかったですか。

前中:そこをリスクとして経営層は感じていました。ですので、生成AIが出たときにも個人情報を誤ってプロンプトに入れないとか、そういった注意事項というのは出ています。そういった個人情報や機密情報を絶対漏らさないというところが我々は非常に重要ですので、セキュアな環境で使えるようにクローズドな環境を構築して活用をしています。

大野:新しい技術というのがどんどん出てくる中、教育の本質とか変わらないもの、守っていくものがあると思うんですが、この新しい技術を追い求めていきながら、守らなきゃいけないっていうバランスの中で、判断軸として大切にされていることはどういったところにあるんでしょうか。

前中:変えてはいけないところとしては、河合塾はこれまでも本質的な学びを非常に重要視しております。例えば河合塾の講師陣による質の高い授業、講師陣が作成する独自のテキストに河合塾のノウハウというのが集約されていると思っております。あとは、生徒さん一人一人をきちんと見るチューター制度を河合塾では設けていますが、そのチューターを通して、生徒さんの学習状況や日々の生活の状況をつぶさに見ていって、生徒さんが学びを向上させていく、もしくは学び以外のスキルも成長していただけるような本質的な学びの価値を我々は追求しています。ITに関しましては、それらを補完する役割として、どんどん活用していこうというのが当塾内での総意です。ただし、それを全てAIが賄うのかというとまだまだ一足飛びにはいかないよねというところがあるので、徐々に学びの本質をきちんと生徒さんに提供させていただきながら、それを補完・補強する上でのテクノロジー活用を今進めている状況です。

大野:最後にお聞きしたいなと思っているのが、同じように、DXやAIを推進していかなきゃいけないけれども、なかなか上層部や会社を説得できないという方に、こういうやり方で進めるといいんじゃないかみたいなことのアドバイスをするとしたら、前中さん、井上さんはどんな一声をかけられますか。

井上:チャレンジすることを恐れないでほしいなと思います。例えばAIを入れると人の仕事が奪われるんじゃないかとか、あと情報が漏えいするんじゃないかという懸念を持たれている方が多いと思います。先ほどクローズド環境でという話がありましたが、情報が漏れない環境というのはAIでも専用の環境を作ることができます。あと、人の仕事が奪われるんじゃないかという点については、人に任せる領域とAIに任せる領域は、技術とか時代によってどんどん変わっていくものの、人にしかできない領域というのは必ずあると思います。話した通り、河合塾ではAIに任せることで本来、人がやるべき領域の余力ができると思うんですね。そのAIに任せてできた余力で、さらに人でやる仕事の価値を必ず向上できると思いますので、新しいテクノロジーを使って恐れずにチャレンジしていただくと、より良いものができるんじゃないかなと思っています。

大野:前中さん、いかがでしょうか。

前中:当塾内の考え方としましても、新しい価値を作っていこうとか、変えていこうという風土感は非常にあります。そこはやはり経営層を説得するというよりも、会社組織の中で変革を恐れずに進んでいくことに対しての心理的安全の確保を、リーダーの方たちが特に意識して社員の方に広めるということが非常に重要かなと思っています。やはりボトムアップで進めると、どうしても萎縮しちゃうところが出てくると思うんですが、リーダーの方が失敗も含めて進めてほしいなど皆が心理的安全な環境の中でチャレンジできる環境を与えるというところが変革にとって非常に重要なポイントかなと思っております。

大野:これ大事ですね。

渡邊:土壌もチャレンジ精神も両方大事ですね。さて、今日もあっという間にお時間となってしまいました。本日は、学校法人河合塾IT戦略推進部から、部長の前中 浩司さんと統括チーフの井上 慎一さんにお話をうかがいました。

大野:こうしたさまざまな努力をされてきたと思うんですけれども、自分の指針としている言葉、それはどんな言葉だったのでしょうか。

井上:先ほどもチャレンジというお話をしたんですけれども、最近特に意識しているのが、「チャレンジを恐れない。ただし、そのときに成功のビジョンを必ず持っておくこと」という言葉を大事にしています。

渡邊:前中さんはいかがでしょうか。

前中:私は一つ、「随所に主となる」という言葉を私の指針として持っています。当然人間働いていると色々な環境に遭遇すると思うんですが、やはりその場その場できちんと真理を見つめつつですね、実直に愚直に業務に挑むというところですね。そうすると、真理が見えてくるんじゃないかなと実感していますので、本当に愚直に業務を進めていって、自分の突破口を見つけていくというところを自分の指針の一つとしております。

大野:本日は前中さん、井上さん、ありがとうございました。

前中・井上:ありがとうございました。

まとめ

河合塾のDX・AI活用から伝わってくるのは、「テクノロジーは目的ではなく、学びを支える手段である」という一貫した姿勢です。模試DXで受験生の負担を減らし、ChatGPTで現場の判断を支える。その根底には、生徒一人一人と向き合う教育の本質を決して手放さない覚悟があります。挑戦を恐れず、しかし人にしかできない価値を信じる――河合塾の取り組みは、教育に限らず、多くの組織にとってDXとAI時代の指針となるはずです。

AIによる記事まとめ

FM AICHIのラジオ番組『TOKAIリーダーズ・コンパス』より、学校法人河合塾が進める「教育DXとAI活用」の要点を解説します。同塾は、膨大な紙業務を効率化する「模試DX」や、職員の意思決定を支援する「ChatGPT」の導入により、教育現場の生産性を高めています。特筆すべきは、テクノロジーをあくまで「学びの本質」を補完する手段と定義している点です。AIに任せる領域と、講師やチューターが担う「人にしかできない価値」を明確に切り分けることで、生徒一人一人に寄り添う教育の高度化を実現しています。

※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。

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