“食の危機感”から始まる挑戦 ― TTDCが挑む畜産DX
2026年4月20日掲載
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社(TTDC)は、トヨタグループの技術基盤を支えるエンジニアリング企業です。その中で新規事業創出を担う宮川 倫一氏は、今「食」という社会課題に真正面から向き合っています。測る・シミュレーション技術を武器に一次産業へ挑む畜産DX。その原点には、日本の食料安全保障への危機感がありました。
この記事では、FM AICHIで2026年1月28日(水)に放送された「TOKAI リーダーズ・コンパス」におけるインタビューをもとに、彼らがどのように“食の危機感から読み解いた挑戦”へ挑んでいるのか。そのリアルなストーリーをお届けします。
TOKAIリーダーズ・コンパス
FM AICHIで放送中(2026年4月現在)の『TOKAIリーダーズ・コンパス』はソフトバンクが提供するラジオ番組です。日本のモノづくりの中心地である愛知県・東海エリアで「イノベーションに挑む企業」のキーパーソンに、挑戦へのストーリーをうかがっています。
放送局:FM AICHI(株式会社エフエム愛知 名古屋 FM80.7MHz / 豊橋 81.3MHz)
放送時間:毎週水曜 20:00~20:30
出演者紹介
社会課題を起点とした畜産DXへの挑戦
大野:FM AICHIをお聴きの皆さん、こんばんは。 大野泰敬です。
渡邊:FM AICHIパーソナリティ渡邊晶子です。
大野:さて、本日お話をおうかがいするのは、トヨタテクニカルディベロップメント株式会社 新規事業創出センター担当部長の宮川 倫一さんにお越しいただいております。本日はよろしくお願いいたします。
宮川:よろしくお願いします。
渡邊:お願いいたします。
大野:いやぁ、お久しぶりです。
宮川:お久しぶりです。
渡邊:お知り合いなんですか。
大野:そうなんです。イベントにも一緒に登壇したことありますよね。そのときも新規事業をどう作っていったとか、その辺りをおうかがいしたと思うんですけど。
宮川:宮崎県でもご一緒しましたね。
大野:そうだ、いっぱいしている。トヨタテクニカルディベロップメント(以下、TTDC)さん、実は新規事業をいろいろやっていて、今だと畜産DX をやり始めているんですよね。いろいろなところでちょっとご一緒する機会もあったんですけれども、今日は皆さんにぜひ、TTDCさんがどういうことをやっているのかをお話いただきたいです。
あと、東海エリアも非常に多いと思うんですが、ひとつの事業が突出して売り上げがあるとか、歴史の長い企業の中で新しい事業を立ち上げるのは大変じゃないですか。その中で、たぶん宮川さんの言葉というのは何かヒントになるんじゃないかなと思っています。今日はその辺りを含めてたっぷりお話をお聞かせいただきたいと思います。畜産DXでの取り組みなんですけども、ざっくりどういった取り組みをされているのか、この辺りの部分からちょっとご説明していただけますか。
宮川:畜産DXに限らないんですけれども、1次産業の分野というのが最近ではいろいろデジタル技術が入ってきているんですけど、やはり2次産業などに比べると、まだまだ入れる余地がいっぱいあるかなと思っています。生産性を上げるとか、再現性を上げるとか。そういうところで弊社の技術が使えるところがないかなと。
弊社の技術としては、「測る」とか「シミュレーションする」という技術がある、1次産業の現場で測れていないものを測ることができたら、それはどういうふうに役立てられるんだろうとか、どんどん人手も減っていっていたり、高齢化が進んでいて技術伝承をしていかないといけないとか、そういうところに活用できることがないかなというチャレンジをやっています。
大野:畜産DXが進んでいって今まで見えなかったものが計測できるようになると、生産性が高まって、それがコスト削減にもつながっていけば、人手不足の解消とかにもつながっていくということですかね。
宮川:そうですね。
大野:こういうのをやられているって知ってました?
渡邊:今回ご一緒することになり初めて知ってとても驚きました。
大野:そうなんですよ。すごく社会的に意義のあることもされているんです。私がやはり一番気になるのは、ある意味全く異業種で、さらに人の“食”っていうのは口に入るような、そういうものに携わるってときに、社内での反発みたいなものなかったのですか?
宮川:なかったかっていうと、ゼロではなかったですが、やはりその食の課題という、いわゆる食料自給率を何とかしないといけないとか、食料安全保障とか言われるところに関して、今どういうことが日本で起こっていて、この後どうなっていくのかという点については、農林水産省のホームページとかにもデータが出ているんですけど、実は2次産業の分野にいると全く目にすることがありません。
そのため、自分ごとでは全くなかったんですけど、いざそれを目にすると、このままだと自分たちの子供の世代とかは食べるものがなくなるんじゃないのかと。そういう危機感を覚えたことによって、自分が当事者として、こういうことが実は日本で起きているんですよという話を社内ですることで課題が自分たちのものになり、そこに自分たちが培ってきた技術が実は二次産業で使える可能性があるんじゃないのかと考えたんです。そんな話をすると、もともといろんなことをチャレンジさせてくれる会社だというのもあるんですけれども、やってみようよという話にはなりました。
大野:あと、これはあくまで想像なんですけど、今の話だけでも結構熱くないですか?この想いが。
渡邊:語り口はとても穏やかでいらっしゃるんですけど、内にある熱い想いというのがすごく伝わってきます。
大野:だから、もし会社の中で反対されたとしても、熱量で押し切るし、諦めなかったんじゃないかなという気がするんですけれども、そのあたりはいかがだったんですか?
宮川:そうですね。多分諦めなかったと思いますね。
大野:そうですよね。何かそういう熱い想いを非常に感じました。
渡邊:しかも瞬間的な熱さではなく、赤外線でじわじわ体の中から温まって「よし、一緒に頑張っていこう」って力もありますし。最初はTTDCさんが持っているシミュレーションなどの技術を使って何かやろうって探したら畜産にたどり着いたのかなと思ったんですが、逆なんですね。この分野に対する当事者の危機感から生まれたんですね。
宮川:そうですね。実は畜産DXで取り組む前にも、自分たちのチームでいくつか新規事業の検討ってやっていたんですよ。いろいろ企画はできるんですけど、いざできたときにこれを本当に経営層に向けてプレゼンして通すというところまで自分たちが本気になれるのかと自問自答した瞬間、ちょっとこれじゃないよねっていうのが第1段階であったんです。今回の食の課題に取り組むっていうのは、全員がやはり自分ごとの課題として捉えることができて、これは何とかして自分たちでやっていこうっていう風に思えるようになったのが一番大きく違ったのかなと思います。
大野:すごくそれは分かりますね。やっぱり本気でこの事業を通していくんだ、やらなきゃいけないんだって、やっぱりその想いがすごく大事だと思いますね。あと、それだけやっぱり今の食の領域が本当に危機的な状況にあるっていう、そのデータを見ちゃったら、やっぱりそういう気持ちになりますよね。
宮川:そうですね。
共創による事業推進体制
大野:私も農水省に出向して政策とかもやっているんですけれども、もともと全く興味がなかったんです。でも、やっぱりそれを見ちゃったらもうやらざるを得ない。それぐらい本当に危機的な状況にあるというところで、その解決にTTDCさんがまさに今挑まれていると言ったところですね。今から3年ぐらい前ですかね、ソフトバンクとも一緒にリリースを出されて、畜産の取り組みをされていると思うんですが、いろいろなことをやられていく中で、とても自社だけではできないというときに社外の仲間を集めていく際、何か意識をされていることや、コミュニケーション面で心がけていることとか何かあったりしますか。
宮川:一つは、同じビジョンを共有できるのかだと思っています。どうしてもビジネスの世界で会話をすると、AさんとBさんでお互いに取り引きみたいな形になって対面で話すことが多いと思うんですけど、これは社会課題を解決していこうという取り組みで、しかも1次産業の課題なので、誰もが1次産業に直接携わっている人たちじゃないんですよね。しかし、その課題を解決しようとなると、やっぱり日本の食の課題というのをどういうふうに解決していけばいいのかというのを、同じゴールに向かって自分たちの強みを生かせるところは生かすし、自分たちではできないところをパートナーと一緒にやって、みんなでゴールに向かおうという会話をするということを心がけているというか、意識していますね。
大野:大事ですよね。同じビジョンを持っている相手とじゃないと、絶対何か途中で喧嘩別れしちゃいそうですもんね。プロジェクトとかも。それだけ新規事業って本当に困難がたくさんあるんですが、そんな新しい事業を自分で作っていくだけではなく、新規事業の組織も作っていくという、その2つをやられていて新規事業コンテストみたいなものも社内で運営されている。それもこのチームでやられているんですか?
宮川:そうですね。
新規事業コンテストの制度進化と組織設計
大野:新規事業コンテストというのは取り組み始めてどれくらい経っているんですか。
宮川:部署ができたときから毎年やってます。
大野:じゃあ4〜5年ぐらい経ってきたという。
宮川:そうですね。振り返ってみるとこうだったのかなと思うのは、基本的には公募でエントリーしてくる人たちというのは皆一人でエントリーしてきましたね。チームを否定していたわけじゃないんですけど、こんなことを考えましたというふうにエントリーしてくるんですけど、それで通過していったとしても、やっぱり一人だと壁にぶち当たったりして辛くなって、なかなか長続きしないところはあったと思います。私も今、畜産DXとかやっていますけど、これは自分一人でずっとやれたかというと、やっぱりそんなわけはなくて、社内にも社外にも仲間がいて、生産者さんの顔を見えているから続けてこれています。今年度の変革として、エントリーのアイデアの内容は問いませんが、その代わりに仲間を少なくとも一人集めてきてくださいとしています。共感してくれる人がいるというのを条件に変えたんです。
大野:普通はアイデアコンテストみたいな感じになると、事前に書類を出して、そこから書類審査って入ると思うんですけれども、それをなくして社内で仲間を集められたものを次のフェーズに通す?
宮川:そうです。
大野:面白いですね。
渡邊:事業として進行していったときに、一緒にやってくれる人が必ず自分プラスアルファのチームとしてスタートできるってことですよね。
大野:確かに一人だと孤独だし、心が折れるんです。あと、そういう何か社内の仲間を味方にできるとか、そういう人を情熱的に口説き落とせないんだったら、社外の人も口説き落とせないですもんね。特に1次産業だと畜産者とか現場の方とも本気じゃないですか。だからこちら側もそうなっていかないと話ができないですもんね。そういうのを取り入れているのは非常に参考になるんじゃないかなと思いましたね。だから、あとこの新規事業コンテスト、今5年やられていて、新しい評価制度を取り入れられてきていると思うんですけれども、今までと比べて参加されている方の質だとか内容の部分ですとか、この5年の間に進化していったことというのはあったりしたんですか。
宮川:進化という意味では、最初にいわゆるステージアンドゲート法という細かくステージを区切って、ここまでを通過したらまた予算をつけて次のチャレンジしましょうっていうようにやってきたんですけど、そのステージの区切り方がやっぱり自社に合ったような区切り方にした方が早く回せるし、その人たちにも負担にならないなというところが分かってきたので、そういうところを変更したりしていますね。
大野:これすごくいいヒントで、新規事業って結構ステージゲートっていう段階に応じて、予算もそうだし、取り組みの内容を変えている企業さんが多いんですけど、どこどこの新規事業がうまくいったからといって、そのステージゲート方式をそのまま導入したら自社もうまくいくかというと、全然違うんですよね。今まで扱ってきたものだとか、文化だとか、考え方が全然違うので。なので今おっしゃられた自分たちに合ったやり方、ステージの区切り方を考えていくっていうのはものすごく大切なことだなと思います。新規事業をどういうふうにやっていくのかということですとか、そういう制度があるけれども、なかなか前に進まないなっていう方は、自分たちのやり方に直したら、どういうふうにやったらできるのかを改めて考えていくと、突破するいいヒントになるんじゃないかなと思いました。
渡邊:さて、そろそろお時間となってしまいました。今日はトヨタテクニカルディベロップメント株式会社 新事業創出センター担当部長の宮川 倫一さんにお話をうかがいました。
大野:では最後に1つ、さまざまに行動力や課題などもあり、それを乗り越えられてきたかなと思うのですが、ご自身で道しるべとなった言葉というものはどういったものがあったんでしょうか。
宮川:一つは、誠実に向き合おうというところと、もう一つはその上で無理に押し通そうとはしないという、この2つを自分の軸に据えています。
大野:本日は宮川さん、ありがとうございました。
宮川:ありがとうございました。
まとめ
危機感から始まった畜産DXの挑戦は、仲間を集める力によって前進し、やがて組織全体の制度進化へとつながっていきました。社会課題への当事者意識、共創を軸にした推進体制、そして自社に最適化された制度設計。宮川氏の取り組みは、新規事業を単発の挑戦で終わらせず、持続可能な経営基盤へと昇華させる実践例と言えるでしょう。
AIによる記事まとめ
FM AICHIのラジオ番組「TOKAIリーダーズ・コンパス」より、TTDCの宮川倫一氏へのインタビューをもとに、食料安全保障への危機感を出発点とした畜産DXの挑戦を紹介しています。測る技術とシミュレーション技術を一次産業に応用し、生産性向上や技術継承の課題解決を目指す構想に加え、共創の進め方や仲間づくりを重視した新規事業制度の進化も描いています。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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TOKAIリーダーズ・コンパス
ソフトバンクが提供する東海地域で放送中のラジオ番組です。番組では、東海圏から未来を切り拓くリーダーたちを迎え、経営の舞台裏や挑戦へのストーリーをうかがいます。普段は聞けないキーパーソンの素顔やエピソードから、明日へのヒントが見つかる…そんな「羅針盤(コンパス)」のような番組です。