“市民開発×生成AI” ― サンゲツが挑む現場変革
2026年5月15日掲載
壁紙・床材などを扱う株式会社サンゲツでは、Google Workspace とAppSheet を軸に、現場社員が自ら課題を解決する“市民開発”が急速に広がっています。推進役はDX部門 情報システム部システム二課長の森祐輝氏。営業出身だからこそ現場目線で仕組みを整え、いまは生成AI活用の浸透にも力を注いでいます。この記事では、FM AICHIで2026年2月18日(水)に放送された「TOKAI リーダーズ・コンパス」におけるインタビューをもとに、彼らがどのように“市民開発と生成AI活用を通じた変革”へ挑んでいるのか。そのリアルなストーリーをお届けします。
TOKAIリーダーズ・コンパス
FM AICHIで放送中(2026年5月現在)の『TOKAIリーダーズ・コンパス』はソフトバンクが提供するラジオ番組です。日本のモノづくりの中心地である愛知県・東海エリアで「イノベーションに挑む企業」のキーパーソンに、挑戦へのストーリーをうかがっています。
放送局:FM AICHI(株式会社エフエム愛知 名古屋 FM80.7MHz / 豊橋 81.3MHz)
放送時間:毎週水曜 20:00~20:30
出演者紹介
営業出身DX責任者が仕掛けた“現場発”変革のリアル
大野:FM AICHIをお聴きの皆さん、こんばんは。 大野泰敬です。
渡邊:FM AICHIパーソナリティ渡邊晶子です。
大野:さて、本日お話をおうかがいしますのは、株式会社サンゲツ DX部門 情報システム部システム二課長の森 祐輝さんにお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
森:よろしくお願いいたします。
大野:サンゲツというと、壁紙や床材とか。
渡邊:カーペットとか。
大野:どちらかというとインテリア系のイメージがあるんですが、実は今Google のツールをいろいろ駆使していきながらDXを推進していらっしゃるということで、かなり注目されているんですけれども、まさにそこの最前線でやられている森さんにお越しいただいています。プロフィールを見ると、森さんも元々ITと全く関係ない営業現場を経験して、それからシステムの方に移られたんでしょうか?
森:そうですね。
大野:なぜ森さんが選ばれたんですか?
森:なぜなんでしょうね。2003年入社なんですよ。10年ぐらい関西でずっと営業をやっていまして、そこから組織がいろいろ変わったときに、2014年に社長室の業務改革推進課というところで、いろいろ業務を変えていく中でシステムに携わっていったみたいな背景がありますかね。
大野:でも、営業を経験されて、そこから辞令が出て異動っていうふうになったときって、戸惑いはなかったんですか?
森:戸惑いしかなかったです。
大野:正直、飛び交う言語も違ければ業務内容も思い切り変わるから転職したような感じじゃないですか。それは最初どういうところから始めていったんですか?
森:業務を改革するっていうこと自体、それまで全くやったことがないところだったので、まず現場が何に困っているのかとか、どういう課題があるのかをヒアリングするところから始めていきました。
大野:まずいろいろな関連部署の人にどういう状況なんですかとヒアリングして、課題を抽出しにいったという感じですか。
森:まさにそうですね。
大野:その中でこんな課題があります、こんな悩みがありますというふうになると、通常だとシステム会社とか開発ベンダーとかに依頼をして、そこにソフトを作ってという形になると思うんですけれども、それを自分たちでやっていこうと判断されたというのは、どうしてその判断になったんですか。
森:最初はシステムベンダーさんに作ってもらうっていう流れでやっていましたけれども、やはり社内の打ち合わせをするリソースも足りないですし、現場の困りごとを全て解決するのってかなり難しいんです。市民開発ってよく言いますけど、自分たちで解決できるような形になればいいなというのが最初のきっかけですかね。
大野:大事なことを言うのを忘れていたんですけれども、開発にGoogle のツールでAppSheet っていうのを使っているんですよね。これは具体的にどういうことができるものなんですか?
森:Google Workspace というGoogle のGmail とか、 Google スプレッドシートとか、いろんなツールをパッケージで使えるようなソリューションを持っているんですけれども、 それをデータベースにしてアプリを作れるのがAppSheet と呼ばれているソリューションです。
大野:これね、とても使えるらしいんです。渡邊さん。
森:使えますよ。
渡邊:知りませんでした。
大野:みんな知らないですよね。私も違うやつは使っていたんですけれども、AppSheet って実はお会いしてお話しするまで知らなかったんですよ。
渡邊:一般市民でもダウンロードして使って、自分でアプリ開発ができるっていうことなんですよね。
大野:ダウンロードっていうか、インターネット上でできちゃう。
森:できちゃいますね。
大野:だから本当にGmail とかのGoogle のサービスの中の一つに入っていて。このアイコンは何だろう?みたいな。
渡邊:どんなアイコンでした?
森:紙飛行機みたいなアイコンでした。
大野:右の上のタブを押すと出てくるんですよ。
渡邊:見逃してるんでしょうね。普段使わないからって。
300件のアプリはなぜ生まれたのか? 市民開発を根づかせた設計思想
大野:AppSheet を使うとある意味誰でも作れると。そんな中、社員が作ったアプリが300件を突破したということで、これはものすごいことなんじゃないですか。なぜそもそもプロに任せず、市民開発というやり方にしたのはどういった意図があったんですか?
森:そうですね、やはり業務において何かを変えようとするとき、ITの関与する比率ってかなり高いと思うんですよ。90%ぐらいかなと思ってるんですけど、それらを社内リソースでカバーしきれないっていうときに、自分たちの手で課題を解消するっていうところがワクワク感につながるのかなというところと、それができるっていうことは、社内のデジタル人材を創出・育成することにもつながるっていうふうに考えて、取り組みを促進してきました。
渡邊:このアプリを作る社員というのは、決してDX部門の中だけではないってことですよね?
森:全然違いますね。人事部の方もいれば広報の方もいるし、財務経理の方や出荷担当されているロジの方とか、全員ですね。
大野:すごくないですか?
渡邊:すごいですよ。これがあったらいいなだったり、ここが不便なんだよってところを自分たちでアプリを作って解決していくという、この土壌がまず出来上がっているのがすごいですよ。
大野:そうなんですよ。でも多分最初は、何だそれ?という感じじゃないですか。
渡邊:できないよと思いますもん。無理無理アプリなんて作れないよで終わりですよ。
大野:セキュリティとかも大丈夫なのかなって思いますけれども、そこをどうやって土台作りしていったんですか?
森:そうですね。僕らは今、事務局という役割で、横串でチェックをしてガバナンスを効かせたりしているんですけど、確かに野良アプリをどうするかの問題は当時からありました。自由に作れるんですけど、世間に出すとき、公開するときには僕らの方ですべてチェックをして、そこでリリース作業をするので、ある一定のガバナンスを効かせた運用というのをやってますね。
渡邊:ということは、この作ったアプリというのは、サンゲツさんの中だけで使うアプリではない?
森:基本的には社内で使うアプリです。
大野:それをGoogle 上というかオープンにするのにちゃんと審査を得て。
森:そうです。
大野:これもすごい。聞きたいことがいっぱいあったんですけど、まず社内でこういう社員がアプリケーションを作っていきましょうよって言ったとき、役員とかを含めて上層部からすると、そんなこと今までやったことない社員に作らせるなんて危ないんじゃないかとかって議論になったんじゃないかなと思うんです。実際その辺はそういう議論になったのか、なったとしたらどう突破したんですか。
森:そうですね。最初に全国的にプレゼンをさせていただく機会を得て、そのときにいくつか僕の方でアプリを作ったんですね。それを実際にこういう形でできますよっていうのを、まず体感してもらうことで、セキュリティの観点も当然ありますけれども、どちらかというと現場にこうワクワク感を与えることに着目したのがスタートだったと思います。
大野:いや、今のすごいいいヒント。自分で作って見せるっていう、これが一番。しかもやったことのない素人がやって、数カ月で作りました。こんな便利なものができるんですよ。なのでこういうツールがあるので導入しませんかというような。ちなみにそのとき何を作ったんですか?
森:そのときはロジスティクスの配送管理アプリと、現場の納品アプリですね。僕らは現場にインテリアとかの商品を納めたりしてますので、その施工例写真とか用途別の検索ができるとか、そういうもののプロトタイプを1個作って公開しました。
大野:いやぁ、すごいな。300件突破したってことは、これ普通に外注したらとんでもない金額になるんじゃないんですか。すごい金額ですよ。だって外注すると1アプリ、数100万以上、場合によっては数1,000万円かかる。これだけ作るのに何10億ってかかるのが、ほぼ普通のGoogle のアカウント分ぐらいでできちゃうんですよね。これ絶対にみんなやった方がいい。あと、こういうのをやると、自分の業務のどこに課題があって、それをどう整理したらいいのかっていうのを自分の頭の中でまず考える工程もすごく大事かなと。
渡邊:整理できますし、きっと痒いところに手が届く仕様になっているんだろうなっていうを感じました。具体的な例として、人事の就労管理アプリですとか、あとドライバーの配送管理アプリなども作られているそうですが、これってどういう痒いところに手が届く要素が入っているんですか?
森:そうですね、配送事業者さんによっていろんな配送管理アプリがあると思いますけど、置き配をしたときに写真が見れたりとかするじゃないですか。そういったものを現場の人たちが自分たちで工夫して作って、それが労務管理にもつながるようなイメージです。要は今ここに届けました、今日も終わりましたっていうのを報告する役目にもなるんですよね。それが帳票としてもPDFでメール配信されるみたいなところまでを本当に現場のユーザーが作っているので、すごく役に立っていると思います。
大野:要はこういう300件のアプリがあるってことは、300件の困りごとを解決するためのシステムができたっていうことじゃないですか。そうすると効率もすごく上がってくるんじゃないかなという気がするんですけど、その辺りの実績というのはどれくらいの効果が出ているんですか?
森:そうですね。年間で1万時間は超えてると思います。蓄積でいくとですね。
渡邊:1万時間、何年分?パッと出てこないぐらいすごい。
大野:時給換算したらとんでもない金額ですよ。だから、その残業時間だとか、そういうものの削減や開発で言ったら、数10億は余裕でいくし、場合によっては数100億の効果があったんだから、きっとボーナスもいっぱい出たんだろうなぁ。
森:いやいやそこは、あまり話せないです。
大野:いやでもこの1万時間、桁一つ間違えちゃうぐらい。
渡邊:今計算したら483日分ちょいぐらいですね。
大野:いやすごい。しかもそれをお金をかけずやっていたっていうのが非常にすごいなと思うのと、やはりその従業員の人が積極的にやっていこうという土壌づくり、そういう雰囲気を作り出せたのがすごいなと思うんですが、そこでどういった工夫をされたんですか。
森:一番大事にしているのは心理的安全性という部分がポイントかなと思っています。皆さん、この業務だけをやっているわけじゃないんですよね。
渡邊:そうですよね。
森:皆さん自分で現場の仕事をしつつ、その時間を割いてこのアプリ開発をやってくれているというところを鑑みると、心理的安全性がないと何か悪いことしているような本来の業務じゃないことをしているみたいな捉え方をされると思うんですよ。
渡邊:確かにそうか、そういう見方にもなりますね。
森:なので我々はプロジェクトを推進していくにあたって、このプロジェクトはそういう目的でやっているんですよ。全体のデジタル化を進める施策なんですよってことを伝えつつ、やはり全社的に認知度を上げたり、皆さんがこのプロジェクトに参画したい、ワクワクするような、そういう思いで取り組めるように、いろいろ心を尽くしているという感じですかね。
DXの次へ―生成AI活用を全社に広げる継続戦略
大野:あと、生成AIの利用状況がどんどん右肩上がりになっているんですよね。これは、その従業員に教えるための教育だとか、例えば分かりやすく説明する動画コンテンツを用意するとか、教育研修するとかを結構やられていたりするんですか?
森:そうですね。3分間の動画を毎週配信し続けてますね。あとは月次で、利用状況の業務連絡で発信をしたりということで、コンテンツを常に動かしてるっていうことが工夫しているポイントですかね。
大野:森さんって結構自分自身でも動かれるタイプの方なんですか?
森:動きますね。はい。
大野:3分動画を毎週って結構…。
森:僕がすべて作ってるわけじゃないですよ。
大野:ああ、びっくりした。
森:僕らのチームが作ってるんです。
渡邊:でも、でもすごいですよ。
大野:毎週やるって結構すごくないですか?
渡邊:意外と大変なんですよね。コンスタントにコンテンツを出していくということは。
森:ネタが尽きてくるっていう問題もありますしね。
大野:それでどんどん意識が高まってきて、生成AIの利用状況というのも上がってきてますしね。活用事例も議事録とかの自動作成とか、そういうのも全部やっているんですか。メールの返信、プレゼン資料まで。
森:やってる人はすごくやってますね。まだ全国的に言うと、全社員がそこまで行き着いていないのは課題かなと思ってます。
大野:これなんといいますか、サンゲツさんって歴史のある会社じゃないですか。そういうある意味堅い会社の中で、どうやってここまでの取り組みの承認を得たんですか? リスナーの方や、いろいろな方にインタビューさせていただいていて、一番やっぱり苦労するのって、こんなに良いAIとかDXのツールがあるのに、「なんでうちの会社は分かってくれないんだ」「使ってくれないんだ」みたいに思っていらっしゃる方、たくさんいると思うんです。どうやって役員を説得したんですか。
森:役員を無理やり説得しに行くということはあまりなくて、結構風通しがいい企業風土がありますので、こういった効果が出るものをみんなが作れるようになっていますよというのを伝えています。「じゃあやってみなさい」っていうことで、推進力を得ながら進めてきたというところがあるかなと思います。
大野:なるほど。だから、そういう意味では、自分の考えていることとか、今の現状っていうのをちゃんと文章化して言葉で伝えていったという、そういうのを地道にやっていったおかげで、少しずつ広がっていったという感じですかね。
森:そうですね。「挑戦と変革」っていうところは一つのキーワードでやってますので、変わり続けるっていうことの大事さとか、挑戦することの大切さっていうのは、本当に会社全体で共通事項で動けてるのかなと思います。
大野:今日のお話は、今、DXやAIをどう社内で推進していこうかって迷っている方には非常に参考になったんじゃないかなという気がしました。
渡邊:さて、今日は株式会社サンゲツ DX部門 情報システム部システム二課長の森 祐輝さんにお話をうかがいました。
大野:では最後に一つですね。こうしたさまざまな活動をされてきたと思うんですが、ご本人の道しるべとなった言葉というものはどういうものがあったんでしょうか。
森:はい。座右の銘は本当に小さい頃からなんですが、「継続は力なり」というのを大切にしています。歩みを止めないこと、些細なことでも継続し続けることで大きな成果とか、知らないうちに遠くに行けるみたいな表現もありますが、そういうところにつながると信じて、これを座右の銘としています。
大野:本日は森さん、ありがとうございました。
森:ありがとうございました。
まとめ
森氏の意思を貫くのは、「現場が自分の手で変えられる」状態をどう設計するかという視点でした。市民開発は“作れる”こと自体が動機になり、ガバナンスと心理的安全性が継続の土台になります。そして今、サンゲツではDXの土壌を生かしながら生成AI活用が着実に浸透し、利用は右肩上がりに拡大中。毎週の発信と小さな実践の積み重ねが、組織の変化を加速させています。「継続は力なり」を企業文化として体現するその姿勢は、AI時代の組織づくりに大きな示唆を与えてくれます。
AIによる記事まとめ
FM AICHIのラジオ番組「TOKAIリーダーズ・コンパス」より、株式会社サンゲツのDXを牽引する森祐輝氏に、現場主導の変革に迫ります。同社ではIT部門のリソース不足を背景に、社員が自ら課題を解決する「市民開発」を推進。AppSheet等を活用し、300件超のアプリで年間1万時間の削減を実現しました。「継続は力なり」の哲学のもと、心理的安全性を守りながら生成AI活用も加速させる、挑戦的なDXストーリーをお届けします。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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