“人流データ活用”―岡谷エレクトロニクスが挑む社会インフラDX
2026年6月4日掲載
岡谷鋼機グループの一員として電子分野を担う岡谷エレクトロニクス株式会社。同社は近年、LiDAR(ライダー)※技術を活用した人流・交通量の可視化サービス「ナガレミル」を展開し、新たな社会価値の創出に挑んでいます。今回の放送では、テクノロジー本部 副本部長 兼 ビジネス推進部 部長の住田克也氏が出演し、その取り組みの背景や苦労、未来への展望について語りました。この記事では、FMAICHIで2026年3月11日(水)に放送された「TOKAIリーダーズ・コンパス」におけるインタビューをもとに、彼らがどのように“人流データから読み解いた挑戦”へ取り組んでいるのか。そのリアルなストーリーをお届けします。
TOKAIリーダーズ・コンパス
FM AICHIで放送中(2026年6月現在)の『TOKAIリーダーズ・コンパス』はソフトバンクが提供するラジオ番組です。日本のモノづくりの中心地である愛知県・東海エリアで「イノベーションに挑む企業」のキーパーソンに、挑戦へのストーリーをうかがっています。
放送局:FM AICHI(株式会社エフエム愛知 名古屋 FM80.7MHz / 豊橋 81.3MHz)
放送時間:毎週水曜 20:00~20:30
出演者紹介
LiDARが切り拓く可視化の世界
大野:FMAICHIをお聞きの皆さん、こんばんは。大野泰敬です。
渡邊:FMAICHIパーソナリティ、渡邊晶子です。
大野:さて本日お話をおうかがいしますのは、岡谷エレクトロニクス株式会社 テクノロジー本部 副本部長 兼 ビジネス推進部 部長の住田克也さんにお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
住田:よろしくお願いいたします。
大野:岡谷鋼機といえば、商社事業領域において鉄鋼や産業資材などで非常に売上が高い企業さんです。その子会社で新規事業として「LiDAR」というものを使いながら新しい事業を生み出されているそうですが、LiDARというのは何ができるものなのですか?
住田:LiDARというのは元々略語であって、基本的にはレーザーを照射して、例えば、この部屋などの物体までの距離を測るといったセンサーです。LiDARが取れる情報というのは、この部屋にある物の形であったり大きさを捉えるセンサー技術です。
大野:これは1秒間にどれくらい出ているのですか?
住田:物にもよるのですが、大体1秒間に全方位を10、20回スキャンしています。そうすると物の形状なども跳ね返りで分かってくるのです。
大野:イメージとしては3Dで可視化できるようなものですね。それで、このLiDARの技術を使って、今どういうサービスをされているのですか?
住田:LiDARを使って人流や交通量を可視化するサービスですね。「ナガレミル」というブランドで、サービスを展開しております。
大野:人流というと、その人がどこをどのように歩いてきたのかが分かるようなものだと思うのですが、それが分かるようになるとどういった対策や予測ができるようになるのですか?
住田:実際に空港や駅などで使われているのですが、人の動きによる滞留や混雑を可視化することで、その混雑を解消するための対策が打てるようになります。駅前のロータリーなどで車が渋滞を起こした際に、その原因が何であるか、LiDARを使って車や人の動きを捉えて分析しています。
渡邊:今ここが混んでいるというだけでなく、どこから来てどこに抜けていくのかまで追えると、分析できる幅も広がりますね。
住田:ありがとうございます。LiDARはセンサーの届く距離が非常に長くて、ある意味無限につなげられるというのがカメラとの違いです。
大野:最近はAIカメラなどでも人がどこを歩いたのかを見ることができると思うのですが、範囲がそもそも違うし、カメラは屋内に限られるなど環境の制限がありますよね。
住田:そうですね。LiDAR自体は屋内でも屋外でも、特に暗い場所や雨が降っていても全然影響なく人流や交通量の観測ができるというのがメリットになっています。
大野:ちなみに、渡邊さんもLiDAR持っているのですよ。
渡邊:私が持っているんですか?
大野:実は持っています。渡邊:そういう機能が載っていそうなものというと、スマートフォンとか?
大野:スマートフォンもそうですし、最近では自動運転に対応した自動車などに入り始めています。スマートフォンで背景をぼかして写真が撮れるのも、LiDARが距離を測っているおかげなんですよ。
渡邊:ポートレートモードですか?「エモい」写真を撮るのが上手な人が使っている…。
大野:そう、それです。だから知らない間にLiDARに触れていると言えば触れていますね。
渡邊:LiDARがあるおかげで、後ろをぼかせるんですね。すごく便利な技術だとは思うのですが、ビジネスではどういったところにシステムとして使われているのですか?
住田:人がすごく混雑するところや交通量が非常に多くて渋滞が発生するような箇所に「ナガレミル」のサービスを提案して導入していただいているケースが多いです。お客さまでいうと、鉄道会社やバス事業者などの交通事業者様、空港を管理されている会社様、あとは自治体様などが非常に多いです。
ナガレミル誕生と現場の試行錯誤
大野:何か事件や災害、交通の遅延が発生したりすると、人が一気に押し寄せるじゃないですか。そういうのを見て、どこに人を誘導したらいいのか、どこに警備員を送ったらいいのかを、見たら分かるのは今後重要になってくるポイントかなと思っています。
渡邊:スタジアムで野球やコンサートが終わった後の帰宅ルートの確保やシャトルバスの配車などにもうまく使えそうですね。
住田:当社も国立競技場でJリーグの試合があった際、終了間際に退場されるお客さまがどのルートで帰られるかを「ナガレミル」で観測しました。今こちらの方の流れが非常に多いというデータをもとに、警備員を適正に配置していただくなどイベント運営の警備支援でお使いいただいた実績があります。
大野:スマートフォンを除けば、一般の人がLiDARという産業技術に触れる機会はあまりないと思うのですが、そもそもLiDARというセンサー技術に注目された理由は何だったのでしょうか?
住田:少し歴史的な話になるのですが、私たちの会社がLiDARに出会ったのは大体2017年頃です。この頃、世の中にLiDARというものが出始めて、「自動運転の車には必ず複数個搭載されますよ」という未来像が描かれていました。2025年ぐらいにはLiDARを搭載した完全自動運転車が当たり前のように走っていると言われていました。そこで「これはやるべきだ」と、私たちも夢を見てスタートしたというのが経緯となります。
大野:「これはいけるぞ」とスタートしてから、「あれ、思ったよりも進みが悪いぞ」となった時期もあると思うのですが、そのときは上層部に対してどのように説明されていたのですか?
住田:予測通りにはなっていないですが、LiDARの技術進化や市場は少しずつ伸びている実感はあったので、5年では無理でも、10年、15年先を見据えて我々がナンバーワンのポジションを取り、市場が大きくなるときシェアを握ろうと説明して、何とか継続させてもらっている状況です。
大野:「ナガレミル」というサービスができるまでの間、色々な実証実験もされたと思うのですが、「こういうのをやろう」と決めてからサービス化まではどれくらいの期間がかかっていたのですか?
住田:やはりお客さまの予算編成の都合もありますので、春夏ぐらいに実証実験などをさせていただいてから予算を取っていただいて、翌年度に導入する流れになります。およそ1年から1年半かけて導入検討していただくということが多いですね。
大野:新規事業を作っていく中で、想定外のトラブルなども発生していたのではないですか?
住田:LiDARを常に設置するだけでなく、現場に行ってデータを取って納品するというサービスもやっています。当日現場にLiDARを設置し、5時間なら5時間データを取って撤収するのですが、短時間で確実に設置してデータを取るにはかなりのノウハウが必要です。こうしたところをミスしてしまい、お客さまからお金をいただいているのにデータが取れず「すみません、今日は失敗しました」と謝罪ツアーをした経験も何回かあります。今となっては完璧な観測キットが完成していて、これを持っていけば1時間以内に設置してデータが取れるまでになりました。これまでの失敗の積み重ねによって成り立っているところがあります。
大野:自分たちで考えたサービスをリリースして、色々なトラブルが発生して事業計画がうまく進まなかったりすると、お客さまもそうですが、社内からも厳しい指摘を受けますよね。どうやってモチベーションを保っているのですか?
住田:小さな成功積み重ねても、経営層から見ればまだまだという反応もあり、「どうやったら経営層が満足するような数字になっていくか」を描き切れず、自問自答と葛藤をしながらやっていました。そうしたときに救われたのが当社の「ナガレミル」のメンバーの存在です。「ナガレミル」という名前は自分たちで付けてブランディングしてきたので、メンバーは非常に「ナガレミル」に愛着を持っています。「必ず成功させる」と逆にメンバーの方からコミットメントをもらって、「これは私が頑張らなきゃ」と奮い立たされた経験があります。
挑戦を支える組織とリーダーシップ
大野:新しい技術を使ったサービスには困難や想定外のことがつきものですが、リーダーとして住田さんが組織作りで意識されていることは何でしょうか?
住田:まずは「チャレンジをすること」、そして「お客さまに対してきちんと提案しきること」です。自分たちに今そのケイパビリティ(能力)がないとしても、商社ならではの柔軟性やグローバルなネットワークを使って、「こうすれば実現できるかもしれない」という道筋を、必ずお客さまに対して示す。これを心がけてやるようにと、常にメンバーに伝えています。
大野:渡邊さんは一般の人に近い感覚だと思うのですが、このLiDARの事業について何か気になる点などはありますか?
渡邊:ぼんやりとした疑問なのですが、例えば駅など不特定多数がいる場所で使われているならともかく、小さなお店などに導入された場合、個人が特定されてしまうことはないのでしょうか?
住田:LiDAR自体は人の形は捉えるのですが、これが誰かという属性が分かるような情報は取れません。
渡邊:属性というのは、例えば男性か女性か、などもですか?
住田:取れないですね。
大野:カメラだと表情も全部映るし、顔で誰か分かってしまいますよね。でもLiDARは分からないです。ただの「点」の人ですよ。
渡邊:あ、じゃあ人として認識されているだけで。
大野:もうなんか棒とか点の人間が歩いているみたいな感じですね。
渡邊:じゃあプライバシーにもかなり配慮されたシステムが作れるのですね。
住田:そうですね。駅や空港のような公共性の高いエリアでは、プライバシー情報を取らないということが導入の第一条件になることが多いです。カメラだとどうしても自分の情報が取られているんじゃないかという懸念を持たれますので、そういったところにLiDARを使っていただけると、非常に安心して導入いただけると思います。
大野:今後、我々が知らないところで空港や駅にこういうものが導入されてくると、「最近混まなくなったよね」「最近スムーズだね」と感じることがあったとしたら「裏でLiDARが動いているのかもしれない」と思ったほうがいいかもしれません。それぐらい我々の生活を裏で支える非常に重要な技術なので、今後の展開というのが非常に楽しみです。さて、今日は岡谷エレクトロニクス株式会社 テクノロジー本部 副本部長 兼 ビジネス推進部 部長の住田 克也さんにお話をおうかがいしました。では最後に一つ、こうしてさまざまな努力をされてきたかと思いますが、ご本人の道標となった言葉は何でしょうか?
住田:もうこれはシンプルに「楽しくなければ仕事じゃない」というのが、人生の羅針盤にしてる言葉です。
大野:シンプルですけど、深いですよね。本日はありがとうございました。
住田:ありがとうございました。
まとめ
住田氏の言葉から見えてくるのは、「見えない価値」を社会に届ける挑戦です。LiDARという一見馴染みのない技術も、混雑の緩和や安全性の向上といった形で、私たちの日常を確実に支えています。思い通りに進まない市場環境や数々の失敗を乗り越えながらも、「楽しくなければ仕事じゃない」という信念で前進し続ける姿勢は、新規事業に携わる全ての人に示唆を与えてくれます。岡谷エレクトロニクスの挑戦は、社会インフラの未来を静かに、しかし着実に変えていきます。
AIによる記事まとめ
FM AICHIのラジオ番組「TOKAIリーダーズ・コンパス」より、岡谷エレクトロニクス株式会社の住田克也氏をゲストに迎え、人流データを活用した社会インフラDXの挑戦に迫ります。
同社は、完全自動運転の普及遅延という市場環境の変化に直面しながらも、LiDAR技術を用いた人流・交通量可視化サービス「ナガレミル」を展開。公共空間の混雑緩和に向け、設置の失敗を乗り越えノウハウを蓄積してきました。「楽しくなければ仕事じゃない」という住田氏の哲学のもと、メンバーとの強い絆で新たな社会価値を共創し、未来のインフラ変革へ挑むストーリーをお届けします。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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TOKAIリーダーズ・コンパス
ソフトバンクが提供する東海地域で放送中のラジオ番組です。番組では、東海圏から未来を切り拓くリーダーたちを迎え、経営の舞台裏や挑戦へのストーリーをうかがいます。普段は聞けないキーパーソンの素顔やエピソードから、明日へのヒントが見つかる…そんな「羅針盤(コンパス)」のような番組です。