“課題解決の情熱” ― 株式会社FUJIが挑む新規事業
2026年7月1日掲載
産業用ロボットメーカーとして歩んできた株式会社FUJI。その一方で、スマートロッカーシステムや介護サポートロボット、多機能搬送ロボットなど、社会課題に向き合う新規事業を次々と生み出しています。今回登場するのは、経営企画部 部⻑ 兼 新規事業部 部⻑の細井 亘氏。現場の課題に寄り添いながら挑戦を形にしてきた、その思考と実践に迫ります。この記事では、FM AICHIで2026年3月4日(水)に放送された「TOKAI リーダーズ・コンパス」におけるインタビューをもとに、彼らがどのように“課題解決から読み解いた挑戦”へ取り組んでいるのか。そのリアルなストーリーをお届けします。
TOKAIリーダーズ・コンパス
FM AICHIで放送中(2026年6月現在)の「TOKAIリーダーズ・コンパス」はソフトバンクが提供するラジオ番組です。日本のモノづくりの中心地である愛知県・東海エリアで「イノベーションに挑む企業」のキーパーソンに、挑戦へのストーリーをうかがっています。
放送局:FM AICHI(株式会社エフエム愛知 名古屋 FM80.7MHz / 豊橋 81.3MHz)
放送時間:毎週水曜 20:00~20:30
出演者紹介
スマートロッカーシステム誕生の舞台裏
大野:FM AICHIをお聴きの皆さん、こんばんは。大野泰敬です。
渡邊:FM AICHIパーソナリティ、渡邊晶子です。さて、本日お話をおうかがいしますのは、株式会社FUJI 経営企画部 部⻑ 兼 新規事業部 部⻑の細井 亘さんです。よろしくお願いします。
細井:よろしくお願いいたします。
大野:新規事業をやられているということなのですが、資料を見るとかなり範囲が広いですね。細井さんの一番思い入れがあるのはどのプロジェクトですか?
細井:新規事業部の中のプロジェクトで申し上げますと、スマートロッカーシステムの「Quist(クイスト)」が一番思い入れがあります。このプロジェクトのリーダーを元々やっていたというところもあります。
大野:一つ一つ見ると非常に完成度が高いなという印象なのですが、例えばこの「Quist」という事業やサービスを展開しようと思われたときは、社内でどのようにアイデアが出てきたのですか?
細井:まず、約10年くらい前になるのですが、当時、再配達問題、ラストワンマイル問題というものがよく取り上げられるようになっていました。僕自身も新聞などで目にするようになって、「これは将来絶対困るときがくる」と思い、何かできないかなと考えました。それで、まず実験的に社内にロッカーを設置しました。数名の従業員に協力してもらい、お昼までにネットスーパーで注文して、近くのスーパーから食材を運んでいただく形です。我々は知立市というところに本社がありまして、自動車通勤の社員が約8割を占めるため、退勤時に夕食の材料にする食材をロッカーから受け取っていただく、という実験を始めました。それがマスコミ各社に取り上げられ、大手企業への採用につながったという経緯があります。
大野:研究開発を始めてリリースするまで、どれくらいの期間がかかったのですか?
細井:確か、1年か2年以内にはもう世に送り出せていたと思います。
渡邊:早いですね! 今でこそ「Quist」のようなスマートロッカーのシステムって色々なところで見かけるようになりましたけれど、当時は「えっ、ロッカーを作るの? どういうこと?」となりませんでしたか?
細井:元々我々は産業用ロボットのメーカーでしたので、正直、社内的に「なんでこんなことやるんだ」という声もあったかとは思います。それでもチャレンジさせてくれたことに、今でも感謝しています。
大野:最初は常温ユニットから入って、今では冷凍・冷蔵両方あるのですか?
細井:そうですね、3温度帯に対応しています。
大野:こういう製品は社内で筐体そのものも作れるのですか?
細井:新規事業部の製品は、全てファブレスと言って自社工場を介さずに、グループ会社や協力工場さんに生産していただいています。
大野:歴史のあるモノづくりの企業だと、全部自社でやりたがる人が多いイメージなのですが、ファブレスで進めることは受け入れられたのですか?
細井:そこは何とかそうさせていただいたというところですね。
大野:そうですよね。通常自社で生産するとなると、かなりのロット数がないと作ってもらえないじゃないですか。ファブレスなら少量からでも作れるというメリットがある一方で、社内調整はかなり大変だったのでしょうね。
渡邊:きっと口には出せないご苦労と努力がたくさんあるのだと思います。
細井:自分一人だけではないですが、現在進行形で色々とご迷惑をおかけしている部分もあります。
大野:ソフトウェアも自社で開発されているのですか?
細井:そうですね。そこが市場でもご評価いただいているポイントかなと思います。ロボットメーカーでもありますので、ソフトウェアの開発力にも強みがあると思います。
大野:モノづくりにおいて、製品を作る部隊とソフトウェアを作る部隊というのは、どの段階から連携していくのですか? 最初の段階からなのか、仕様が固まってからなのか。
細井:この製品に関しては最初からですね。少人数でやらないといけないので、一人一人の守備範囲は自ずと広くなります。弊社の主力事業である電子部品実装ロボット(マウンター)の開発でもメカ系、電気系、ソフトウェア系のエンジニアが盛んに交流しながら開発を進めています。
大野:先ほどのファブレスの手法は新規事業部を始めた当初からの構想だったのですか? 色々なものを調べたり、人の話を聞いた中でそのやり方が良いと判断されたのでしょうか?
細井:事業を立ち上げるときに、最初からヒト・モノ・カネといった会社のリソースを十分に割いてもらうのは難しいので、当然2、3人で始めました。そこからどんどん仲間を増やしていく中で、中途採用という手法を使ったり、社内公募で「新しいことやりたい」「今の部署でなかなか輝けていない」といった方に新しい事業をやろうとお声がけして、徐々にチーム作りをしていったという経緯があります。
大野:お話をお聞きしていると、会社として新規事業を応援・協力している姿勢が見えますが、経営層を含めて新しいことをやるのが大事だという方針は決まっていたのですか?
細井:2014年くらいから色々な新規事業が始まっています。今は逆に伸びているのですが、当時は主力事業の市場が少し縮小傾向だったのです。そのときに「どんなことでもいいからチャレンジしよう」ということで、「未来創出プロジェクト」が発足しました。自分も何人か集められたうちの一人だったのですが、その中から生まれてきたものがこのスマートロッカーシステムです。そしてもう一つ、新規事業部の中にある介護サポートロボットの「Hug(ハグ)」は、実は現社長である五十棲(いそずみ)が立ち上げた事業です。そういった歴史もあり、新しい事業に挑戦しようというメッセージは、会社のトップから強く発信されています。
介護と物流を支えるロボット開発
大野:社長がアイデアとして出された介護用ロボット「Hug」は、どういう機能があるものですか?
細井:足腰が悪く、立ち上がりが困難な要介護者の方のために開発されたものです。ベッドから車椅子、車椅子からお手洗いといった移乗を助けるもので、それまでは介護士の方が抱え上げて移乗させていましたが、介護業界における離職の大きな要因の一つは、実は「介護士の方の腰痛」なのです。それを何とか改善できないか。ヨーロッパの方では、そもそも人が抱き上げてはいけない、2人以上で行わなければいけないというルールもあるため、そうした課題を解決しようというのが始まりでした。
渡邊:介護士の方と一緒にその介護者の方を移動させたり、起き上がる動作を助けたりしてくれるロボットなのですね。
大野:人を抱きかかえて移動させる負担は、我々は普段体験しないので、ロボットが代行して負荷を軽減してくれるというのは、絶対に必要なものかなと思います。やっぱりリリースされて反響も大きかったですか?
細井:最初はなかなか置き換わりませんでした。ほかの新規事業にも言えることですが、今まで人がやっていたところを機械に置き換えるには、信頼が積み上がっていないので「大丈夫か」となります。今は徐々に「なくてはならないもの」になりつつありますが、それまでは「あったほうがいいけれど、コストをかける必要はないよね」であったりとか、「まだうちは(導入には)早いよね」といったような声もありました。
大野:お話をお聞きしていると、色々な人の課題を解決するために事業が出てきている印象を受けます。やはり「誰かの課題を解決する」というところにこだわりがあるのですか?
細井:元々創業が工作機械、そして今の主力事業が電子部品実装ロボットです。つまり、人がやっていたことを置き換える、省人化・無人化の取り組みは創業以来ずっと続けてきたものです。より人を楽にする、人がいなくても解決できるソリューションを作っていくことが、我々の事業の目指すところだと考えています。
大野:そんな中で、また一つの課題が解決できるものとして期待されているのが、「カゴ車搬送用ロボット」ですね。これは現在、実証実験の段階なのですか?
細井:ホームセンター最大手のカインズさんと協力し、実際の店舗にロボットを置かせていただいてます。夜中に走行させる形で、少しずつ貢献度を高めているところです。
大野:ロボット掃除機を大きくしたような自律走行型のロボットがカゴ台車の下に入って、それを持ち上げて運んでくれるというものですね。上に乗せるユニットを変えることで、お掃除ができたり搬送ができたり、1台で何役もできるということですか。
細井:今は1台で3役ですが、これもどんどん「こういったニーズもある」という声を拾いながら、機能を増やしていきたいと考えています。
大野:これすごいのが、小さいのに力持ちで500キロ持てるんですよ。
渡邊:500キロですか! 小売店にある大体のものは運べてしまいそうですね。
細井:現場の困りごととして、開店前の朝7時や8時に出勤した従業員の方々が、400キロ・500キロ積まれたカゴ台車を陳列場所まで手動で運んでいました。これがかなりの重労働でして。この「Rally(ラリー)」という多機能搬送ロボットを使うことで、真っ暗闇の店内でもカゴ台車を陳列場所まで運んでおいてくれるというのが、このロボットの一番の売りです。
渡邊:朝来たら必要なところの近くに置いておいてくれて、あとは品出しを人の手でするだけなのですね。
大野:どのサービスも「それあったほうが絶対にいいよね」という目の付け所が素晴らしいですね。ただ、課題だけに集中すると本当にたくさんやらなきゃいけないことが出てくると思うのですが、最終的に「これを新規事業として進めよう」というジャッジは、どういう観点で絞られていますか?
細井:もちろん経済条件が合わなかったり、そこまでニーズがなかったりして、やめていく新規事業もあります。ただ、なくなるものも続くものも共通しているのは、会社が開発者の当事者としてのパッションをものすごく聞いてくれる点です。とはいえ、私は現在経営企画部の部長という立場でもありますので、そこは冷静にジャッジし、続けるか・撤退するかを判断していかなければならないと思っているところです。
挑戦を後押しする組織と信念
渡邊:細井さんは株式会社FUJIで経営企画部の部長でありながら新規事業部の部長も兼任されています。この経営企画部部長の自分と新規事業部部長の立場でのジレンマ、天使と悪魔ではないですけれど、そういったものはありませんか。
細井:天使と悪魔ならまだいいのですが、「こっちの立場で言っているときとあっちの立場で言っていることの矛盾」は自分でも感じるときはありますし、自分で自分にツッコミを入れなければならないときもあるので、なかなか辛い立場だなとは思っています。会議や展示会場に行ったときも「今日はどちらの立場で来ているのですか?」と社員から皮肉を込めて言われることもあって、難しい役回りだなとは感じています。
大野:でも会社を挙げて新規事業を推進しようと、そのために経営企画部・新規事業部を兼任されているというのは、多分会社としての意図があるのだと思います。その中ですごく驚いたのが、決裁が下りるスピードです。早いときは1日で下りてしまうとか。
細井:一定の金額を超えるものは、稟議書を書いて、課長、部長、担当役員、そして社長に決裁を仰ぐフローがあります。役員の皆さんは、会社にいないときでも細やかにスマホでそういった申請を見てくださっていて、本当に1日で承認をいただけるのです。そこは本当にありがたいですし、先ほどのリリースのスピード感にもつながっています。
渡邊:もし私が若かったら入りたい! こんなにスピード感があって色々応援してくれる環境は魅力的ですね。
大野:新しい取り組みの一つとして、「名古屋市科学館」のネーミングライツ、これはなぜ取得されたのですか?
細井:我々は1959年の創業以来、モノづくり、つまり科学技術に携わってきました。名古屋市科学館というのは、名古屋市全域の小学生が遠足で訪れるなど、非常に地域に愛されている施設です。我々も10年前の2016年から、本社がある知立市で地域の小学生を対象にした「英語で科学を学ぶイングリッシュ・アフタースクール『teracoyaTHANK(テラコヤサンク)』」というものを運営しています。将来を担う子どもたちに科学や技術への興味を持ってもらいたいという思いがありまして、そういった活動との親和性に加え、科学技術を通じて地域や社会、さらには技術立国である日本に少しでも貢献できればという思いから、この4月にネーミングライツを取得させていただいたということになります。
渡邊:「FUJIなごや科学館」として、2026年4月からは多くの方の目に留まることになりますね。
大野:最後になりますが、こうしてさまざまな努力をされてきた中で、ご自身の道標となった言葉、それはどんな言葉だったのでしょうか?
細井:僕ごときが申し上げるのは非常に憚(はばか)られるのですが、歴史が好きでして。高杉晋作が上の句を読んだ「おもしろき こともなき世を おもしろく すみなすものは 心なりけり」という言葉です。幕末の歴史に興味があって、実際に松下村塾も行ったことがあるのですが、そこには高杉晋作をはじめ伊藤博文など、幕末の志士たちの写真が飾られています。地方から出てきて日本を動かしたというのにすごく感動したというところもあるのですが、新規事業も人生も同じで、辛いことも多い世の中を面白く進んでいくことが非常に重要だなと思います。下の句は実は高杉晋作ではないのですが、「すみなすものは 心なりけり」というのは面白く生きていくのは心の持ちよう一つでいかようにもなる。この言葉に非常に感銘を受けて、座右の銘としてお話しさせていただいた次第です。
渡邊:本日のゲストは、株式会社FUJI 経営企画部 部⻑ 兼 新規事業部 部⻑の細井 亘さんにお話をおうかがいしました。本日はありがとうございました。
細井:ありがとうございました。
まとめ
細井氏の言葉から伝わってくるのは、社会の困りごとを見つめ、それを“面白く”乗り越える挑戦者の視点です。スマートロッカーシステムも介護ロボットも搬送ロボットも、全ては誰かの負担を減らしたいという思いから生まれていました。情熱を持つ人を後押しし、スピード感を持って形にしていく株式会社FUJIの姿勢は、これからのものづくり企業の在り方を示しているように感じます。課題解決の先に新しい価値を生む。その挑戦は、まだまだ広がっていきそうです。
AIによる記事まとめ
FM AICHIのラジオ番組「TOKAIリーダーズ・コンパス」より、株式会社FUJI・細井亘氏の挑戦をお届けします。物流や介護現場の過酷な労働課題に対し、スマートロッカーシステム「Quist」などのDX事業を通じて挑む変革の裏側に迫ります。「心持ち次第で世の中は面白くなる」という情熱と、共創によるスピーディな課題解決の哲学は必見です。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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TOKAIリーダーズ・コンパス
ソフトバンクが提供する東海地域で放送中のラジオ番組です。番組では、東海圏から未来を切り拓くリーダーたちを迎え、経営の舞台裏や挑戦へのストーリーをうかがいます。普段は聞けないキーパーソンの素顔やエピソードから、明日へのヒントが見つかる…そんな「羅針盤(コンパス)」のような番組です。