“真空×マイクロ波” ― ホシザキが挑む食の省人化
2026年7月9日掲載
業務用製氷機や冷蔵庫などで食の現場を支えるホシザキ株式会社。今回登場するのは、執行役員であり中央研究所所長も務める佐々木 誠氏です。冷凍食品の広がりを背景に、職人の勘に頼らず品質を守る「真空マイクロ波解凍機」の開発と食の省人化・フードロス削減への挑戦をうかがいました。この記事では、FM AICHIで2026年4月1日(水)に放送された「TOKAI リーダーズ・コンパス」におけるインタビューをもとに、彼らがどのように“攻めと守りのDX”へ挑んでいるのか。そのリアルなストーリーをお届けします。
TOKAIリーダーズ・コンパス
FM AICHIで放送中(2026年7月現在)の「TOKAIリーダーズ・コンパス」はソフトバンクが提供するラジオ番組です。日本のモノづくりの中心地である愛知県・東海エリアで「イノベーションに挑む企業」のキーパーソンに、挑戦へのストーリーをうかがっています。
放送局:FM AICHI(株式会社エフエム愛知 名古屋 FM80.7MHz / 豊橋 81.3MHz)
放送時間:毎週水曜 20:00~20:30
出演者紹介
中央研究所と冷凍技術
大野:さて、本日お話をうかがいますのは、ホシザキ株式会社 常務執行役員の佐々木誠さんにお越しいただいております。本日はよろしくお願いいたします。
佐々木:はい、よろしくお願いします。
渡邊:お願いいたします。
大野:佐々木さんは中央研究所所長という役職も担われています。この中央研究所というのはどういった部門なのですか。
佐々木:ホシザキにある先端技術を研究している部隊からサービスの要望を聞く部隊までの部門全体を「中央研究所」という括りで呼んでいます。逆に言うと、ホシザキの開発技術部門は中央研究所以外にはございません。
渡邊:そうなのですね。では、ここで研究された技術が製氷機だったり冷蔵庫だったりというところに使われているんですね。
大野:そして冷凍とか冷蔵に関するスペシャリストの方たちが集まっているのがまさにこの中央研究所ということですね。
渡邊:格好いいですね、「中央研究所」。
佐々木:名前負けしているかもしれませんが。
大野:専門家の方から見ると、この冷凍食品の世界というのはコールドチェーンが普及したり、働く人や家庭とかによって、変わってきているものなのでしょうか。
佐々木:大きく変化してきていると思います。元々は素材を凍結したものが流通し始めて、それが今の調理品を冷凍したものとして流通し始めています。皆さまもスーパーとかコンビニとかに行くと、冷凍食品の置いてあるエリアがどんどん大きくなっていると感じていらっしゃると思います。
大野:ああ、確かに大きいですね。
渡邊:種類もいっぱい増えていますし。
大野:増えていますね。私も冷凍のパンとか最近買うようになりました。この冷凍食品に接する機会というのは、すごく増えてきていますよね。
佐々木:そうですね。
大野:これに合わせて、技術みたいなものも進化してきているんですか。
佐々木:以前は冷凍庫で自然に凍らせる「緩慢凍結」が主流でした。しかし現在は、冷風で行う「ブラストチラー」や液体で行う「液体急速凍結機」といった「急速凍結」の機械が登場しています。少しでも早く凍結させて品質を守るというところで、凍結の技術というのは進化してきていますね。
大野:液体を使って急速に凍らせるものもあれば、冷風を当てて凍結させるとか色々あるようなのですけれど、それぞれどういった特徴があるのですか。
佐々木:一番早く凍結できるのは液体急速凍結なのですが、袋に入れないと凍らせられないんです。エタノールの中に入れますので、パッキングしないといけないという欠点があります。例えば料理したものをそのまま凍らそうとしても、さすがにパックして液体に入れるというわけにいきませんので、そういった時にブラストチラーという気体で急速凍結機を使って凍らせる、というようなことを行っています。
大野:ちなみに渡邊さんは普段の生活で冷凍したり、冷凍食品を使ったりすることはありますか。
渡邊:もう、なくなったら困っちゃいますね。
大野:そうですよね。レンジで「チン」しない生活はないかもしれません。
渡邊:何かしら冷凍されているものを買ってきているってこともありますし、家で作ったものを冷凍してチンしてというのは、もう日常茶飯事です。
大野:今日お話をお聞かせいただくところの中にも入っているのですが、「冷凍」の意識はあるのですけれど、「解凍」ってあまりないですよね。電子レンジで解凍するくらいしかないです。
渡邊:日常生活だとそうですね。素材によっては常温で置いておいて解凍してくださいというものもありますけれど。
解凍が変える食の現場
大野:冷凍技術は、冷蔵庫にも色んな機能がついたりして発達してきたと思うのですけれど、解凍技術に関しては何であまり導入が進んでいないのですか。
佐々木:これまで解凍という工程は職人の丁寧な作業によって成り立ってきました。マグロの解凍などで行われる「温塩水解凍」もその一つです。しかし、そういった職人がこれからも業界に居続けてくれるとは限りません。また、解凍の作業には非常に時間がかかるという問題があって、それを解決しようと「解凍庫」の開発に取り掛かりました。
渡邊:「解凍庫」というのは、凍結したものをその解凍庫という箱の中に入れておくと、ちょうどよく解凍してくれるというイメージで合っていますか。
佐々木:我々が開発した「解凍庫」は、食材のグラム数と解凍のレベルを選んでボタンを押すだけで操作できるようになっています。例えば、スーパーでマグロの刺身を加工する場合、完全に解凍しちゃうと切りにくくなるので、ちょっとマイナス温度で解凍を仕上げます。そうするとサクサクと包丁が入って、安全に均一に作業ができるようになります。
大野:それが新しく開発された「真空マイクロ波解凍機」というものなんですね。これは「真空 × マイクロ波」というものが解凍の常識を変えるとパンフレットに書いてあるのですが、どういう効果があるのですか。
佐々木:この解凍庫は、真空とマイクロ波を当てる工程を何回か繰り返しています。上手に解凍するためには、食材の外側の温度と芯温度というのに差を出さないようにします。電子レンジと同じようにマイクロ波を当てると表面だけが温まってしまい、芯の部分がまだ凍っている状態になります。そこで、当てた後に真空を引いて冷却します。これを繰り返しているというわけです。そしてもう一つ、我々生活しているこの気圧というのは、0度以下が氷、0度から100度までが水、100度以上が蒸気じゃないですか。冷凍しているものの中には氷が入っているので、それを蒸発させたいのですが、常温で解凍すると氷が一旦「水」になってから蒸気になっていきます。それがよく「ドリップ」と言われるものですね。
渡邊:それで美味しくなくなってしまうというイメージがありますね。
佐々木:そうなのです。ですが気圧を下げていくと、水が存在しない気圧というのがあるのですよ。そこでマイクロ波を当ててやると、氷が蒸気に変わります。それを上手く利用しているので、水に変わらず、ドリップも出ない、という仕組みです。
渡邊:理屈を聞くと一段と凄さと納得感がありますね。
大野:何でこの真空マイクロ波解凍装置を作ろうと思ったのですか。
佐々木:冒頭にお話ししましたように、これからは手作業を行う職人さんたちが減少して、人手不足はますます深刻化していくのではないかと考えています。ゆくゆくはスーパーマーケットの裏で魚を切ったり、総菜を作ったりする人たちもいなくなってしまうかもしれません。そうなるとプロセスセンターなどで集中して調理することになりますが、作ったものを常温で運ぶとなると賞味期限の問題があり、頻繁に輸送しなければなりません。だからそういったものを冷凍します。冷凍すれば賞味期限が延びますので、まとめて配送できて、蓄えておくこともできます。そして店舗では必要な分だけを解凍して販売する。そうするとフードロスといった問題の解決にもなるのではないか、と考えてこの機械の開発を行いました。
渡邊:今、コンビニでもフードロスでお弁当なども色々問題になるじゃないですか。そういうのも、色んな技術の組み合わせが必要かもしれませんが、一つ良いソリューションになりそうですよね。
大野:解凍時間が15分というところで、例えば在庫の状況を見ながら、なくなった分を補充するといった運用もできるようになりますよね。人手不足で職人さんがどこまで作業を抱えられるかというと、やっぱり限界がくると思うのですよ。であれば、工場やセントラルキッチンみたいなところでまとめて調理して冷凍して、それを店舗で解凍する仕組みは、絶対にいいと思います。多分コストも安くなりそうな気がします。
佐々木:おっしゃる通り、計画生産できるようになります。総菜を作っている工場などは、常温で提供しているうちは365日稼働していないといけません。しかし、冷凍で蓄えるという風に考えれば、計画生産を行って週休二日にするといったこともできます。まとめて仕入れたり、安い時に仕入れたりが計画的にできますので、結果的にコストも安くなると考えています。
大野:ロスも確実に減りますよね。でも何でこの難しい解凍装置をホシザキさんは作れたのですか。
佐々木:元々世の中になかったものではなくて、我々のグループ会社で数十年前に販売していたものでした。当時は全く売れずに廃止へと近づいていたところを、我々がその機械の欠点を直しつつ、さらに技術を加えてより良いものにしていこうと考えました。
大野:じゃあ新しい技術というよりかは、もうすでにあったものを改善していって今の形になっていったのですね。
佐々木:そうですね。コストが高すぎるといった問題があって、あまり大きくは売れなかったものなのですけれど、これから必要となる時代が来るだろうなと考えて取り組みました。
省人化へ進む開発思想
大野:新規事業とかで色々お話をうかがうと、ある一定の結果が出なかったら切り捨てられちゃうケースっていうのがよくあるかなと思うのですが、なぜ中央研究所はその技術を切り捨てなかったのですか。
佐々木:先ほどもお話をしたのですけれど、我々も実際に機械を作って寿司を凍らせてみて、この解凍庫にかけて食べてみたんです。すると、その日に買ったばかりの寿司と比べても、区別がつかないくらい美味しかった。これがまさにこれから人手不足や流通、フードロスといった社会課題を解決する道になるのかなと考えて、この技術を育てていこうと決めました。
渡邊:実体験で「よし、いけるぞ。ゴー」と出るっていうのがすごいです。
大野:開発の初期には色々な課題があったわけじゃないですか。今まで解決できなかったことをやるとなれば、課題を一つクリアしたらまた次の課題が現れる、というように、どんどん増えていったのではないかと思うのですけれど。そこはどうやって解決していったのですか。
佐々木:実は、一度は完成というところまで辿り着いたのですけれど、「品質の安定」つまり、どこにおいてもばらつかずに解凍できるかというところが最後まで直りませんでした。あと一歩のところまでは来たのですが、その一歩を越えるのは無理だという結論になり、そこから全く別の構造に変えてもう一度作り直して今の形に至っています。
渡邊:「全く別の構造に変える」というのは、主観的な感覚でいいのですが、もう全部一から変えるくらいの勢いですか。
佐々木:外枠だけ同じという感じです。
大野:それはすごい。
渡邊:それだけやっぱりムラをなくすって大変なのですね。
佐々木:難しかったですね。
大野:で、ようやく誕生したこの製品は、ムラが発生しない。これはすごいです。食べてみたい。何で今日ここにないのだ。お寿司を食べてみたい。
渡邊:絶対分からないですよ。中央研究所の所長たちが分からなかったものを、我々が分かるわけないじゃないですか。
大野:逆に言うと、冷凍解凍したやつの方が美味しいかもしれませんよ。
渡邊:やっぱりそのまま美味しさをギュッと閉じ込めたのをそのまま持ってきて戻すわけですからね。
大野:私は冷凍のパンをサブスクで買っているのですけれど、お店で買うより美味しい気がします。
渡邊:やっぱり急速で凍結できる技術ができてから、美味しさを閉じ込めてというものが増えましたよね。
大野:扱う物にもよりますが、商品はでき上がった瞬間から、どんどん品質って下がっていくのです。だから、冷凍技術には時間を止められるという利点がある。そしてこの解凍庫を使えば、時間を止めた後もそのままの状態で元に戻せすことができるんですね。
佐々木:そうですね。
大野:それがすごくいいなと。特にパンみたいなものは、オーブントースターとかでやれば、そのまま再現はできるけれど、刺身といった生ものだとなかなか難しいですよね。
渡邊:温かくして食べるわけじゃないですからね。
大野:ちなみに今、どういった人たちをターゲットに販売されているのですか。
佐々木:元々はスーパーマーケットの鮮魚の部分やちょっと良いネタを使っているお寿司屋さんなどです。飲食に向けても売ろうとしていますし、スーパーのバックヤードに向けても販売しようというところで今は活動しています。
大野:今も色んな技術を開発・研究されているのかなと思うのですが、投資を決めるときのできる・できないの判断基準みたいなものは、どこで考えられているのですか。
佐々木:難しいですよね、本当に。現在、我々は「省人化」を目的とした機械を多く提案はしていますが、まだ人がいるのですよね。その人がいる中で、この省人化の機械を進めようとすると、どうしてもお客さまも投資対効果という目で見てしまいがちです。日本の人口が減っていくのは確実ですし、エネルギーロスの問題などの事実を見れば、将来こうなっていくだろうという予測が立てられるじゃないですか。投資対効果とかではなくて、事業継続していくために機械が必要になる。「本当に人はいなくなるんだ」という先を予測して「これだ」と思ったところはそのまま突き進んでいっていいのかなという判断基準で考えています。
大野:新しい技術もそうですし、これからどんどん色々な製品も出てくると思うのですが、中央研究所としてこういう未来を実現していきたいということを最後に挙げるとしたら、どんな未来がありますでしょうか。
佐々木:お客さまに使っていただいてなんぼだというところもあります。飲食店をはじめとする「食」の現場の支えになっていきたいという風に考えていますし、それを自分たちで作り出せることはこの上ない喜びでもあります。先ほどからお話ししている人口減少に伴う省人化など、食を取り巻く社会課題の解決を目指して、我々は開発を続けていきたいなと考えています。
渡邊:さて、今日はホシザキ株式会社執行役員の佐々木誠さんにお話をうかがいました。
大野:では最後に一つ、こうしてさまざま努力されてきたと思うのですが、道しるべとなった言葉はどんな言葉だったのでしょうか。
佐々木:私自身は、「小さくても前に進む」というところを道しるべにしています。常に問題にはぶち当たってしまうのですけれど、進まなければもう何も始まらないし、進んでいくと色々なことが変わって来ます。色々なものを柔軟に受け止めながら、しっかり前に進んでいくというのが大切なのかなと考えています。
大野:本日のゲストは、ホシザキ株式会社執行役員の佐々木誠さんにお越しいただきました。本日はありがとうございました。
佐々木:はい、ありがとうございました。
まとめ
ホシザキ株式会社 佐々木氏の言葉から伝わるのは、食の現場を支える技術者としての誠実なまなざしです。真空マイクロ波解凍機はただ便利な機械ではなく、人手不足やフードロス、流通の負担といった課題に向き合うための一つの答え。完成目前で構造を作り直したエピソードにも、「小さくても前に進む」という信念が息づいています。冷凍の先にある“解凍”を磨く挑戦は、これからの食の安心と豊かさを支えていきます。
AIによる記事まとめ
FM AICHIのラジオ番組「TOKAIリーダーズ・コンパス」より、職人不足やフードロスといった食の現場の課題に対し、「真空マイクロ波解凍機」の開発で省人化の変革に挑むホシザキに迫ります。「小さくても前に進む」信念のもと困難を乗り越え、確かな技術による社会課題の解決と新たな共創を目指す、リーダーの挑戦の軌跡をたどります。
※上記まとめは生成AIで作成したものです。誤りや不正確さが含まれる可能性があります。
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