気象データ・人流データ・AIを活用して需要予測と商品値引きを最適化し、食品スーパーの食品ロス削減と生産性向上を確認
~食品廃棄量を約13%削減し、作業時間を約37%短縮~
2026年8月19日
一般財団法人 日本気象協会
ソフトバンク株式会社
一般財団法人 日本気象協会およびソフトバンク株式会社の2者は、株式会社バローホールディングスおよび中部フーズ株式会社の協力の下、農林水産省の「令和6年度 食品ロス削減緊急対策モデル支援事業」の公募に採択され、気象データ・人流データ・AI(人工知能)を活用し、食品スーパーの惣菜部門における食品ロスの削減と業務の効率化を目指した実証実験(以下「本実証」)を2026年1月23日から3月12日まで共同で実施しました。
小売流通業は労働集約型であり、人手不足や人件費の上昇という継続的な課題があります。中部フーズ株式会社が東海地方を中心に展開する「スーパーマーケットバロー」の惣菜部門においては、店内調理による高品質な商品提供や魅力的な売場づくりによる顧客価値の向上を目指す中で、付帯作業や管理業務の負担が発生しています。さらに、適正な商品量の判断が各店舗の従業員の経験や勘に依存していることで、食品ロスの発生や店舗間でのばらつきが課題となっていました。これらの課題解決に向けて、AIによる需要予測とダイナミックプライシング(値引き最適化)を活用し、食品ロスの削減と業務の効率化を目指した実証実験による効果検証を行いました。
本実証は、「スーパーマーケットバロー」20店舗を対象に実施しました。同地域・同規模の比較店舗との対照分析により、食品廃棄量を約13%削減したほか、発注・計画作業時間を約37%短縮しました。さらに、食品ロスの削減による環境負荷の低減に加え、人手不足を背景とした業務効率化や生産性向上につながることを確認しました。また、売上高は2.9%増加し、売上総利益も4.1%増加するなど、収益性の向上にも寄与しました。実証期間後も、各項目に対する効果は継続して維持されていることが確認されています。
実証実験の概要
本実証では、気象データ(降雨・降雪など)や人流統計データ、店舗の販売実績・来店客数データを統合し、AIによる需要予測に基づく自動発注に加えて、ダイナミックプライシング(値引き最適化)や店舗運営AIエージェントを活用することで、食品ロスの削減や業務効率化、生産性向上への効果を検証しました。
- AIによる自動発注
店舗の生産計画・発注を支援するため、商品ごとの生産計画・発注量を自動で提示するAI予測モデルを導入しました。また、製造部門における原材料の調達や納品業務の生産性向上を図るため、店舗からの発注リードタイムの長期化にも取り組みました。 - ダイナミックプライシング(値引きの最適化)
需要予測後の販売局面においては、当日の販売進捗や在庫状況、来店客数予測を基に、各商品の値引きタイミングや値引き価格の設定をAIが推奨するダイナミックプライシングを導入しました。 - 店舗運営AIエージェント
AIによる自動発注やダイナミックプライシングの提案に対して、店舗担当者の理解促進と納得感の向上を目的として、推奨理由や予測の背景を説明する店舗運営AIエージェントを構築しました。
実証実験の効果検証
「スーパーマーケットバロー」20店舗を対象に、同地域で同規模の比較店舗と対照するA/Bテストにより、以下の成果を確認しました。本実証を通して、食品ロスの削減に加えて、人手不足を背景とした業務効率化や生産性向上にも寄与する結果を確認することができました。
- 食品廃棄量:▲12.6%
- 発注・計画作業時間:▲36.5%(週約127分→約81分)
- 売上高:+2.9%
- 売上総利益:+4.1%
- 欠品回数:▲3.2%
| AIによる自動発注 | 悪天候や曜日要因などによる需要変動を事前に見込んだ自動発注が可能となり、惣菜などの作り過ぎや欠品回数の抑制による食品ロスの削減を実現しました。さらに、発注業務や生産計画の策定にかかる現場負担の軽減にも貢献しました。 |
| ダイナミックプライシング | 売れ行きに応じて適切なタイミングで適切な値引きを行うことにより、過度な値引きの抑制や売れ残りによる食品廃棄の削減を実現し、食品ロスの削減に貢献しました。 |
| 店舗運営AIエージェント | 店舗運営AIエージェントでは生成AIを活用し、各店舗の販売実績や予測結果を踏まえた回答を提示することで、現場の納得感を高めました。今後は、問い合わせ対応や判断に要する時間短縮を目指し改善を続けていきます。 |
背景:食品ロスの削減は「現場の構造改革」が必要な段階へ
日本では、年間約461万トンの食品ロスが発生しており(農林水産省令和6年度推計値)、食品製造業・小売業がその約3割を占めています。こうした食品ロスは、生産や廃棄の過程で生じる温室効果ガスの排出を通じて地球温暖化を助長する要因の一つとされています。
特に食品スーパーにおける弁当・惣菜・寿司などの日配品は、賞味期限が短く、天候や人の動きにより需要が大きく変動するという特性があり、経験や勘に依存した運用では食品廃棄や欠品回数を抑制することが難しいことが課題となっていました。
本実証では、こうした課題に対し、気象データや人流データなど外部データとAIを活用して意思決定そのものを高度化することで、食品ロスの削減と業務効率化の両立を図るモデル構築を目的として実施しました。
取り組みの体制
本実証は、以下の役割分担のもとで実施しました。
- 株式会社バローホールディングス:食品スーパーの店舗データ提供および事業全体の推進
- 中部フーズ株式会社:導入主体としての参画、実証フィールド(製造・店舗オペレーション)の提供
- ソフトバンク株式会社:AI需要予測サービス「サキミル」の提供(来店客数予測・人流データ活用)
- 一般財団法人 日本気象協会:「サキミル」の来店客数予測を活用した自動発注モデル、ダイナミックプライシングモデル、および店舗運営を支援するAIエージェントの構築
今後の展開
本実証で得られた成果は、特定企業に限定されるものではなく、食品流通業全体で応用可能な食品ロス削減モデルです。中部フーズ株式会社では今後、組織運営上の課題を解決した上で、運営を担う「スーパーマーケットバロー」の惣菜部門の全店へのAI需要予測・ダイナミックプライシングの展開を予定しており、ソフトバンク株式会社と一般財団法人日本気象協会は、その展開を技術面から支援します。また、定期的にAI予測モデルを見直して一層の精度向上を図るとともに、食品ロスの削減や業務効率化、持続可能な店舗運営の実現に取り組んでいきます。
各社からのコメント
- 農林水産省
農林水産省は、事業系食品ロスの削減に資するモデル実証事業を支援しており、令和6年度から令和7年度にかけて、(一財)日本気象協会を代表とする4者が連携して取り組んだ、AI需要予測によるダイナミックプライシングの効果を測定するための実証事業に対する支援を行いました。今後、本実証事業をきっかけに、食品ロスの削減が更に推進されることを期待しています。
- 中部フーズ株式会社
常務執行役員 経営企画部長 大石 剛
これまでの工場製造商品での取り組み同様に、店内調理品でもさまざまな新たな知見を伴い期待していた効果を得たことを嬉しく感じています。実効性のある展開に向けて残課題はあり、これらを早期に解決して組織の力と成果につなげられるよう進めていきます。AI需要予測の効果は店舗の底上げであり、システムと人との役割分担を明確にし、適切な組織運営とお客様への価値につなげられるように取り組んでいきます。
- ソフトバンク株式会社
法人事業統括 法人プロダクト本部 本部長 宮本 泰照
このたび、バローホールディングス様、中部フーズ様、日本気象協会様と共に、農林水産省の公募案件において大きな成果を上げられたことを大変嬉しく思います。本実証では、当社が培ってきた人流統計データとAI技術を「サキミル」を通じて提供し、食品廃棄量12.6%削減と作業時間を大幅に短縮し、環境負荷の低減と生産性向上の両立を証明することができました。人手不足や食品ロスといった流通業界の深刻な課題に対し、今後もAIの力でさらなる変革を促し、業界全体の持続可能な発展に貢献していきます。
- 一般財団法人 日本気象協会
執行役員 最高執行責任者 小玉 亮
当協会は、気象データの利活用により各種の気候変動対策や、安全・安心で持続可能な社会づくりに取り組んできました。この度の実証では、気象や人流データをAI活用によって、食品スーパーにおける意思決定を高度化し、食品ロス削減と業務効率化を両立させる成果をあげることができました。今後も関係企業の皆さまと協力し、気象データの高度利用によって、食のサプライチェーン効率化などの持続可能な社会づくりに貢献していきます。
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