孫 正義 グループ代表挨拶 2016年

【Keynote Speech】2016 International Conference
on Global Energy Interconnection~電力網の国際連系実現に向けて~

今日、ここに立てることを大変嬉しく思います。ところで、ソフトバンクは移動通信の会社であり、インターネットカンパニーです。なぜ私がここにいるのか? と不思議に思われている方もいらっしゃるでしょう。まずは少し背景を説明させてください。

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私に何ができるのか——

5年前、おそらく皆さんご存知でしょうが日本は大きな災害に見舞われました。多くの人が命を失い、私自身とてもショックを受けました。福島の原子力発電所で事故が起きた後も、付近にまだ人が住んでいるという状況が恐ろしく、原子力発電所から離れるよう説得するため、車で福島へ向かいました。涙が出ました。1週間ほど泣き続けました。その後、日本全体が何日も電力不足に陥ったことに怖くなり、自分自身に問いかけたのです。この日本の電力危機に際して「何ができるのか」と。

まず、日本のリーダーたちに自ら電話をしました。日本には47の都道府県がありますが、その内の34の道府県の地方自治体に、日本での再生可能エネルギープロジェクトについて力を合わせて研究し、動き出すことを働きかけました。また、個人的な寄付を行い、日本の電力危機の解決策となる再生可能エネルギーについて、世界中の多くの科学者や政策立案者の知識と知恵から学ぶ公益財団法人 自然エネルギー財団(REI)を設立しました。

再生可能エネルギーによる発電所の建設も進めています。太陽光と風力において、ソフトバンクはおそらく日本国内の再生可能エネルギー発電事業者の中でも最大規模の事業者です。しかし、この5年間を通じて、「まだ十分ではない」ということが分かりました。日本は地理的に小さな国で、十分な太陽光も風力も得られません。ならば解決策は何か。

私はあるビジョンにたどり着きました。再生可能エネルギーを効率的に発電できる場所で発電し、アジアを渡って国際融通するというビジョンです。このビジョンに到達したのは4年前です。当時、多くの人がこのアイデアの実現を絵空事だと笑いました。どうやって国々を説得し、どうやってアジアを横断して連系するのか。できるわけがないと。だからこそ、今、ここに、この場にパートナーたちと共に立てたことを、とてもうれしく思っています。

新天地での新たな展開へ

私はモンゴルでプロジェクトを始めてから、モンゴルの持つ太陽光と風力の潜在能力について知りました。ここで発電可能な再生可能エネルギーはアジア全体の需要をカバーするほどです。モンゴルから供給される再生可能エネルギーで、今日のアジア全体で必要となる電力の200%をカバーできます。モンゴルの人口は300万人しかいないため、国内では消費しきれません。国内需要を補ってなお余りある再生可能エネルギー源を、もしアジア全体で電力網に連系することができれば、日本のような風も日光も十分ではない国にも供給することが可能となります。これが、モンゴルに投資したビジョンです。

インドでも太陽光発電プロジェクトを始めています。
「われわれはインドの豊富な太陽光を用いて発電事業を行う意向を強く持っている。これは、地球の環境問題に対する将来的な解決策である。できるだけ早くやりましょう」と、インドのモディ首相と約束を交わしました。ソフトバンクは、インドでも最大規模の太陽光発電事業者となるでしょう。

鍵は、国際連系網

われわれはモンゴルおよびインドでプロジェクトを進めていますが、国際連系網がありません。しかし2カ月前、奇跡が起こりました。国家電網 劉振亜 会長から、アジアだけではなく、世界中をつなごうという話があったのです。彼のビジョンに耳を傾けると、私よりも大きな人だと心からの敬意を抱きました。多くの人が言うように、再生可能エネルギーは、太陽が照らなかったり、風が吹かなかったりという自然の営みに左右され安定性に欠けますが、グリッドで世界をつなげれば世界のどこかは晴れていて、世界のどこかで風が吹いている。永久発電機関になり得るのです。私はこのビジョンが実現することを強く、強く期待しています。

過去に申し上げたように、再生可能エネルギーはクリーンで安全だということは誰も議論の余地はありません。でも多くの人が言うのは安定性に欠け、コストが高いということです。しかし、もし世界をグリッドでつなげれば、巨大な蓄電池は不要です。グリッドが世界規模で最も重要な解決策となるでしょう。

今後50年、100年にわたる解決策として、ビッグピクチャーは描けました。人類にとって最も偉大なソリューションです。私の絵空事と言われた「アジア・スーパー・グリッド」構想は、さらに偉大な人物と共に、今やさらに巨大で、途方も無いビジョンとなりました。私は事業家です。夢物語ではなく、絵空事ではなく、これを実現したい。だから今日、ロシア、中国、韓国、そして日本の4カ国が一同に介し、安全でクリーンで持続可能なエネルギー供給のための覚書にサインをします。

アジアの78%を占める「ゴールデンリング」とは?

おもしろい事実があります。
アジアは世界の3分の2の人口を抱えています。アジア地域で解決策を見出せれば、世界の3分の2の問題を解決できることになります。アジア内において、この4カ国における電力需要はいったい何%なのか? その割合はなんと78%に及びます。しかし、われわれ4カ国とモンゴルが連系すれば、再生可能エネルギー源を持ち、この“リング”から電力を需給することができます。アジアで最初に遂行されるこの国際連系は「ゴールデンリング」なのです。

このグリッドはとても短い距離でアジア全体の電力需要の78%をカバーします。次の12カ月間、われわれはCAPEX、運用コスト、グリッドの建設期間などを研究し、各国政府による国家間の合意をサポートします。技術的、コスト的にも実現可能です。私はここにいるパートナーと共に出資し、この国際問題へのすばらしい解決策について、経済的にも3年以内に目処を付けたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。

以上

(掲載日:2016年4月25日)