プレスリリース(旧ソフトバンクテレコム) 2008年

160ギガビット超高速光伝送のフィールド実験に成功
~214kmの実敷設光ケーブルにおいて長期間の安定した伝送を達成~

2008年2月26日
ソフトバンクテレコム株式会社

ソフトバンクテレコム株式会社(本社:東京都港区、社長:孫 正義、以下ソフトバンクテレコム)は、大量のデータを伝送する技術のひとつである「偏波(へんぱ)多重技術」を利用することで、これまでの4倍もの伝送容量である160ギガビット毎秒(以下、Gbps)の光信号を、実敷設された光ケーブルに伝送し、長期間にわたる安定した伝送の実験に世界で初めて成功しましたのでお知らせいたします。

  • 「偏波多重技術」
    光の横方向と縦方向の2つの振動状態(偏波状態)に、それぞれ異なる情報を載せることにより、一つの光信号でより大量のデータを伝送する技術。「偏波」は電磁波で特定の方向にしか振動していない光のこと。

なお、本実験成果については、2008年2月24日~28日まで米国サンディエゴで開催される世界最大級の光ファイバ、光通信関連の国際会議「OFC/NFOEC 2008」※1において論文発表を行う予定です。

光アクセス網の本格的な普及に伴い、光通信ネットワークの伝送容量はこれまで以上の大容量化が求められています。現在の光伝送システムの最大伝送速度は1波長あたりで最大40Gbpsですが、今後のインターネットを中心とするデータ需要の増大に対し、ますます低コストの伝送技術が求められています。2012年以降には、現在の4倍の伝送速度を有する1波長あたり160Gbpsの光伝送システムの実用化が予想されており、実用化後はデータ伝送のコストが従来のおよそ1/3~1/4になるものと期待されています。この実験は、160Gbpsレベルの光伝送システムの実用化上の問題点を把握、解決し、商用化に際して、低コストで安定した通信サービスの運用、提供を実現するための取り組みの一環として行われました。

実験の概要

1.実験期間

2007年10月10日~10月15日

2.実験場所

神奈川県内にあるソフトバンクテレコムの研究所とネットワークセンター、中継局の3ヵ所間の実敷設された光ケーブル全長214kmを利用し、160Gbpsの光信号の安定した伝送を実現しました。

  • 実験では、160Gbpsの光信号を16波長多重して伝送することにより、総伝送容量2.56テラビット毎秒を実現し、長期間の伝送特性評価は、そのうち1波長の光信号に対して行いました。

3.実験課題

「偏波多重技術」を用いた伝送は、周囲の温度変動や振動の影響によって安定した光信号の伝搬が難しい状態(「偏波状態変動」)となることが知られています。特に実際に敷設された光ケーブルを利用する場合はその影響が顕著なため、これまでは「偏波状態変動」がほとんど生じない実験室内環境において伝送実験が行われてきました。今回の実験においては実際に敷設されている光ケーブルに大容量のデータを伝送する中で、「偏波状態変動」による影響を抑え、かつ、長期間に渡って安定した伝送を実現する技術を開発することが課題でした。

4.考案した技術

ソフトバンクテレコムはこの実験において、従来、「偏波状態変動」による伝送への影響を抑えるために使用する「自動偏波制御技術」で用いられてきた制御手順よりも更に最適な手順(アルゴリズム)を考案しました。これによって長期間に渡っての大容量伝送が可能となりました。

  • 本実験では、実験機材等の都合により5日間にわたっての安定伝送を確認しましたが、開発した技術を利用することにより、実際には実運用に耐えるレベルの安定動作を継続させることが可能です。

5.実験成果の今後

現在、電気・電子技術関連の学会や国際標準化機関においては、次世代のイーサネット技術として、100ギガビットイーサネットに関する検討が進められています。今回の実験に用いられた光信号は160Gbpsの伝送容量を有しており、100ギガビットイーサネット信号をそのまま収容して伝送することが可能です。100ギガビットイーサネット信号の伝送技術については、世界中の研究機関で検討が進められていますが、今回初めて「偏波多重技術」を用いた伝送方式の実用環境下における実験が成功したことで、2010年に標準化完了が予定されている100ギガビットイーサネット技術の実用化に向けての主要課題の一つが解決されたと言えるため、今後の急速な技術開発が期待されます。

  • ※1「OFC/NFOEC 2008 (The Optical Fiber Communication Conference and Exposition (OFC) and The National Fiber Optic Engineers Conference (NFOEC) )」: 毎年北米で開催される光ファイバ、光通信関連の世界最大級の国際会議。昨年開催された「OFC/NFOEC 2007」では、世界各国からおよそ13,000名の参加があり、600件以上の論文発表が行われた。

フィールド実験構成図

以上

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