プレスリリース 2025年

ローカルブレイクアウト技術を活用し、
「AITRAS」上のエッジAIサーバーへセキュアに
アクセスする機能を開発

~機密性の高いデータの運用が可能な、URSPやLADNを活用したLLMアプリケーションも開発~

2025年3月3日
ソフトバンク株式会社

ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)は、AI-RANの統合ソリューション「AITRAS(アイトラス)」※1上のエッジAIサーバーへのネットワーク経路を分離し、セキュアなアクセスができる機能を開発しました。これは5G SA※2の機能であるローカルブレイクアウト(Local Breakout)技術※3を活用した、「AITRAS」上にあるエッジAIサーバーへのエッジルーティング※4により実現しています。また、この技術を活用して、機密性の高いデータの運用が可能なLLM(大規模言語モデル)アプリケーションを開発しました。

AI(人工知能)時代において、データの活用がますます重要になっていますが、社外秘情報や個人情報といった機密性の高いデータを扱うには、安全性の高い環境で処理を行う必要があります。その一つとして、パブリックなAIモデルなどの環境とは異なる、プライベートな環境でAI処理をする手法があり、ソフトバンクが開発する「AITRAS」においても、プライベートな環境としてエッジAIサーバーを構成しています。このエッジAIサーバーをよりセキュアに運用するためには、通常のインターネット向けのネットワークとは異なるネットワーク経路でアクセスする必要があります。そこで、ソフトバンクは、5G SAの機能であるローカルブレイクアウト技術のURSP(User equipment Route Selection Policy)とLADN(Local Area Data Network)を用いたエッジルーティングにより、「AITRAS」上のエッジAIサーバーへのセキュアなアクセスを実現しました。

URSPとは、5Gにおけるネットワーク経路の特性を指定するポリシーです。URSPを設定することにより、端末はコアネットワークから特性が異なる複数のPDU(Protocol Data Unit)セッションの割り当てを受けることができます。また、アプリケーションが自ら使用したいPDUセッションを選択できるように構成することも可能です。PDUセッションの接続先として、通常のインターネット向けとは異なるローカルネットワークを割り当てることで、ローカルブレイクアウトを実現することができます。

LADNとは、端末の在圏位置に基づいて、URSPによりPDUセッションの有効・無効を切り替える機能です。これにより、エリアに応じてPDUセッションの使用を制限することができます。

ソフトバンクは、ローカルブレイクアウト技術を活用して、「AITRAS」のエッジAIサーバー上で稼働する二つのLLMアプリケーションを開発しました。

(1)URSPを用いたLLMの使い分けアプリケーション

社内の機密性の高い情報などをLLMで扱うには、企業ごとに固有のLLMを構築する必要があります。この固有のLLMを「AITRAS」上のエッジAIサーバーに構築することで、機密性の高いデータをセキュアに運用することができます。一方、現在ではさまざまなLLMが誕生しており、急速に高性能化が進んでいます。企業は固有のLLMと外部のLLMを適切に使い分けることで、より業務を効率化し、利便性を高めることができます。

今回ソフトバンクは、URSPを活用して、インターネットと「AITRAS」上のエッジAIサーバーのそれぞれにPDUセッションを同時に構成することで、パブリックLLMとプライベートLLMの両方にアクセスできるアプリケーションを開発しました。さらに、デバイス上で動作する軽量なLLMを用いて、ユーザーの入力に対して機密性の判定を行うAIエージェントを実装することで、ユーザーが利用するLLMを自ら選択せずとも、自動的にパブリックLLMとプライベートLLMを使い分けることができる構成を実現しました。これにより、会社が貸与する業務用端末でLLMを利用する際、各社員の機密情報に対する意識に左右されずに、会社のセキュリティーポリシーに合わせた運用が可能になります。

(1)URSPを用いたLLMの使い分けアプリケーション

(2)LADNを用いたマルチモーダルRAGアプリケーション

産業へのAI活用が進む中で、例えば製造業においては、AIが工場全体の状況を理解し、生産設備への指示や情報の確認なども全てAIが自動で行うといった活用方法も考えられています。今回ソフトバンクは、このような製造業向けのケースを想定して、LADNに対応したLLMアプリケーションを開発しました。これにより、特定のエリア(工場内など)に限定してPDUセッションを有効にし、「AITRAS」上のエッジAIサーバーへのアクセスを許可することで、工場内でのみLLMへのアクセスが可能になり、強固なセキュリティーを実現できます。

また、工場内の設備のセンサーデータや、監視カメラの映像などのさまざまな情報を扱うことができるマルチモーダルRAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)を、「AITRAS」のエッジAIサーバー上に構築しました。これにより、ユーザーからの質問に対して、映像や音声、センサーデータなどマルチモーダルな情報を参照することで、より精度が高い返答をすることが可能になります。

(2)LADNを用いたマルチモーダルRAGアプリケーション

今後もソフトバンクは、AI-RANとモバイルネットワーク技術を連携した機能の開発とユースケースの拡大を推進し、AI-RANによる社会課題の解決に貢献していきます。また、この技術に関する内容を含めたホワイトペーパーを発刊しました。詳細はこちらをご覧ください。

ソフトバンクの専務執行役員 兼 CTOの佃英幸は、次のように述べています。
「今回のAIとモバイルネットワーク技術の統合による具体的なソリューションの実証により、AI共存社会におけるモバイルネットワークの重要性を示すことができました。さらにAI共存社会の基盤となるためには、RAN(Radio Access Network、無線アクセスネットワーク)の実装としての『AITRAS』だけでなく、End-to-Endの設計が重要だと考えます。今後は『AITRAS』を中心にEnd-to-Endを考慮したイノベーションを進め、社会価値の高いインフラ開発を推進していきます」

[注]
  1. ※1
    「AITRAS」の詳細は、2024年11月13日付のプレスリリース「AI-RAN統合ソリューション『AITRAS』を開発」をご覧ください。
  2. ※2
    5G SAとは、スタンドアローン(Stand Alone)方式の5G(第5世代移動通信システム)の商用ネットワークのこと。詳細はこちらをご覧ください。
  3. ※3
    ローカルブレイクアウト技術とは、特定の通信をインターネットなどのWAN(Wide Area Network)に対する通信と分離してローカルネットワーク内で処理する技術。
  4. ※4
    エッジルーティングとは、データトラフィックを端末に近いエッジ領域に配置されたサーバーへルーティングすること。
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