CSRトピックス 2009年

豊かなコミュニケーションの輪を家庭に、そして社会に広げたい ソフトバンク手話教室

ソフトバンクモバイル株式会社が運営する「ソフトバンク手話教室」は、ろう者が日常的に用いる「日本手話」を、語学教育の理論と方法を身につけた講師(日本手話を母語とするろう者)の指導のもとで学習できる、国内有数の手話教室です。聴覚障がいを持つお客様に手話で対応できる店員の配置・育成に着手したのを機に、「人と人との豊かなコミュニケーションの輪を社会に広げたい」という想いからスタートした手話教室は、来年で誕生10周年を迎えます。

文字情報サービスが発端で生まれた手話教室

手話で接客するソフトバンクショップの店員

1997年にいち早く文字情報サービス(携帯電話単体でのEメール送受信サービス)を開始したソフトバンクモバイル(当時デジタルホングループ)の携帯電話サービスには、聴覚に障がいを持つお客様が多数加入されました。ところが当時、そのようなお客様に使い方を説明して販売することができる手話のスキルを備えた店員がほとんどいませんでした。そこで、こうした状況に問題意識を持ったソフトバンクモバイルの販売代理店が、聴覚に障がいを持つ当事者の方々や公益社団法人日本フィランソロピー協会と協議を重ね、2000年8月に東京都町田市にバリアフリー店舗*1を開設し、手話でお客様への対応ができる店員の配置を始めました。

さらに、店員教育の一環として手話学習を導入することを決め、社外からも受講生を受け入れて手話を学んでいただくことで人と人との豊かなコミュニケーションの輪を社会に広げたいと考え、手話教室を開講しました。こうしてスタートした手話教室は、2004年にソフトバンクモバイル(当時ボーダフォン)が直接運営する「ソフトバンク手話教室」となった後も、豊かなコミュニケーションの輪を社会に広げようという手話教室の誕生当時の想いを大切に受け継いでいます。

[注]
  • *1高齢者や障がいを持つ方もご利用しやすいよう、足元の段差をなくすなどの工夫を加えた店舗のこと。

ろう者が日常的に使う「日本手話」をネイティブ講師が指導

音声を一切使わずに手話を学ぶ

「ソフトバンク手話教室」には、2つの特長があります。
1点目は、講師全員が語学教育の理論と方法を身につけた“ネイティブ・サイナー”(手話を母語とするろう者)だということです。次に2点目は、ろう者が日常的に使用している、日本語とは異なる独自の言語体系を持つ「日本手話」を指導している点です(日本語の語順に対応した手話は「日本語対応手話」といわれます)。手話の学習経験がまったくない方と、日本語対応手話を学んできた方とでは、効果的な学習方法が異なるため、それまでの手話学習暦に応じた2種類のコースをレベル別にクラス設定しています。

その一つが、初めて手話を学習する方を主な対象とする「ナチュラル・アプローチ コース」です。このコースでは、“赤ちゃんが言葉を覚えるように”日本手話を自然に身につけていただけるよう、ナチュラル・アプローチという第二言語習得理論を手話教育に応用した指導法(詳細後述)を採用しています。もう一つが、日本語対応手話を学習したことのある方を対象に、基礎から日本手話を指導する「日本手話コース」です。ろう者が日常的に用いる日本手話は、文法、語彙、音韻などが日本語とは異なるため、日本語の語順通りに手を動かしてもろう者には通じにくいことがあります。「日本手話コース」では、これまで日本語対応手話を学んできた方が日本手話へ軌道修正するための指導を行っています。

どちらのコースも、講師は手話だけで授業を進め、日本語の話し言葉による説明は行いません。授業中は頭の中にある日本語の文法や音声を忘れ、講師との手話による会話を通して、自然に日本手話を学んでいきます。2000年10月の手話教室開始当初週5つだったクラス数は、今日では週20クラスを超えるまで増加しました。ソフトバンクモバイルが直接運営を担うようになった2004年度以降、今までに合計2,800名以上の方々が受講されています。

手話指導者を育成 〜「ナチュラル・アプローチ手話教授法講座」〜


手話指導に携わるろう者を育成する「手話教授法講座」

手話言語学から第二言語習得法に至るまで、手話指導に必要な幅広い知識を身につけていただく「ナチュラル・アプローチ手話教授法講座」を2005年度から開講しています。ナチュラル・アプローチ手話教授法とは、S.Krashenが第二言語習得理論として提唱したナチュラル・アプローチを手話の学習に用いたもので、音声を一切使わず、通訳を介すこともなく、手話を手話だけで指導する方法を指します。

ナチュラル・アプローチを実践する講師は、その言語のネイティブ、またはネイティブに近い人であることが必要とされているため、「ナチュラル・アプローチ手話教授法講座」では、日本手話が母語であるろう者、またはCODA(Children of Deaf Adults:ろうの両親から生まれた耳の聞こえる子ども)を対象としています。これまでの受講者は、現在受講中の方を含め80名を超え、この講座を修了した方の多くが、地域の手話講習会や、ろう学校、手話ニュースなどで活躍しています。

第一期修了生の小野 広祐さんは、ご自身がろう者であり、生まれつき耳の聞こえない子ども(ろう児)に手話で教えるフリースクール「龍の子学園」(現学校法人 明晴学園)の活動に1999年から従事してきました。幼い子どもが日本語を正しく使えないのと同じように、ろう児も最初は手話を正しく使うことができません。日本語と同じく、手話にも年齢に応じた話し方があり、それに合った手話教育が求められます。小野さんは、「発達段階に応じて手話をろう児に教えるには、“赤ちゃんが言語を習得するのと同じように手話を指導する”というナチュラル・アプローチの理念を掲げる『ソフトバンク手話教室』で手話の指導法を学ぶことが役立つと考えて受講を決断した」といいます。現在は、「ナチュラル・アプローチ手話教授法講座」で学んだことを活かして、学校法人明晴学園の小学部3、4年への指導を担当する傍ら、2005年11月からはNHK手話ニュースのキャスターとしても活躍中です。

ろう児のいるご家庭のコミュニケーションを支援 〜「ファミリークラス」〜


ろう児を持つご家族のための「ファミリークラス」

聴覚障がいを持って生まれてくる子どもは約1,000人に1人、ろう児の親の約9割は聴者だといわれています。ろう児の親は、子どもと意思疎通を図るために手話を身につける必要性に迫られます。しかし、“音声”を基礎とする言語に慣れているため、“視覚”の言語である手話に慣れるのに大変な苦労と時間を要します。そのため、コミュニケーションの手段が耳の聞こえる人とは異なるろう児は、家族の中で孤立しがちです。そこで、「ソフトバンク手話教室」では、ご家庭でのコミュニケーション支援するため、2004年4月、ろう児を持つ親御さんを対象に、6ヵ月にわたる計18回の「両親クラス(現 ファミリークラス)」(無償)を開講しました。現在は、対象を親御さんのみならず、2親等以内のご家族、同居のご親戚に広げています。

ファミリークラスの受講生からは、「手話教室で学んだことで、表現の幅が広がり、子どもとより自然な会話ができるようになった」「手話を知らなかった頃は子どもが言おうとしていることが理解できず、子どもがかんしゃくを起こすこともあったが、手話で通じるようになって子どもも落ち着き、親である私も穏やかに接することができるようになった」「孫の耳が聞こえないと分かり、手話を習い始めたが、自分の手話が孫に伝わってニッコリ答えてくれたときの喜びは何よりも大きい」など、数多くの喜びの声が寄せられています。

ソフトバンクグループ社員が学ぶ 〜「汐留クラス」〜


ソフトバンクグループ社員が参加する「汐留クラス」

ソフトバンクグループの汐留オフィスでは、数十名の聴覚障がいを持つ社員がさまざまな職場で働いています。聴覚障がい者のいる職場でのコミュニケーションの円滑化を図るとともに、ソフトバンクモバイルが長年取り組んでいる「ソフトバンク手話教室」についてより多くの社員に知ってもらおうと、2009年6月から汐留オフィスで、第一期生となる15名を対象に、隔週で全7回の「汐留クラス」を開催しています。「同じ部署に聴覚障がいを持つ社員がいるので」「聴覚障がいを持つ友人ともっとコミュニケーションを取れるようになりたい」「通勤途中にろう学校があり、その生徒たちがとても流暢に何の不自由もなく手話で会話しているのを見て興味を持った」など、多様な受講動機を持つ社員が業務時間終了後に集まって手話を学んでいます。

ソフトバンクモバイルは、ご家庭、地域、そして社会全体で、より豊かなコミュニケーションが生まれ、広がっていくことを願い、誰もが楽しく気軽に手話を学べる「ソフトバンク手話教室」の運営を通して社会に貢献してまいります。

(掲載日:2009年8月18日)

  • *内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。