CSRトピックス 2010年

ITで社会の新たな仕組みを支える 人と環境にやさしい「コミュニティサイクル」

ソフトバンクグループで、モバイルインターネットを中心とした情報提供サービスやコンサルティングなどを手がけているリアライズ・モバイル・コミュニケーションズ株式会社は、無人の貸出・返却拠点で自転車を借りて別の拠点に返却できる「コミュニティサイクル」事業を京都市内で開始しました。モバイルソリューションの活用によって、温室効果ガス抑制に貢献する移動手段の普及に取り組む、同社 ソリューション事業部 事業部長の勝本 淳之にインタビューしました。

コミュニティサイクルで、人と環境にやさしい都市へ

インタビュアー:
なぜコミュニティサイクル事業に取り組もうと考えたのでしょうか。
勝本:

当社は、2000年の設立以来、法人のお客様へモバイルソリューションを提供してきましたが、今後はコンテンツ制作やシステム構築・運営を行うだけではなく、より社会のニーズに合った社会貢献度の高い領域に取り組むことによって、事業の差別化を図っていきたいと考えていました。ITは世の中に必要とされる新たな仕組みを支える一つの“手段”になる―そういう時代がこれから来るのではないかと考え、社内で検討を進めてきました。その一つの観点として「環境」がありました。

近年、環境にやさしい移動手段として、自転車への注目が高まっています。ヨーロッパの事例を調べると、コミュニティサイクルが導入されている国が多数あり、移動手段を自動車から自転車へとシフトさせる人が増えていることが分かりました。コミュニティサイクルというのは、街のあちこちに設置されている自転車の貸出・返却拠点(ステーション)を利用して、どこで借りてどこで返してもよい、いわゆる“乗り捨て型”のレンタサイクルです。通常のレンタサイクルでは、遠くまで行った後にわざわざ元の場所まで戻って自転車を返さなければなりませんが、コミュニティサイクルにはその必要がありません。スペインのバルセロナ市で導入されているコミュニティサイクルの事例では、平日の1回あたりの平均利用時間は17分、1日およそ3万回もの利用があると言われています。これにより、年間およそ2,900トン(CO2換算)の温室効果ガスの排出を抑制しているそうです。そこで、最新のITを活用した仕組みを作ることによって、日本でもコミュニティサイクルを普及させることができるのでは、と考えました。

インタビュアー:
実際に、コミュニティサイクル事業を京都で開始した背景を教えてください。
勝本:

京都は、地球温暖化防止のための条約「京都議定書」が締結された場所ですので、まずは京都でコミュニティサイクル事業を開始したいという思いがありました。京都市は、バスやタクシーなどで観光名所を点々と回るのではなく、徒歩や自転車で街を巡って、ふと気になったところに立ち寄るというスタイルの観光都市「歩くまち京都」を推進している自治体でもあります。コミュニティサイクルなら、ガイドブックに載っていない裏道の京都も楽しむことができ、また観光シーズンの京都で常態化している大渋滞を軽減し、よりスムーズに観光していただけます。しかも、温室効果ガスの排出を削減することができるのです。京都市内で駐輪場整備を行っている株式会社アーキエムズ(以下 アーキエムズ)と共同で事業を行うことにより、スムーズに京都でのコミュニティサイクル立ち上げを行うことができました。

ITが支えるコミュニティサイクルの仕組み

インタビュアー:
コミュニティサイクルの仕組みには、ITがどのように活用されているのでしょうか。
勝本:

コミュニティサイクルの貸出・返却ステーションは、数が非常に多く、すべて無人です。そのため、すべてのステーションをインターネットでつなぎ、自転車をICタグとセンサーで個体管理して、貸出・返却履歴や利用料金などの情報をリアルタイムで一元管理するシステムを構築しています。

お客様向けには、各ステーションの自転車の空き状況や現在の利用料金を、携帯電話やパソコンからリアルタイムで確認できるWEBサイトを用意しています。携帯電話のGPSを活用し、現在地から最寄りのステーションを検索できる機能も備えています。また、Twitterの専用アカウントやステーションに設置された大型液晶ディスプレイ(デジタルサイネージ)でも、各ステーションの満車・空車の状況をご確認いただけます。デジタルサイネージはネットワーク化されているので、臨機応変に情報配信することができます。京都で大地震が起きた場合には、避難場所の緊急案内も表示できるように、自治体との連携を進めています。

インタビュアー:
料金体系や支払の仕組みは、どのようになっていますか。
勝本:

自転車の貸出の際に、ステーションに設置されているタッチパネル式の清算機に、クレジットカードまたは「おサイフケータイ®」などの各種ICカードをかざしていただくと、最初の1時間の利用料金200円が課金されます。返却する際にもう一度かざし、利用金額との差額があれば、その分の決済が行われる仕組みです(1時間を超えた分は100円/時間)。清算機は日本語のほか、英語・中国語にも対応していますので、海外からお越しのお客様にも、安心してご利用いただけます。

コミュニティサイクルの普及・定着に向けて

インタビュアー:
このコミュニティサイクル事業は、環境省が実施する「地球温暖化対策ビジネスモデルインキュベーター(起業支援)事業」に採択されていますが、どのような点が評価されたとお考えですか。
勝本:

温室効果ガスの排出抑制に貢献する新しい事業を立ち上げるには、コストも時間もかかります。「地球温暖化対策ビジネスモデルインキュベーター事業」は、目新しいビジネスモデルに対して助成を行い、初期の事業の立ち上げを支援する目的で実施されているものです。今回、12件の応募の中から、専門家・有識者からなる評価委員会の審査を経てコミュニティサイクル事業が採択されました。これまでの環境省による環境ビジネスへの助成事業では、ソーラーパネル設置などの設備投資や、バイオマスエネルギーの研究開発への助成が中心だったようです。ITを使って仕組みを作ることで温室効果ガスの抑制に貢献する我々のビジネスモデルは目新しく、事業の将来性や、ビジネスモデルの先見性と先進性を評価していただいたと考えています。

インタビュアー:
日本におけるコミュニティサイクルの普及と定着に向けて、今後の事業計画について教えてください。
勝本:

京都市内のステーション数は現在2カ所ですが、アーキエムズと共同で、今後は駅周辺や観光名所だけではなく、ホテルや美術館などにもステーションを広げていきたいと考えています。また、駐輪場運営会社やホテル、商業施設などと連携して、京都以外の全国主要都市でもコミュニティサイクル事業を展開していき、2010年度中に全国で約100カ所のステーション設置を目指しています。他の交通機関との連携も視野に入れながら、オフィス街や通勤で利用する「都市型コミュニティサイクル」にも日本各地で挑戦していきたいと思います。

環境や弱者への配慮など、ITを活用して世の中の役に立てることに取り組み、インターネットNo.1カンパニーを志すソフトバンクグループの一社として、インターネットによる社会貢献においてもリーディングカンパニーを目指していきます。

(掲載日:2010年7月13日)

[注]
  • *「おサイフケータイ®」は株式会社NTTドコモの登録商標です。
  • *「Twitter」は、Twitter, Inc.の登録商標です。
  • *内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。