CSRトピックス 2011年

産学民協働で聴覚障がい者のコミュニケーションをサポート モバイル型遠隔情報保障システム普及事業が
「第7回パートナーシップ大賞」グランプリを受賞

聴覚障がい者のコミュニケーションをサポートする「モバイル型遠隔情報保障システム普及事業」が、NPO法人 パートナーシップ・サポートセンターの主催する「第7回パートナーシップ大賞」において、グランプリを受賞しました。同事業は、ソフトバンクモバイル株式会社(以下 ソフトバンクモバイル)が、国立大学法人 筑波技術大学(以下 筑波技術大学)、NPO法人 長野サマライズ・センター(以下 長野サマライズ・センター)と共同で進めています。ソフトバンクモバイルでこの事業を担当する総務本部 CSR推進部の梅原 みどりに、「モバイル型遠隔情報保障システム」の持つ利点などについてインタビューしました。

携帯電話を使って遠隔地から聴覚障がい者のコミュニケーションをサポート

インタビュアー:
「モバイル型遠隔情報保障システム」とは、どのようなシステムなのでしょうか。
梅原:

一言で言いますと、「聴覚障がい者や高齢者など、音を聞き取ることが困難な方のコミュニケーションをサポートするシステム」です。まず、話し手の声をワイヤレスマイクと携帯電話を通じて、音声を文字に換える通訳者がいる遠隔地に送ります。次に、音声を聞き取った通訳者が要約し、文字情報としてインターネットで配信します。最後に聞き手は、携帯電話を用いて要約された文字情報を受信・表示することで、話し手が語った内容を確認することができます。この一連の作業は、ほぼリアルタイムで行われます。これまでもパソコンを使った要約筆記はありましたが、通訳者は話し手と同じ場所にいなければ通訳できないという制限がありました。また、ガイドツアーなど、移動を伴う環境での対応が困難でした。そこで「モバイル型遠隔情報保障システム」では、携帯電話を利用することによって、通訳者が遠隔地から聞き手をサポートでき、また話し手が移動するような場面にも対応できるようにしました。

インタビュアー:
このシステムが生まれた経緯を教えてください。
梅原:

ソフトバンクモバイルが、2008年度までNPOを対象に実施していた助成金プログラム*1において、パソコン要約筆記のサポートを行う長野サマライズ・センターから参加申請を受けたのがきっかけです。長野サマライズ・センターでは、活動の一環として、聴覚障がい児が学校で授業を受ける際のサポートを実施しています。当時は、重い機材を教室に運び入れ、2人の大人がパソコンで教師の言葉を打ちこみ、モニターに投影するという方法で行っていたため、移動が大変でした。また、「大人が常に隣にいる」ことが、聴覚障がい児と他の子どもたちとのコミュニケーションを妨げてしまうかもしれないという懸念もありました。こうしたことから、長野サマライズ・センターには、「どうにか遠隔地から要約筆記を行う仕組みを作りたい」という思いがあり、応募されたということでした。ご提案はとても可能性を感じる内容でしたが、このような仕組みを実現するためには、システムに関する専門家の力が必要になります。そのため、一度は助成を見送ることとしました。しかし長野サマライズ・センターはその後、筑波技術大学に協力を呼びかけ、システム面にめどをつけたうえで、あらためて助成プログラムにチャレンジされました。その結果、2回目の応募では、採択させていただくことになりました。

インタビュアー:
システムの開発は、スムーズに行われたのでしょうか。
梅原:

研究開発は、筑波技術大学が中心となって取り組みましたが、試行錯誤の連続でした。例えば話し手の声は送信できる一方で、当時発売中の携帯電話では、聞き手の携帯電話画面にリアルタイムで文字情報を表示し続けることができませんでした。また、遠隔地にいる通訳者が要約する素材は、音声・動画・資料のうち、何が最適か、またどのように送るべきかという点でも、試行錯誤がありました。「教室の板書を見ることができた方がよいのではないか」と考え、WEBカメラで黒板を撮影したこともありましたが、撮影のために大人が教室に入ることになり、当初の目的に外れてしまったという、笑い話のようなエピソードもあります。いろいろな困難に直面し、なかなか開発が成功せず、「もう駄目か…」とあきらめかけていたときに、「iPhone 3G」が発売されたのです。iPhoneを利用することで、課題を解決。その後、新たに国立大学法人の群馬大学や東京大学も研究に加わり、このシステムが「モバイル型遠隔情報保障システム」と名づけられ、産学民、つまり企業、大学・NPOの三者が連携するプロジェクトとして、再スタートを切りました。

NPOの「現場感」、大学の「専門性」、企業の「経営資源」を活かして実現

インタビュアー:
大学やNPOと連携することは、企業にとってどのような意義があると思いますか。
梅原:

それぞれの強みを発揮することで、単体ではできないことを実現できるという点に、連携の意義を感じています。長野サマライズ・センターの働きかけがなければ、我々は現場のニーズや携帯電話を使った貢献の可能性に、気付くことができなかったかもしれません。また、筑波技術大学をはじめとする大学の協力がなければ、当然、システムの開発は不可能でした。加えて、企業である我々が、携帯電話や通信網という経営資源を提供し、社内外のさまざまな環境における運用に協力できたことで、持続的なシステム利用につながったと思っています。それぞれの立場の違いから意見が異なる場面も何度かありましたが、強みを活かし合うことで、同じゴールを目指して、素晴らしい化学反応を起こせたと思っています。

より多くの場所で、より多くの人に

インタビュアー:
今後の展開を教えてください。
梅原:

今後は、より多くの方に「モバイル型遠隔情報保障システム」を利用していただけるよう、普及活動を行っていきます。教育現場だけではなく、自治体や企業など、さまざまな場面で活用いただくことを目指して、情報セキュリティを意識した運用上のルール作りも強化していく予定です。

また引き続き、大学やNPOなどと連携しながら、聴覚障がい者のコミュニケーションをサポートできるように取り組んでいきます。今回のプロジェクトの中で、「ITツールの活用が自立支援につながる」ということに気付きました。聴覚障がい児たちは、通訳者が教室にいなくなったことで、ひとりで機材をセットし、先生にマイクをつけてもらうお願いをするなど、主体的に動かなければならない場面が増えました。このことがきっかけで、自立意識が芽生えたそうです。携帯電話や通信網というソフトバンクモバイルの経営資源を活かして、コミュニケーションと自立支援を促進する、新しい貢献の可能性を考えていきたいと思っています。

(掲載日:2011年2月24日)

[注]
  • *1現在、助成金プログラムは実施しておりません。
  • *Apple、Appleのロゴは、米国および他国のApple Inc.の登録商標です。iPhoneはApple Inc.の商標です。
  • *iPhone商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。
  • *内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。