経営陣ファイル 2006年

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アイティメディア株式会社 代表取締役社長
大槻 利樹(おおつき としき)

ソフトバンク創立4年目に入社。ソフトウェアの流通部門を経て、歴代最長と言われる5年半の間、孫社長の秘書を務める。その後、現在のソフトバンクグループ内で中核企業となっているヤフーやサイバーコミュニケーションズ(CCI)などの立ち上げに尽力する。現在、テクノロジー関連総合サイトを運営するアイティメディア株式会社の大槻代表取締役にIT分野における出版の変遷と今後のビジョンを聞いた。

略歴:
1984年株式会社日本ソフトバンク(現ソフトバンク株式会社)入社。1984年〜88年ソフトウェア事業部で営業と商品マーケティングを担当。1989年〜1994年孫社長秘書。1994年〜1999年出版事業部で広告局長、マーケティング局長などを歴任。1999年分社化と同時に執行役員インターネット局長として、ソフトバンクパブリッシング株式会社に転籍。1999年12月ソフトバンク・ジーディーネット株式会社(現アイティメディア株式会社)設立と同時に同社代表取締役社長に就任。2004年1月社名をソフトバンク・アイティメディア株式会社に変更。2005年3月株式会社アットマーク・アイティと合併し、アイティメディア株式会社代表取締役社長に。

ブロードバンドにのせる新しい形の出版

アイティメディア株式会社はテクノロジー関連総合サイト「 ITmedia(アイティメディア)」、 ITエキスパートのためのIT技術情報サイト「@IT(アットマーク・アイティ)」などを筆頭に、IT関連の各種情報を扱うオンラインメディア企業です。2006年2月には、エンタープライズ・ビジネス分野の専門出版社メディアセレクトを統合し、メディア企業としての拡大を更に加速します。

ブロードバンドやインターネットが社会基盤として普及してきている今、メディア業界においても産業を支えるインフラや情報を伝達するビークルが変化してきています。従来の新聞社や出版社は、新聞・雑誌・書籍などの編集・出版事業と配本のための流通事業が主業務でした。その流通インフラの運営には多くの労力、時間、コストが必要でした。インターネットをインフラとする新しい形の出版社は、時間・コスト・資源の節減を可能にするだけでなく、ページビューやユニークユーザーなど、数値からニーズの動向を探り情報提供の質を高め続けていくことができます。

また、利用者は時間や場所に制限されることなく、常に最新の情報を得ることができます。蓄積された情報リソースの中から必要な情報を瞬時に取り出すこともできます。当社がネット上で提供する記事は、1日200本を越える膨大な情報源です。

一方で、インターネットを通じての情報発信は、思想やバックグラウンドを明かさない誰もが自由参加できる反面、情報の信憑性・信頼性が下がってしまうという問題があります。だからこそ、アイティメディアはプロフェッショナルとしての役割を果たすことにより人々から信頼され、尊敬される「情報の集積地」になっていくことを目指しています。

記事の中に見るITへの思い

2001年、ソフトバンクグループはYahoo! BB サービスの提供を開始しました。当時、ブロードバンドは高額で、世間一般にはまだまだ普及していなかった。そこに破格の値段でYahoo! BB サービスが登場し、予想を超える数の申し込みが殺到しました。作業スピードや顧客対応は追いつかず、接続できない、サポートセンターもつながらないという状態が続き、まさに産みの苦しみの時代がありました。アイティメディアはその時、利用者の立場に立って客観的状況と批判(改善事項)記事を掲載したのです。

グループ内から反発の声もありました。同じグループとしての誇りはないのかと。でもそれは違うと思った。大切なことは、ITが普及し、世の中が豊かになることを心底願っているかどうか。この気持ちがあるからこそ公平性、正確性のある本質を書くことができるんです。読者は見抜きますから。

常に第三者の立場から情報発信することはメディアとしての誇りであると同時に、ソフトバンクグループのチェック機能の役割を果たすことにもつながっていると自負しています。だから当社は汐留ビルにも入らない。アイティメディアがソフトバンクグループの中で在り続けるのは、孫社長がその中立的な情報発信の重要性を認めてくれているからだと思っています。

アイティメディアの目指すもの

ソフトバンクグループは総合通信会社として、ブロードバンド・ポータルサイト・コンテンツの三層から様々なサービスを提供し、ITの普及に努めています。その中で、アイティメディアはテクノロジー領域の専門情報を提供するポータル・コンテンツカンパニーとしての役割を果たしています。

現在、アイティメディアのサイトは企業のIT情報収集手段として様々なビジネス場面で活用されています。今後はITという枠に狭くとらわれることなく、様々な産業分野で活かせる情報と叡智の集積地となっていきたいと思っています。

ITが成長する中での自身の成長

私は1984年(新卒二期)日本ソフトバンク(現ソフトバンク株式会社)に入社しました。当時は社員100名足らずの無い物尽くしの会社でしたが、ビジョンとアイディアはありました。

ソフトバンク草創期からの基幹事業である流通事業・出版事業を経験し、ITの変化と成長の中に身をおき、市場の形成・拡大とともに私自身も成長することがきました。「これからはイエスとノーの割合を7対3にしてくれ」という孫社長とのあまりにもデジタルでわかりやすい約束からスタートし、89年から94年にかけて5年半、社長秘書を務めました。毎日社長の傍らで経営サポートを行い、多くのことを学びました。孫社長の遺伝子はこのときに植えついたものでしょう。

その後、メディア事業を担当し、その魅力に取り憑かれたまま今日を迎えています。インターネットがメディアを大きく変える時代において、自分を育ててくれたテクノロジー分野で新しいオンラインメディアを担っていくことは私に大きな喜びとやりがいを与えてくれます。この場所で、グループの志を共有しながらブロードバンド普及の一翼を担い、新しい時代の出版革命を通じて、ソフトバンクの発展に貢献したいと思っています。

(掲載日:2006年1月10日)

  • *内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。