経営陣ファイル 2006年

グループの総力を結集して、「Yahoo!動画」を圧倒的No.1の動画ポータルへ

TVバンク株式会社 取締役COO 兼
ソフトバンクBB株式会社 コンシューマ事業統括 コンテンツ事業推進室 室長
中川 具隆(なかがわ ともたか)

ソフトバンク株式会社とヤフー株式会社は、動画コンテンツサービス事業を強化するため、2005年12月19日にTVバンク株式会社を共同出資で設立した。これに伴い、「Yahoo!動画」を約10万の動画コンテンツのポータルとしてリニューアル。TVバンク立ち上げで中心的な役割を果たし、現在同社の COOを務めるTVバンクの中川取締役に新会社設立の狙いと今後の展望を聞いた。

略歴:
1956年生まれ。79年から日本NCR株式会社、84年からキヤノン販売株式会社で、パソコンの製品企画やマーケティングを担当。2000年ソフトバンク・コマース株式会社(現ソフトバンクBB株式会社)へ転じる。流通部門やコンテンツ部門の本部長を歴任。現在、TVバンク株式会社取締役COOとソフトバンクBB株式会社コンテンツ事業推進室 室長を兼務。
インタビュアー:
山内 貴久美(やまうち きくみ) ソフトバンク(株)広報室顧問・フリーアナウンサー

無料を中心とした10万本の動画コンテンツの“動画ポータル”

山内:
まず、TVバンク設立の狙いと役割、また同社の設立によって「Yahoo!動画」がどのように新しくなったのか教えてください。
中川:
TVバンクは、ソフトバンクとヤフーの共同出資により設立された会社で、「Yahoo!動画」の動画コンテンツの調達、動画配信および動画検索システムの開発・運用、サービス画面の制作・運用等を担っていきます。ソフトバンクとヤフーから動画コンテンツサービス事業に関わる人材とノウハウをTVバンクに集約することで、よりクオリティーの高いサービスを効率的に提供することが可能になるのです。TVバンクの設立とともに、「Yahoo!動画」は大きくリニューアルされました。
従来の「Yahoo!動画」は有料コンテンツや会員向けコンテンツが中心のサイトでしたが、広告収入型のビジネスモデルを取り入れることで多くのコンテンツを無料に切り替え、ブロードバンドユーザーであれば誰でも楽しめるようにしました。また、「Yahoo!動画」が提供するコンテンツ数を従来の8倍弱と大幅に増やしただけでなく、高い精度の動画検索機能を持たせることで、サイト内外合わせて10万本という数のコンテンツの“動画ポータル”に生まれ変わったのです。
山内:
10万本というのはかつてない数字です。どういった内訳なのでしょうか。
中川:
無料コンテンツが16,000本、有料コンテンツが15,000本。そして新たに実装した動画検索の動画インデックス数が約7万本です。セリエA(サッカー)、K-1(格闘技)、メジャーリーグベースボール*1といった話題のスポーツから、韓国や台湾の人気ドラマ、「科学忍者隊ガッチャマン」「ヤッターマン」などのアニメまで、幅広いジャンルのコンテンツを取りそろえています。無料コンテンツについては、属性入力などの面倒な手続きなしに、ワンクリックで視聴いただくことができます。
山内:
立ち上げまでに、特にご苦労されたのはどのようなところですか。
中川:
孫社長の思い描く“動画ポータルのあるべき姿”をいかに具現化するかが、我々の最大の使命です。その理想は高く、日々進化していきます。できる限り実現しようとコンテンツパートナー、広告会社、技術協力会社などと何度も調整を重ねました。特に、広告収入型のビジネスモデルを導入するうえではトラフィックの多寡が重要なポイントですので、トラフィックを呼び込める目玉コンテンツの手配に苦心しました。多くのコンテンツ制作者に、我々のコンテンツビジネスに対する考え方、ビジネスモデル、配信技術などを説いて回ることで、何とか多くの会社から賛同を得られ、無事に12月19日を迎えることができたのです。
山内:
他社の動画配信サービスと比べて、「Yahoo!動画」の特長は何でしょうか。
中川:
既存の動画配信サービスは、自社サイトに人を集めて利益を生むという自己完結型ですが、「Yahoo!動画」が目指すのは“動画ポータル”です。「Yahoo!動画」内で優良な動画コンテンツを提供するだけでなく、優れた動画検索機能を介して、ウェブ上にある動画コンテンツへスムーズに到達できる玄関口、経路にしたいのです。極端にいえば、その動画コンテンツは競合他社のものでも構いません。
ヤフーの井上社長がよく言っていますが、コンテンツを自分たちで制作して自社の設備で放映する“テレビ局”ではなく、他社が制作したコンテンツを全国へ流す経路である“東京タワー”を目指しているのです。自己完結型でなくても、「Yahoo!動画」を通り抜けるユーザーに広告を打つことなどによって、収益を生み出すことは十分に可能です。

映画・テレビとは競合せずに協調を目指す

山内:
ブロードバンド・インフラが整備された“インターネットII”時代において、コンテンツはどのような位置づけにあるのでしょうか。
中川:
一例ですが、現在の映画ビジネスは、劇場公開→セルDVD→レンタルビデオ→ケーブルテレビ(有料テレビ)→地上波、という流れになっています。ブロードバンドが普及し、動画コンテンツのネット配信が可能になった現在では、この一連の流れの中に、ネット配信という新たな枠を設けることができると考えています。実現できれば、視聴者にとって視聴形態の選択の幅が広がるだけでなく、番組・コンテンツ制作者は新たな収益を得ることができます。
ビデオの黎明期には既存の収益モデルを脅かすものだと騒がれましたが、現在ではコンテンツビジネスにおいてなくてはならない存在になっています。ネット配信にも同じことが言えるのではないでしょうか。時代の流れ、技術の進展に伴い生まれてきた新しいウィンドウであり、コンテンツ制作者サイドと我々ネット事業者の双方に潤いをもたらすものだと確信しています。
山内:
昨今話題になっている放送と通信の融合については、どのようにお考えでしょうか。
中川:
放送(テレビ)と通信(インターネット)については、ユーザーそれぞれの捉え方次第ですので、取り立てて「融合」「競合」と騒ぐ必要はないと考えています。
動画を見るという点においては同じですが、視聴スタイルでいえば、テレビは家族で、インターネットは個人で利用する傾向があります。また技術面では、放送は、多くの方に同じものを見せることに優れていますが、インターネットは、必要なときに必要なものを見ることができる“オンデマンド性”、個人が情報を受け取るだけでなく発信することもできる“双方向性”に特長があります。ですから、「Yahoo!動画」では、この特長を活かしてビジネスを展開していきたいと考えています。
具体的には、より個々の方のニーズや嗜好に応じて、コンテンツや広告を見せられる仕組みをつくっていきます。また、すでに開催している「投稿動画コンテスト」を通して、ユーザーによるコンテンツ提供という、インターネットの双方向性を生かした新たな動画コミュニケーションの場をつくりあげていきたいと考えています。

圧倒的なトラフィック収集が成功の鍵

山内:
今後のサービス展開について教えてください。
中川:
春から広告の販売を開始するとともに、サイトのインターフェースをより使い勝手の良いものに刷新する予定です。広告収入型のビジネスモデルの成否は、圧倒的なトラフィックを集められるかにかかっています。コンテンツの充実、検索機能の精度向上を図り「Yahoo!動画」を誰もが訪れたくなる魅力的な動画ポータルにして、既存の無料動画配信サービスの数十倍規模のトラフィックを集められるよう努めていきます。
圧倒的なトラフィックを集めることができれば、多くの広告主が集まり、さらにその広告収入でより良いコンテンツを集めることができるという、好循環を生み出すことができると考えています。春を目処に大きくバージョンアップする「Yahoo!動画」を、ぜひ楽しみにしていてください。

(掲載日:2006年3月7日)

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