経営陣ファイル 2006年

政界と民間企業の架け橋に

ソフトバンク株式会社 社長室 室長
嶋 聡(しま さとし)

3期9年間衆議院議員を務め、2005年11月1日付でソフトバンク社長室長に就任してから約半年。経営戦略の立案などで社長を補佐する社長室長の嶋が政治と経営の世界を語った。

略歴:
松下政経塾を経て1996年に新進党から衆院愛知13区で初当選。その後民主党に移り、3期9年衆議院議員を務める。民主党「次の内閣」の総務大臣、党総務局長などを歴任。2005年11月ソフトバンク入社。
インタビュアー:
山内 貴久美(やまうち きくみ) ソフトバンク(株)広報室顧問・フリーアナウンサー

通信業界の「三国志」

山内:
入社されてから数ヶ月が経過しました。改めて、ソフトバンク入社はどのような経緯だったのですか。
嶋:
昨年9月、孫社長を訪れました。衆院選で民主党が大敗し、自らも議席を失い実業界への転身を決意していた頃です。政界からビジネス界への先駆者になりたいとお願いしたところ、即決していただきました。
山内:
松下政経塾の二期生ということですが、やはり貫いてきた志に共感する部分があったのでしょうか。
嶋:
政治にも経営にも共通項は多いと感じています。さまざまな「革命」を起こしてきたソフトバンクに活躍の道があると確信しました。
山内:
入社前のイメージと、入ってからの印象は違いましたか。
嶋:
入社前のイメージは、チャレンジ精神あふれるIT産業のパイオニア、まさに海援隊というイメージをもっていましたが、中に入ってみたらそれに加えて梁山泊でした(笑)。実にさまざまな個性の人材が集まっている。さらに情報通信産業界は「三国志」の世界です。魏は歴史あるNTT、呉は新しい強みを持つKDDI、そこに玄徳ひきいる蜀が入っていく(笑)。豊富な人材と活力、ソフトバンクはまさに蜀の国のようです。

ソフトバンクグループとしての方向性

山内:
民間企業と政界との違いは。
嶋:
民間企業のスピードの速さを肌で感じています。
政治の対象は国民全体ですので、慎重さが重視されます。予算は年間単位で組まれ、法律は起草から施行まで2年という年月を要します。
これに対し、ソフトバンクは約15,000人、1兆1,000億円規模の売上という巨大組織にも関わらず驚異的なスピードで変化を遂げています。この半年間にTVバンクの発表、ボーダフォン社の買収を通じての携帯電話事業への本格参入、オーマイニュースへの出資、5年ぶりの黒字転換など、あらゆる面から発展しており、極めて順調に躍進しています。
山内:
社長室長の業務とはどういったものでしょうか。
嶋:
純粋持ち株会社であるソフトバンク本体は、グループ全体の経営戦略指揮を執るというミッションがあります。私はその中の経営戦略において孫社長を補佐する立場として、中期的方向性を示し、枢要会議の情報収集、調整をすることが主業務です。
2006年2月総務省が主催したIP懇談会にて、孫社長は「ユニバーサル回線会社」構想を提案しました。この構想は、2010年までに全国6,000万回線の光ファイバを一挙に引くことで、月額約690円での提供を可能にするものです。ソフトバンクグループとしては今後、ますます公益と社会貢献・社会責任を考え実践していくことがひとつの大きな方向性になっていくでしょう。

インターネットがもたらすコンテンツ産業の潮流

嶋:
食、ファッション、アニメやマンガ、ゲーム、映画など、日本の文化がクール(=カッコいい)と海外で高く評価されています。
しかし現在、日本のコンテンツ産業の市場規模は15兆円で、対GDP比は2パーセントです。さらに、デジタル化されているのはその内わずか2兆円。アメリカは対GDP比5パーセント、全世界平均では3パーセントという数値を考慮しても、日本のコンテンツ産業は未開の地だと言えます。
経済産業省が発表しているコンテンツ産業政策でも、対GDP比を5パーセントまで引き上げることを国家戦略としており、デジタル化の余地が残されたこの分野は今後もさらに発展していくことでしょう。
我々グループとしてもこのようなクールコンテンツをインターネットに乗せ、日本のコンテンツを世界に広めることを事業戦略の1つにおいていますし、ソフトバンクグループならできると思っています。
山内:
まさに橋渡し役の実践ですね。
嶋:
日本は新しい時代の牽引役となっていくでしょう。日本の情報発信はまだまだ少ない。多くの可能性があります。
山内:
直近ではサイバー大学設立申請や大阪芸術大学との産学協同でのブロードバンド講座の実施など、インターネットを介した新しい形の教育が見られるようになりました。
嶋:
現在、教育分野における地方と都会の水準格差は如実です。地方の学習環境が学校を中心としているのに対し、首都圏をはじめとする都市部では塾産業が盛んで、進学校では受験に備えた戦略的な授業を積極的に展開しています。
インターネットは、この教育格差を解消するものになっていきます。いつでもどこでも同じ情報が得られるということは、多くのチャンスをもたらします。現在、ソフトバンクが構想中のサイバー大学も、教育の機会均等を実現するひとつの回答になると考えています。
また、大阪芸術大学のブロードバンド講座ではソフトバンクの事業を通じて、現在、またこれからのインターネットやブロードバンドのあり方を講義しています。学生の皆さんには、インターネットやブロードバンドを活用した新しい発想を期待しています。
山内:
最後に投資家・ユーザーの皆さまへのメッセージをお願いします。
嶋:
ソフトバンクは日本のリーディングカンパニーになっていきます。日本経済が世界一になるためにも是非ご支援ください。

(掲載日:2006年5月25日)

[注]
  • *IT新改革戦略:ITの台頭により世界規模で生じている社会経済構造の変化に対応すべく、2001年内閣に高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)が設置された。IT新改革戦略は、「いつでも、どこでも、誰でもITの恩恵を実感できる社会の実現」をテーマに、今後のIT施策の重点や体制を開示したもの。
  • *内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。