経営陣ファイル 2006年

世界に誇れるサービスと会社を目指してソフトバンクの移動体通信事業

ソフトバンクモバイル株式会社 執行役副社長 技術統括兼CSO(最高戦略責任者)
松本 徹三(まつもと てつぞう)

9月、ボーダフォンK.K.(現ソフトバンクモバイル)執行役副社長として、ソフトバンクの移動体通信の技術・戦略の最高責任者に就任してから2ヶ月。もともとボーダフォンとの提携を孫に進言した松本が、ソフトバンク入りした経緯と、移動体通信事業について語りました。

略歴:
1962年伊藤忠商事(株)入社。営業の第一線で活躍し、9年間米国にも滞在。1984年、伊藤忠アメリカ会社の上級副社長兼エレクトロニクス部長に就任。その後、伊藤忠商事(株)の東京本社通信事業部長、同マルチメディア事業部長を歴任後、1996年3月に同社を退職し独立。コンサルティングを提供するジャパン・リンクを設立し、ワールドワイドに事業を展開する大手企業のアドバイザーなどを多数つとめる。1998年、クライアントの1社であったクアルコムジャパン(株)に代表取締役社長として招聘され、2005年に同社取締役会長、クアルコム米国本社上級副社長として経営の舵取りを行う。2006年9月、ボーダフォンK.K.(現ソフトバンクモバイル)執行役副社長 技術統括兼CSOに就任。
インタビュアー:
山内 貴久美(やまうち きくみ) ソフトバンク(株)広報室顧問・フリーアナウンサー

人生最後の仕事

山内:
ソフトバンクグループに入られる意思決定をされた経緯について、教えていただけますでしょうか。
松本:

孫社長とのおつきあいは古く、実は2004年の年末に「BBモバイルの社長をやらないか」というお誘いを受けたこともあります。その時は辞退させていただき、「ソフトバンクはボーダフォンとの提携関係を構築していくべき」と進言しました。

今年になって、ソフトバンクがボーダフォンを買収して移動体通信事業に本格的に参入することになり、KDDIとソフトバンクの板ばさみになることを恐れた私は、クアルコムジャパンの会長を辞めて米国へ移住しようと考えていました。実際、2〜3年をかけて、発展途上国で3Gネットワークを展開するプロジェクトに注力しようと、BRICS諸国を頻繁に訪れる生活に入っていました。

孫社長から再びお誘いをいただいたのは、その頃です。熱心に「アメリカの会社も面白いかもしれないが、人生最後の仕事には、日本を良くするものを選ぶべきだ」と説かれ、ついに心が動きました。「日本の情報通信産業が名実ともに世界をリードする立場に立つためにも、新生ソフトバンクモバイルが真に革新的で強い会社になることが必要」と考え、そのための一助になれればと決心したのです。

山内:
CSOの役割はどのようなものでしょうか。
松本:
CSO (Chief Strategy Officer)という言葉は、直訳すると「最高戦略責任者」という大層な言葉ですが、戦略構築の最高責任者は当然孫社長ご自身ですから、「戦略調整責任者」という表現が適切ですね。仕事は社内の各部、グループ内の各社の戦略の調整と統合。それから如何なる場合でも重要な戦略上の見落としがないようにすることです。これは地味で辛い仕事ですが、敢えて自分から手を挙げました。何でもかんでも社長に頼っているようでは社員として恥ずかしいですからね。
山内:
実際に入社されて二ヶ月が経ちましたが、ソフトバンクグループに入られる前と後で、どのように印象が変わりましたか。
松本:
孫さんの構想力とスピード、エネルギーのレベルは想像していたよりも更に30%以上高いですね。古巣のクアルコムのアメリカ人に「孫さんってどんな人?」とよく聞かれますが、「周波数(考え方)は同じだが、パワーは私の2倍ある」と言っています。それを聞くと、みんな驚きますね。私はパワーでは大抵のアメリカ人には勝っていましたから、その2倍というと唖然とするのです(笑)。

ソフトバンクの移動体通信事業

山内:
ソフトバンクグループがモバイルビジネスを展開することについては、どのようにお考えでしょうか。
松本:
インターネットをはじめとする情報通信技術を駆使して、ユーザーにおもしろいサービス、役に立つサービスを提供すること。これがソフトバンクグループのミッションです。移動体通信事業は、このサービスを支える最重要のインフラのひとつです。これまでのインターネットは主にパソコン上で利用するものでしたが、ビジネスマンの自宅におけるパソコンの平均利用時間は限られています。これからは、家と会社以外での5分、10分という短い時間に、いかに使えるサービスを提供するかが大きな意味を持ってくるでしょう。移動体通信事業は、この分野において大きな役割を果たすことになります。
山内:
先日の記者会見で、ネットワーク基地局の増設、携帯端末やコンテンツの強化に続いて、いよいよ料金についての発表が行われたわけですが、松本さんご自身が考える、モバイルビジネスとソフトバンクに必要なものは何でしょうか。
松本:

まずはモバイルビジネスに必要なものとして、ネットワークの強化、最高の端末機器とサービスの提供、そして徹底したローコスト体質の実現です。私は料金政策には関与致しませんが、営業部門がユーザーに喜んでもらえるような料金政策を弾力的に打ち出せるようにコストの低減に黙々と努力します。それから、この目標を実現する為にも、機器メーカーやサービスプロバイダー、コンテンツディベロッパーとの信頼関係が何よりも大切だと思っています。情報共有と信義を守ることで、長期的にこれを築いていきたいですね。

お客様のニーズにきめ細かく対応するということは、私自身にとってもクアルコム時代から、生涯通しての目標としているものです。これからも現場と密着して、率直な意見をぶつけ合い、追求し続けたいと思っています。

ソフトバンクの移動体通信事業

山内:
ご自身のマネジメントスタイルと、モットーを教えてください。
松本:
大きなビジョンと戦略をもち、柔軟、かつ合理的に考え、素早く決断し、果敢に行動することです。特に心がけているのは、あらゆる意見をよく聞くことです。もちろん、時には周囲の反対があっても推し進める必要のある状況もありますが、それは多くの方法をあらゆる角度から検討しつくした上での判断であるべきです。
山内:
世の中を変えるために入社されたと伺いました。
松本:

私は「志」のためにこの会社に来ました。日本が、世界に誇れるサービス、会社を作っていきたいと強く思っています。

長い間モバイルビジネスに取り組んできたボーダフォンの社員にとっては、ソフトバンクと一緒になることで世界観が広がります。ボーダフォンの文化とソフトバンクの文化は相当異質ですが、多くの偉大なことは異質なものの出会いの中から生まれます。「これまでのやり方のひとつひとつを疑い、検証しなおし、そして、全く異なった発想でやってみたらどうなるか」ということを常に考え、全社員が心を一つにして新しいチャレンジに取り組んでいきたいですね。

(掲載日:2006年12月5日)

  • *内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。