経営陣ファイル 2007年

幅広い学びの場を提供する「サイバー大学」

サイバー大学 学長
吉村 作治(よしむら さくじ)

日本初の完全インターネット講義を行う「サイバー大学」は、2007年4月に開学し、世界遺産学部とIT総合学部で現在併せて約1,600人の学生が学んでいます。7月2日より秋学期生の募集を開始した同大学の修学スタイルについて、エジプト考古学者としても名高い吉村作治学長にお話を伺いました。

略歴:
工学博士。1966年アジア初のエジプト調査隊を組織し現地に赴いて以来40年にわたり発掘調査を継続。数々の発見により国際的評価を得る。05年1月「未盗掘・完全ミイラ」を発見し世界の注目を浴びる。近著に「ミイラ発見!! − 私のエジプト発掘物語 −」など著書多数。

4段階チェックで最高水準の授業を提供

インタビュアー:
まず、「サイバー大学」を設立されたきっかけを教えていただけますか?
吉村:
私は早稲田大学でエジプト考古学を教えていますが、10年ほど前から、インターネットを使った遠隔授業の取り組みが早稲田大学で始まり、インターネットは教育ツールとして非常に有効であると考えていました。その頃から、どうせなら本格的にやりたいという思いを持ち続けていたのですが、一昨年、福岡市から経済改革特区において株式会社立の大学を設立したいとの要請を受け、早速、すべての授業をインターネットで行う形式の大学を提案しました。その後、ソフトバンクグループに協力を依頼し、それが孫社長の教育への情熱とうまくかみ合って、サイバー大学の設立プロジェクトを立ち上げることができました。準備しなければならないことがたくさんあり、開学までのスケジュールもタイトでしたが、お陰様で昨年11月には文部科学省から認可をいただき、この4月に開学することができました。
インタビュアー:
インターネットで授業を受ける利点についてお話しください。
吉村:

サイバー大学では、すべての授業をインターネットで行いますから、「いつでも・どこでも・誰でも」学ぶことができます。しかし、門戸が広いゆえになおさら教育機関としては、発信したものを受け手が本当に理解しているか、つまり学生の知識・見識が確実に向上しているかに責任を持たなくてはなりません。そこで、より質の高い授業を提供するために、サイバー大学では講義内容のチェックを4段階にわたって行っています。

まず、ID(インストラクショナル・デザイナー)と呼ばれるコーディネーターが、講義を行う教授の服装、話し方をチェックします。差別用語などが使われていないか、「えー」「あー」などの無駄な言葉が多用されていないかなどを確認し、不必要な部分は制作ディレクターが編集します。次にそれを、実際に授業を受ける一般の学生から選抜されたモニターグループでテストし、内容や表現、話し方のスピードなどが分かりやすくなるように調整します。その後、教育の専門家が確認を行い、適切な講義内容であることをチェックして、改修必要な点はまた編集し直します。そして最後に、同じ学問領域で長い経験を持つ権威ある研究者の方に依頼し、内容的に問題がないかを見ていただきます。これは、講義を行う教授が自分の学説を述べるにあたって、前提として講義分野の通説・定説を踏まえ、公平で客観的な論理が展開されていることが重要であるためです。このようにすべての講座に対して4重のチェックを行っています。非常に厳しい監修を行うことで、最高水準の授業コンテンツを提供しているのです。

サイバー大学が目指す教育改革

インタビュアー:
春学期が終わって、受講している学生の反応はいかがですか?
吉村:

嬉しいことに、「こういう大学がなぜ今までなかったの?」という感想を聞くことが多いですね。授業の内容もさることながら、働きながらでも、地方にいても、子育てしながらでも学べるということで、さまざまな事情を抱えた方々から幅広い支持をいただいています。日本社会には残念ながら学歴、性別、年齢や心身の障害などに対しての差別意識が、いまだに根強く存在していると思います。「サイバー大学」は“学びたい”という気持ちさえあれば、どのような条件の方でも授業を受けることができます。インターネットの活用によって、すべての人に教育のチャンスを与えることができるのです。

春学期の出席率を見ても、世界遺産学部が87%、IT総合学部が89%(いずれも2007年5月27日現在)と、通学制の大学では考えられない高い数字です。またメールを通じての学生からの質問も活発で皆さんとても意欲的です。私たち教授陣もさまざまな質問に答えることが楽しみですね。世界遺産学部では希望者を募り10月にエジプトでの現地実習を予定しているのですが、それが可能なのも通学制ではないからだといえます。現地にADSLを引いたので、学生たちも授業を休むことなく、私も他の学生たちからの質問メールに継続して答えることができます。通常の大学のように夏休みまで待つことなく、気候の良い時を選んで現地にいけますから、それも大きなメリットのひとつですね。

インタビュアー:
「サイバー大学」の今後の方向性は?
吉村:

中長期的に、内容をさらに改修しバージョンアップして、より理想的なものに近づけていきたいですね。完全インターネット形式では、人と人との対面のないことが欠点という見方もあるようですが、オフ会やサークル活動などの交流も自然発生的に行われています。また地域活動も一層活発にしていきたいので、地域ごとの拠点を将来的に作っていきたいと思っています。サイバー大学は株式会社立ですから、国民の義務である納税ももちろん行います。正規の教育機関であると同時に、ビジネスを通じた社会貢献も行うのです。経営の透明性も確保されています。今後収益が上がれば、有用な研究に対して資金を出すのもひとつの方法でしょう。さらには授業料を下げることで、本当に学びたい学生に利益を還元することも検討しています。オンラインの大学である、韓国のソウル・デジタル・ユニバーシティでは、収益の向上によって授業料が大幅に下がったという結果がでています。教育をサービスととらえ、利益を教育や研究に還元する、これはひとつの教育革命といえるのではないでしょうか。

人間の生命には限りがありますから、意欲があるうちに学ぶことは大切なこと。知識が多いほど人生は豊かになるものです。働きながら学べる「サイバー大学」で、より多くの方に最高水準の教育を提供できるよう、今後も頑張っていきたいと思います。

(掲載日:2007年8月17日)

[注]
  • *サイバー大学では、9月3日まで秋学期生を募集しています。興味のある科目は、1科目からでも受講可能。インターネットが実現する新しい「学」のスタイルで、あたらしい未来を創造してください。募集要項・出願についての詳細はこちらよりご確認いただけます。
  • *内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。