経営陣ファイル 2009年

日本発モバイル版オンラインゲームの世界展開を目指す

株式会社ベクター
代表取締役社長 梶並 伸博(かじなみ のぶひろ)

株式会社ベクターは、「『便利』と『楽しさ』を創る企業に!」をモットーに、ソフトウエアのダウンロード販売事業から、オンラインゲーム事業まで幅広く事業を展開しています。2009年2月に設立20周年を迎え、さらなる発展を目指す同社の事業や取り組みについて、代表取締役社長 梶並 伸博にインタビューしました。

幅広くお客様のニーズに応えるソフトウエアを取りそろえる

ベクターは、1989年2月に前身である「有限会社ベクター・デザイン」の設立から出版事業を経て、ソフトウエアのダウンロード販売事業、オンラインゲーム事業まで幅広く事業を展開し、現在に至っています。

1994年7月に、フリーソフト*1とシェアウエア*2のソフト2,000本を1枚のCD-ROMに収録し、書籍とセットにして発行した「PACK2000 1994年後期版」が、現在のソフトウエアのダウンロード販売事業につながります。「1994年当時の日本は、インターネットがまだあまり普及していない時代でしたので、こうした書籍の需要が非常に高かったのです」(代表取締役社長 梶並 伸博)。そして、日本では一般的なインターネットサービスが1995年頃始まり、その年の12月にインターネット上でのパソコンソフトのダウンロード専門サイト「THE COMMON for SOFTWARE」を開設します。それまで箱詰め(パッケージ)で販売していたソフトを、インターネットでダウンロードできるようにしたことが、今の事業の基になりました。その後、1998年にインターネット上でシェアウエアの送金代行を行う「シェアレジ・サービス」を、1999年に市販ソフトのダウンロードができる「プロレジ・サービス」をそれぞれ開始し、パッケージ商品のCD-ROMなしで、ソフトが流通できるサービスを開始しました。

そして、1999年ヤフー株式会社からの出資をきっかけにソフトバンクグループ入りをします。翌2000年に、ソフトバンクグループでもダウンロード事業を開始したことをきっかけに、ソフトバンク・コマース株式会社(現・ソフトバンクBB株式会社)とパソコン用ソフトのダウンロード販売分野で業務提携。さらに資本面での関係も強化し、ソフトバンクグループとの関係を、より強固なものとしていきます。「ソフトバンク・コマースは最大のパソコンソフト流通会社です。提携することによって、より多くのソフトを扱うことが可能となり、今日に至っています」(同)。

現在ベクターは、ソフトのダウンロード販売をベースとした事業展開を行っています。国内最大級のダウンロードサイト「Vector」のライブラリを中心に、PCショップといったサイト運営を行い、ソフトをダウンロード販売しています。インターネットの世界で事業展開する「Vector」ならではの特長として、ソフトの登録本数は一般的なソフトから、知名度は必ずしも高くなくても、実は優秀なソフトまで11万本以上の豊富な品揃えを行うことで、月間600万人(ユニークユーザ)ものお客様にご利用いただいています。

最大の目標は日本発のモバイル版オンラインゲームの世界展開

近年のベクターの新しい柱となっているのが、2006年に参入したオンラインゲーム事業です。オンラインゲーム運営事業を行う会社の子会社化を経て、タイトル数を徐々に増やし、海外への展開も行っており、同社の中でも非常に成長している事業分野となっています。

ベクターがオンラインゲーム事業に参入した背景には、2005年ごろにインターネット環境の整備が進んだことにより、インターネットがソフトをダウンロードするためだけの場ではなくなったことが挙げられます。「『SaaS』*3や、『クラウド・コンピューティング』*4が出現し、従来はパソコンにインストールして使用をしていたソフトウエアやアプリケーションが、サーバ上でウェブサービスとして提供されるものへと変化したことで、お客様のニーズも変わってきています。その一方でゲームは、時代が変わってもお客様がお金を支払って購入する数少ない商品です。ソフトウエアがサービス化した状況の中で、ゲームへの推移は必然でした」(同)。同社にはソフトウエアのダウンロードと、その際に発生する課金に関するノウハウがあったため、従来のソフトウエアのラインアップにゲームを追加すれば、すぐにでも参入できるという基盤もありました。

現在同社が展開しているオンラインゲームは、ソフトウエアをダウンロードの上インストールしてゲームをプレイする「クライアントサーバー型」が6タイトル。それに加えて、2009年4月よりソフトウエアをダウンロードしなくても、Internet Explorerなどのブラウザ上でプレイできる「ブラウザゲーム」の提供を、ポータルサイト「ブラゲタイム」の立ち上げと同時に開始しました。特にこの「ブラウザゲーム」がヒットしており、今後も新規タイトルを追加してリリースしていく予定です。

代表取締役社長の梶並が「日本発のモバイル(携帯電話)版オンラインゲームを、世界に展開することが最大の目標」と述べるように、同社にとっての2009年は、モバイル版オンラインゲームの展開、また、パソコン版およびモバイル版双方のオンラインゲームの世界展開を開始する年となりました。
2009年8月よりモバイル版ゲームの配信を開始しました。また、「mixiアプリモバイル」*5においてゲーム「恋する私の王子様 for mixi」の配信も開始するなど、幅広く事業を展開しています。「配信開始から24日間で100万人以上の方に登録いただき、非常に多くの方にご利用いただいています。そして、2009年内に、英語圏を対象とした欧米向けのゲームサイトを新設し、ブラウザゲームの配信を始める予定です。将来的には、このモバイル版オンラインゲームの事業を強化していきたいと考えています。そして、今後『ブラウザゲーム』、『モバイル版オンラインゲーム』、『ソーシャルゲーム』の3本柱で、第3世代携帯電話(3G)普及率が高い日本で十分な経験を積むことで、携帯電話の利用率が急速に伸びている中国やインド、ヨーロッパへ向け、ゲームの投入を目指していきたいと考えています」(同)と、今後の抱負を語りました。

今後のベクターの展開に、どうぞご期待ください。

(掲載日:2009年12月11日)

[注]
  • *1 無料で自由な使用が許されているが、著作権を放棄していないソフトウェア。
  • *2 一定の試用期間は無料で使えるものの、正式に使用する際は、作者に代価を支払う必要があるソフトウエア。
  • *3 SaaS(Software as a Service):インターネットを通じてソフトウエア機能を提供するサービスのこと。
  • *4 従来、手元のパソコンで管理・利用していたアプリケーションソフトをインターネットなどのネットワークを通じて利用する仕組み。
  • *5 株式会社ミクシィが提供するソーシャルアプリケーションサービス「mixiアプリ」の携帯電話版。ユーザは、ゲームや便利ツールなどの利用したいアプリケーションを自由に選んで「mixi」内の友人・知人と交流を楽しむことができます。
  • *内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。