経営陣ファイル 2010年

個人を世界へ、Ustreamをアジアへ

Ustream Asia株式会社
代表取締役社長 中川 具隆(なかがわ ともたか)

Ustream, Inc.(本社:米国カリフォルニア州、以下 Ustream社)が提供する、インターネットを利用したライブ映像配信サービス(ビデオストリーミングサービス)「Ustream」は、2007年3月にアメリカでスタートしました。Ustreamのプラットフォームを利用することで、個人や著名人、企業などが、パソコン、iPhone、スマートフォンを通じて、無限に広がる世界中の視聴者へライブで動画を配信することができ、誰でも配信された動画を視聴することができます。さらにTwitterやFacebookと連携した双方向コミュニケーション機能により、視聴者同士が映像を見ながらリアルタイムでのコミュニケーションを楽しむこともできます。

ソフトバンク株式会社(以下 ソフトバンク)は、2010年1月、Ustream社に対し約2,000万米ドル(約18億円)の出資をしました。続く5月には、日本をはじめとするアジアでの事業展開を目的としたUstream Asia株式会社(以下 Ustream Asia)を設立しました。今回は、Ustream Asia 代表取締役社長 中川 具隆に、日本におけるUstreamの現状、新会社設立の目的や今後の展望についてインタビューしました。

日本のUstreamブームの影にソフトバンクあり

2007年3月に米国でスタートしたUstream。米国では、オバマ大統領の演説や政治家の会見のライブ動画配信のほか、ハリウッドのスタジオや放送局と連携した番組配信、多くの著名人によって率先して行われたライブ動画配信を通じて注目を集め、ライブ動画配信サービスの先駆けとなりました。Ustreamは、他の動画配信サービスと違い、リアルタイム性を持ち、かつ不法コンテンツの排除に配慮しているという特徴を持っています。

日本では、2009年6月の「iPhone 3GS」発売当日の行列を、一般の方がUstreamで中継したことで、認知度が高まりました。そして、その後もさまざまなイベントがUstreamでリポートされ、ライブ動画を配信する人々が増えていき、Ustreamが流行し始めました。その流行を支えたのが、TwitterやFacebookなどのSNSとの連動性と、iPhoneとの親和性です。「Ustreamは、SNSと連動した双方向コミュニケーション機能を持っています。これによりUstream上で動画の視聴と、各種SNSを通じた書き込みと共有が、同時にできるようになっています。さらに、SNS側でも入力されたメッセージが展開されるので、『面白い番組が放送されているよ!』というメッセージから、ダイレクトにUstreamにアクセスするSNSユーザが非常に多いです。またiPhoneを使ったライブ動画の視聴・配信が可能になったことで、より簡便な方法でUstreamをご利用いただけるようになりました」(代表取締役社長 中川 具隆)。

2010年1月、ソフトバンクは、Ustream社への出資を開始しました。「日本のUstreamが今日のような大規模なサービスになったのは、ソフトバンクの参入がポイントだったと思います」(同)。ソフトバンクの出資を機に、「Ustream Studio」の開設(3月)、Ustream日本語版サイトの提供(4月)が実現し、利便性が向上。Ustreamは日本でも広く浸透しました。

またUstreamの利用拡大のために、ソフトバンクグループとして話題づくりや認知度向上を目的とした大きなイベントに取り組んでいます。その代表的な事例が、高校野球と事業仕分け(行政刷新会議)の配信です。「毎日放送と共同で、3月に行われた選抜高等学校野球大会の準々決勝から決勝までをUstreamでライブ配信しました。視聴者数は、4日間で80万件以上を記録し、決勝戦の同時接続数は、3万件を超えました。また4月に実施された事業仕分けの配信もご好評いただき、前半4日間で50万件以上のアクセスがありました」(同)。高校野球という人気コンテンツで話題づくりを行うとともに、大規模な配信に耐えられるという実績を作り、また事業仕分けの中継を通じて、公的にも利用されるシステムとして認知を高めています。

良質なコンテンツ提供のために

「Ustream Studio」の開設は、Twitterを通じてソフトバンクグループ代表の孫 正義に寄せられたご要望でした。これに対し孫は、利用料無料のスタジオ開設を宣言しました。

「4月に日本語版サイトの提供を始めたころ、Ustreamのコンテンツのほとんどが英語だったため、ただ単にサイトを日本語化するだけでは意味がないと感じていました。一定のクオリティ以上の日本語の番組を数多く提供していかなければならないと思ったのです。そのためには、誰でも簡単に番組を制作、配信できるような『環境』が必要です。スタッフ、場所、機材がそろった環境がなければ、番組は増加しません」(同)。

そこで活躍するのが「Ustream Studio」です。2010年6月現在、東京・汐留(ソフトバンク本社内)と渋谷に、無料のスタジオが開設されています。「Ustream Studio 汐留」は、主に法人のお客様向けに、トーク番組やセミナーなどを中継できるスペースと回線を無料で提供。企画、キャスト、使用機材(映像・音響・配信)を自由に持ち込んで、Ustreamで配信していただくことが可能です。一方、「Ustream Studio 渋谷」は、一般のお客様を対象に、機材、回線を無料で提供しています。「現在、Ustreamで配信されている動画の多くが、これらのスタジオで制作されたコンテンツです。スタジオを開設した意義を強く感じています」(同)。

誰もが情報発信局になれる

2010年5月、ソフトバンクとUstream社は合同で、日本を含むアジア各国におけるUstreamの利用をさらに促進することを目的とした合弁会社、Ustream Asiaを設立しました。Ustream Asiaは、まず日本での事業展開を本格化させ、その後アジアでの事業拡大に向けて進んでいきます。近年ソフトバンクグループは、「アジアを制する者が世界を制する」「モバイルインターネットを制する者がインターネットを制する」というビジョンを掲げているとおり、今後のマーケットとしてアジアを非常に重要な拠点と位置付けています。

「Ustreamは、ソフトバンクグループにとって、非常に重要なツールかつ基盤になると思います。現在、日本向けのサービスを展開している中で、企業やコンテンツホルダー、アーティストから個人までもが、Ustreamで番組を作ること、出演することに対して、積極的に新しいメディアに向き合う姿勢になってきていることを感じています。これから、ますます急速にステップアップしていくと確信しています」(同)。

インターネットの世界では、すべての人が同等に発言でき、全世界に向けて発信することができます。さらにUstreamの登場により、かつては大手メディアを中心に行われていた情報発信が、個人でもその機会を得られるようになりました。中川は今後に向け、次のように抱負を述べています。「我々は、すべての人々の情報発信を常に実現するUstreamであり続けることを社会的意義と捉え、ソフトバンクグループの強みを活かしながら、時代の流れに乗って進んでいきたいと思います」。

新たな時代を切り開く今後のUstream Asiaにどうぞご期待ください。

(掲載日:2010年7月7日)

[注]
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  • *iPhoneはApple Inc.の商標です。
  • *iPhone商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。
  • *「Twitter」は、Twitter, Inc.の登録商標です。
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