経営陣ファイル 2013年

自然エネルギーの普及・拡大で新しい価値を創造する SBエナジー株式会社

藤井 宏明

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ソフトバンクグループで自然エネルギーによる発電事業を行うSBエナジー株式会社(以下「SBエナジー」)。2011年10月の設立以降、2012年7月には京都府京都市と群馬県北群馬郡榛東村でいち早くメガソーラーの運転を開始するなど、着実に実績を挙げています。そこで今回は、同社取締役副社長の藤井 宏明に、自然エネルギー事業への取り組みや今後の展望についてインタビューします。

SBエナジーは自然エネルギー普及を推進するけん引役

SBエナジー設立の経緯について教えてください。

藤井:SBエナジーは、2011年3月11日の東日本大震災を機に設立されました。震災直後、ソフトバンクグループは通信の早期復旧に向けて取り組みましたが、なかなか復旧できないという事態が起こりました。地震や津波の影響で通信設備そのものが倒壊しただけではなく、発電所が被災して電力供給が維持できず、通信サービスが提供できないケースもありました。その後、東京電力福島第一原発事故などの影響から、国内の電力事情に対する国民の関心が高まる中、ソフトバンクグループとしても何かできることがないかと相当勉強しました。ヨーロッパの電力事情などを参考とする中で、日本では国内電力の総発電量における自然ネルギーの割合があまりにも少なすぎることが分かりました。加えて、当時の社会的な動きとして「エネルギーのベストミックス」を改めて考え直さなければならないという機運も高まりました。そのような中、ソフトバンクグループではこの動きを未来へつなげるために、自然エネルギー事業に参入することにしました。ソフトバンクグループが目指しているのは、今後、自然エネルギーの普及を推進していくけん引役となることです。そのための取り組みとして、2011年10月に、ソフトバンクグループの自然エネルギー事業を担うSBエナジーを設立しました。

会社設立時の公約「複数個所・合計出力規模200MW以上の自然エネルギー発電所建設」に対し、現在7カ所のメガソーラーがすでに稼働し順調に進捗しているようですが、その要因について教えてください。

藤井:発電事業に関しては、知見がほとんどないところからスタートしました。しかし、その当時、日本において自然エネルギーを事業として成立させている事業者はほとんどなく、まさに震災を機に、さまざまな企業が参入している状況でした。ある意味、一から作り上げなければならない業界であったのです。ですから、「一歩引いて後ろにいる」というスタンスより、「われわれが先頭に立って知見を蓄えていかなければいけない」という思いの方が強くありました。また、事業が順調に推移している大きな要因としては、自然エネルギーに対する社会からの大きな期待や国民総意的な後押しがあり、これが一番大きいと思います。
現在、SBエナジーでは、京都府2カ所、群馬県1カ所、徳島県2カ所、長崎県と栃木県各1カ所の計7カ所でメガソーラーを運転していますが、稼働するメガソーラーの数では、業界のトップランナーになりました。また現在(2013年8月末時点)では、全国9カ所で新たな自然エネルギー発電所建設プロジェクトが進行しています。知見も蓄えられてきたので、さらに業界を先頭で引っ張っていきたいと思っています。

再生可能エネルギーの「固定価格買取制度施行」から1年が経過しましたが、課題と思われることは何でしょうか?

藤井:今回、大震災がきっかけで、日本のエネルギー政策にも「自然エネルギーの積極的な導入」と「大規模集中型発電からの分散化」という二つの方向性が生まれました。前者については、国の政策として「固定価格買取制度」がありますが、これは国民の思いと一致しているため、民間企業が事業化を目指し参入することにつながりました。ところが、後者の「大規模集中発電の分散化」については、前者と密接に関わっているものの、後押しする政策がありません。現状、大きな幹から枝葉に向かって細くなっていくような日本の電力網に対して、「大規模集中型発電の分散化」は、枝葉である末端から発電していくものです。「末端から発電しよう」という国民の思いがあっても、細い電力網を太くする政策がないと、いくら末端で太陽光発電や風力発電に取り組もうとしても難しいのです。つまり、北海道や九州は自然エネルギーの宝庫でもありますが、人が居住していないような場所には電線も引かれていない状況のため、太陽光発電や風力発電を行うにも「電線がないのでできません」という話になってしまうのです。従って、今はこのような問題をどのように解決するかが大きな課題になっています。また、エネルギー問題については、発送電分離、地域独占を柱とする電力システム改革の見直しが検討されていますが、これから先、間違いないものにしていかなければならないと思っています。そのためにも国には働きかけをしていくつもりです。

小学生向けの環境教育にも注力

自然エネルギーについてさらなる関心を高めるため、どのようなことが重要だと思われますか?


「未来×エネルギー プロジェクト」を受ける子どもたちの様子

藤井:今後、自然エネルギーを普及させていく上で重要なのは、エネルギー問題への国民全員の意識を継続的に高めていくことだと考えています。そのためのきっかけの一つとして、力を入れている取り組みが、小学生向け体験型環境教育プログラム「未来×エネルギー プロジェクト」です。このプロジェクトは身の周りのエネルギーの存在や生活の中でのエネルギーの使われ方、自然界に存在するエネルギーの活用方法を、動画コンテンツなどの教材やグループワークなどを通じて学習するものです。2013年1月には、経済産業省が主催する「第3回キャリア教育アワード」において「地域密着型キャリア教育部門」の奨励賞を受賞しました。すでに3回ほど、自社の発電所近隣にある小学校に講師を派遣して授業を行っていますが、われわれが事業を続けていく限り、このプロジェクトは継続していくつもりです。将来を担う子どもたちに、エネルギーについて継続的に考えるきっかけになればと期待しています。

今後の展望などありましたら、教えてください。

藤井:SBエナジーは、自然エネルギーを全国に普及・促進させるきっかけづくりを目指してスタートしました。これまでにも多くの企業が参入してきており、われわれも少しは業界の発展に貢献できたのではないかと思っています。現在「固定価格買取制度」という特別ルールが適用されている中で事業を展開していますが、これからは、特別ルールの先にあるゴールを見定めなければなりません。それは「新しい価値の創造」にほかならないのです。つまり、「固定価格買取制度」が終了した後も、継続しうる事業モデルを作ることだと思っています。ゴールはあくまで「安価で安全な電力を国民に供給する」ことです。これを実現させるためにも、通信とインターネットを、電力とどう融合させるかが重要だと思っています。2010年に発表した「新30年ビジョン」で、ソフトバンクグループは「戦略的シナジーグループ」を目指すことを表明しました。自然エネルギー事業においても、ソフトバンクグループならではの取り組みを展開していきたいです。


柴山 和久(しばやま かずひさ)

藤井 宏明(ふじい ひろあき)

  • SBエナジー株式会社 取締役副社長

略歴:1994年東日本旅客鉄道株式会社入社後、2001年日本テレコム株式会社(現ソフトバンクテレコム株式会社)を経て、以下の役職にそれぞれ就任し、兼務・現任している。2005年SBプレイヤーズ株式会社 代表取締役社長、オッズ・パーク株式会社 代表取締役社長、2010年 株式会社エデュアス 代表取締役社長、2011年 株式会社グリーンパワーインベストメント 社外取締役、SBエナジー株式会社 取締役副社長。

(掲載日:2013年9月6日)

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