経営陣ファイル 2013年

ICTを活用し教育の可能性を広げる エデュアス株式会社

加藤 晋平

略歴を見る

ソフトバンクグループで教育事業を手掛けるエデュアス株式会社(以下「エデュアス」)。2010年12月の設立以降、教育現場におけるICTの利活用を推進しています。特に、スマートフォンやタブレット端末などの携帯情報端末を活用した、障がい児の学習・生活支援を行う事例研究「魔法のプロジェクト」は、教育関係者をはじめとする皆さまから、大きな注目を集めています。今回は、同社の設立経緯や現在手掛けている事業などについて、同社取締役 加藤 晋平にインタビューしました。

ソフトバンクグループで教育事業を展開

エデュアスの設立経緯について教えてください。

加藤:エデュアスは2010年12月に設立されました。その当時、社会における情報化の急速な発展に伴い、情報通信技術を活用した21世紀にふさわしい学びと学校が求められる中、2010年8月に、文部科学省から学校教育の情報化に関する総合的な推進方策である「教育の情報化ビジョン」が示されました。また同年から、総務省の「フューチャースクール推進事業」や「地域雇用創造ICT絆プロジェクト」が始まり、ICTを活用した成長戦略の実現に向けての取り組みが加速していました。このような社会的な背景もあり、ソフトバンクグループとしても、本格的に教育事業に取り組むことになりました。

現在、エデュアスが手掛けている事業にはどのようなものがありますか。

加藤:エデュアスの主要事業は二つあります。一つ目は、総務省が提唱する「フューチャースクール推進事業」に代表される、小学校・中学校・高等学校の教室にICT機器を導入し、ネットワーク環境を構築・運用する事業です。「フューチャースクール推進事業」については、2010年に小学校、2011年からは中学校で施行され、それぞれ3年間の実証期間が設けられています。「フューチャースクール推進事業」に積極的な地方自治体の中には、自ら予算を確保して取り組んでいるところもあり、そのような自治体では、学校へのICT機器の導入が進んでいます。エデュアスとしては電子教材コンテンツをはじめ、校内管理システムやネットワークの提供などを行っています。二つ目は、障がいのある児童・生徒や学習に困難を感じている児童・生徒を支援する、特別支援教育分野でのICT利用促進事業です。これは、タブレット端末などのICT機器が、“学習のバリアフリー化”に有効ではないかという仮説の下、推進しています。具体的な活動には、スマートフォンなどの携帯情報端末を活用した、障がい児の学習支援の実践研究である「魔法のプロジェクト」などがあります。

携帯情報端末がさまざまな障がいのある子どもの自立を支援

障がい児の学習、生活支援を行う「魔法のプロジェクト」とはどのような活動なのでしょうか。

加藤:「魔法のプロジェクト」は、2009年6月に、東京大学とソフトバンクモバイル株式会社が共同で行った、携帯電話を使用した障がい児のための学習支援の事例研究プロジェクト「あきちゃんの魔法のポケットプロジェクト」を拡充させたものです。2011年4月にエデュアスも加わり、iPadを利用した「魔法のふでばこプロジェクト」をスタートしました。その後、2012年度には「魔法のじゅうたんプロジェクト」、2013年度は「魔法のランププロジェクト」を実施しています。事例研究の内容によってプロジェクト名は変えていますが、基本的には、協力いただく特別支援学校にiPhone、iPadなどの携帯情報端末の無償貸し出しを行い、教育現場での活用事例を研究するものです。

特別支援教育に携帯情報端末を活用するメリットには、どのようなものがあるのでしょうか?


iPadを使って授業を受ける児童

加藤:一言で特別支援教育と言っても、非常に幅があります。障がいの種別によって多岐にわたりますし、同じ障がいであっても、個人差がとても大きいのです。また、これまでの特別支援教育では、支援機器と呼ばれる専門機器を利用するケースがほとんどでした。専門機器のため、高価である上に使いづらいという声も多く、さらには使用することで、かえって障がいがあることを周囲に分からせてしまうといったデメリットもありました。ところが、iPadなどのタブレット端末には、支援機器として利用できる機能が備わっています。例えば、支援機器の一つに「拡大読書器」があります。これは低視力や弱視など見えづらい方のために、文字を拡大したり、文字や背景の色を変えることができる装置です。しかしこれも高価な上に非常に大きく、持ち運びできるものではありません。一方、iPadにはカメラ機能があり、アプリケーションを利用することで文字の拡大率を上げたり、反転させることができます。ほぼ「拡大読書器」と同様に使うことができ、気軽に持ち運びもできます。支援機器と比べ操作しやすく、価格も手ごろであること、個人差の大きい特別支援が必要な児童・生徒に対して、即効性の高い支援を行うことができるなどのメリットが挙げられます。さらには、思春期の生徒や、見た目はあまり障がいがあることを感じさせない子どもからの評判が非常に良く、現場で対応されている先生からも高い評価をいただいています。

「魔法のプロジェクト」以外に手掛けているプロジェクトはありますか?

加藤:「魔法のプロジェクト」の他に「DO-IT School」というプロジェクトがあります。内容は「魔法のプロジェクト」と類似しているのですが、端末にはiPadではなくWindows 8タブレットやKinect for Windowsを使用しています。また「DO-IT School」に関連して「OAK プログラム」があります。これは肢体不自由などの理由により、通常の方法ではコンピューターの操作などに困難のある児童・生徒の能動的動作や意思表示を、顔や手などのわずかな動きを感知してコンピューターに信号を送ることができる「スイッチングセンサー」を搭載したKinect for Windowsを使用してサポートするものです。
またプロジェクトではありませんが、2013年7月に、学習に困難を感じている子どもたちやその保護者を対象に、スマートフォンやタブレット端末などを使った新しい学び方・学ぶ技術を指導する塾「ハイブリット・キッズアカデミー」を開講しました。「魔法のプロジェクト」などを通じて指導を希望される保護者の方が増えてきた事情もあり、その受け入れとして立ち上げましたが、開講以来、全国から多くの受講申し込みをいただいています。

今後の展望などありましたら、教えてください。

加藤:今や私たちにとって、スマートフォンやタブレット端末を使うことは当たり前で、ビジネスだけではなく生活ツールとしても必要不可欠です。一方、これから社会に出ていく子どもたちにとっても、携帯情報端末を活用して生活することは特別なことではなく、例えば「忘れ物が多い」といった児童や生徒の記憶の補助にスマートフォンなどを活用いただくこともできるかと思います。今後もエデュアスでは、学習のバリアフリーを目指し、さまざまな障がいのある子どもたちのために携帯情報端末の機能を活用することで、学習機会や社会への参加を促していきたいと考えています。また、教育におけるICTは、まだまだ初期の段階にあると認識しています。社会全体として「教育として何を目指していくのか」という根本的な部分においてもあいまいです。ですから、今後エデュアスとしては単にICTの環境整備をするだけではなく、地方自治体や学校、さらには関係省庁とも協力しながら、横断的な教育の情報化を進めていきたいです。


加藤 晋平(かとう しんぺい)

加藤 晋平(かとう しんぺい)

  • エデュアス株式会社 取締役

略歴:2000年朝日アーサーアンダーセン株式会社(現プライスウォーターハウスクーパース株式会社)入社後、2002年独立系ビジネスコンサルティング会社を設立し、役員に就任。2009年ソフトバンク・プレイヤーズ株式会社(現SBプレイヤーズ株式会社)入社を経て、2011年オッズ・パーク・ばんえい・マネジメント株式会社(2012年オッズ・パーク株式会社に合併)代表取締役社長に就任。2012年株式会社エデュアス 取締役(現任)。

(掲載日:2013年10月15日)

  • Apple、Appleのロゴは、米国および他の国々で登録されたApple Inc.の商標です。iPhone、iPadはApple Inc.の商標です。
  • iPhone商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。