経営陣ファイル 2014年

安定的かつ分散型の電力供給でクリーンエネルギーの普及を促進 Bloom Energy Japan株式会社

三輪 茂基

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ソフトバンクグループでクリーンエネルギー事業を手掛けるBloom Energy Japan株式会社(ブルームエナジージャパン、以下「Bloom Energy Japan」)。2013年5月の設立後、米国で開発された革新的エネルギーシステムである「Bloomエナジーサーバー」の国内導入を手掛けるなど、日本におけるクリーンエネルギー普及促進の取り組みが注目を集めています。今回は、同社の設立経緯や手掛けている事業などについて、同社代表取締役社長 三輪 茂基にインタビューしました。

再生可能エネルギーの普及促進に取り組む

Bloom Energy Japanの設立経緯について教えてください。

三輪:Bloom Energy Japanは、ソフトバンクグループ企業であるSBパワーマネージメント株式会社と米国で燃料電池の開発・販売を手掛けていたBloom Energy Corporation(ブルームエナジー、以下「Bloom Energy」)との折半出資による合弁会社で、2013年5月に設立されました。2012年12月に、ソフトバンクグループ代表である孫 正義が、サンフランシスコのシリコンバレーへ出張した際に、現地のベンチャー企業の一つであったBloom Energyを視察したことが設立のきっかけとなりました。私も同社が開発する「Bloomエナジーサーバー」を視察しましたが、その革新的なエネルギーシステムに大変驚きました。その後すぐに国内での導入を検討し、数カ月ほどでBloom Energyとの合弁契約書をまとめ上げました。

短期間で設立に至った理由を教えてください。

三輪:いくつかの要因があります。まずは、2011年3月11日に発生した東日本大震災により、ソフトバンクグループの主力事業である通信事業やインターネット事業が「電気がないことには成立しない」ことを改めて痛感させられたことにあります。ソフトバンクグループでは、2011年6月に再生可能エネルギー事業への参入を表明し、同年10月には、自然エネルギー事業を行うSBエナジー株式会社を設立するなど、再生可能エネルギーの普及に取り組んでいました。しかしながら自然エネルギーは、どうしても天候により出力量が左右されてしまいます。一方で、Bloom Energyが提供する「Bloomエナジーサーバー」は、天然ガスを利用したクリーンな発電システムとして、「安心・安全な電力を24時間365日」提供可能です。つまり、ソフトバンクグループが力を入れてきた自然エネルギーと、「Bloomエナジーサーバー」を組み合わせることで、安定的にクリーンエネルギーを供給することができます。そのためにも、Bloom Energy Japanの設立は急務でした。
また今の時代は、「大型集中から小型分散」にシフトしつつあります。電力事情でいえば、過去国内の電力は、火力や原子力発電などの大規模集中型のシステムにより賄われていました。しかし、東日本大震災で分かったことは、「大型集中は実は完璧ではない」ということです。つまり、「Bloomエナジーサーバー」のような、「小型分散型のシステム」を導入することは経営戦略的にも合理性があり、かつソフトバンクグループの本業である通信事業やインターネット事業ともシナジー効果が期待できます。さらにいえば、Bloom Energyとソフトバンクグループの企業カルチャーの相性が大変良かったことも、早期の設立が実現した大きな要因だと思っています。

「Bloomエナジーサーバー」とはどのようなものなのでしょうか?


福岡市のM-Towerに設置された初号機

三輪:「Bloomエナジーサーバー」は、複数の燃料を活用できる、クリーンで高効率、分散設置型の画期的な燃料電池です。燃料電池本体は「大型の冷蔵庫」(幅1.14m×奥行き1.3m×高さ2.1m)とほぼ同じサイズの箱形の装置が2つセットになったものを1基とし、それが複数基連なって構成されています。また、外観にも大変こだわりがあり、背面を鏡面仕上げにするなど、「見せる」ことを意識した作りになっています。中の構造は、数千個にもおよぶ10cm×10cmの個体セラミックのシートから構成されています。これらのシートを積み重ね、10㎝の立方体程度の大きさにした「スタック」にし、さらにそれらを積み重ねて一つのモジュール(燃料電池)となります。特筆すべき点は、モジュールごとに運転のオンオフができることです。例えば200kWの出力サイズでサーバーを構成した場合、仮にメンテナンスや故障があっても、停止するのは1台のモジュールだけです。その間、他のモジュールの出力を上げることで、システム全体としては、200kWの出力を維持できます。つまり故障・メンテナンスに関係なく、24時間365日稼働できる仕組みになっています。「Bloomエナジーサーバー」の基本的な出力は200kWで、これは年間の家庭使用量500軒分に相当します。出力は必要に応じて拡張することも可能で、米国ではすでに30MWまで導入されている事例もあります。

発電方法について教えてください。

三輪:燃料は都市ガスを使用しています。また、バイオガスを燃料とすることも可能です。燃焼させてタービンを回す従来の火力発電とは違い、都市ガスから水素を取り出し、空気中の酸素と結合させる電気化学反応により、発電する仕組みになっています。もともと発電プロセスもシンプルなのに加え、燃料電池の中でも発電効率の高いSOFC(Solid Oxide Fuel Cell)方式を採用しているため、発電効率も60%を達成しています。参考までに、最新鋭のガスエンジンでも40%、その他では30%台が平均とされる中、非常に高い発電効率を誇ります。

クリーンでグリーンなエネルギーの安定供給で電力市場を牽引

今後の展望をお願いします。

三輪:われわれが手掛ける事業は、まだまだ事例が少ないことから、世の中より10歩先に進んでいるのかもしれません。現在は、燃料となるガス料金が最高値を更新するような状況にあります。今後どのように普及させていくかが課題であり、それに対して知恵を絞らなければいけないと思っています。一方、近年アメリカでシェールガス革命が起こり、日本政府ではアメリカからのシェールガス輸入プロジェクトが進行していることから、将来的にはガスの料金も下がるのではないかと思っています。また、2020年東京オリンピックの開催決定は、われわれにとって追い風となりました。招致活動で国際オリンピック委員会(IOC)に提出した公約文書(立候補ファイル)には、「運営に必要なエネルギーは、すべて再生可能エネルギーなどのグリーンエネルギーで賄う」と記されています。「Bloomエナジーサーバー」は、まさに、「クリーンでグリーンなエネルギー」を安定供給できます。ぜひ2020年の東京オリンピックにおいて、選択肢の一つとなれるように取り組んでいきたいと考えています。
Bloom Energy Japanの事業は、まだ始まったばかりですが、将来ソフトバンクグループが新しい事業を手掛ける上で、重要な役割を担うと考えられます。われわれはこのクリーンでグリーンなエネルギーシステムの開発に、引き続き力を入れて取り組んでまいります。


三輪 茂基(みわ しげき)

三輪 茂基(みわ しげき)

  • Bloom Energy Japan株式会社 代表取締役社長

略歴:1991年 三井物産株式会社入社、東京・シドニー・ブリスベン駐在。主に資源・エネルギー開発投資案件に従事。2011年 ソフトバンク株式会社に入社、経営戦略室室長(兼務)を務める。2013年、Bloom Energy Japan株式会社の代表取締役社長に就任、現在に至る。

(掲載日:2014年3月18日)

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