経営陣ファイル 2014年

フォントの力で人々に感動をお届けしたい フォントワークス株式会社

松雪 文一

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2013年6月に、ICTを活用したサービスを提供するソフトバンク・テクノロジー株式会社(以下「ソフトバンク・テクノロジー」)の傘下に加わったフォントワークス株式会社(以下「フォントワークス」)が、現在注目を集めています。同社が手掛けている事業は、「文字(フォント)を作り販売する」こと。同社のフォントは紙媒体だけではなく、テレビ番組やアニメ、ゲームなど、あらゆる媒体で採用され、さまざまな場所で目にすることができます。そこで今回は、同社代表取締役の松雪 文一に、事業内容と目標をインタビューしました。

テレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」でも採用

パソコンや印刷物で使う文字、すなわちフォントの制作を手掛けているということですが、具体的にどのようなことをしているのでしょうか?

松雪:文字の字体には「明朝体」「ゴシック体」などいろいろな種類がありますが、日常的に使用しているパソコンなどでは、「MS明朝」や「ヒラギノゴシック」などのシステムフォントと呼ばれるものがなじみ深いかと思います。私たちの会社では、こうした情報表示または伝達のためのツールである文字をより美しく、さまざまな用途に対応できるようにデザインし、それをフォント製品として販売しています。ご利用いただいているお客さまはデザインや印刷関連などのプロの方がほとんどで、製品は代理店経由で企業や個人に販売しています。

テレビ局ではどのような形でフォントを使うのですか?

松雪:テレビ番組のテロップやフリップなどでご使用いただいています。具体的には、音楽番組でアーティストが歌っている時、画面の下に歌詞のテロップが表示されますが、そういったテロップでよく使用されているのが、当社の「テロップ明朝」というフォントです。テレビやモニターで明朝を表示させると横線がちらつくという問題がありますが、この書体では一般的な明朝より横画を太くしているため、テレビ画面でも見やすいと、大変ご好評を頂いています。ワイドショーから報道番組、バラエティーやアニメまでさまざまな番組で、当社フォントをご利用いただいています。
アニメでは、オープニングやエンディング、スタッフロール、サブタイトルなどですね。早朝から深夜まであらゆるアニメ番組で、当社のフォントをテレビで見ない日はないと言っても過言ではありません。
フォントは基本的に、情報を文字で伝えるために使用されるケースが多いのですが、中には非常に効果的にフォントを使用していただいている作品も多くあります。最初に大きな話題になったのは、「新世紀エヴァンゲリオン」ですね。

詳しく教えてください。


「新世紀エヴァンゲリオン」のサブタイトル

松雪:例えば「第壱話 使徒、襲来」など、L字型に読ませるサブタイトルは、1995年に最初のテレビシリーズが放映されていた当時、とても話題となりました。秋葉原の家電量販店などで、このフォントだけが極端に売れた時期があり不思議に思っていましたが、本作の影響だったのです。ファンの皆さまの間では、「エヴァフォント」「エヴァ明朝」と呼んで親しんでいただいていますが、本当は「マティス-EB」という名前です。本作の庵野 秀明監督はご自身でフォントを選んでおり、本作では以来ずっと当社のフォントを使っていただいています。

実は身近なところで、フォントワークスのフォントが広く使われていたのですね。

松雪:放送業界やアニメ、ゲーム業界では、非常に高いシェアを占めています。もちろん印刷向けも頑張っていますが、こちらは過去の印刷物を再販するときにフォントを変えにくいという事情があるため、新規参入はなかなか難しい面があります。一方、テレビやアニメ、ゲームなどにそのような制約はありません。実際にフォントを見ていただき、「これはいい」と評価していただければ、どんどん採用していただけます。私たちの主力商品は、「筑紫(つくし)書体」というシリーズのフォントですが、これはどこの会社のフォントにもないクオリティーであると自負しています。

オンリーワンからナンバーワンへ

フォントの開発はどのように行っているのでしょうか?

松雪:当社には30年以上フォント作りに携わっている、非常にこだわりを持ったデザイナーが所属しています。彼を筆頭に、社内外10名のデザイナーが日々フォントのデザインに取り組んでいます。フォントを作る際に最も重要なことは、ディレクションです。最初に「どんな文字にするのか?」というコンセプトを固めることが肝心で、文字を作り始めてからは、一つ一つの文字がそのコンセプトに沿っているかどうか、バランスを取りながらデザインし続けるという大変な作業が続きます。われわれは彼らが作り出すフォントに絶大な信頼を置いており、実際に日本のトップデザイナーの方々からも多くのご支持を頂いています。

ビジネスモデルはどのようなものなのでしょうか?


「LETS」インストールキット

松雪:現在、和文およそ300書体、欧文5,530書体、中国語韓国語44書体のフォントがありますが、これらを全て年次契約のライセンスプログラム「LETS」という販売形式で提供しています。「LETS」にご契約いただいた会員さまには、入会金(初年度のみ)と年会費で、提供中のフォントを全てお使いいただけるというプログラムです。このビジネスモデルは、1書体ごとの売り切りの販売スタイルが主流だった当時、業界に先駆けて当社がはじめたものです。今ではこれが、業界のスタンダードなフォント提供スタイルとなっています。また、他社にはない独自のサービスとして、約20,000点ある写真やイラストなどの素材を自由にお使いいただけるのも大きな特徴です。これらをセットにして、インストールキットとしてお届けしています。また、「FontACE」というフォント管理ツールを使い、フォントデータをダウンロードできるサービスもご用意しています。

今後の抱負をお願いします。

松雪:昨年、ソフトバンク・テクノロジーの傘下に入り、ソフトバンクグループの一員となりました。当社のフォントはすでにグループ内で使われ始め、グループ内でのシナジー効果を発揮していると思います。
私たちは、文字は情報伝達のための「インフラ」だと考えています。「インフラ」としてご活用いただくためにも、多くの場面で私たちのフォントを使っていただけるようさまざまなご要望に応えることが私たちの使命だと思っています。
文字自体はどこにでもありますが、人に感動を与えられるようなフォントは誰でも作れるものではありません。その意味で私たちは、「オンリーワン」と言っていただけるものを提供できる存在になれたのではないかと思っています。さらに、今後は業界での厳しい競争を勝ち抜き、「オンリーワンからナンバーワン」になりたいです。ぜひ私たち、フォントワークスの手がけるフォントを、より多くの皆さまにご活用いただければと思います。


松雪 文一(まつゆき ふみかず)

松雪 文一(まつゆき ふみかず)

  • フォントワークス株式会社 代表取締役

略歴:1984年、システムソフト販売株式会社入社。1989年、株式会社パークウェイに転籍。1993年、株式会社フォントワークスジャパンを設立、代表取締役に就任(現任)。2008年7月、フォントワークス株式会社へ社名変更。

(掲載日:2014年12月15日)

  • 内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。