プロジェクトPickUp 2006年

ボーダフォンからSoftBankへ
「AQUOSケータイ」広告戦略の現場

ボーダフォン株式会社
マーケティング・コミュニケーション部 メディアグループ 課長
内藤 孝太郎(ないとう こうたろう)

ボーダフォンからソフトバンクへのブランド変更発表後、第1弾の商品となった「AQUOSケータイ」(機種名:905SH)。
「予想外の動き」をキーワードに、ボーダフォン初のワンセグケータイ発売とソフトバンクブランドへの移行という2つのコンセプトが織り込まれた同広告は、テレビ・新聞・街頭で大規模に展開された。発売日当日は、新聞(朝刊)に全15段カラー広告を掲載し、それに連動した当日限定のテレビCMを放映するというユニークな試みも行われた。現在、ボーダフォンで広告コミュニケーション戦略の現場指揮をとる内藤氏に、その舞台裏を語ってもらった。

インタビュアー:
山内 貴久美(やまうち きくみ) ソフトバンク(株)広報室顧問・フリーアナウンサー

機種と企業、二つの「予想外の動き」

山内:
現在展開されている905SHの広告は、ボーダフォンからソフトバンクにブランドが変わると発表されてから初めてリリースされたものですね。世間からの注目が高くなることも意識されたと思いますが、広告部隊が活躍する現場ではどのような取り組みが行われたのでしょうか?
内藤:
今回発売した905SHは、当社にとって初のワンセグ対応機種でした。機種そのものの発売は以前から決まっていましたが、広告コンセプトにブランド変更を盛り込むことは、実は5月18日の記者発表会の実施決定直後に急遽決まったんです。もちろん世間の皆さまは「ソフトバンクはどう仕掛けてくるんだろう?」という目でご覧になるはずですから、携帯電話の広告であると同時に企業への期待感に応えるものでなければなりません。それを2週間という短い時間の中で、急ピッチで進めていったという感じですね。
山内:
コンセプトと訴求ポイントを教えていただけますか。
内藤:
ソフトバンクのマークである黄色二本線をイコール(=)に見立て、プラス(+)○○(今回の企画は+AQUOS)と表し、“ソフトバンクに新しいものをコラボしていく”という企業への期待感をうまく打ち出すことを考えました。
山内:
デザイン面はいかがでしょうか。
内藤:
機種のAQUOSブランド、現在のVodafoneブランド、そして新しいSoftBankブランドと、ひとつの広告の中にブランドロゴが3つ入るため、バランスにはかなり気を遣いました。少しの大きさの変更やスペースの取り方で印象が変わりますから、何度も作り直しましたね。特にAQUOSというブランドは、シャープさんがこれまで大切に育ててこられたブランドですから、われわれもそのブランド価値を傷つけないように、最大限注意を払いました。

発売日当日、異例の新聞・CM展開

山内:
発売日当日、新聞の朝刊に「本日発売」という広告を出されましたが、これは珍しい試みですね。
内藤:
入社以来、ずっと広告宣伝に携わってきていますが、発売日当日にこういった宣伝を出すのは初めての経験でした。というのも、最近の携帯電話は非常に高機能化しているので、ギリギリまで動作確認を行う必要がありますし、万が一不具合が見つかれば、発売日そのものがずれてしまいます。ですから通常は「近日発売」などといった表現でぼかすことが多いんです。今回は先に発売日を確定しましたので、開発・営業・物流をはじめ、まさに全社一丸となってこの日を死守しました。
山内:
TV-CMでも「今日の朝刊ご覧になりましたか?」と流れて、驚きました。
内藤:
新聞広告を作っていくうちに「せっかくだから、できるだけ多くの方に見ていただきたいね」と出たアイデアです。発売日の27日だけに流すCMは、実は3バーションも作ったんです。すべてご覧になった方はなかなかいらっしゃらないかもしれませんが(笑)。
山内:
次に展開されたCM「予想外の良い動き篇」(会議室のCM)の中身もユニークでしたね。
内藤:
「機種」と「企業」、2つのニュースを「予想外の動き」というコンセプトに落とし込みました。液晶が90度回転する905SHの「予想外の動き」、そしてボーダフォンからソフトバンクになる「予想外の動き」です。これをいかに表現し、伝えるかがテーマでした。
30秒CMでは「予想外の動き」をさらに印象付けるため、CM後半に少し「お笑い」の要素も入れたのですが、私もソフトバンクグループに入って初めて作るCMでしたから、こういったユーモアが経営陣に受け入れられるだろうか?という不安がありました。しかし、結果とても好評で、孫社長も「CMはかっこいいことも大事だけど、こういったユーモアも大切だ」と気に入ってくださいました。完全なお笑い路線ではなく、センスのあるユーモアを取り入れていければと思っています。
山内:
CM制作中の裏話があればぜひ教えてください。
内藤:
今回、新しいクリエイティブチームとの仕事となったのですが、素晴らしいチームワークで、撮影中から「これはすごいものができるぞ」とワクワクしていました。これまでの経験から思うことですが、撮影現場の雰囲気というのは、出来上がりに非常に大きく反映されるんですね。皆、現場での緊張感や集中力が素晴らしかった。編集作業は深夜にまで及んだのですが、私のところにくる確認依頼も「早く決めてください」ではなく、普通の人が気づかないようなわずかな差を示して「どちらがよいでしょうか?」と。“いいものを作ろう”という意識が非常に高くて刺激になりました。
山内:
反響はいかがでしたか?
内藤:
通常、広告調査を行うと、タレントさんが出ていない広告は、どうしても印象が弱くなりがちなんですが、今回は、認知度・好感度ともに非常に高いスコアがでました。
ショップの販売スタッフからも好評で、「新しい展開が見えてきて、とても嬉しい」という声や、「新聞原稿をショップに貼りたい」というリクエストまで、多くの評価が返ってきました。われわれプロモーション側としても、賛同の声が聞けるのは非常に嬉しかったですね。

「何かやってくれる」という期待感を打ち出す

山内:
先ほどもお話に出ましたが、ソフトバンクグループに入ることになって、変わったことはありますか?
内藤:
ソフトバンクというのは、消費者の疑問に答えようという姿勢を持った会社だと思うんですね。どうしてこんなにADSL料金が高いんだろう?じゃあそれをどうしたら変えられるだろう?と。こういったソフトバンクのチャレンジ精神は、消費者の皆さまに大きな“期待感”をもたらすことでしょう。その中で、ボーダフォンが持つ資産をどう活かしていくかを考えていきたいと思っています。
もちろん、仕事の進め方やコミュニケーションなど、これまでと変わる部分はありますし、慣れるまでの時間も必要かと思いますが、今は目の前に山積みされたやるべきことに集中することが大事だと思っています。
山内:
いよいよこの秋には、ナンバーポータビリティ制度が施行されます。この大きな勝負に、どのような戦略を打ち出していかれるのでしょうか。
内藤:
ソフトバンクがこれまでやってきたことを活かし、IT企業が仕掛ける携帯電話という視点を取り入れていきたいと思っています。消費者の皆さまに「面白いな」「何かやってくれるのではないかな」という期待を持っていただけると嬉しいですね。当面は秋に向けた戦いをどう乗り切るかが一番の課題です。
山内:
この夏は勝負ですね。
内藤:
まさにそうですね。今、クリエイティブチームのメンバーとさまざまな仕掛けを準備しています。もう少しサービスインの直前にならないと具体的なことはお知らせできないのですが、メンバー全員が非常に意識を高くもって、取り組んでいます。必ず良いものをお届けできるはずですので、ぜひご期待いただければと思います。

(掲載日:2006年7月28日)

  • *内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。