ソフトバンクNOW 2003年

ユーティリティ・コンピューティング

10月31日、ソフトバンクBB(株)と日本オラクル(株)は「ユーティリティ・コンピューティング・サービス」の分野で提携することを発表した。ユーティリティ・コンピューティングとは、水道の蛇口をひねるように、必要な時に必要な分だけコンピューターのハードウェアやアプリケーションを提供するという考え方。たとえばアプリケーションであれば、ユーザーは必要な時だけサーバーにアクセスし、そこにあるプログラムをブロードバンド回線を経由して利用するという技術だ。特に多数のパソコンやアプリケーションを使う企業には、管理コストの削減など、多くのメリットを提供すると言われている。

続く11月20日には、ソフトバンクBB(株)と日本オラクル(株)が「BBユーティリティ・コンピューティング戦略フォーラム」を開催。集まった企業の担当者やマスコミ約1,000人の前で、ユーティリティ・コンピューティング・サービスの具体的構想を明らかにした。今回は、同フォーラムで行われた孫正義社長の講演「BBユーティリティ・コンピューティング革命」を紹介する。

ご講演:
オラクル・コーポレーション シニアバイスプレジデント John L Hall様
日本オラクル株式会社 代表取締役社長 新宅 正明様

ブロードバンドとソフト技術の進歩。そして機は熟した。

4年前、オラクルのラリー・エリソン会長と食事をしていた時です。「これからコンピューティングはどうなっていくだろうか?」というテーマで、それぞれのビジョンを語り合っていました。これからはネットワークの時代、そしてどこの家庭でもスイッチひとつで流れてくる電気のように、コンピューターの資源も提供されるべきだというのが私たちの共通した考えでした。これが実現すれば、手元のパソコンはもっと小さく軽くなる。ただし、サービスは24時間管理され、セキュアな状態で提供されなくてはならない……この時の私たちの発想が、「BBユーティリティ・コンピューティング」の原点となりました。

ただし当時はまだ日本のネットワークは貧弱で、またこのサービスを運用するためのソフトウェアの技術も十分なものではありませんでした。それが今や日本は世界一安く高速のブロードバンドを利用できる国と認められるようになり、しかもYahoo! BBのインフラは全国をくまなくIP網で結んでいます。またソフトバンクが提供する法人向けブロードバンドサービスを導入している企業はお陰様で日ごとに増えており、たとえば都内のホテルや多くの大手電機メーカーなどが100メガの光ファイバーで、このIP網とつながっています。加えてオラクルでも、グリッド・コンピューティングと呼ばれる技術を利用したユーティリティ・コンピューティングのためのソフトウェアが完成しました。そうです、機は熟したのです。

アプリケーションやハードディスクをオンデマンドで提供

これまでの一般的な法人内ネットワークでは、個別のパソコンにアプリケーションのインストールとバージョンアップを繰り返さなくてはならず、そのためにパソコンでは大容量のハードディスクが、社内LANでは巨大サーバーが、それぞれ必要とされてきました。一方ユーティリティ・コンピューティングでは、サーバーにあるアプリケーションなどを、オンデマンドで欲しい時に欲しい分だけ入手することができます。パッケージごとにソフトを買うのではなく、社員一人一人が使った分だけの料金を払う。もちろんアプリケーションのバージョンアップやサポートなどは、提供する側が一括して行うことができます。

例えば現在計画中のサービスの一例として、「アプリケーションストリーミング配信」を見てみましょう。これはアプリケーションをハードディスクにインストールするのではなく、ブロードバンド回線によって外部からアクセスし、リアルタイムで使う技術。実際に使ってみても高速回線のおかげで、ハードディスクにあるのと同じような感覚で利用することができます。他にも、出版や医療などさまざまな分野で、アプリケーションとファイルを容易にそして安全に共有できるユーティリティ・コンピューティングの技術が活用されることになるでしょう。

ソフトバンクでは、これまで20年にわたってソフトウェアの販売を手がけてきました。現在も量販店やパソコンショップでの約7〜8割の製品を扱っているだけに、ソフトウェアの在庫管理には、メーカーも販売店も多大なコストと時間をかけていることを知っています。これらの何万種というソフトウェアをネットワークに貯蔵し、ユーザーが水道のように利用できるようになれば、ユーザー側にとってもメーカー側にとってもかなりのコストダウンにつながるはずです。

コンセントから電気が供給されるように、モジュラージャックからすべてがつながる

こうしたアプリケーションや、ファイルを保管するためのストレージ、またデータベースなどは「BBユーティリティ・データ・センター」と呼ばれる場所で一元管理されることになります。これまでのように企業内に電算室があるのは、言ってみれば各家庭で電気を使うために、一家に一台発電所を設置するのと同じ発想です。なぜコンピューターと無縁のはずの食品会社に、コンピューターの専門家を配備しなければならないのか。そうした管理保守は、BBユーティリティ・データ・センターの専門家に任せておけばいいのです。

こうして各地に散らばった企業の支店は、あたかも一つのビルの中にいるようにネットワークでつながります。企業内だけではありません。日本中がローカルエリアネットワーク(LAN)でつながることもできる。20世紀はコンセントからいつでも電気が供給されるようになった。そして21世紀はLANケーブルをモジュラージャックに挿すだけで、いつでもコンピューターの資源が供給されるようになるのです。

ナローバンドがインターネットの第一幕だとすれば、ブロードバンドはインターネットの第二幕です。インターネットは生まれ変わり、21世紀の情報化社会を迎えるためのインフラを提供するでしょう。電話、テレビ、そしてマイクロコンピューターと、情報技術は進化を遂げてきました。そして2003年、ユーティリティ・コンピューティングの時代が幕を開けます。

(掲載日:2003年11月1日)

  • *内容は掲載当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、肩書などは現在と異なる場合があります。