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次世代モビリティ社会の実現に向けて 〜ソフトバンクが描く青写真〜

#コネクテッド #次世代モビリティ #セルラーV2X #交通インフラ

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1. ソフトバンクが考える次世代モビリティ社会とは

近年、5Gなどのセルラー通信の普及に伴い、スマートフォンに限らずあらゆる産業やモノへの通信の適用が期待されています。ソフトバンクでは、車両や交通インフラへの通信技術の適用を想定し、2017年から研究開発に取り組んでいます。

ソフトバンクとHondaが第5世代移動通信システムを活用したコネクテッドカー技術の共同研究を開始

2017.11.16

Press Release

ソフトバンクとHondaが第5世代移動通信システムを活用したコネクテッドカー技術の共同研究を開始

#コネクテッド

特に自動車向けの通信は、社会的にも活発に議論されています。自動運転やADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)の進化に伴い、通信をどのようにして活用するかが非常に重要です。ソフトバンクでは、自動車だけではなく、道路全体の最適化を通信で実現する社会 = “次世代モビリティ社会”という構想の下、さまざまな取り組みを実施しています。歩行者や車両などの交通参加者、交通インフラが通信を介して情報を共有し合い、高度かつ適切な情報提供を実現することで、事故を低減し、交通参加者がより安全に移動できる社会の実現を目指しています。

2. 次世代モビリティ社会の構成要素

次世代モビリティ社会では以下に挙げる要素を考慮する必要があります。

● 交通参加者
 ○ 自動四輪車
 ○ 自動二輪車
 ○ 自転車
 ○ 歩行者
● 交通インフラ
 ○ 道路
 ○ 信号機
 ○ 定点カメラなどの路側センサー

交通参加者には、自動四輪車や自動二輪車、歩行者、自転車といった、移動手段・状況に応じたさまざまな要素があり、交通インフラには、道路、信号機、路側センサーといった交通社会を構成する要素があります。

交通事故の要因として、自動車には操作ミスや前方不注意、歩行者や自転車には信号無視や道路の横断違反があげられます。それらを回避するためには、自動車に搭載されるセンシング機能だけでは全ての交通シチュエーションや死角領域への対応は困難です。
そこで、交通参加者は自身や周辺環境のデータ収集、交通インフラは交通状況や交通参加者を第三者視点として観測したデータ収集を行う必要があり、これらのデータ連携に重要なのが通信です。データには車両情報、歩行者の位置情報、センシング機器からの検出データなど、さまざまな種類が存在し、それらに応じてさまざまな通信要件があります。そのため、それらを安定的に満たすネットワークが必要になります。ソフトバンクでは、これらの構成要素がある中で、どのようなネットワークであるべきかをパートナーと一緒に検討しています。

次世代モビリティの実現に向けて | 次世代モビリティ社会の実現に向けて 〜ソフトバンクが描く青写真〜

3. 次世代モビリティ社会における通信技術となるセルラーV2X

セルラーV2Xには、直接通信方式(PC5)と間接通信方式(Uu)があります。PC5は、車両同士が通信する「V2V(Vehicle to Vehicle)」、車両と交通インフラが通信する「V2I(Vehicle to Infrastructure)」、車両と歩行者が通信する「V2P(Vehicle to Pedestrian)」という端末間で直接通信を行う通信方式です。Uuは車両とネットワークが通信する「V2N(Vehicle to Network)」という基地局を介して通信を行う通信方式です。

次世代モビリティ社会で鍵になるのは、車両を中心としたシステムではなく、交通参加者、交通インフラが互いに協調するシステムです。このようなシステムを実現するにはPC5と組み合わせてUuを活用することが非常に重要です。俯瞰的に交通状況を把握することで、適切な交通参加者へ注意喚起を促すことができます。

Uuで活用される基地局は携帯電話やスマートフォンなどのデバイスの普及に伴って、経済活動やライフラインなど社会インフラとしての役割を担っています。特に、車両にデバイスを搭載するだけでさまざまなモノがネットワークにつながり、全国で利用できるという点は、他の通信規格と比較して社会実装のハードルが低いという特徴があります。

セルラーV2Xとは | 次世代モビリティ社会の実現に向けて 〜ソフトバンクが描く青写真〜

ソフトバンクの考える次世代モビリティ社会でのUuの役割は下記の通りです。

● 目と耳の拡張
● 頭脳の拡張
● 知覚の共有

「目と耳の拡張」

車両には、カメラやLiDAR、レーダーなど多くのセンサーがあります。それらの検知できる範囲は100m程度です。例えば、その範囲内に遠方から急速に接近する他車両がいた場合、車両は急制動を行い、安全を確保しなければなりません。交通参加者間で情報共有を行うことで、スマートフォンへの危険通知や車両に搭載されるセンサーの検出距離の拡張や死角領域の補完など、車両の目と耳の拡張の役目を果たすことになり、俯瞰的に状況を把握することができます。

「頭脳の拡張」

車両にはセンサーから得られた情報をもとに判断をするようなコンピューターが搭載されています。今後、自動運転や高度ADAS化を目指すに当たって、コンピューターには非常に複雑な処理が要求されます。車両のデータをネットワークに送信することで、データセンターなどに配置されている処理能力の高いコンピューターに判断をさせることも可能になります。このように頭脳の拡張は、情報の解析・処理を行う適切な場所の選択を指します。アプリケーションの要求に応じて、クラウドにあるサーバーやMEC(Multi-access Edge Computing)にあるサーバーといった異なる計算リソースを柔軟に選択することで、今まで車両単体では処理が困難であったタスクをサポートすることができます。

「知覚の共有」

交通インフラから得られるセンサー情報は今後増えていくことでしょう。それらを一元的に管理するような管制塔が存在することで、自身の車両だけでは得られなかった情報すなわち知覚の共有が可能です。多地点からの情報を集約することで、より高度な解析を可能とし、さまざまな状況に直面する交通参加者にとって適切な情報提供を実現できます。

基地局を介した通信のメリット | 次世代モビリティ社会の実現に向けて 〜ソフトバンクが描く青写真〜

4. ソフトバンクの取り組み事例

ソフトバンクでは、次世代モビリティ社会の構成要素を担う企業と共同研究を実施し、通信システムの研究開発を行っています。今回はその中で2つの事例を紹介します。

スズキとの事例

この事例では、スズキ株式会社と共に、クルマの交差点右折時の事故低減に向けたユースケース検証を行いました。
クルマが交差点を右折する際、対向車線に車両が存在する場合は対向車線を走行する直進車両が目視およびセンサーで検知できず、衝突事故が発生するリスクがあります。本ユースケースでは、交差点付近にいる車両は、Uuを活用して位置情報や車両情報をMECサーバーへ送信し、MECサーバーで各車両情報と地図情報をひも付け、管理を行います。MECサーバーは、集約した車両情報から衝突判定を実施して衝突の危険があると判断した場合、対象の車両へ衝突判定の結果を送信することで右折時の衝突事故を回避させます。

衝突回避などの運転支援システムは、カメラやレーダーなどの車載センサーを使用した車両のみで完結するシステムが一般的ですが、本検証では、計算リソースとしてMECサーバーを選択する「頭脳の拡張」、MECサーバーにて一元管理する情報から判断した結果を共有する「知覚の共有」を活用するシステムに十分な有用性があることを確認しました。

クルマの交差点右折時の事故低減に向けたユースケース検証 | 次世代モビリティ社会の実現に向けて 〜ソフトバンクが描く青写真〜

参考

スズキと共同で5G SAとセルラーV2Xを活用したクルマの交差点右折時の事故低減に向けたユースケースの検証を実施 | ソフトバンクニュース

2023.03.17

Press Release

スズキと共同で5G SAとセルラーV2Xを活用したクルマの交差点右折時の事故低減に向けたユースケースの検証を実施

#コネクテッド

HondaとNEXCO中日本との事例

本事例では、本田技研工業株式会社、株式会社本田技術研究所、中日本高速道路株式会社と共に、自動車と路側センサー間で情報を連携することにより、情報収集や情報提供を強化することが可能かを検証するユースケース検証を行います。

本ユースケースでは、走行する通信可能な車両(コネクテッドカー)の位置や速度などの車両情報をUuを介してリアルタイムに情報連携プラットフォームへ伝送します。一方で、高速道路に設置した路側センサーにおいても通信端末がない車両(非コネクテッドカー)を含む車両情報を検出し、検知した情報を管制センターに伝送します。管制センターと情報連携プラットフォームで情報を統合することで路車協調を実現するとともに、交通事故のリスクの解析・判定を行い、急な車線変更など予測されるリスクに関する情報を周辺車両へ通知することで、事故を未然に回避する行動を促します。

この検証では、車両単独では知り得なかった情報を交通インフラから取得することによって「目と耳の拡張」を行うと同時に、さまざまな情報をプラットフォームで集約して判断を行う「知覚の共有」の実現性やそれらによる効果を検証する予定です。

参考

セルラーV2Xを活用した交通インフラの情報連携によって事故リスクの予測や情報通知を行うユースケースの検証を開始

2023.03.20

Press Release

セルラーV2Xを活用した交通インフラの情報連携によって事故リスクの予測や情報通知を行うユースケースの検証を開始

#コネクテッド

ソフトバンクは、今後もこれらの取り組みを通じて、次世代モビリティ社会におけるネットワークに求められる課題の明確化や技術開発を行っていきます。

Research Areas
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